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かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その3

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/04(日) 19:46:23 ID:ziKOwvll
 FFを「かなり真面目に」ノベライズしていくスレです。


□現在の進行状況
・FF4 試練の山でテラと再会まで
・FF5 隕石の落ちた場所に着いてボコを降りるまで
・FF6 ベクタにて、ケフカの過去の場面まで(本筋はティナがフィガロ城を歩き回るところまで)

2 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/04(日) 19:46:53 ID:ziKOwvll
□過去スレ
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1091624036
http://2ch.pop.tc/log/05/08/18/1230/1091624036.html(dat落ち保管所より)
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その2
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1115452328

3 :◆DaHkVi7f1g :2005/09/04(日) 19:46:56 ID:NcuWIlsV


4 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/04(日) 19:47:50 ID:NcuWIlsV
↑ミス。気にしないで。

5 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/04(日) 19:48:46 ID:ziKOwvll
□参考
セリフ集
http://members.at.infoseek.co.jp/nayuka_aaaa/wp/ff.html
まとめサイト
http://ff-novelize.main.jp/

6 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/04(日) 19:51:47 ID:ziKOwvll
直リンすいませんorz 要領食いのスレなのに……うわぁ

7 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/04(日) 20:07:02 ID:XnmfkHIK
乙!3スレ目まできたか。
最初は絶対潰れるだろうなぁと遠目に見てたのに……。

8 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/04(日) 22:58:04 ID:eEqimqp6
○このスレのコンセプト
DQはちゃんとした小説がエニックス出版から出ていますが、FFは2以外まったく刊行されていません。
文才と多少の暇のある方、どうかこのFFDQ板でFFのどの作品でもいいので、ストーリーの最初から
最後まで完全小説化してみてください。
といっても一人でこんなこと最後までやりつづける人はいないでしょう、普通。印税入るわけじゃないし。
ただの趣味だし。根気が続くはずが無い。
なので、リレー小説にするのが妥当かと。
結構おもしろい企画だと思いませんか?

ただ飽くまでも「公式の小説が出版されていない作品を情熱あるこの板の住人がノベライズする」
がコンセプトなので、FFでなくてDQでもいいです。
ただしDQ1〜7は当然対象外になるわけで、可能なのはモンスターズ等でしょう。
やはりプロの作品にはかなわないですから、DQ1〜7は書く必要がないわけです。そういうものです。



9 :299:2005/09/05(月) 01:31:31 ID:L0YR58vH
FINAL FANTASY IV #0231 4章 3節 山間(16)

フシュルルル……
声とも呻きとも取れるその音がセシル達の耳に聞こえてきたのはーー
二人に追いつき、強い傾斜が連なる道を黙々と進んでいた時であった。
「パロム! 何か言ったでしょ!」
パロムの悪戯に思ったのかポロム振り向き彼を睨むように見やる。
「言ってねーよ」
「嘘おっしゃい。全く、びっくりするじゃない」
「本当だよ!」
「じゃあ、あんた意外に誰が」
「おい、やめんか」
言い争いを始めた二人をテラがやや強く制止する。
「テラ様」
「もうその辺にしておけ……喧嘩なんかしとる場合じゃないだろう。
この山を昇るには協力せぬ限りは無理じゃぞ」
「そうですけども……」
テラに諭され、ポロムはこれ以上は言うまいとばかりに身を引いたが
その様子はまだパロムを疑っている。
パロムも怒ったような目でポロムを睨んでいる。
「まったく」
テラは二人と出会ってから何度目か分からない溜息をこぼす。
「長老もこんな二人をお供につけるとはな。お前も苦労しただろ」
「確かに最初は戸惑いましたが。でも、二人共十分自分なりに頑張っています。
それにまだ子供ですよ、喧嘩をするなという方が無理ですよ」
「お前は……優しいんだな」
ちょっとばかり呆れたという様子でセシルを見やる。

10 :299:2005/09/05(月) 01:32:20 ID:L0YR58vH
FINAL FANTASY IV #0232 4章 3節 山間(17)

「じゃあ、そろそろ行くよ二人とも。きっと空耳か何かだよ」
「はい、セシル様」
セシルに声を掛けられると、ポロムは途端に上機嫌になった。
「行きましょう!」
元気よく駆け出そうとする。
「あーあ、全く調子いいぜ」
少し顔を膨らましたパロムもしぶしぶといった感じで歩き出す。
「しかし、さっきの声は本当に何だったんだろうな?」
二人を見送るセシルは釈然としない思いであった。
彼らにはああはいったものの、とても空耳には思えなかったからだ。
「やはり、お主にも聞こえたのか?」
後ろからテラが同意を求めるかのような疑問を投げかけてくる。
「二人に嘘を言うのは気が引けましたけど……」
「やはりお前は優しすぎるぞ。いずれはその甘さが命取りになる可能性もあるぞ、
少しは他人にも厳しくならないとな」
「……分かりました……」
「では行くか」
「はい……」

11 :299:2005/09/05(月) 02:20:49 ID:L0YR58vH
FINAL FANTASY IV #0233 4章 3節 山間(18)

山頂にたどり着く頃には陽は西へと沈みかけており。空はだんだんと暗さを増していった。
「ふう……ようやく、山頂じゃ」
「おいらもう疲れたぜ。一歩も歩けない」
「ちょっと頑張りなさい」
息も絶え絶えに不満を口にするパロムをポロムが叱咤する。だが、彼女も疲労が激しい事を
体中で訴えている。
「よし、ここで休憩しよう」
明らかに無理をしているポロムを見て、セシルは思わずそんな提案を口にする。
「やったあ! さすが、あんちゃんだぜ!」
「駄目ですわっ! セシル様、もう少しで頂上というのに、それにパロムをあまり甘やかさないで
ください。直ぐにつけあがりますから」
フシュルルル……、
ポロムが必死に先を急がすよう促す中、またもその声は聞こえてきた。

12 :299:2005/09/05(月) 02:21:44 ID:L0YR58vH
FINAL FANTASY IV #0234 4章 3節 山間(19)

「あっ、パロムまた!」
「違うって行ってるだろ、また空耳なんじゃない」
「本当に?」
「本当だよ!」
フシュルルル……
必死に自分の潔白を証明しようと主張するパロムの声に割ってはいるかのように
その声はまたも聞こえてきた。
「え……嘘……確かに」
今まで声の主と思いこんでいたパロムでない事がわかり、ポロムは困惑した。
では誰が……
「どうやら……空耳ではないようだな」
急に、テラの顔が急に厳しさを増す。
フシュルルル……
「気配がっ! そこかっ」
三度その声が響いた時、テラは声の聞こえた方向に向けて魔法を発していた。
炎がうねりをあげ、対象先へ飛びかかる。
だが、着弾した炎は地面を空しく焦がしただけであった。
「さすがは賢者。お察しが早い。だが、少しばかり気づくのが遅かったな。
ハハハハハッッーー嬉しいぞっお前らを葬ることができて」」
高笑いと共にその影は現れた。

13 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/05(月) 02:24:14 ID:L0YR58vH
新スレお疲れ様です。
と言うことで短いですが4の続きを投下しました。


14 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/05(月) 10:55:25 ID:ZHSlt4WZ
質問だけど、なんで新スレたてたの?
前スレ残ってんじゃん。
確かに多少荒れてたかもしれないけど、その程度じゃ
旧スレ放棄して新スレたてる合理的事由とはなりえないでしょ。

15 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/05(月) 10:56:51 ID:q9StxDFa
>>14
志村ーようりょ〜。

16 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/05(月) 11:30:09 ID:QpGXcpwt
>>299
新スレ初の続きだね。乙。
>>14
500kbなんだって

17 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/06(火) 08:48:00 ID:SalH2dAm
人イナス・・・

18 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/06(火) 08:50:01 ID:rAsN3pO6
気長に待とうぜ

19 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/07(水) 01:05:00 ID:yYsZRhrp
保守

20 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/08(木) 02:31:54 ID:rh7KgGI2
なんか、前スレで荒れたからなのか今ひとつもりあがらんな・・・
結局、好き嫌いを言い出したら駄目だと思うよ個人的には・・・
人の話を、下手とか稚拙とか、そういう風にいわないこと。
駄目なトコは、黙っとけとは言わないけど、せめて愛ある指摘をすること。
俺は、それくらいは、当然のことだと思うよ。

それはともかくとして>>299お疲れ!
この御一行様のやりとりが軽妙に描かれてて好きだ。

21 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/08(木) 06:51:18 ID:xNI0VwGb
いや…一週間新作なしとかザラだぞ。
構想が浮かばないとか、もしくは話がダブって路線変更中とか、いろいろあるんだろ。
とりあえずまとめサイトでも眺めつつ待とうよ。

22 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/08(木) 10:13:09 ID:rh7KgGI2
そだな。待つか。

23 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/09(金) 08:12:25 ID:jvH+gk97
テラテラス

24 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/09(金) 09:23:17 ID:MnZCzh1V
そういや二三日前にFF2の小説買って読んだけど、ゲーム本編の流れからはしょってる所が多過ぎてつまらなかった。
やっぱり、完全にオリジナルに忠実じゃないといかんね。

25 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/09(金) 09:27:04 ID:ftm4UPhJ
ゲームそのままの小説読んだって面白くもなんともない。

26 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/09(金) 09:35:39 ID:MnZCzh1V
いやそりゃそうだよ。
俺が行ってるのは、オリジナルのエピソードは挿入してあってもいいけど、ストーリーは忠実にゲーム本編の流れに沿ってほしい
ってこと。
で、2の小説は最後肝心な所が抜けすぎてた。
大戦艦や、竜巻、パンデモニウムなどの描写が一切無く、最後クリスタルでまとめて勝手に終了。
皇帝も復活しないしさ。
4で四天王戦とか月の地下渓谷が省かれてたら嫌でしょ?


27 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/09(金) 09:39:14 ID:MnZCzh1V
そう考えてみると、FF2の小説は何か外伝的な感じがしたな。

28 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/09(金) 13:29:04 ID:UrIJ0LBY
原作を頭から順にノベライズしなくてもいいんじゃない?
各自お気に入りのシーンを片っ端から書いてけば。

29 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/09(金) 13:35:15 ID:138DV2fL
コンセプト読めや

30 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/09(金) 17:42:37 ID:H1v3tVZ9
>>28
始めから終わりまで通してノベライズするから壮大な企画なんだよ。
それに単発だと逆に続かないような気もするな。

しかし一年ちょい経ってついに試練の山山頂まで来たか……感慨深い。

31 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/09(金) 23:15:26 ID:4ORwJxPP
まとめサイト凄い奇麗になってるぞ!
見に行ってみろ!

管理人おつかれ!

32 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/10(土) 00:06:11 ID:H1v3tVZ9
カッコいいなぁ。いいぞー管理人。

でもFF4更新してないよ(´・ω・`)ショボーン
頑張ってね。

33 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/10(土) 14:18:42 ID:n/xMxX7Q
>>まとめサイト管理人
乙でした。
かっこよかったです


34 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 15:40:42 ID:XrAFzUY5
保守

35 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 17:58:40 ID:vjLrACTc


36 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/12(月) 14:27:47 ID:2dEfzsf6
まとめサイト更新されてるね

37 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/12(月) 14:54:38 ID:BVk8qp10
ホントだ、一気に増えたなw
管理人さん乙です!
過去ログも復活しててよかった。

38 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/12(月) 15:33:25 ID:sp0kyUD/
管理人さん乙です。
さわやか。

39 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/13(火) 21:40:32 ID:Zak41/As
保守

40 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 13:49:39 ID:EG54dD9j
FF5  2

辺りがざわついている。

それもそう、今さっき起こった出来事に森に棲む生き物達もただ事ではないと感じたのだ。
鳥達は鳴きながら一斉に空へ向かい何処かへ消えてゆく。
木々はこの出来事を悲しむかのようにざわめき、泣くように緑の葉を落とす。
今さっきまであった平穏な自然がひとつの不気味な隕石により失くなっていた。

「よりによってこんな所に落ちるってーのもなぁ・・・」
バッツはしかめっ面しながらボソッと呟く。
丁度隕石の落ちた、バッツの向かっているポイントはタイクーン城へ向かう唯一の細い通り道の手前だった。
つまり、タイクーン城への道が閉ざされてしまった事を意味する。
タイクーンは昔からこの『自然の要塞』と言われた高い山々に囲まれ、他国の侵略から身を守ってきた。
しかしそれは遠い昔の事。
戦争と言う忌まわしいものが起きるはずも無い現代にとってこの自然の要塞は邪魔でしかなかった。

ただし、特にタイクーンに縁があるわけでもないバッツはその事を知る由も無く、
いくらかの自然が破壊されてしまった狭い場所に落ちた事による呟きだったのだろう。

41 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 13:52:16 ID:EG54dD9j
FF5  3

狭く、木々に囲まれた細い道を抜けるとようやく辺りが開けてきた。
バッツの視界に隕石が入ろうとしたその時、それより先に野蛮で、バッツにとっては顔なじみであるモンスター2匹が目に入った。
「あーあー、こんな事態だからゴブリンまで寄り付いてきちまったのかよ・・・」
ちょっとうんざりしながらブロードソードに手をかけたその時、
ゴブリン2匹がなんと気絶した女性を乱暴に掴んでいるを見つけた。

「(まずいっ!)」
「待てっ!このっ!」

『ズシャッ!』

バッツはその声より先に2匹のゴブリンを斬り付けた。
ゴブリン達はその一瞬の出来事に何が起きたかわかっていない。
「ギエエエェェッ!」
「ギャアアァァァッ!」
2匹のゴブリンはそれぞれ悲鳴を上げその場に蹲る。初めて何が起こったのか理解をしたようだ。
さっきまでののんびりとした少年の目は、戦う青年の精悍な目に変わっていた。
この剣術は彼の父、ドルガン仕込みのものだ。
ドルガンは彼が幼い頃、悪人やモンスターをやっつけて、世界を旅していた為、とても強かった。
いつの間にか彼はその父を誇りにおもい、目標にし、いつかは父を越えたいと想っていた。

42 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 13:54:10 ID:EG54dD9j
しかし、3年前、ドルガンは病気でこの世を去った。
結局剣術で父を越えられないまま先立たれてしまい、彼の心は今でもその事が引っ掛かっている。
そしてドルガンは彼に遺言を残していた。

「世界を旅してまわれ」と・・・

以来、彼は相棒のチョコボ、通称『ボコ』と共に旅をしている。
彼は父が具体的に何をやっていたのかは知らないままだ。

ゴブリン達は痛みをこらえながら立ち上がり、バッツを睨みつける。
しかしもう余力は残ってない。
「ほら、もういいだろ、そんなカワイイ娘を持ってくのなんてやめて、さっさと帰りな」
バッツはゴブリンにそう話し掛ける。
ゴブリン達はあきらめたのか、森の奥へ消えていった。

43 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 13:57:23 ID:EG54dD9j
FF5  4

バッツは一息つく間も無く女の子に走り寄る。
「おい、大丈夫か?」
優しく女の子に話し掛ける。
「・・・う、ん」
女の子は無事だった。何処にも目立つ傷はなく、バッツは安堵の表情を浮かべた。
そして女の子は立ち上がり服についたほこりやゴミを手で掃いながらバッツにお礼を言う。
「あ、ありがとうございます!本当に危ない所でした・・・」
「ああ、とにかく無事で良かったよ。最近はここらもな〜んかモンスターがよく出るからなぁ」
「そうですね・・・」 

少しの、間。いつもの風の音が、今日は聞こえない。

「...あ、自己紹介が遅れました、私はレナと申します。あなたは・・・」
「俺はバッツ。ボコって言うチョコボと一緒にあてのない旅をしてるんだ」
「あてのない旅・・・」
レナは不思議そうに呟いた。
「そ、だからまぁ、無理矢理言うなら旅人ってところかな」
「旅人・・・」
レナはまた呟く。
「まぁ、そんなにカッコイイもんじゃないんだけどね、実際はさ」
バッツは少し笑いながら自分を偽りなく紹介する。
人見知りせず、誰とでもすぐ打ち解けられるのは生まれ持った個性であろう。

44 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 13:58:14 ID:EG54dD9j
レナは「はっ!」と気付き、さっきまでと違う表情をした。
バッツがその表情の変化に気付く間も無くこう言う。
「風の神殿・・・」
「ん?」
「そう、風の神殿に行かなくては!」
「風の神殿って・・・あの?」
レナが深く頷く。
バッツもさすがに昔のタイクーンの事は知らなくても、この事はなんとなく知っていた。
クリスタルが祀られてると言う、あの神殿である。
「なんでまた?」
「ええ、実は数日前にお父様が風の神殿へ向かったの・・・」
バッツは黙って聞いている。
「(さっきから『申します』とか『お父様』とか、育ちのいい娘なんだなー)」
しかし心の中ではレナの品の良さに感心している。
「(そう言えば身なりもどことなく上品と言うか・・・旅用の皮の服とかナイフとか装備してるけど似合ってないような・・・)」
レナは如何にも服に『着せられてる』様な格好である。胸には印象的なペンダントがキラリと光る。

45 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 13:59:02 ID:EG54dD9j
「あの・・・聞いてます?」
レナが少し疑惑の表情。
「へっ?...あ、ああ、もちろん、もちろんさ」
バッツは虚を突かれ少し慌てる。
「・・・で親父さんが神殿に向かって戻ってこないって」
「えぇ、凄く心配で心配で・・・」
レナは少し泣き出しそうな表情である。自分の父親が戻ってこないんだから当たり前だろう。
そんなレナの表情に内心少しドキッとしているバッツ。

「それに最近風が止まったでしょう?何か関係あるんじゃないかと想うと居ても立ってもいられなくなってしまって・・・」
「そう言えば・・・」
言われてみれば辺りは木々に囲まれてるのに不気味なほど静かだ。
さっきまでのざわめきは一体なんだったんだろうと想うほどだ。
「風がないなぁ。確かにおかしい・・・」
「ですから風の神殿へ行かなくてならないんです!」
間髪入れずに話すレナ。その声はさっきより大きい。バッツは彼女の真剣な表情に言葉がつまる。
「や、でっ、でもいくらなんでも女の子ひとりってのはさぁ・・・」
「でもっ!」
さらに声が大きくなるレナ。
父親の事を想ってさっき出逢ったばかりの青年に感情的になってしまっている。

46 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 14:00:12 ID:EG54dD9j
「またさっきみたいにモンスターに襲われる可能性もあるし・・・」
バッツは彼女の父親を想う気持ちは痛いほどわかっているつもりだ。
自分の父親が行方知れずになってしまったら・・・
やはり彼女と同じ行動を執るだろう。
しかし、彼女自身が危険な目に遭うのも目に見えていた。
「そうですけど・・・それに、さっきはモンスターに襲われてたわけじゃありません」
「へっ?」
またしても素っ頓狂な声をあげるバッツ。
「丁度出掛け始めた所ですぐに轟音が鳴り響いて、空を見たら隕石が降って来てて、気付いたらあなたに助けられてたんです」
初めてこうなる状況を説明したレナ。
「(ん?出掛け始めたってこの先はタイクーンの城しかないんだけど・・・)」
少し不思議に想うバッツ。
そしてあることに思い出した。
「あっ!隕石!」
そう、レナがゴブリンに襲われそうになった所を助け、今に至っている。
すっかり隕石の事を忘れていたのである。

しかしレナは続ける。
「あなたには本当に感謝しています。しかしこうしてる間にも時間は過ぎてゆくんです!」
「だから私は風の神殿は向かいます!」
捲し立てられて少し押されるバッツ。
そしてレナはバッツに別れを告げようとする。
「本当にありがとうございました・・・では縁があればまた何処かで・・・」
「お、おい、ちょっと待てよ・・・」
力なくバッツが呼び止めようとするがレナは背を向け歩き出そうとしていた。
しかし立ち止まる。それはバッツの声によるものではなかった。

47 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 14:05:40 ID:EG54dD9j
FF5  5

「...だ、誰か・・・」
バッツのでもレナのでもない声が何処かから聞こえた。
その声に気付き再びレナはバッツの方を向き歩き始める。
「誰か助け・・・」
再び助けを求める声。
バッツは一瞬嫌な予感がよぎる。まだこの隕石の混乱に乗じてるゴブリンが居るのか、と。
「誰かいる」
「助けを求めてるわ!」
2人はすぐさま声が出てる方へ走る。

「大丈夫ですかっ!」
2人が駆け寄るとそこにはひとりの老人が倒れていた。
バッツの嫌な予感は外れたが、それでもほっとする事は出来なかった。

「ぅう・・・」
老人が目を覚ますとそこには2人の若い男女が立っていた。
「大丈夫ですか?」
「おい、大丈夫か?」
バッツはここでようやくほっとする。今日2度目だ。
老人を心配する2人の目は優しい。
「お、おお、痛たた・・・おぬしらが助けてくれたのか」
「いや、助けたなんてもんではないけどさぁ・・・」
そして老人は次の瞬間、表情が凍りつく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
バッツとレナも心配そうに見つめる。
「何処かお怪我を?」
「・・・・・・・・・・・・・・いや」

48 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 14:09:25 ID:EG54dD9j
「思い出せない!」
老人の声が大きくあたりに響く。
「え?」
2人はその言葉にかなりの意表を突かれたようだ。
「思い出せないって・・・」
「まさか・・・」

「「「記憶喪失っ!!??」」」
3人の声が揃う。静かな森にその入り混じった声は大きく響き渡った。
「この隕石が落ちた衝撃で、か・・・。なんてこった」
バッツは馬鹿でかい岩を見上げながらため息混じりに言う。
「本当に何も思い出せないのですか?」
レナは老人の目を見て丁寧に話す。
「うむ・・・・」
力無い声でそれに答える老人。その表情は苦悩に満ちている。


少しの時間が経った。その間も老人は必死に自分と言うものを思い出そうと考え込んでいた。
「ガラフ!そうじゃ!わしの名前はガラフじゃ!」
老人はやっとの事で自分の名前を思い出した。
『自分の名前を思い出す』なんて非日常な事、バッツとレナは分かるはずも無く、ガラフを見つめる。
「他には?」
レナが続けざまにガラフの記憶を呼び戻そうとする。
「・・・・・・・・・・・・・いや・・・」
しかしその願いも空しく『ガラフ』と言う名詞3文字以外は何も思い出せない。

49 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 14:15:32 ID:EG54dD9j
FF5  6

「では、大変に申し訳ないのですが私はこれで・・・」
また少しの時間が経ったあと、レナは静かにこう言って再び背を向けた。
確かに助けてもらったバッツに感謝してるし、記憶喪失のガラフは心配である。
が、それよりもっと大事で大切なものがある。レナはその場を立ち去ろうとしていた。

「おい、ホントにひとりでいっちまうのかよ!」
バッツがさっきよりも強くレナを呼び止めようとする。
「ええ、どうしても風の神殿に行かなくてはならないの!」

「風の神殿!」
ガラフが閃いたかのように大きく声を上げた。
「そこに行かなければ!」
「ガラフ、記憶が戻ったのか?」
バッツは驚いたように聞いた。一体なんでこの2人が同じ所へ行く目的があるんだ・・・と。
「いや、そうではない。しかし、風の神殿とやらに行かなくてはならなかったような気がするのじゃ」
ガラフの瞳は鋭い。
「(さっきまでと別人みたいだ・・・)」
そのガラフの変化を感じ取ったバッツは少し表情が硬くなる。

50 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 14:23:25 ID:EG54dD9j
ガラフはレナにゆっくり歩み寄る。
「一緒に行かせてくれないか?」
「で、でも・・・」
レナは予想外の展開に困っていた。
これは自分の問題で、赤の他人、しかも今出逢ったばかりの記憶喪失の老人を巻き込むなんてありえない。
「頼むっ!」
またしても大きな声。ガラフの瞳はもちろん真剣だ。
その瞳はレナに心境の変化をもたらす。
「・・・そうですね・・・。では一緒に行きましょう」
レナは『自分の問題に他人を巻き込みたくない』と同時にやはり『モンスターへの恐怖、不安』があった。
ひとりよりかはふたりの方がいい。そう感じたのである。
自分の父と再開する前に自分の命が失くなっては全くの意味が無いからだ。
そして今、レナは日常に当たり前に父が居るという事をとても尊く想っている。
それだけになんとしても父を助けたい。また逢いたい。『絶対に父は生きている』と、そう想っている。
一緒に付いて行くと言ったガラフにはガラフなりの事情があるのだろう。レナはそう悟った。
バッツ同様レナもガラフの表情の変化に気付いたからである。
とても強い、透き通った瞳。
バッツもレナもガラフの瞳の力にただならぬ何かを感じ取っていたのかもしれない。



「ではバッツさん、本当にありがとうございました、さようなら・・・」
「助けてもらって感謝する。さらばじゃ!」

51 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 14:24:27 ID:EG54dD9j
こうして2人は風の神殿へ向かった。残されたのは自分と、馬鹿でかい岩のみ。
相変わらず風はない。森なのに木が揺れない。
バッツは少し自問自答した。
「(女の子とじいさん・・・大丈夫か?あのまま行かせてよかったのか?)」
心の中を不安が少し襲う。
「(どうする・・・どうする・・・どうする・・・)」
そう心の中で悩みながらも足は相棒のボコの方、つまりこの細道の入り口へ向かっていた。
「(結局あの隕石も謎だな・・・一体なんだったんだ・・・)」
そう悩みながら歩いているといつの間にか目の前に宝箱。そして行き止まり。
「あれっ?」
拍子抜けするバッツ。
そう、どうやらボコの居る場所とは反対方向の道に入ってしまったらしいのだ。
細い道は木々がたくさん生えていて非常に似たような景色が構成されている。
バッツは自問自答と不安な心のまま歩いてた為に、どうやら逆方向に来たのを気付かなかったらしい。

「はぁ・・・」
ため息ひとつ。

宝箱を調べたら『フェニックスの尾』と言う、結構高額なアイテムが手に入った。
「ま、アイテムひとつゲット。迷ったのもありかな・・・」
こうして不安が消えないまま、今度こそボコの居る場所へ戻るべく歩き始めた。

52 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 14:42:01 ID:EG54dD9j
前スレで1レスっきりで続いてなかったFF5を書いてみました。
小説なんて書いたことないしFF4、6の作家陣の方々みたく上手く書けませんが・・・


53 :299:2005/09/14(水) 17:06:56 ID:qexEPk4A
お疲れ様です。
上手く書けないと言っていますが、なかなかいい感じに書けてると
思いますよ。
これからも頑張ってください。

54 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 19:04:06 ID:p0cZps0N
>>53
ありがとうございます。
FF4作者様にそう言って頂けるとありがたいです。
ではFF5続き書いたので投稿します。

55 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 19:05:45 ID:p0cZps0N
FF5  7

バッツはボコの所へ『やっと』辿り着こうとしていた。
この『やっと』と言うのは反対側へ行ってしまった分、余計な労力を使ってしまったからだ。
ただでさえ足場が悪い道だ。たいした距離じゃなくても足は疲労し、それが全身へ伝わってゆく。
いつものように森で休んでいたら、近くに大きな隕石が落ちてきたと言う非日常。
ゴブリンと戦い、レナと言う父親が行方不明の女の子を助け、さらにガラフと言う記憶喪失の老人まで助けた。
そしてその2人は『風の神殿』へ向かうべく旅立った。
それぞれの事情を胸にして。
隕石が落ちてから今に至るまで時間にして2、3時間と言った所だろうか。
しかしバッツは『もうこれで今日は終わるのではないか?』と言うほどの今までに無い変な疲労感を覚えている。

徐々に入り口が近づく。辺りもだんだん広くなり、足場も良くなる。
遠くの方で『相棒』のバッツを見つけたボコが嬉しそうに鳴いているのが聞こえた。
ボコとバッツは『飼い主』と『ご主人様』ではなく、『相棒』と言う対等で固い信頼関係がある。
このボコと言うチョコボはバッツが一人旅を始めたばかりの頃、
ぽつんと1羽でたたずんでいる所を見つけられたのだ。
何故1羽で居たのかはバッツも知らない。群れから逸れたのだろうか。
そして、1羽で居る所がなんとなく自分の境遇と重なったのだろう。
以来、ずっと離れる事は無い唯一のバッツの良き『相棒』である。
ボコもあの時、独りのバッツと自分の境遇を重ねていたのかもしれない。

56 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 19:08:44 ID:p0cZps0N
FF5  8

「うっわ、眩しいなぁ〜、まだ夕方にもなってなかったかぁ」
森から抜けだしたら辺りはまだとても明るかった。
地上の、バッツの周りで起こってる事など知りもせずに、ただ、いつもの様に太陽は真上から大地を照らし続けている。
バッツは眩しい辺りを細目で見回しながらボコへ近づく。
「クエッ!クエッ!」
チョコボ特有のちょっと間の抜けたような愛らしい鳴き声がバッツを歓迎した。
「お〜、た〜だいま〜」
「クエッ!」
ボコは嬉しそうである。
一方バッツはボコに笑顔を見せるものの、心の中ではまだレナとガラフの事が引っ掛かっている。
しかしボコにはその事を知らせない。バッツは笑顔を作っていた。
一瞬ボコの顔が曇ったような気がした。

「さ、とりあえずまたどっかフラっと行きますか・・・」
バッツはボコに乗る。
「クエッ」
相棒の返事がいつもより弱い気がした。

ボコが自慢の快速で飛ばして行く。しかしバッツは心の中では相変わらず自問自答。
いつもならボコに乗りながら爽やかな風を感じられる。
しかし、今はそれどころではない。
ただバッツは自問自答の答えを導き出そうとしていた。
と言うより、「(もう答えは見えているだろう?)」
そう感じていた。

―――――――――レナ。ガラフ。風の神殿。あてのない『旅』――――――――

57 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 19:09:49 ID:p0cZps0N
「うわあああぁっ!」
次の瞬間、いきなりボコが止まった。
バッツは当然、前方に投げ出され、切り立った岩盤に軽くぶつかって止まった。
「・・・いってー・・・」
軽く打った背中を摩る。軽いとは言え、打ったのはごつごつとした岩盤。
その痛みはなかなかのものである。
「っったく、何で急に止まるんだよ!」
バッツは当然ボコを責める。通常ではありえない急ブレーキ。非常に危ないものだ。
「うっ・・・」
しかしボコの顔を見たバッツはその威勢が消え、逆に怯んでしまった。
ボコが珍しく怒っている。鋭い目。乗り物用の鳥とは言え弱いモンスターなら倒せてしまうぐらいの戦闘力はある。
そして、バッツはボコが怒っている理由を容易に理解した。
バッツはすぐに心情が顔に出る。3年の付き合いがあるボコがそれを見破るのは簡単な事。
そこにこの1人と1羽の固い信頼関係が見て取れる。

「わかったよ・・・そりゃ、お前に隠し事するのが野暮ってもんだったなぁ・・・」
バッツは一本獲られたと言う表情でボコを見た。
「ここらは最近モンスターが出やすいし、じいさんと女の子だもんな」
バッツは答えを出した、というより最初から答えはひとつしかなかった事を相棒によって確信した。
「クエッ!」
ボコはまたいつもの優しい顔に戻っている。
「よし!追いかけよう!お前の足なら絶対間に合う!」

そうして2人と再び逢う決心を固めた次の瞬間、不気味な地響きが辺りを包んだ。

58 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 19:11:59 ID:p0cZps0N
FF5  9

「!?」
「クエッ!?」
2人はついさっき、隕石落下の時と全く同じように顔を見合わせ黙った。
そして辺りが音とともに激しく揺れ始める。
『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォッ!』
『ゴーンッ!ガガガッ!』
『ガガガガガッ』
激しく大地が揺れ動く轟音。
「う、うわぁわああ、なな、なんだこっれれれはぁあ!」
「クエェクエックエククェ!」
激しい揺れのせいで上手く喋れない。そして、何が起こっているのかも理解できない。
理解しようとしても、轟音と激しい揺れが思考能力を低下させる。
そんな中、なんと遠くの方から聞き覚えのある声で聞きたくない言葉が聞こえた。
「うわぁーーーーっ」
「キャーーーーッ」

「しまぁったたぁ!!」
「クエエエエッ!」
そう、レナとガラフの悲鳴である。バッツは自分が迷いさえしなければ、一目散にあとを追っていればと一瞬にして後悔した。
全速力のボコ。途中で急に地面が陥没しても決死のジャンプで飛び越える。
そしてまたしても襲ってくるゴブリンはバッツの剣により軽く一蹴。今こんなものに構ってる暇は無い。
「いたっ!あれだ!」
「クエッ!」
すぐに気を失ってるレナとガラフを見つける。またしてもゴブリン。
「何匹も何匹もしつこいぜっ!」
バッツは軽く一蹴、すぐに2人をボコに乗せ安全な場所へ避難した。

59 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 19:13:42 ID:p0cZps0N
FF5  10

バッツはさっきとはうって変わって無邪気な少年の顔に戻っている。少し高台へ登り、辺りの様子を見回している。
「あー、なるほどなぁ・・・んー・・・あちゃー・・・」
なにやらブツブツ言いながら周辺の様子を見ている。その顔はいまいち浮かない。

「クエッ!」
看病役のボコが声をあげる。それはどちらかが無事だったと言う証拠だ。
「ぅ・・・うん」
先に気がついたのはレナだった。不幸にも彼女は2回も同じ目に遭ってしまった。
先へ急がなければならないのに、今日に限って異常な事が彼女の周りで起こる。
「ここは・・・」
辺りを見回すレナ。隣にはまだ気を失っているガラフ。目の前にはチョコボ。
状況がいまいち飲みこめない。このチョコボが助けてくれたのか、とも想った。

60 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 19:14:42 ID:p0cZps0N
「お、良かった。気が付いたか」
「そいつはボコって言うんだ。俺の良き相棒さ」
レナの元へ歩み寄りながらボコを紹介するバッツ。
疲労の色が見えるものの、その顔は笑っている。
「バッツ!」
驚いたように声をあげるレナ。助けられるのは、今日2回目。
「どうやら隕石が落ちたときのショックで、あちこちで崖崩れや地割れが起きてるみたいだ」
さっき高台で辺りの様子を見回してバッツは周辺の地形が変わった事を知った。
「この先のトゥールに通じていた道も塞がっちまった・・・」
少し残念そうに話すバッツ。
トゥールの村はこの周辺で唯一、武器防具道具宿屋魔法と充実した施設を備えた村だからだ。
その村への移動が出来なくなった事はバッツにとって、そしてレナとガラフにとっても痛手なのは間違いない。

「早く風の神殿へ行かないと・・・」
呟くレナ。
「ああ、親父さんを見つけなきゃな!」
「え?」
バッツはまるで自分達について行くような口調だ。

61 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 19:15:54 ID:p0cZps0N
「うっ・・・う・・・」
ガラフが気が付きそうだ。2人はガラフを見つめる。
しかし気が付いて起きるだろうと予想した2人の考えを覆す一言をガラフは言う。
「風の神殿に・・・急がなくては・・・」
意識が完全に戻る前にこの言葉。拍子抜けすると共に、このガラフの強い想いを静かに受け止めた。
「このじいさんも、風の神殿か・・・」
バッツはガラフの言葉を聞いてからあまり間を空けず、こう言う。
「俺も行くぜ」
「えっ?ほんと!!」
バッツは冷静にレナに話す。
強い決意が込められたその言葉はレナにとってありがたくもあり、心強かった。

そして、単純に嬉しかった。

「親父の遺言なんだ。『世界を旅してまわれ・・・』ってね」
「遺言・・・」
レナはそのフレーズに引っ掛かる。バッツの父はこの世に居ない事を意味するものだからだ。
そして自分の父も・・・一瞬最悪のケースを考えてしまい、慌てて振り払う。
その想いとは裏腹に不安がどんどん大きくなっていくのが自分でわかる。
心臓の音が早くなる。
聞かれるわけないのにバッツにもガラフにも聞こえてしまうんじゃないか、
そう思うくらい自分にとってその音は大きく感じられた。

62 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 19:21:33 ID:p0cZps0N
「それに・・・ 風が呼んでる」
バッツは柄にも無いキザな台詞で決めてみる。
内心、ちょっと恥ずかしい気もしたが、男なら女の前でカッコ悪いところは見せられない、と彼なりのポリシーがあった。

レナはそんな台詞も真顔で受け止める。というより、正直そんな余裕が無かった。
自分の不安を拭う為。心を落ち着かせるため必死だった。
のちにレナがこの場面を思い出したとしてもこのバッツのキザな台詞までは覚えていないだろう。
もちろん、バッツはそんな事知るわけが無い。

「とかなんとか言って本当は、この娘にホの字じゃないのかい?」
まだ完全に意識が戻ってないはずのガラフが悪戯っぽくそんな事を言う。
驚いてガラフの方を向く2人。

「じいさん、気が付いてたのか!」
「あったりまえよ!」
あぐらをかきながらガラフはバッツをニヤリと見つめ、その後すぐに大笑いした。
図星を突かれたような、突かれてないような。
それにただでさえキザな台詞を吐いてしまった。それがこのじいさんに聞かれてたなんて・・・
バッツは今になって急に顔が熱く、こっ恥ずかしくなってきてちょっと後悔した。

おまけに、このキザな台詞はレナに向けて言ったにも拘らず、当の本人は聞いてても頭には入っていない。
聞かれたのは初老間近の、というより初老にも見えるじいさん1人とチョコボ1羽。
くどいようだが、この事も当然バッツ本人は知らないし、しばらくは知ることも無いだろう。

63 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 19:22:26 ID:p0cZps0N
ほこりを払いながらゆっくり立ち上がり、ひょうきんなじいさんがまたしてもあの顔になる。
「(・・・また瞳が変わった・・・)」
「(精悍なお爺さんなんだなぁ)」
2人がまたしてもガラフの『変化』に気付く。当のガラフ本人は気付いてない。
「だが、道は塞がれてしまったぞ・・・」


しばしの沈黙。やはり風の音が弱い。


レナが沈黙に耐え切れないように切り出す。
「でも、行かなくちゃ!」
「そうじゃな」
「よしっ!行こうぜっ!!」
バッツとガラフもその言葉に続く。

こうしてバッツ、レナ、ガラフの3人は風の神殿へ向かう事にした。
レナの父親の無事を心の片隅に常に置いておきながら。

64 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/14(水) 19:26:44 ID:p0cZps0N
以上です。
実際書いてみるとその大変さがわかりますね。
ゲームだったらまだ最初の10分とか、そんぐらいだし。

あと、父親が行方不明ということをレナが初めて話すのは海賊船で捕まってるときでしたね・・・
自分の記憶違いで隕石部分で
その父親探しの経緯を話してると言うような展開にしてしまった事はご了承くださいということで・・・
あとミスタイプや誤変換もご了承お願いしますね。
なるべくミスらない様にしますんで。
ではまた。

65 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 11:11:09 ID:tSxir12d
今日の夕方〜夜ぐらいFF5続き投稿予定です。

66 :494 ◆yB8ZhdBc2M :2005/09/15(木) 17:41:45 ID:TI395SHa
どうも494です。
前スレが落ちてしまったようなので、自前のhtmlファイルを保管サイトにアップしておきました。
それと5の作者さん乙です。
かなりハイペースで進んでいますね。
順次サイトの方にアップしておきます。
ミスタイプや誤変換はこちらで修正しておきますね。
各節のタイトルは無題で良いですか?

67 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:18:42 ID:QxkPoKdR
>>66(494さん)
乙です。修正大変感謝。タイトルは…どうしようかなー。
一応「海賊のアジト篇」とか「風の神殿篇」、ぐらいは付けておいたほうが良いかもしれませんね。
無責任にそちらに任せるなんてのもありでしょうか?

ではFF5続きを投稿していきます。

68 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:21:01 ID:QxkPoKdR
FF5  11

威勢良く元気に出発したものの、やはりトゥールへの道は閉ざされていた。
そしてその代わりになにやら洞窟の入り口らしき穴が開いている。
「こんな所に洞窟?」
レナは不思議そうに言う。遠目から中を見ようと目を凝らすが暗くてよく見えない。
「多分隕石が落ちたショックでこんなふうに穴が開いたんだろう」
バッツは高台でこの周辺の様子もばっちりチェック済だ。3年間の旅で培ったものはこんな所に活かされている。
「入ってみるしかなさそうじゃのう…」
ガラフは落ち着いた口調だ。記憶喪失の彼にとって人生は始まったばかりと言える。
先へ進むしかないという事を覚悟、というより本能的に感じてるようでもあった。
それが『自分』を取り戻す為に繋がると。

「よし、ボコ、お前はここで待ってろ」
「クエッ」
チョコボは広い場所を走る乗り物鳥。狭い洞窟には絶対に向いてない。
そう確信したバッツはとりあえずボコを入り口で待たせる事にした。
「すーぐ帰ってくるから、心配すんな」
「クエッ」
こうしてバッツはボコを「留守番役」にした。
そして3人はいざ洞窟の中へ。
3人を見送るボコの瞳は少しだけ寂しそうだった。

69 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:21:53 ID:QxkPoKdR
FF5  12

洞窟の中は狭く、薄暗い。さらに天然の迷路のように道が、壁がうねっている。
「薄気味悪いのう」
ガラフが辺りを警戒しながら呟く。
レナは無言だ。しかしナイフを手に握り締めたまま離さない。
「うわー、湿っぽいな、なんか」
バッツは旅慣れてることもあって余裕の顔だ。
しばらく進むと左手に泉が見えた。

「天然の水が湧いてるの…?」
あたり一面の綺麗で透き通った泉。
レナは少し感動を覚える。
ここ最近ずっと不安を抱えてた彼女にとってそれは文字通りのオアシスだった。
不気味な洞窟への警戒感も少しだけ和らぐ。

「ちょっと一休みするか…」
バッツが疲れた顔で言う。と言うよりこの言葉を言ってる時にはすでに彼は休んでいた。
3人の中で肉体的に一番しんどかったのが彼であろう。精神的には充分、大丈夫なのだが。
洞窟に入って早くも休憩である。

70 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:22:45 ID:QxkPoKdR
「ちょっと水分補給しないとな。水分補給は大事大事」
ガラフは教訓のように言った後、渇いた喉を潤すべく両手で水を溜めて一気に口元へ流し込む。
「ふー、美味いのう…」
その次の瞬間だ。
「!」
ガラフが何か驚いたように目を見開く。
「おい、ガラフ?どうした?」
バッツは一瞬心配する。天然の湧き水とは言え辺りはとても健康的な風景ではない。
毒が入ってたりしたら…
しかしそんな心配をよそにガラフは水をごくごく飲み始めた。
「お、おい、飲みすぎじゃないか?」
そんなガラフにつられてか、レナも軽く泉の水を飲んだ。
そしてレナも気付いた。
「ねぇ、この泉、ただの水じゃないわ!」
バッツが閃く。
「もしかして、回復の泉…」
もちろんバッツは3年間の旅で回復の泉のことは知っていた。
しかしこんな所から涌いてるとは思ってもみなかったのである。
「まさか、こんな場所にあるなんてなぁ」
こうして3人はこの数時間で起きた怒涛の出来事による疲れを癒した。

71 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:23:48 ID:QxkPoKdR
FF5  13

思わぬ所で回復し、疲れを癒した3人は順調に洞窟の奥深くまで進んでいく。
もちろんモンスターも出てくるのだがバッツを中心に難なく撃破していった。
そしてバッツはガラフの戦闘スタイルを見て思わぬ発見をしていた。
戦っている姿が様になっているのだ。そう言えば体つきもかなりのものである。
「(やはり、このじいさんはただのじいさんじゃない…)」
バッツはそう思わずにはいられなくなっていた。

やがて急な上りに差し掛かる。そこでなんと足音が聞こえた。
「(まずいっ!)」
3人はとっさに壁に張り付くようにして隠れ、様子を窺う。

向こうで1人の男が辺りをキョロキョロ見回してる。
その行動はなにやら怪しげで不審だ。
「(一体何をやってるのかしら…)」
レナが小声で2人に囁く。
そして男が右側の壁の一部分を押す。
それと同時に左側の壁の一部がドアのように開いたのである。
男はそこを通って向こう側へ消えていった。
「(なるほど…隠し扉か…)」
3人は納得する。それと同時に、なにか嫌な予感も感じていた。
「ねぇ、隠し扉って事は何か隠してるって事でしょう?」
「ああ、なんかありそうだな・・・」
やや不安。だが進むしかない。戻っても進めない事はわかっている。

72 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:25:47 ID:QxkPoKdR
FF5  14

さらに奥に進む3人。やがて外の光が差し込むポイントに差し掛かる。
「ん?出口か?」
先頭を歩くバッツが少しの希望を胸に抱く。
「一旦出てみるとするか」
ガラフがバッツに続く。やっと洞窟探検も終わりか、と胸をなでおろしかける。
しばらくぶりの外の光。眩しくて3人とも目を細める。
「…トゥールへは繋がってないわね…」
周りを見回してレナは落胆した。
一刻も早く風の神殿に行きたいのに。こんなところで足止めされてる場合じゃないのに。父に逢いたいのに。
「ふう…まだ洞窟探検は続くのか」
ガラフは精神的な疲労がどっと押し寄せる。

周りは海だった。多分ここも隕石落下のショックで出来たんだろう。そうバッツは思いながら海を眺めていた。
すると1隻の船がこちら側へ向かってどんどん近づいてくる。
「あ、船だ」
バッツは普通に流していた。航海する船。その風景はごくありきたりで自然なものだったからだ。
「え?でも今は…」
レナが気付く。そう、船は風の力を利用して動く。
ところが今は風がほとんど無い。時々微風が吹くぐらいまでに弱くなっている。
「そういや…そうだな…」
バッツは気付いても同じテンションだ。どうやらこの広がる景色に癒されているようだ。
「ささ、また洞窟探検に戻るぞ!」
ガラフはバッツとレナ、そして自分に気合を入れる意味で大きめの声だ。
バッツはまた現実に戻される。このあてのない旅は今までと違うかもしれない。
根拠も無いのにそう思い始めるのは仲間がいるからだろう。
1人旅を続けてきた彼にとってこれほど仲間の存在が心強いという事は初めての経験だった。

73 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:26:38 ID:QxkPoKdR
FF5  15

再び洞窟の中。さっきの場所からたいして離れてないところに次のフロアへの通路があった。
3人は疲れていたのか無言で歩くだけになっている。
しかし飛び込んできた風景がさっきまでのとは違う事にすぐ気付いた。
「…ここは一体?」
レナが久々に声を出す。さっきの『外に出られるかも』と言う希望と『周りは海で行き止まり』と言う現実。
期待しすぎると裏切られた時につらい。レナはそう感じてた。
「(…じゃあ、お父様が生きているという事も?)」
「(…いや、それは大丈夫のはずでしょう?)」
「(…でも、もしそうじゃなかったら…)」
自問自答。『生きている』と確信してるのに何故こんなマイナスなことばかり考えてしまうのだろう。

―――――――――疲れているから。先が見えないから。風が止まりかけているから。―――――――――

「(全てが夢ならいいのに…)」
レナはついこの前まであった『いつもの日常』が愛しい。

74 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:28:39 ID:QxkPoKdR
FF5  16

「どうやら、海賊のアジトみたいだな…」
チラチラ中の様子を窺いながらバッツが確信を持った瞳で言う。
如何にも『海賊です!』と言わんばかりのベタな風貌。しかし、見張り番は居眠りをしている。
「…なんか、緊張感無い海賊じゃの…」
ガラフは若干拍子抜けと言った様子だ。

「そうか、あの船は海賊船だったんだ」
再び確信を持つバッツ。
「そう言えばこっちに向かってたなぁ」

「乗せてもらえないかしら?」
いきなりレナの大胆発言。バッツとガラフは文字通り目を丸くしてレナを見る。
「いや、相手は海賊だぜ…いくらなんでもそれは…」
バッツはレナの案を当然却下する。『海賊』である。見つかったら何されるかわからない。
命の保障も、もちろん無い。バッツはとんでもない所に来ちまった、と内心ちょっと焦る。
「ならば、こっそりいただくとするか!」
「ぇええっ!」
レナ以上に大胆な案を出すガラフ。
思わず大き目の声を上げてしまい見張り番が起きてしまうんじゃないかと冷や汗たらたらだ。
しかし、見張り番は起きてない。
「(…ふー、よかったぁ〜)」
一安心のバッツ。
「…じいさん、意外と大胆だな」
すぐに平静を取り戻してガラフに冷静なツッコミを入れる。そして、もちろん当然却下。
「しかし、先へ進むにはその方法しか無いぞ?」
ガラフが悪戯っぽくニヤリと笑う。
「(ああ、この顔さっきも見たな…)」
バッツはガラフの何処か飄々とした性格に振り回され、力なく笑うしか無かった。
レナもそんな2人のやりとりを見てクスリと小さく笑った。

75 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:30:06 ID:QxkPoKdR
FF5  17

3人は今まさに海賊船の舵の前に居る。
結局『ガラフ案』が採用になった、というより提案者が言う通りそれしか方法が無かった。
バッツは腹をくくっていた。もうなるようになれ、と。元々あてのない旅なんだからこれでいいじゃないか、と。

3人が乗り込んだ海賊船は驚くほど手入れが行き届いている。
『海賊』と言うイメージからもっとゴチャゴチャしてる事を想像していたからなおさらだ。
ここのリーダーは相当しっかりしてるんだろう。
だから疲れた部下があんな風に居眠りしていたのかもしれない。
バッツはそんな事思いながら舵を手に取った。
「よーし、出発だぁ!行けぇっ!」
舵をぐるぐる左右に動かすバッツ。その顔はまるで子供のように無邪気だ。


「………あれ?」
バッツの想いとは裏腹に船は全く動かない。
「やっぱり風が無いから…」
レナは力なく呟く。またしても『希望』に裏切られた。その顔は暗い。
「いや、でもさっきは確かに動いてたぜ」
バッツは見た事実をありのまま伝える。何故風も無いのに動いてたのかは分からない。
「うーん、これでどん詰まりじゃの…」
ガラフもさすがにこれではどうしよもない。お手上げと言った様子だ。



「なにしてる!」

「「「!!!!」」」
バッツ、レナ、ガラフの3人が驚く。その声は誰のものでもない。向こう側から聞こえたものだった。

76 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:31:02 ID:QxkPoKdR
FF5  18

3人の視線の先には紫の長髪が綺麗な男が立っていた。
周りには5、6人の部下と思われる海賊がいる。
「(…しまった、見つかった…)」
バッツは隣にいるじいさんの案に乗ってしまった事を激しく後悔した。
レナはまたしても無言だ。もうあきらめてしまったのだろうか。
「(…ほう、この男、妙に綺麗じゃの…)」
ガラフはピンチに陥りながらもその男を観察していた。
その瞳はまたあの『強く、透き通った』ものに変わっていた。

「俺の船を盗もうとは、ずいぶんと大胆な奴らだ!」
「(ああ、やっぱ海賊だ…やっべーな、こりゃ)」
バッツは高圧的で敵対心丸出しの相手に対して何も出来ない。

77 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:31:56 ID:QxkPoKdR
そんな中レナがなんとその男に歩み寄っていく。
「おい、レナっ!」
バッツが強く呼び止める。
「(あれ?こんなのもついさっきあったような…)」
そんな事考えてる暇はないのに頭の片隅で思う。
バッツは今日と言う日を一生忘れる事はないだろう。
今までの3年間がなんだったんだと思うほど怒涛の1日を過ごしているのだから。

そして男の前に立ったレナは驚くべき発言をする。
「私はタイクーンの王女レナ。勝手に船を動かそうとした事は謝ります」

「「!!!!!」」
バッツもガラフも度肝を抜かれる。まさか、そんな身分にある女の子とは全く思ってなかったからだ。
「王女…」
     「…様?」
2人は顔を見合わせる。口は開きっぱなし。
そんな2人の事も知らず、レナは必死に説得を続ける。
「お願い!船を貸して下さい!風の神殿に行かなければならないの!お父様が危ないの!」
またしても初対面の相手に感情的になるレナ。もちろん父親の事を想っての事だ。
目には涙を浮かべ、その声は擦れている。

78 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:33:57 ID:QxkPoKdR
しかしレナの思いを踏みにじるように弄ぶように男はこう続けた。
「へぇ〜、タイクーンのお姫様かい!こりゃあいい金になりそうだぜ!」
その一言は彼が非道な海賊と言う事を決定付けるに充分すぎるものだった。
「やめろっ!」
思わずバッツが間に入る。自分の命が危ない事はわかっていても、レナは守らなきゃならない。
レナと父親を必ず逢わせてやりたい。自分の父が病死したバッツにとって『父』とはかけがえのない大きなものだから。

「??」
そんな時、何かが一瞬だけ光り、男の表情が一瞬動揺した。
バッツとガラフは何故動揺したのかよくわかっていない。
しかしレナだけが気付いた。自分のペンダントを見てこの人は動揺したんだと…
そのペンダントは印象的だ。バッツもレナと初めて逢った時このペンダントに目を奪われている。
それ程、眩しい。
それは彼女の心の清らかさがそのままペンダントにも滲み出てる。そんな風にさえ思える。

「…そのペンダントは…」
男が聞こえるか聞こえないかぐらいの声で呟き、俯く。

しばらく黙る男。部下にも動揺が伝染している。
「…そいつ等を牢屋にぶち込んどけ!」
「へいっ!」
そう言って子分達は3人を取り押さえ船の地下部屋へ無理矢理連れて行く。
3人ともとりあえず命が助かった事でほっとしている。が、気は抜けない。
いつの間にか陽が落ちて辺りが暗くなり始めていた。

79 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:35:36 ID:QxkPoKdR
FF5  19

狭い部屋。3人とも手足を縛られ自由がきかない。部屋の明かりも蝋燭1本で薄暗い。
どんより重い雰囲気の中先陣を切ったのはガラフだった。
「まいったのー、一体誰じゃ!海賊船を盗むなんて言い出した奴は!」
少々声が荒い。こんな状況では仕方ないだろう。
「おいおい、じいさん、アンタだろ?」
バッツは敢えて皮肉っぽく『じいさん』と言ってみせる。
「『じいさん』とは一体どーゆーことじゃっ!」
さらに声を荒げるガラフ。
「じいさんはじいさんだろう?第一『この方法しかない』とか言ってたのもガラフじゃないか!」
「一旦冷静に引き返せばよかったんだよ、ホントにさー」
バッツが捲し立てる。こんな状況になってそんなこといっても遅いのだが。
「うっ…頭が痛い…記憶喪失じゃ」
ガラフは自分が不利になった途端、記憶喪失をネタにして誤魔化した。
「っったく、ずいぶんと都合のいい記憶喪失だな」
少し呆れるバッツ。
それを最後に、しばらくまたどんより重い雰囲気が続く。

80 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:36:23 ID:QxkPoKdR
「それにしても驚いたな…レナがタイクーンの王女だったなんて…」
冷静になったバッツが素直に驚いた事を伝える。
「ごめんなさい。隠すつもりはなかったんだけど言うタイミングも無くて…」
「そういやなんかそんな感じなんじゃないか、ってのはあったよ。『お父様』って言ったりさ」
「ええ…」
バッツはうっかり『父』を思い出させることを言ってしまいしまったなという顔をする。
でもこういう時だから敢えてじっくり聞いてみたいと思ったのも本音だ。
そこでバッツは慎重にレナの父について聞いてみることにした。

「あ、あのさ、レナの親父さんの事、ちょっとだけ教えてくれないかな…」
「うん…」
ここでレナはじっくりと、言葉を選びながら父の事について話した。
一国を治める王の話なんてなかなか聞けるものではない。バッツもガラフもレナの話に目からウロコがたくさん落ちた。
そして今回の事についての話になった…

81 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:37:21 ID:QxkPoKdR
「…で、風の様子がおかしいから神殿へ向かったのか」
「ええ…」
「確かに俺も最近変だとは思ってたんだよ。モンスターは多くなったし」
「風が止まって、何かよくない事が起ころうとしているのかもしれない…」
レナは自らの不安を自らの言葉で大きくしてしまう。
「いや、そ、そんな、考えすぎだってば、さすがにそれはさぁ」
バッツはレナの言葉を慌ててフォローする。
「行けば良かった・・・」
「え?」
バッツは噛みあってない会話に言葉が続かない。
「お父様と一緒に行けば良かった!そうすればこんな事にはならなかった!」
急にぽろぽろと涙を流すレナ。突然の出来事にバッツとガラフは驚いている。
今日1日、レナは弱音を吐いていなかった。よほど父への想いが強いのだろう。
「(…そう言えばレナの弱い面って見てなかったなぁ…)」
バッツは今になって思い返す。レナは今日ずっと強い自分を出していた事に。
その分今になって、溜まっていた裏の感情が一気に溢れ出している。
「親父さん…絶対生きてるよ。泣く事は無い」
「そうじゃ。人間は簡単に死ぬ生き物じゃないぞ」
2人はレナを励ます。もちろん先の事は知らない。でも今はこう言うしか方法が無い。
「…ありがとう。バッツ、ガラフ…」
レナは礼を言う。
3人にとって運命的な1日が終わろうとしていた。

82 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:38:14 ID:QxkPoKdR
FF5  20

一方その頃反対側の部屋では1人の男が俯きながら考え込んでいる。
その男の名はファリス。この海賊団のトップである。
「…なんだって、あのタイクーンのお姫さんが俺と同じペンダントを…」
ついさっきの出来事だ。自分とは全く住む世界が違う人間が自分と同じペンダントを持っている…
そのことにファリスは動揺を隠せなかった。とりあえず今は監禁してる。でも明日になったらどうするか。
ペンダントはキラリと輝く。しかし、レナの物より自分の物の方がくすんでいる様な気がしていた。
一気にワインを飲み干し床にゴロリと寝転ぶ。
「風の神殿に親父がいるとか言ってたな…」
何かを決心してじっくりと朝を待った。いつもよりも夜が長く感じられた。

83 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:39:18 ID:QxkPoKdR
FF5  21

翌朝。
レナは目が覚めていた。今の自分が置かれている状況を再確認して『現実』を認識する。
「(今日は一体どうなるんだろう…)」
それは自分自身で決められる事。それなのに、うまく行かない。

『ガチャッ!!』
乱暴にドアが開く音でようやく目が覚めるバッツとガラフ。
「おい、開放してやるぞ」
「え?ホント?」
予想外の言葉に眠気もすぐに消える。
「…でも、なんで急に?」
ガラフが疑問を投げかける。それもそうだ。昨日はあれだけ敵対心があったのに。
「いや、お頭の命令だからな」
子分の海賊はちょっと不服そうである。
「親分って、あの紫髪の?」
「ああ、そうだ。さあ来い!」
「(やっぱり…)」
レナだけは心の中で確信していた。このペンダントのおかげだと。

84 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:41:24 ID:QxkPoKdR
船上は妙な空気だ。ファリスと対面する3人。子分達はみんな顔が冴えない。
「俺の名前はファリスだ」
何処となくぎこちない自己紹介。

間。微かな、波の音。

「お、俺はバッツ」
「わしはガラフじゃ」
こちらもかなりぎこちない自己紹介。
それもそのはず。昨日は完全に敵同士の関係だったのだから。
それがいきなり面と向かって自己紹介。レナは不思議とこの状況がおかしかった。
昨日まではあんなに切羽詰っていたのに。昨日より少しは余裕が出てきたのかもしれない。

「あのさ、こんな事言うのも変だけど何で急に開放してくれたの?」
バッツがちょっと怪訝そうに投げかける。

「…………………」
ファリスは考える。じっと待つ3人。そして子分たち。

そして誰もが予想だにしない驚きの答えが出る。

「風の神殿へ向かう!」




85 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:43:49 ID:QxkPoKdR
「マジで?」
「本当か!」
「(…良かった…)」
3人は顔を見合わせて大はしゃぎ。思わぬ形で目的地へ辿り着けるのだから。
逆に子分たちは鳩が豆鉄砲どころかバズーカ砲でも食らったかの様な驚きの様子だ。
「お頭、一体どういうことだよ!」
「そうですよ!なんでこいつらの味方になるんすか!」
「ちゃんと俺らに説明してください!」
子分達は非難轟々だ。一気に自分らのお頭を責める。

「うるさぁいっ!!!」
一瞬空気が凍りつく。子分たちは一斉に黙る。
「(…さすがお頭って所かのう…)」
またしてもガラフは冷静に分析、観察。
「俺が行きたいから行くんだ。悪いか?」
そう言って子分を睨みつけるファリス。その瞳はまるで狼のように鋭く、冷たい。
「…は、はい…」
「…そ、そうですよね」
「ハ、ハイ、何処も悪くないです!」
子分たちは観念したようだ。

「…で、でもさ」
バッツが空気を読みつつ慎重に話を続ける。
「今はもう風が失くなってきてるのにどうやって船を動かすんだ?」
「知りたいか?」
急にニヤリと笑って自信に満ちた顔になる。


「シルドラ!こいつらに挨拶しな!」

86 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:45:36 ID:QxkPoKdR
すぐに海面から竜が顔だけ出す。
「ギャーゲェー」
ちょっと甲高い特有の鳴き声で挨拶。
「うわ、凄いのう」
「こいつの上に船が乗ってるのか!?」
「もしかしてこれが?」
3人は驚いた様子でシルドラを見る。
「そうだ!シルドラと俺はガキの頃から一緒に育った。兄弟みたいなもんさ!」
「この海賊船はコイツによって快適な走りが出来るってわけだ」
ファリスはとても嬉しそうな顔で自慢をする。
バッツにはその気持ちが充分わかる。自分にも『相棒』がいるからだ。
「(へー、こいつ案外いい奴なのかもな…)」
バッツは少しファリスに対しての警戒心を解いた。

「さ、野郎ども、まずは準備を整える為にトゥールへ向かうぞ!美味い酒も飲みたいしな!」
「「「「「「「アイアイサー!!!」」」」」」」
すっかり『海の男』なファリスは生き生きして威勢よく子分たちに指示を出す。
しばらくして船が動き出した。揺れも少なく、快適な船旅になる事は確実だ。

「(…あっ!ボコ待たせっぱなしじゃん…)」
バッツは思い出した。洞窟の入り口にボコを待たせている事を。
しかし今はもう海の上。いくら仲間になったとは言えまだファリスにあーだこーだ言うのもちと怖い。
「(うーん、しょうがないか。ボコ、ごめんな…すぐ戻ってくるから…)」
バッツは少しの気がかりを残しながら流れる景色をぼーっと見ていた。

87 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:48:59 ID:QxkPoKdR
FF5  22

タイクーンには商業施設が無い事もあり、トゥールはこの辺り一帯で唯一の充実した施設を備えた村である。
そのせいか小規模な村にも拘らず人々は活気に溢れてる。周辺には自然も多く、過ごし易い環境で有名だ。
村の外に棲み付いているモンスターもみんな大した強さ、凶暴さが無い為治安も安定している。

「まずは情報収集だな。聞き込み聞き込みと…」
そう言ってバッツはどうにかしてレナの父の手がかりを見つけようとする。
しかしタイクーン王はこの村に寄っていなかったらしく、情報が全く無い。
「参ったのう…一番肝心な情報が手に入らん」
ガラフがため息。レナは2人の協力をとてもありがたく感じた分、情報なしと言う結果が申し訳なく思えた。
もちろん、その結果は誰のせいでもないのだが。
「でもその代わりに色々と他の情報が手に入ったのは良かったな」
バッツがレナの少し沈んだ顔を見てすぐさま話題を変える。

クリスタルが人工的な機械によってその能力を高めてる事。
西のカルナック地方にも隕石が落ちたと言う事。
トルナ運河の魔物は女しか狙わないと言う事。

「まさか隕石がもうひとつ落ちてたなんてなぁ…」
やはり3人が驚いたのは隕石落下である。落下の日時はタイクーン近くに落ちたのとほぼ同じらしい。つまり、昨日の朝だ。
2個も隕石が落ちてきた。この事実にバッツもレナもガラフもただならぬ不安を感じた。

「ウォルスの水のクリスタルも危ないのかも…」
クリスタルが人工的な機械によってその能力を高めていたなんて事はタイクーン王女のレナでも知らなかった。
「もしクリスタルが機械に耐え切れなくなったら…」
考えただけでも寒気がする。やはり、大きな何かが動き始めているんじゃないか。不安が大きくなる。
「風のクリスタルももしかしたら機械に耐え切れなくなってるのかもしれないのう」
ガラフは冷静に分析する。やはりダテに年を重ねていない。バッツは心強かった。
「だから風の様子がおかしくなったってわけか…その線はあるな…」
推測が続く。少しでも『どうしてこんなことになったのか』が知りたくて。

88 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:50:00 ID:QxkPoKdR
「疲れたなぁ。ちょっと休むか?ファリスにも情報を教えないといけないし」
「そうじゃな」
「そうね」
バッツの提案に賛同する2人。
昨日と比べればなんて今日は平穏なんだろう。レナは落ち着きを取り戻しつつある。
でも、この平穏はもうすぐ失くなってしまうんじゃないか、そんな想いが消えない。
「(きっとお父様が見つかっていないからなのね…)」
そう決めつけて、不安を拭おうとする。『父が見つかる=不安が消える』と言う法則をレナは勝手に作った。

89 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:51:53 ID:QxkPoKdR
FF5  23

さてついさっき仲間になったファリスは何処に?
答えは簡単。子分と一緒に酒場でたむろってるのである。荒くれ者達は酒を水のように飲み騒ぐ。
酒場は実に賑わっている。突然一気に大量の海賊達が押し寄せてマスターは頬が緩みっ放しだ。
舞台の上では艶めかしい姿をした踊り子達が疲れも知らず踊り続ける。
一般客はどうか?
占領されて酒場の外でまだ酔いが醒めないまま愚痴る者、
すっかり意気投合して海賊と語り合ってる老人、構わずカウンターに独りで黙々と飲む女。
そこにはまるで人生の縮図がはっきりと表われているようだ。

そこへ酒場には不似合いな2人と初めて来たのに常連じゃないかと思わせるほど酒場が似合ってる1人が店に入る。
「おう、いらっしゃい!」
マスターはとても期限が良いようだ。明るい声で3人を迎える。

「えっと…えっと…」
バッツはファリスを探す。紫の長髪なんて目立つからすぐ見つかるだろうと辺りを見回す。
しかし、その派手な髪の持ち主は見当たらない。
「いないようじゃの」

「お頭なら2階だぜ!」
3人に気付いた子分が大きい声で教えた。
「2階か」
階段を上り2階へ向かう。

2階は個室になっている。酒場というより酒が飲める宿屋と言った趣もある。
「この部屋かな?」
3人はドアの前に立った。
『コン、コン、コン』
「おーい、ファリス〜」
返事がない。

90 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:56:08 ID:QxkPoKdR
「…いないのかな?」
そう言いながらドアノブに手をかけるとなんとカギがかかっておらず、普通に開いた。
「開いてるな… ちょっと、俺が見てくるよ」
そう言っておそるおそる部屋に入るバッツ。

間も無く、部屋の左側でベッドに寝ているファリスを見つけた。
「(…なんだ、寝てたのか…)」
起こしちゃ悪いと思い静かに部屋から出ようとするバッツ。

「う、う〜ん…」
『ビクッ』
丁度寝返りを打つファリス。少し驚くバッツ。
そしてファリスの方をおそるおそる見るとバッツは驚いた。
「(うわ!美人だなぁ…)」
そう、そこに寝ていたのは紛れもない美女である。
バッツは少しの間見惚れた後、心臓がバクバク言いながら部屋を出た。

「どうじゃった?」
尋ねるガラフ。
「いや…なんでも……頭がおかしくなっちまったかな?」
バッツはまだ余韻が残っていて、顔がニヤニヤしてる。
「ちょっと、どけっ!」
様子がおかしい事に気付いたガラフは自分も様子を見に行った。
「(…おお、ベッピンさんじゃっ!)…」
ガラフもバッツと同じ状態になった。少し見惚れて、心臓がバクバク言いながら部屋を出る。
「綺麗じゃ…ドキドキするぞい」
「でしょ?」
ニヤニヤしてる2人。はたから見ればかなり怪しい。
不思議そうにその様子を見ているレナは一括。
「2人共何言ってるの!」
ファリスを見に行ったはずの2人がデレデレ。レナは理解できなかった。

91 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 19:57:04 ID:QxkPoKdR
そこへファリスが起きてきた。
「ふわあ…よく寝た」
「?なんでドアが開いてんだ?」
外に出てみるファリス。そこには仲間の姿が。

まだバッツとガラフはニヤついてる。それほどまでに美女だったと言うことだろう。
「お前ら、何やってるんだ?しっかりしろよ!」
寝起きのファリスに一括されてやっと浮かれ気分が抜けた。

「お、お、おうファリス」
顔が赤いバッツ。
「その、あのな、そうだ!実は情ほ…」
しどろもどろのガラフ。てかまだ浮かれ気分抜けてないぞ。

「悪いが、ちょっとひとりになりたいんだ… またな」
そう言ってファリスは一方的にドアを閉めた。
「あ…」
「…一体何しに来たのか分かんないじゃない」
レナは完全に呆れている。

『カチャッ』
3人の耳にカギをかける音が聞こえた。

92 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 20:00:24 ID:QxkPoKdR
FF5  24

「ゾックー?いますかー?」
レナが大きい声で尋ねるが返りが無い。
「どうやら留守みたいだな」
「残念じゃのう」

3人が目の前にしてる家はトゥールの村でも一際大きく、目立つ家だ。
ここにゾックと言う、トルナ運河の水門を作った人物が暮らしているという。
水のクリスタルを管理しているウォルスに海路で行くには運河を通るしかないと言うわけだ。
もちろん風の神殿が先だ。しかしそのあとにもクリスタルに危機が訪れる事も考えられる。
ゾックとも話しておきたかった。しかしゾックは留守のようだ。これで風の神殿に行くしかなくなった。
レナはほっとしたような逃げ出したい様な複雑な気持ちだ。『運命』が、『結果』が、もうすぐわかる事。
それが怖い。
「(…やっぱり表情が固くなってる… 無理も無いか…)」
バッツはレナの心情を僅かながら感じ取っていた。

93 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 20:02:07 ID:QxkPoKdR
FF5  25

この旅が始まって3日目を迎えた。
4人共今日がこの旅で一番の勝負所だと感じているようだ。
いつもより若干硬い表情。
「(…いよいよ神殿か…レナを心配させちゃいけないからなるべくいつも通りに…)」
バッツは何とかして普通を保とうとする。しかしそれは容易な事ではない。やはり緊張してるようだ。
「おい、なんか様子が変だぞ」
ガラフがバッツを気遣う。
「ガ、ガラフは緊張しないのか?」
「緊張なんてとっくの昔に忘れとるわい」
「とっくの昔?」
「そ、3日も前の事じゃ」

意表を突かれたバッツは笑いがこみ上げる。
「…ガラフらしいなぁ」
「わしの人生はついこの前始まったばかり。進む事しか能が無いからのう、いつだってポジティブに考えてるんじゃ」
バッツはガラフに助けられた気がした。自分がしっかりしなくてどうするんだ、と。
自分から選んだあてのない旅で不安になってどうするんだ、と。
「(…ありがとな、ガラフ)」
バッツは心の中で呟く。現実に言ったら恥ずかしいから、心の中で。

94 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 20:03:27 ID:QxkPoKdR
ファリスは黙々と旅の仕度をしている。実に慣れたものだ。
その様子を見てるレナ。顔が硬い。それでも声を振り絞ってファリスに話し掛ける。
「ね、ねぇ、緊張とかしないの?」
精一杯の作り笑顔。声は震えてる。

「知るか」
素っ気無い一言にレナは少し驚いた。
「知るかって…そんな言い方無いんじゃない?」
ファリスから話を引き出そうと続ける。

「第一、先の事なんて知らんからな」
当たり前でもっともな事をまたも素っ気無く言い放つ。そしてこう続けた。
「結局不安や失望なんて自分で勝手に造ってるだけだからな、くだらない」
レナはその言葉の意味が分かったような、分からないような。
ただその言葉からファリスの優しさを感じた気がした。

95 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 20:04:12 ID:QxkPoKdR
FF5  26

「よーし、みんな準備は出来たかー?」
「ええ」
「ばっちりじゃ!」
「大丈夫だ」
旅の仕度も済み、いよいよ出発の時。風の神殿へ向かう時。
そこで一体どんな事が起こるのか。誰も知らない。
レナは得体の知れない大きなものを感じていた。
「(…この不安はもしかしたら私のものじゃないのかもしれない…)」


風は相変わらず止まりそうなほど、弱い…

96 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/15(木) 20:05:12 ID:QxkPoKdR
はい、今日はこんな感じです。
多分これからも書く時はこの時間帯になると思います。
では。

97 :494 ◆yB8ZhdBc2M :2005/09/15(木) 21:19:53 ID:crxc11as
>>67
乙です。
実は私5は殆どやった事が無いので、出来ればタイトルは67さんの方で考えて頂きたいのですが・・・。
宜しくお願いします。

98 :299:2005/09/16(金) 00:56:05 ID:rYHl8TOo
>>96
お疲れ様です。
月並みですが、続けて頑張ってください。

>>97
まとめサイト更新お疲れ様です。相変わらずの丁寧に
作られてますね。

99 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/16(金) 11:53:30 ID:6gQViIGj
5の人GJ!
4、5、6完全に始まってるなー。

時に作者の人たち、番号だけだとそろそろ分かりにくい……と思うのは俺だけか。

100 :100:2005/09/17(土) 09:02:07 ID:8GHzIlKn
5の人、名前は入れないの?
とりあえず乙でした。

101 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/17(土) 14:54:05 ID:acD3GAei
>>97
分かりました。タイトル考えておきますね。

>>99 >>100
リクエストにお答えしてて分かりやすい名前付けておきました。

では今夜FF5続き更新予定です。では。

102 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/17(土) 14:55:20 ID:acD3GAei
しまった、タイプミスった。「お答えして」だね。1文字多かった。

103 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/17(土) 19:28:21 ID:3aLS+W6C
FF5  27  風の神殿1

「風の様子があきらかにおかしい!」
タイクーン王は急ぎ足で息を切らしながらクリスタルルームへ向かう。
この世界は4つのクリスタルによって維持されており、
そのうちのひとつ、風のクリスタルはタイクーンのはるか北に位置する風の神殿に祀られている。
愛娘、レナの静止を振り切ってからすでに丸1日が経過していた。

「ハァ…ハァ…やっと着いたか…」
全速力で階段を駆け上がり息を激しく切らしながら王はやっとクリスタルルーム前のドアまで辿り着いていた。
『ゴゴゴゴゴゴ…』
厳重で、重々しい扉を一気に開く。
「クリスタルは!」
王は真っ先に祭壇に目を向ける。
「…ほ、無事だったか…」
胸をなでおろした次の瞬間、信じ難い現実が王の目に飛び込んできた。
「…!!!な、なに!!!」
そう、クリスタルが異常なほど輝きだしたかと思うとあっという間に粉々に砕け散ったのだ。
その一瞬の出来事に王は我が目を疑い、何度も目を見開いた。しかし、これが現実ということを認識する。
「……………………………………」
王は呆気に取られて言葉が出ない。この世界を維持するクリスタルが、失くなった。
それは風が失くなる事を意味する。

「…こ、これは一体…な、なんということだぁっ!」
絶望とはまさにこの事を指すのだろう。王はその場で叫ぶしかなかった。
「…な、なんだ?今度は黒い影……一体、一体どういうことなのだぁっ…!!!」
そして王は目の前に出来た謎の黒い影に飲み込まれてしまった。
この部屋に残されたのはクリスタルのかけらのみ。しかし、かけらになっても眩しい輝きは変わっていない。
バッツ、レナ、ガラフが運命的な出会いをする数時間前の出来事だった。

104 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/17(土) 19:29:04 ID:3aLS+W6C
FF5  28  風の神殿2

「よーし、着いたぞー」
ファリスが舵に手をかけながら他の3人に伝える。
神殿に着いたのだ。船の操縦に慣れているファリスのおかげで大した時間はかかっていない。
「いよいよだな…」
バッツが今までにないこわばった表情をしている。
『あてのない旅』から『あてのある旅』への変わり目。そう意識せざるをえない状況。
「ほう、これが風の神殿か…」
ガラフはやっとの事で目的地へ辿り着いた事に安心している。
しかしまだこれからが気を引き締めていかなければいけない。
「(お父様…)」
レナの心は揺れている。『もうすぐ父に逢える』と言う楽観的な思いと『もしかしたら…』の絶望的な思い。
全ては風のせい。そう思わないと自分をコントロールできなくなってしまうんじゃないか、そう感じていた。

105 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/17(土) 19:30:44 ID:3aLS+W6C
FF5  29  風の神殿3

4人が神殿に入って間も無く、レナが見覚えのある顔を見つけた。
「だ、大臣!」
「レ、レナ様!無事だったのですね!突然城を抜け出したものだから心配で心配で…」
大臣はレナが無事であった事に心からほっとしている。
「ええ、どうしてもお父様が心配で…抜け出した事については申し訳ないと思ってます」
「(…へ〜、王女様、か…)」
このやりとりを見ていたバッツは内心そう想う。今までレナが王女とは言え、それを立証する人間がいなかった。
しかし、こうして『大臣』とのやりとりでレナが本当に王女だと納得したのである。
それと同時に、なんだかレナが少しだけ遠くなったような気もしていた。
「一体どうしたのですか?」
「はい、レナ様もお気づきでしょうが、風の様子がおかしい事に気付いた我々は王の後を追ってこの神殿に向かっていました。
しかしこの神殿に着く直前、風が止まり大量の魔物がこの神殿に入っていったのです!」
大臣は興奮気味に伝える。レナは顔が青ざめた。
「お父様は!?」
「はい、王は最上階に登られたと思われますが…一向に帰って来る気配がないのです…」
「きっと、何かあったに違いありません!」
レナの気持ちも知らず大臣と一緒に神殿に来た学者が告げる。しかし、こうなった以上、そう言うしかない。
それはレナも分かっていた。

「…よし、そのクリスタルのある最上階に行くか」
ファリスがボソッと呟くように3人に伝える。
「ファリス… ええ!」
レナはファリスの言葉を嬉しく思った。
「ふむ、決まりじゃな。他に情報はあるかね?」
ガラフが尋ねる。
「どうやらこのフロアには魔物はいないようです。ただ2階より上は…」
「クリスタルは最上階に祀られています。力を増幅させる機械と共に」
「どうやら急に機械がエラーを起こしてコントロール不能になってしまったらしいのです」
何人かの学者から情報を集めたあと、4人はクリスタルルームを目指した。

106 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/17(土) 19:31:47 ID:3aLS+W6C
FF5  30 風の神殿4

「やっぱり魔物は大した事ないな」
バッツは威勢が良い。
神殿の2階。確かに大臣の言うとおり、魔物が多い。しかし、やはり強くはない。
所詮、この地域の魔物が神殿で凶暴化した程度だ。もうある程度『戦い慣れ』した4人は順調に進んで行く。
そして3階も順調に進んで行ったのだが…
「お、おい、あの鳥やたらでかくないか?」
「ふむ。初めて見る顔じゃのう」
「なんか、やっかいそうだな」
「…でもあの鳥の後ろに階段があるわ…」
4人の決心は固まった。

「おい、そこのでかい鳥!ちょっとさ、どいてくれないか?」
一応交渉するバッツ。しかしその巨大な鳥は鋭い目と巨大な毒々しい赤い羽根を広げて今にもこっちに迫ってきそうだ。
「ちっ、やっぱ交渉は無駄か…」

「シャァァァァ…」
不気味で静かな鳴き声を上げながらどんどん迫ってくる巨大な鳥。

「来るぞっ!」
こうしてその巨大な鳥との戦いが始まった。その名は、ウイングラプター。

107 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/17(土) 19:33:57 ID:3aLS+W6C
「どうする…」
「とりあえず、殴れ!て言うか、俺たちにはそれしかないだろ!」
「そうじゃの!」
「やるしかないわ!」
そう言って4人は一気にウイングラプターに斬りかかる。もう、手段も何もあったもんじゃない。
バッツの言うとおり、今の4人が攻撃する方法は非常に限られていたのだから。

バッツたちが攻撃を続けてる中、
集中攻撃に耐えかねたウイングラプターが羽根を大きく、激しく動かし始めた。
「一体何…」
『バサ、バサ、バサ、バサ、バサ、バサ、バサバサ、バサバサバサバサ…』
その翼から放たれる風はやがて強力な突風を巻き起こし、バッツたちを襲った。
「う、うわぁ!!!」
「な、なんじゃこの風は!」
うねるような突風。風の神殿に棲む魔物だけあって、風を使った攻撃。
「さすがにでかいだけあるな…」
「息が出来ないほどの風だったわ…」
今までにない強力な攻撃に少し引く4人。様子を窺おうとしての事だ。
しかし、ウイングラプターもさっきまで激しく動かしていた翼を使い、身を守り始めた。
「防御姿勢?」
「いや、なにかの罠…」
そうガラフが言い残す前にバッツはチャンスだと言わんばかりに勢い良く剣を振りかざそうとしていた。
「あっ!バッツ!」
「ほーら、攻撃は最大の防御ってね!守ってても勝ちはやって来ないぜ!」
『ズシャッ!』
調子よくウイングラプターを斬り付けるバッツ。勝負あったか。
「おい、こりゃチャンスだぞ!もうさっさと倒そ…」
バッツが余裕の顔で敵に背を向けたその時だった。
「バッツ、危ないっ!」

108 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/17(土) 19:35:37 ID:3aLS+W6C
『ドガッ!』
「ぐわっ!」
なんとウイングラプターの爪がバッツの腹にまともにヒットしたのである。
「ゲホッ!ゲホッ!ゲホッッ!…きっついな…今の一撃は…」
「だから言わんこっちゃない、どんな相手でも舐めてはいかんぞ」
「うっさいなー、さっさと倒した方がいいだろ!…ゲホッ…いやー、いってーわ…」
「ふ、まぁお主はもうそこで休んどけ!あとはわしがやる」
その瞬間、ガラフがあの瞳になった。強く、鋭い瞳。
それはいつものとぼけたものとはあきらかに違う、百戦錬磨の戦士が乗り移ったかのような変貌ぶりだ。
「(…また、変わった…)」
バッツは痛みを気にしながらガラフの変化も見逃してはいなかった。

ガラフはウイングラプターが翼を広げるタイミングをじっと待った。
「(…奴は一瞬の隙が出てくるはず…)」
そしてようやく翼を開きかけたその時!
「ここじゃあああぁぁぁっ!」

『ジャッ!』

ガラフが高く舞った。そして、一気に剣を振り下ろす。翼と翼の僅かな隙間に剣を通すかのように、斬った。
「ギャャャャゥアアゥアアァァァ!!!」
ウイングラプターから大量の血が噴出す。体の真ん中をやられちゃ誰だって生きていられない。
「(…すげぇ…やっぱ只者じゃないとは思ってたけど…)」
「(…すごい!!!うちの兵士にもこんなに腕の立つ人はいないかも…)」
「(一体、ガラフは何者なんだ?)」
3人ともガラフの剣さばきに言葉がない。それほどまでに、鮮やかで、強い。
「ふーぅ、まぁ、たいした事はなかったのう」
当の本人はやりきった充実感と倒せた安心感で笑顔だ。
「ん?みんなどうした?さっさと上へ行くぞ」
3人の思いなんて知らず、またいつものガラフに戻った。一体、彼は何者なのであろう。

109 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/17(土) 19:37:07 ID:3aLS+W6C
FF5  31  風の神殿5

巨大な鳥、ウイングラプターとの戦いも比較的余裕を持って終われたことにより一行は少しの希望を持ち始めていた。
しかし、やはり結局何があるのかも、未来の事も、知る手立てが無い。
単なる気休めにならなければいいが。そうどこかで思っていたのも本音だった。

そしていよいよクリスタルルームまで辿り着いた…
「やっと着いたな…」
「まぁ、やっとって程長くも無かったがのう」
「よし、行くぞ」
レナは無言だ。
「(きっと、この先には明るい『希望』が待っている)」
そう信じながらも、やはり『不安』はずっと消えず、続いていた。もはや、誰のものなのかわからなくなった『不安』。

「扉が開いてる…」
先頭のバッツが一言。それはつい最近先に誰かがここに来たという事を意味する。
それは、タイクーン王しかいない。
「お父様…お父様ーー!」
レナが堪らずクリスタルルームに駆け込んだ。
しかし、そこで見たものはレナの不安をより一層強くしてしまう残酷なものしか無かった。
「!」
レナは驚きに体が震え、膝から崩れ落ちた。全身の力が一気に抜けていくのが自分で分かった。
「レナ!どうしたん…」
後から入って来た3人もレナを気遣おうとしたが、目の前の光景にその事を一瞬、忘れた。
「クリスタルが…」
「く、砕け散っておる…なんて事だ…」
「………」
「く、砕け散っているなんて…これは…」
レナは必死に言葉を探そうとしている。しかしこの絶望的な状況に言葉など見つかるはずも無かった。

110 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/17(土) 19:38:15 ID:3aLS+W6C
そこへ突然、眩い光が辺り一面を包んだ。
「ま、眩しいな、何の光だ?こりゃぁ」
その光は赤、青、黄色、そして水色と次々と変化していく。
その場にいた4人の心を包み込むかのようにあたたかく、やわらかい光。
「なんだか、あったかいのう…」
ガラフがその見た目に合った口調でしみじみと言う。
「この光は一体?」
さっきからあまり表情を変えないファリス。
「もしかして…クリスタルの…心?」
「ク、クリスタルに心なんてあるのか?」
レナの突飛な発言に対してバッツは至極当然な疑問をぶつける。
「わからない…けどこの光はまるで、私達を歓迎しているよう…」

「…レ…ナ……」
「!」
謎の光について話していた時、レナが非常に聞き覚えのある声がクリスタルルームに響いた。

111 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/17(土) 19:39:34 ID:3aLS+W6C
FF5  32 風の神殿6

「お父様!!」
「なに、親父さんの声か!」
そう、レナの父、タイクーン王の声。しかし、声だけ。姿が見えない。
「お父様!!何処にいるの!!」
レナは必死で父を探そうと辺りを見回すが当然姿は見当たらない。
「…レ…ナ……」
やがてクリスタルがあった祭壇に王の姿が浮かび上がった。
「!?」
ファリスはその王の姿を見て、一瞬動揺する。何処かで見覚えがあるような、運命的な何かを感じたようだった。
「お父様!生きてたのね…」
レナは安堵の表情を浮かべる。やっと、捜し求めた父が見つかったのだから…
しかし、残酷にもその安息は長く続かない。
「よく聞くのだ。お前達は、選ばれし4人の戦士…4つの心が宿る者」
「え?…お父様!どういうことですか?」
レナは奇妙に感じた。父がこちらの問いかけに答えようとはせず、一方的に話し始めたことを。
「風のクリスタルは砕け散った。そして、他の3つのクリスタルも、砕けようとしている。お前達は、それを守るのだ」
「だから、お父様、ちゃんと説明してください!!」
レナは涙目だ。まったく話が飲み込めない。父は自分の意思ではなく、まるで言わされてるかのようだ。
そんな違和感を感じ取っている。
「邪悪な心が、蘇ろうとしている…全てを闇に変える者…」
その言葉を最後に王は黒い影に包まれ始めた…
「お父様!!」
「行け!4人の戦士よ。クリスタルを守るのだ…」
王はその言葉を最後に完全に影に包まれ、消えた。跡形も無く。
と言うより、王は最初からそこにはいなかったのかもしれない。
「そんな…やっと、逢えたのに…」
レナは目に涙を浮かべて俯いた。バッツもガラフもファリスもさすがに掛ける言葉が無い。

112 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/17(土) 19:41:54 ID:3aLS+W6C
「!!」
その時、またも辺りがあの光に包まれた。
そして砕け散ったクリスタルのかけらが輝きながらバッツたちに向かって動き始めた…
「うわ、かけらが勝手に動いてるぞ!」
「これはどういうことじゃ…」
「…………」
黙ってかけらのひとつを手にとるファリス。その瞬間、ファリスの姿が黒魔導士の姿に変わったのだ。
「これは…かけらに色々な力が封じ込められてるって言うのか?」
そう言いながらバッツはかけらを拾い上げる。するとナイトの姿に変化した。
「…どうやら、そのようじゃの」
ガラフは確信をもってかけらを手にとる。モンクの姿に変化。
「この力を使って、残されたクリスタルを守れと言うの…」
レナはさっき父が残していった言葉をようやく理解し始める。
レナはクリスタルの力によって白魔導士の姿に変わった。

「このかけらは俺たちの力になってくれるみたいだな…」
「ああ、そのようじゃな…」
「とりあえずトゥールに戻るか」
「ええ……(…お父様…)」
レナはクリスタルのかけらに少しだけ励まされていた。
何故なら、そのかけらに僅かな『希望』を感じ取る事が出来たから。
「(お父様は…きっと生きている…)」


こうして風の神殿での運命を彼らは受け入れた。
影に包まれ消えたタイクーン王。砕け散った風のクリスタル。
4人それぞれ、この旅が徐々に自分の思っていたものより遥かに大きくなりそうな事を感じ始めていた。

113 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/17(土) 19:44:14 ID:3aLS+W6C
FF5今日はこんな感じです。
で、全部書き終わって名無しだったことに気付くと言う…
ゲームで言えばまだ1時間も経ってないかなぁ。

114 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/18(日) 04:04:35 ID:1s9FMJGX
5書きさん乙です。ペース早いですね。
299氏も新作待ってますよ。


297氏とかHHOM0氏とか433氏はいなくなっちゃったかな・・。

115 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 13:37:24 ID:b8NtcMRN
今日も夜更新予定です。
>>114
書く意欲があるうちにがーっと書こうかなと思いまして。

まとめサイト管理人さんへ。各題考えておきましたのでよろしくお願いします。

2 隕石が導く出逢い
3 隕石が導く出逢い2
4 隕石が導く出逢い3
5 隕石が導く出逢い4
6 隕石が導く出逢い5
7 あてのない旅
8 あてのない旅2
9 あてのない旅3
10 あてのない旅4
11 洞窟探検
12 洞窟探検2
13 洞窟探検3
14 洞窟探検4
15 洞窟探検5
16 海賊
17 海賊2
18 ペンダント
19 今日の終わりに
20 ペンダント2
21 シルドラ
22 トゥールにて
23 酒場にて
24 ゾック
25 風の神殿へ
26 風の神殿へ2

116 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:15:11 ID:MmLUBC8j
FF5  33  運河の鍵

4人は1階に待機していた大臣達にクリスタルルームで起きた事を報告した後、トゥールに戻った。
「こりゃ、とりあえずウォルスへ行くしかなさそうだな…」
「ふむ。タイクーン王にああ言われてしまった以上、なんとしてでもクリスタルを守らねばなるまい」
「しかし、ウォルスへ向かうには?」
「ええ、それならゾックを尋ねましょう。この前は留守だったけど…」
4人は酒場で今後について話し合っていた。もはや後戻りは出来ない。
こうなったら残りの3つを守るしかない。タイクーン王の所在ももちろん大事な事だが、
それよりもっと大きななにかがある予感は、クリスタルが砕け散ると言う異常な事態によってさらに現実味を増している。

『コン、コン、コン』
「ゾックー?いますかー?」
レナが大きい声で呼びかけた。
「はい、どちら様…!!」
今度はその呼びかけに反応がある。ゾックは呼び出した主を確認して驚いた。
「おお、レナ様ではないか!お久しぶりでございます。レナ様がお城を抜け出したと聞いて心配していたんですよ」
ゾックはレナが城を抜け出して以来、ずっと心配していた。
さっき留守だった理由も、レナの事について少しでも情報を知るべく、自らの足で情報収集に励んでいた為だ。
ゾックは昔、レナが生まれる前にタイクーンの大臣として城に仕えていた。
その為、タイクーン王家と非常に親しい付き合いがある。トルナ運河の鍵の管理を任されているのもそういったことからだ。
現在はここトゥールの大きい一軒家で静かに暮らしている。
「ゾック…心配をかけて本当にごめんなさい」
「いやいや、こうして無事だったんだから何よりです」
そう言ってレナを優しく見た。その顔は安心感でいっぱいだ。
「ささ、皆さん、上がってください」
ゾックは一行をリビングへ案内した。

117 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:17:09 ID:MmLUBC8j
「…ふむ。ウォルスへ向かう為にトルナ運河の鍵を貸して欲しいと…」
「ええ、一刻も早くこの事を伝えなければいけないのです」
レナが今までにあった出来事を要所を抑え、簡潔に話した。
「しかし、風のクリスタルが無いとなると運河の反対側から魔物が入り込んでる可能性が非常に高いと思われますが…」
ゾックは困ったようにそう切り出した。
トルナ運河はかつての戦争で、ウォルスがタイクーンへ侵攻しようとした際に自然の地形を利用して人工的に作ったものだ。
その為厳重な門はタイクーン側にしか設置されていない。
タイクーン側が侵攻されない様にする為、ウォルス側に気付かれないように急遽作った物。
片方にしか門が無い特殊なものになっているのは、かつての戦争の名残なのだ。
「でも、もうそうも言ってられないんだ。他のクリスタルまで砕けたらそれこそ世界が終わる」
ファリスは冷静な口調でゾックに迫る。表情もあまり変えない所が返ってゾックにプレッシャーとなった。
「そうじゃ。こうしている間にもクリスタルが砕け散るかもしれんのだぞ!」
「お願い、ゾック。もうこれは私達だけの問題じゃないの!」
「現に、もう風のクリスタルはこの世に無い。これだけでも異常な事なんだから」
ファリスがきっかけでガラフは強い口調で、レナは頼み込むように、バッツは現実を強調した。

ゾックはしばらく考え込んでいたが、
「…分かりました。私も皆さんと同じ意見です。運河の鍵をお渡しいたしましょう」
「ありがとう!ゾック!」
結局折れた。と言うより渡さなければどうにもならない事をこの4人の顔から悟ったのである。
「ですが、今日はもう遅いです。今夜は我が家にお泊り下さい…」
「え?もうそんな時間か?」
バッツはその言葉に少し驚き窓の外を見る。もうすっかり辺りは暗くなっていた。

118 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:18:31 ID:MmLUBC8j
FF5  34  真夜中に

その日の真夜中。バッツは独り、ゾックの家の前にある小さな川の前で俯きながら昔を思い出していた。
「クリスタルか…そう言えば、親父が昔…」

「クリスタルだけは、守らねばならん…」
「私にもしものことがあっても、バッツにはクリスタルの事は言わないでくれ…」

「あいつには…背負わせたくない…」
「あなた!そんな事言わないで!!」

バッツが幼い頃に父ドルガンと母ステラが何気無くしていた会話である。
幼いバッツにはその意味が分からないまま言葉だけを覚えていた。
父の「私にもしもの事があっても」と言う部分とそれに対する母の強い口調が妙に印象に残ってしまったからである。

今になってバッツはその意味を感じている。そして、クリスタルの事を背負っている。
「もしかしたら、これも必然だったのかもな…」
バッツは小川に自分の顔を映しながらそっと呟いた。その顔は少し泣いているように見えた。

家に戻るとゾックもまた独りで考えていた。それに気付いたバッツが話し掛ける。
「ゾック?どうしたんだ?」
「おお、バッツか…私はレナ様の事が心配なんじゃ…」
ゾックは神妙な面持ちで静かに話す。
「お主こそこんな真夜中に何を?」
「いや、ちょっと昔のことを思い出してたんだ…」
バッツの顔が少し曇る。ゾックはそれに気付いたようで、
「頼む!レナ様を守ってやってくれ…」
バッツに願うようにそう言うと、静かに自分の部屋に戻っていった。
「ゾック…」
バッツも静かに寝室へ戻った。

119 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:21:51 ID:MmLUBC8j
FF5  35  ファリスの決意

翌朝。船旅日和の快晴に恵まれた。朝日がさんさんと降り注ぐ。
「レナ様!!どうか、くれぐれもお気をつけて!!運河の魔物はおそらく、雷に弱いと思われますぞ」
「ええ。わかったわ!本当にありがとう!」
そう言って一行は貴重な情報と運河の鍵を貰い、ゾックと別れ、旅支度をする。
クリスタルのかけらの力によって魔法が使えるようになった為、魔法も購入した。
こうして、一行がトゥールの村を出ようとした時だった。

120 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:23:58 ID:MmLUBC8j
「お頭ー!待ってくれー!!」
「あっしらも行きますよー」
ファリスの子分達が続々と酒場から出てきた。みんな顔が紅い。
こうして子分が勢ぞろいした所でファリスは切り出した。
「お前達は置いていく!」
冷たい口調で言い放つ。
「ええっ!?」
「どうしてだい!?」
「あっしらはお頭に付いて行きますぜ!」
子分達は一気に酔いが醒め、ファリスに詰め寄る。
「いや、お前達はアジトで待ってろ」
「「「「「「「お頭!!!」」」」」」」
子分の声が一斉に揃う。
「いや、この旅はとても長い旅になりそうなんだ…お前達は俺がいない間、アジトを守ってくれ!頼む…」
ファリスがさっきとは違う、力強く、熱のこもった口調になる。

しばしの沈黙の後、子分達がファリスに伝える。
「分かりやした!必ずアジトを守って行きます!お頭もお気をつけて!」
親分の想いを受け止めたのである。
「…ありがとう。じゃあ行ってくる。アジトには必ず戻ってくるからな」
「はい!お気をつけて!」
ファリスは子分達へ、感謝の気持ちでいっぱいだ。


「ファリス…本当に良いのか?」
「ああ、あんなにたくさんは連れて行けないだろう?」
「ま、まあな…」
バッツはファリスの顔が今までと違うような気がした。

121 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:25:33 ID:MmLUBC8j
FF5  36  クリスタル

一行は運河に向かって順調に航行していた。この内海に魔物が全く居ないのも運河の門のおかげだ。
甲板では穏やかな潮風が吹いている。バッツが甲板に出ると、レナが暗い顔をしていた。
「レナ、どうしたんだ?」
何気無く軽く話し掛けるバッツ。
「風のクリスタルは砕け散ってしまった…」
バッツはその言葉に少し顔が硬くなる。
「今は風の力が弱まっているだけ。でもしばらくすれば風は完全に止まってしまう。
そして何年かすれば、空は完全に澱み、鳥たちは飛ぶ場所を失う…」
レナは淡々と数年先に迫っているであろう未来を予言する。
風のクリスタルが失くなったのだから、この予言は確実に的中してしまう事をレナもバッツも分かっていた。
「そ、そりゃ酷いな…でももうどうする事も出来ない…」
バッツはやり場のない怒りを覚える。クリスタルが砕けた理由は謎のままだからだ。
「お父様は、他の3つのクリスタルを守れと言っていたわ」
「他の3つって…水と、あと2つは?」
「火と土。あわせて残り3つ」
「もし全部砕け散ったら…」
バッツがあってはならない事を尋ねる。もちろん、そうならないように今、ウォルスへ向かっているのだが。
「多分暫くは何も起こらない。でも…徐々に大地は腐り、水は澱み、流れを止め、火の力が止まる」
「それって…」
「人の住めない世界になってしまう…」
レナはさらに表情が重くなる。
「そりゃ、本格的にまずいな。どうにかしてクリスタルを守らないと…」
バッツはあれこれ考え始める。
しかしまだ何も分かってないのだから考えても分からない。余計焦る想いが大きくなってしまう。

122 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:27:26 ID:MmLUBC8j
「クリスタルを守るぞい!」
そこへガラフが威勢よく言ってきた。
「ガラフ!記憶、戻ったのか?」
「いいや、もうわしの記憶とか言ってられる状況じゃなくなってきておる。なんとしてもクリスタルを守る!」
ガラフは窮めて明るく、元気よく決意を口にする。
「俺も行くぜ」
さらにこの会話の輪にファリスまで入って来た。
「レナの親父さんを捜すってのもあるしな」
「ファリス…」
レナはファリスの思いがけない言葉に胸が熱くなる。
「黒い影に包まれて消えたんだよな…」
「大丈夫だ。レナの親父さんは生きてるだろう。絶対に死んではいない」
ファリスはいつもの口調で語る。しかし、その裏にはしっかりとした想いが込められている事をレナは分かっていた。

「バッツ…一緒に来てくれる…?」
レナは改めてバッツに尋ねる。
「俺は、ただ旅をしていただけだ…ただ、こいつを見てると…」
そう言ってバッツはポケットからクリスタルのかけらを取り出して手の平に乗せた。
かけらは初めて見た時から全く変わらない輝きを放ち続けている。
「クリスタルのかけら…」
レナがそのかけらをじっと見つめる。何処までも透き通った、汚れのない輝き。
「もうこのかけらはこれだけで充分だ。残り3つ、なんとしても守らなきゃならないな!」
バッツはかけらを握り締めながら気合を入れる。
「よーし!行くぞい!」
ガラフがそれに続く。もうすぐ船が運河に着こうとしていた。

123 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:28:38 ID:MmLUBC8j
FF5  37  トルナ運河

「こ、これが運河の門か…さすがにでかいなぁ」
バッツは見上げながら呆気にとられていた。
「ほら、ぼーっとしてる場合じゃないぞ。さっさと進もう」
ファリスがそう言って門の鍵穴に鍵を差し込み、ぐるりと回す。
『ゴゴゴゴゴゴゴ・・・』
重厚な音がして門がゆっくり開く。
「よし…こっからは魔物が出てくるらしいからな、気を引き締めて行こう」
「そうじゃの!」
「ええ…」

運河は如何にも人工的に作った様な形状だった。
川の両側には切り立った岩盤がかなり高い所まで続いており、圧迫感を感じさせる。
そして運河を進んで行くと、早くも魔物が現れた。
10本の足が不気味なサッカーと言う大きい烏賊と、紫色の体が不気味なオクトラーケンと言う大きい蛸だった。
「イかもタコも食うには大きすぎるんじゃないかっ!」
バッツがそう言いながら剣に手をし、すぐさまオクトラーケンを斬りつける。
ガラフは独特の構えで魔物を威嚇する。モンクは自らの体が武器なのだ。
「(…ここはわしらは大丈夫じゃろう。レナさえ気にしておけば…)」
ガラフはトゥールで得たある情報を思い出していた。
それは、この運河に出る魔物は女しか狙わないと言う事。
この4人の内女性はレナ1人だけ。つまり、あとの3人は無傷でここを通過できると踏んでいた。

124 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:30:22 ID:MmLUBC8j
「きゃあっ!」
オクトラーケンがその蠢く足でレナに襲い掛かる。しかし、威力はたいしたことがない。
「(…ふむ。やはり情報は正しいようじゃのう…)」
ガラフは心の中で確認した後、一気にオクトラーケンに襲い掛かった。
「これでも喰らうのじゃあっ!はっ!」
拳がオクトラーケンを襲う。元々体が軟らかい魔物にとって固い拳での攻撃はひとたまりもなかった。
オクトラーケンはそこら辺をのた打ち回ったあげく、息絶えた。
残るサッカーもファリスの魔法『サンダー』であっさり一蹴。海に出る魔物は雷に弱いとゾックに教わっていたからだ。

こんな感じで順調に進みながら、次々と襲い掛かるサッカーとオクトラーケンを倒してゆく一行。
しかしそんな中、ガラフの目を疑う事態が起こった。

「うわあっ!」
「(なに!?)」
そう、今までレナばかり襲っていた魔物が突然ファリスを襲いだしたのである。
「(…女しか狙わないはずじゃが…情報は間違っていた?…いや、今までわしとバッツは全く攻撃されていない…)」
ガラフは混乱する。情報は確かに正しい。しかし、ファリスが攻撃された。
あとの3人はこの情報を忘れてしまっているようだ。
「(…もしかして、ファリスは…)」
ガラフの心にあるひとつの疑惑が持ち上がっていた。

125 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:31:41 ID:MmLUBC8j
FF5  38  運河に封じられし魔物

「もうすぐ運河も終わりそうだな」
「やっとウォルスへ行けるな」
徐々に景色が開けてきて一行は少し安心していた。

『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…』
突然の轟音。それと共に大きな渦巻きがあっという間に出来上がった。
「うわ!一体なんじゃ?」
ガラフが突然の事態に驚く。
「まさか…運河に封じられし魔物…」
レナが意味深に呟く。当たって欲しくなかったが、その願いも空しく、渦の中心から大きい海老の魔物が姿を現した。
「おい、ファリス、もう構わずに進めよう!運河も終わりだから強行突破だ!」
バッツは一気に逃げる事を伝える。一刻も早くウォルスに着きたい。水のクリスタルの元へ行かなければならない。
「ああ、そうしたい所だが、舵が聞かないんだ!」
「なにぃぃぃぃっ!」
ファリスは今までに見せた事のない必死の形相で舵を目いっぱい動かしていた。
しかし魔物の作り出す渦に一隻の船は成す術が無かった。
「吸い寄せられてるぞっ!」
「くっそ、こうなったらあいつも倒すしかない!」
そう言っている間に、船は魔物の元へ引き寄せられていった。

126 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:33:07 ID:MmLUBC8j
FF5  39  運河に封じられし魔物2

毒々しい赤色が目に痛い大きい海老の魔物、カーラボス。
「ったくここの魔物はイカとかタコとかエビとか、そんなんばっかだな!」
バッツが忌まわしそうに吐き捨てる。もうすぐ運河を抜けられそうと言う所でこの事態だ。
かなりイライラしている。
「ロブスターにして食ってやる!うりゃぁ!」
『ガシュッ!』
カーラボスは幾分ダメージを受けたようだが、やはりその固い皮膚に守られており、防御力は高い。
そしてそのお返しだと言わんばかりに自慢の尾の先でバッツを襲う。
『ザクッ!』
「ぐあっ!」
バッツはその痛みに思わず声をあげる。しかし、この程度で倒れるほど弱くはない。しかし…
「バッツ?どうしたの?」
「…いや…しび…れて、動けな…」
そう、あの尾の先には攻撃したものを痺れさせる毒素が蓄えられているのだ。
「早くも1人脱落じゃ!ファリス!とにかくサンダーじゃ!」
「わーってるって!サンダー!」
空から雷を落とす黒魔法がサンダーだ。海に棲む魔物は水を通し易い事から雷に弱い。
『ゴロゴロゴロ…   ピシャーッ!   ドガゴッ!』
さすがにカーラボスもこの攻撃は効いてるようで足をじたばたさせている。
「よーし、手ごたえありだな」
ファリスが手ごたえを感じたその時、頭上に大きい竜巻が発生した。
「うわぁ!なんだぁっ!うわあああああああああっ!」
竜巻はたちまちファリスを飲み込んだ。

127 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:35:01 ID:MmLUBC8j
「「ファリス!」」
レナとガラフが声を揃える。
「ちぃ、足をじたばたさせてるのはこれを狙っていたからか!」
ガラフが吐き捨てながら固い拳で3、4回殴りつけた。
そのダメージで竜巻が消えファリスが甲板に叩き付けられる。
『バタッ!』
「ぐっ!」
「ケアル!」
レナはすぐさま回復の白魔法をファリスにかける。
ファリスの周辺がやわらかい光に包まれ、ファリスは何とか回復した。
「…ふぅ、さすがに危なかった。あいつ案外頭も良いな…」
「でもあいつの攻撃はこの2パターンしかないようじゃ!」
ガラフは攻撃を見切っては固い拳で殴りつけ、ファリスはサンダーでひたすら攻撃した。
「…しぶといわね」
「ああ、さすがにこっちがしんどくなってきたわい」
「もう魔力が残ってない…」
3人もなかなか倒れないカーラボスに対してだんだん疲労の色が見えてきたようだ。

「おい、俺を忘れてないか?」
「「「あっ」」」
そう、一撃喰らわせただけで麻痺したバッツである。
「やっと動けるようになったぜ…全然戦ってないからなぁ」
そう言うとおもむろに剣を握り締めカーラボスに突進していった。
「このやろーっ!ロブスターにして食ってやるって言っただろっ!」
『ガシュッ!』
バッツの渾身の一撃がカーラボスを斬りつける。
カーラボスはのた打ち回り口からは泡を吹き始めた。
「よし、今度こそ倒せたみたいじゃ。ファリス!早く船をここから出せ!」
ガラフがそういう前にファリスは舵を握っていた。船を飲み込んだ渦も次第に弱まっていき、何とかここからの脱出に成功した。

128 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:36:25 ID:MmLUBC8j
FF5  40  運河に封じられし魔物3

「ふう…手強いエビだったな…」
バッツがやりきった明るい表情で呟いた時、ファリスが気付いた。
「シルドラが居ない!」
「「「えっ!」」」
そう、この船の命でもあるシルドラがいなくなっているのだ。

「あっ!あそこよ!」
レナがシルドラを見つけて指差した先はついさっきカーラボスと戦っていた渦の中心だった。
「あいつ、まだ生きてるぞ!シルドラを道連れにする気だ!」
バッツがそう叫ぶ。
その言葉と同時にファリスは海に飛び込もうとした。
「シルドラーーーーッ!!!」
「ファリス、何をする気だ!」
「そうじゃ、幾らなんでも海に飛び込むなど死を選んでいるようなものじゃぞ!」
バッツとガラフが慌ててファリスを止めに入る。
「離せ!離せよ!!」
「駄目じゃ!」
「シルドラーーーーッ!」

そんなやりとりの目の前でシルドラはカーラボスと一緒に海の中へ消えていった…
やがて渦も消え、静かで穏やかな運河が戻ってきた。

129 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:37:17 ID:MmLUBC8j
FF5  41  漂流

さっきの戦いから1、2時間が経ち、辺りは暗くなり、海は鮮やかな青から漆黒の闇のように変わっていた。
主を失った船はただその波の流れに身を委ねるしかなかった。

「ファリスは……」
「ふむ。今は、そっとして置いてやるのが良いじゃろう…」
バッツはシルドラを紹介するファリスの生き生きとした顔を思い出していた。
もし自分があんな状況になったら?自分も良き『相棒』がいる。
ボコを待たせっぱなしにしている事を後悔し、反省し、何事もないよう祈るしかなかった。

ファリスはただ黙って俯いていた。自分の『兄弟』同然のシルドラが目の前で、いなくなった。
波に飲み込まれてゆくシルドラの悲しそうな瞳をファリスはただ見ているしかなかった。
「ファリス…」
レナはそんなファリスを前にしてどう声をかけてやればいいか分からなかった。
そんな時、ふとファリスのある言葉を思い出し、それに倣ってファリスに声をかける。
「大丈夫よ…シルドラは、きっと生きてる…。絶対に死んではいないわ…」
ファリスはただ下を向いて黙っていた。

130 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:39:54 ID:MmLUBC8j
FF5  42  船の墓場

一夜が明け、バッツ達が目を覚ました。ここがたまたまウォルスだったら良いのにな、なんて期待してみる。
甲板に出てみると向こう側まであたり一面、船の山。しかも、どれも完全に朽ちている。
当たり前だが、淡い期待は外れた。
「船の墓場か…」
「なんだ?その物騒な名前は?」
ファリスは海賊をやっていただけあって知っていた。
「漂流した船が集まって出来たアンデットの巣窟だ」
「うわ、そりゃめんどくさいなぁ」
トゥールを経ってかなりの時間が経過している。バッツはもうそろそろ町や村で休みたかった。
突然のアクシデントにより、ウォルスにいるどころか、よく分からない場所に来ている。
バッツはテンションが下がるのを感じ、気を引き締めなおした。
「とにかく、ここを脱出だな」

レナはファリスがいつも通りのファリスになって安心していた。
シルドラを一時的にでも失った彼のショックは大きいはずなのに。

スケルトン、カルキュルスル、アンデットラスク、サイコへッズと
得体の知れない不気味な魔物もバッツ達は労せずサクサク倒してゆく。
昨日のカーラボスと比べたら当然の事だ。
そうして順調に進んで行くと、途中からどっぷりと海水に浸かっている部分に差し掛かった。
「あ、こりゃここ通らないと駄目っぽいなぁ」
「仕方ないのう」
「じゃあ、行きましょう」
「ぬ、濡れちまうなぁ……」
4人は濡れるのは嫌だが、ここを抜ける為にはしょうがないとしぶしぶ自分に言い聞かせていた。
「(…ファリスは動揺が大きいのう…なんでじゃろう?)」
ガラフはファリスだけが目がやたらと泳いでいるのを見逃さなかった。
「(…もしかして、やっぱり…)」
ガラフのあるひとつの疑惑は核心に迫りつつあった。

131 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:41:20 ID:MmLUBC8j
FF5  43  ファリスの秘密

「お、やっと休めそうな所に来たようじゃ」
ガラフの顔が明るくなる。今までの朽ちていてボロボロだった場所に比べ、ここは比較的しっかりしていた。
「じゃあ服を乾かすか。ずぶ濡れだもんな」
かなりの間海水に浸かった所を歩いてきた為、全身が濡れている。
「私は隣の部屋で乾かすわ。見ちゃ駄目よ!」
レナが言葉を強める。
「だ〜いじょうぶだって。覗きやしないよ」
バッツが少し苦笑しながらそう答えた。

「火が必要だなぁ。ファリス、ファイアの魔法をしてくれ」
しかしファリスは黙って立っているだけだ。
「おい、ファリス?どうした?」
バッツは不思議そうに尋ねる。
「え?あ、ああ、ファイアね、はいはい、………ファイア!」
そうしてあたたかい火がバッツとガラフを照らす。
「おー、あたたかいのう…」
「ファリスも早く乾かせよ!そのままでいると風邪引くぞ!」
バッツが当然のようにファリスに呼びかける。
さっきからファリスは積極的に服を乾かそうとしていない。
「い、いや、俺はこのままでいいよ…」
ファリスがあきらかに動揺しながら答える。声の調子もいつものファリスじゃない。
「(…やはり…)」
トルナ運河の戦いから続いたガラフの疑惑は確信に変わる。
「な〜に言ってんだよ!裸になるのが恥ずかしいとか?そんな事言ってらんないだろう?」
バッツが調子よくそう言いながらファリスの服を脱がそうとする。
「だから、良いってば!」
ファリスは言葉を強くする。
「良くは無いっての!さっさと脱げって!」
「いいからさぁっ!」
押し問答が続いていた。

132 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:42:01 ID:MmLUBC8j
FF5  44  ファリスの秘密2

バッツとファリスの押し問答が続いている中、ガラフが切り出した。
「もういいじゃろう?ファリス…」
ガラフが優しくファリスに問い掛ける。バッツは一体何のことか分からない。
ファリスは目を合わそうとしない。バッツは不思議そうにファリスを見る。
「何言ってんだ?ガラフ?」
「ああ、バッツ…これはわしの勘じゃがな…」
ガラフはゆっくりとした調子で静かに語る。
「ファリスは、多分…」


「女じゃ」







133 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:43:16 ID:MmLUBC8j


「ええええぇえぇぇぇえええぇぇぇぇええぇぇえっっ!!!!!」
バッツが今までに無いぐらい驚く。
それも当然の事だ。ファリスは男だと思っていたからだ。
「どうしたの?」
服を乾かし終えたレナも戻ってきた。
当の本人はさっきからずっと一点を見つめ、動かない。
「自分の口から話してくれ…どうしてお主がそんな風になったのかは、わしにも分からん」
ガラフは相変わらず優しい口調だ。
暫く間をおいてファリスが話し始めた…

「確かに、俺は女だ。でも小さい頃海賊に拾われたから、男のフリをしてたんだ…」
「なんでまた?」
「だって、海賊は男の世界だ。いくら拾われたとは言え女じゃ、馬鹿にされるに決まってるからな…」
ファリスは初めて自分を語りだした。
「(今まで素っ気無い風だったのは、隠し事があったから…?)」
レナはそう思った。それとも、本当の性格なのか。それは、これから分かる事。
「ま、まぁ別にいいよ、どっちでもさぁ。ファリスがファリスである事に変わりないだろう?」
かなりの驚きを見せたバッツが慌ててフォローの言葉をファリスにかける。
「でもなあ!女だからって馬鹿にすんなよ!」
「大丈夫だって。女だからって馬鹿にすること事態無いよ」
バッツはフォローの言葉を続ける。
「よし、もう寝るぞ!」
そう言ってファリスは部屋の隅にあるベットに寝転んだ。

134 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:43:56 ID:MmLUBC8j
「でもさ、ガラフは何でファリスが女って分かったんだ?」
バッツがファリスに聞こえないように小さく話す。
「よく考えてみぃ。今までの事を」
「今までの事?」
「そうじゃ。トゥールで酒場に居るファリスに情報を伝えようとしたら…」
「そう言えば…」
バッツは思い当たる節があった。あの時ときめいた女性はファリスだったと言う事だ。
「それに、運河の魔物は女しか狙わないと言う情報もあったしのう…」
「え?そんな情報あったっけ?」
やはり、バッツはすっかり忘れていた。そのことにガラフは少々呆れ気味だった。

135 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:45:52 ID:MmLUBC8j
FF5  45  船の墓場2

ファリスが女だったと言う事実発覚から一夜。
また、いつもの様に変わらない4人の変わらない旅が始まった。

途中、海賊が遺していったと思われる、貴重な世界地図を手に入れるなど、収穫もあった。
そして、やっと出口が見えてきたと言う所で辺りに不穏な空気が立ち込める。
「なんか、嫌な感じだな…」

辺りが暗くなると、そこに突然1人の女性が現れた。
「バッツ…こっちへおいで…」
それはバッツの母だった。バッツは何も言わず母の前へゆっくり移動していった。
「おい!バッツ!あきらかにおかしいぞ!バッツ!」
ガラフの呼びかけにもバッツは応じない。
そしてさらにタイクーン王まで現れた。
「こっちへ来なさい…」
レナはその言葉に誘われるように父の前に移動してゆく。
ファリスもレナを気にかけついていってしまう。
「おい、バッツ!レナ!ファリス!おかしいと思わんのか!」
ガラフは3人に大声で呼びかけるが反応が無い。
そこへ金髪の女の子が現れた。
「おじいちゃん、こっちに来て…」
「誰じゃ…?思いだせん…」
ガラフは記憶喪失の為、目の前の女の子を誰か認識する事が出来なかったのだ。

そこへ、青いドレスに身を包んだ謎の女が現れた。

136 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:46:42 ID:MmLUBC8j
「命を吸い取られるがいい…私達の仲間になるのだ!」
「くそっ!やはり罠だったか!おぬし、何者だ!」
「ほう…私の術にかからぬとは…」
その女は少し意外といった表情でガラフを見る。
しかし、すぐに余裕の笑みを浮かべて自己紹介した。
「私はセイレーン。3人の命は貰った。邪魔をしなければ、お前は返してやろう」
「そうはいかん!」
冷静にとんでもない事を言い放つ。ガラフはセイレーンと戦う決意をした。
「何故、その3人を守る?」
セイレーンがガラフの気持ちを弄ぶかのように嘲笑いながら尋ねる。

「わしの…仲間だからじゃ!」
ガラフはセイレーンに力強く言い放った。
「惑わされるな!みんな目を覚ませ!」
そう言ってガラフは3人の頬を強く叩き、文字通り叩き起こした。
気がついた3人はガラフの方へ歩み寄る。
「「「ガラフ!」」」
「礼は後じゃ、奴が来るぞ!」
「おのれっ!覚悟!」

137 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:47:41 ID:MmLUBC8j
FF5  46  船の墓場3

「スロウ!」
戦闘に入ると突然、セイレーンが魔法を唱えた。
「うっ?体が重たい…」
魔法をかけられたファリスがそう呟く。
「どうやらその名の通りの魔法の様じゃな」
「とりあえず、攻撃しまっせ!うりゃっ!」
『ズシャァ!』
またもバッツが最初の一撃を放つ。まさに、猪突猛進。後先を全く考えてない。
「うっ!」
セイレーンがよろめく。
昨日のカーラボスとの戦いでは得られなかった手ごたえにバッツは意外な感じを受けた。
「ガラフ、一気に行くぞ!」
「ああ、分かっておる!」
ガラフはすばやい動きで拳をお見舞いする。
『ドガガガガッ!』
「うぅ!」
またもよろめくセイレーン。ガラフはこの勝負が案外早く決着する事を予想した。

138 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:48:45 ID:MmLUBC8j
「…ファイア!」
動きが鈍ったファリスがようやく魔法を唱えた。
『ボウゥ!』
しかし、全く効いていない様だ。
「ふっ、私に魔法は効かないよ!」
挑発するセイレーン。しかし、直接攻撃は効いており、その顔に余裕は無かった。
「せっかく、唱えたのに…」
ファリスは落胆した。次の攻撃も、いつもの倍以上の時間がかかってしまうからだ。

「えいっ!」
『ボカッ!』
戦闘向けじゃない白魔導士のレナでさえ、フレイルでの攻撃は中々の威力を見せた。
「おのれ…やはりこのままではキツイか…」
セイレーンはそう言うと、不敵な笑みを浮かべた。
「バッツ!あれは!」
「な、なんだ!?」
セイレーンの体の色が見る見るうちに変化していったのである。
またしても、毒々しい赤色だった。

139 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:49:37 ID:MmLUBC8j
FF5  47  船の墓場4

赤い肌へと変貌したセイレーンはガラフに近づき、ぎゅうっと抱きしめた。
「うっ?ぐぁぁっ!」
「ガラフ!大丈夫か?」
ガラフはかなりの傷を負い、さらに毒にかかってしまった。
「う、わしを気にかけるぐらいなら早く奴を…倒すのじゃ…」
ガラフは今にも倒れてしまいそうだったが、
モンクの特徴でもある体力の多さに助けられていた。

「くっそー、さっさと倒れろ!」
バッツが気合を入れて斬りかかる。
『ザシュ』
しかし、さっきより手ごたえが無い。姿が変わり強さも増したのか。
バッツはそう感じた。
「ちッ…何か奴に弱点はあるのか…」
「…姿が変わったのなら、もう一回やってみるか…」
ファリスは呟く。さっきは魔法が効かなかった。もしかしたら、今回はいけるかもと思ったのである。
スロウで動きを鈍らされてる分、考える時間がたくさんあった。
しかし、まだ動きが鈍いままだ。
「…もうちょっとだな…」
ファリスは歯がゆい思い出自らの体を動かしている。

140 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:50:59 ID:MmLUBC8j
「ぐあっ!」
「きゃぁ!」
一方、残りの3人はレナの回復魔法でしのぎながらも防御力の高まった相手に打開策を見つけられないでいた。
「キリが無いな…」
「しかし、奴の体力も無限なわけあるまい…」
ガラフはまだ毒に犯されたままだ。それでも、セイレーンを倒すべく攻撃の手を緩める事は無い。
「ホラホラ、どうしたい?さっきまでの威勢は何処へいったんだい?」
打つ手無しのバッツ達を笑い飛ばすセイレーン。
「…ファイア!」
そこへまたしてもセイレーンへ炎が飛んでいった。
「ファリス!炎は効かな…」
レナがそう忠告しようとしたその時だった。
「ぐわあああぁっ!」
「え?」
そう、さっきは全く効かなかったファイアが今回はまともに効いたのである。
「…よっしゃ!…どうやら、、、変化して、、、弱点が見えた、、、ようだな、、、」
ファリスはスローなままそう言ってしてやったりの笑みを浮かべる。
「いいぞ!ファリス!」
バッツはファリスに威勢のいい言葉をかける。
そして、さらにレナが閃く。
「(…もしかして…)」
そして閃いた後すぐに魔法をかける。
「ケアル!」
それは、回復魔法だった。しかし、味方にではなくセイレーンに向けてかけていた。
「お、おい、相手を回復させんなよっ!」
バッツが慌てて止めに入る。
「いや、これで良いはずよ…」
レナが慎重に成り行きを見守る。
「う?力が、吸い取られていく…?」
セイレーンは一気に大量の体力を奪われて焦った。
「まさか、あいつ、アンデッドなのか?」
「ええ、赤い時は、そのようね」

141 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:51:36 ID:MmLUBC8j
FF5  48  船の墓場5

「ばれてしまったか…やむをえん!」
セイレーンはまた元の姿に戻った。アンデットと言う事がばれてしまったからに他ならない。
「もとの姿に戻った!チャンスだ!」
バッツはすかさず剣で斬りつける。
『ザシュッ!』
「ぐあああああっ!」
どんどんセイレーンの体力が無くなってゆく。もう、こうなれば勝負は決まった。
「ふー、お主、今までで一番手強い相手じゃったぞ… だが、これで終わりじゃあっ!」
『ドカドカドカドカッ!』
毒に犯されたままのガラフが渾身の拳を喰らわす。
「ぐあああああああああっ!こんな事が…!!!」

その言葉を最後にセイレーンは息絶え、消え去った。

142 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:53:06 ID:MmLUBC8j
FF5  49  船の墓場6

「はぁー、やっと倒したかぁ…」
バッツは喜ぶ気力もなくなっていた。それほど強い相手だったからだ。
「でも、回復魔法で体力が奪われるなんて…」
アンデットの皮肉さをレナは感じていた。

「それにしても、あの幻から目を覚ましてくれたガラフに感謝しなきゃ、だな」
「なーに、たいしたことは…しと、らん…」
そう言いかけてガラフは倒れた。まだ彼の体には毒が残っている。
「ガラフ!」
「大丈夫か!」
ガラフを心配するレナとファリス。
「あ、そうだ」
思いだしたかのようにポケットから毒消しを取り出し、ガラフに与えるバッツ。
ガラフはすぐに毒が消え、元気を取り戻した。
「ふー、やっと楽になった…と言うより、なんで戦闘中に毒消しを使わなかったんじゃ!?」
「え、だって『わしの事よりあいつを倒せ』とか何とか言ってたじゃない」
「そりゃ、そうじゃが…仲間がピンチなら真っ先に助けんかい!」
ガラフは捲し立てる。さっきまで毒に犯されていたとは思えないほど、元気な口調だ。
「まぁまぁ、今回はガラフのおかげって事で…  ありがとうな」
バッツから出た意外な言葉にガラフは動きが止まり、照れくさそうに笑みを浮かべた。
「あ、照れてるのか?」
「いや、照れてなんかないわい!」
ガラフはそう言って照れてることを隠した。
それが返って照れていることを強調してしまい、バッツ、レナ、ファリスは自然と笑った。
「お、おい、笑うな!もうそこが出口じゃ。さっさとこんな所抜けるぞ!」

こうして一行はやっと船の墓場を脱出した…

143 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/18(日) 20:53:40 ID:MmLUBC8j
はい、今日は以上です。かなり多い…

144 ::2005/09/19(月) 12:19:55 ID:MFVaZqkR
平坦で単調。
盛り上がりに欠ける。
もっとメリハリをつけるといい。
ストーリーをダラダラと追っかけてるだけでは駄目。
大胆な割愛や逆順、回想など、時系列に拘らない工夫が必要。

視点がぶれすぎ。
キャラを等しく扱ってるせいで、キャラ立ちが弱く、ぼんやりした印象。
特定のキャラの視点を貫くなどした方が読者を引き込みやすい。
誰がどこまで知っているのか、どんな情報・感情を共有してるのか、
相関図を作ってハッキリさせると良い。

ともかく乙。
続きを期待している。

145 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/19(月) 14:20:14 ID:EWHcgQJV
なんだか手厳しい…
>>FF5書きさん、お疲れ様!
うーん、見方を変えると、>>144の意見も確かにそうなのかも
しれないけど、「特定のキャラへの思い入れが」が見えないのは、
書き手としてはいいことなのかもしれない。
(前スレ最後で>>433のFF6で荒れたのも、多分、これが原因かと思う。
私は、別に>>433がそうだったって言ってるわけじゃないけど)
でも、なさ過ぎると、確かに流れるように読んでしまうかな。

あとは、>>144の言うとおり、もう少し、メリハリがあれば、いいかな?
割愛・逆順・回想など。
(>>144、きつい事書いてるなあと思いつつ、指摘自体は的を射てるなあ)

でも、お疲れ様。
続き楽しみにしてます。

146 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/19(月) 17:35:53 ID:yQrKwAFX
まあ厳しい感じはするけど俺も>>144に同意かな。

とにかく、量を沢山書くことより練りこまれたストーリーを作った方がいいかと思われ。

147 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/19(月) 18:00:10 ID:WuFSwQYA
キャラへの思い入れは必要だろう。要は物語のバランスの問題だろうけど。
なんにせよFF5書きさんには頑張ってもらいたい。ここはまったり進行だし。

148 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/19(月) 22:39:19 ID:qwnqRUuK
 一人で書いている分、粗が目立ちやすいというのはあるな。


149 :144:2005/09/20(火) 10:44:20 ID:zVmScoaX
申し訳ない。
自分は創作文芸板の住人で、あちらの板のノリでコメントしてしまった。
あっちの板は作家志望が集まって、作品を発表&互いに批評しあうというスタイルなんだけど、
その雰囲気をこちらに持ち込んでしまったのはこちらのミスだ。
荒らす意図はさらさらないが、結果として荒らしてしまった。
重ねて謝る、本当に申し訳ない。

150 :FF5書き ◆ujT2O/oVh6 :2005/09/20(火) 13:35:57 ID:D/StrHTN
>>149
ご指摘どうもです。
駄目な所は自分じゃ分からないですし・・・
メリハリがないのは流れを把握する為、ゲームと同時進行で書いていたからかもしれません。
あと、別に荒れていないですよ。

ただ、正直、自分が今まで書いて来た以上のものをこれから書くってのも難しいです。
今まで書いてきた感じのものが自分の精一杯なもので・・・

なので、無責任かもしれませんが、他の書き手さん募集します。
一応このスレはリレー形式でやるってのもありますし。

なんか自分勝手で、読んでくれてる方には大変申し訳ないです。
いままでちょっとでも読んでくださった方、大変感謝です。
では。


151 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/20(火) 18:34:49 ID:viZzpjSV
>>149
別に問題ないと思う。このスレだって「真面目」に創作していくコンセプトなんだから
質を追求するのはむしろ必要なはずだ。

いや、偉そうでごめんなさい。作者陣乙です。

152 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/20(火) 19:36:35 ID:Vhs/OY+L
>>150
てゆーかゲームまんまのセリフ回し変えて擬音無くせばかなり化けると思うよ
諦めないで頑張って

いやマジで

153 :299:2005/09/22(木) 01:23:03 ID:ZO284M9O
FINAL FANTASY IV #0235 4章 3節 山間(20)

「何者だ!」
テラはその影に向けて疑問を言い放った。
急遽。姿を現した影は、一見すると粗末なローブを来た男の様に見えた。
いや、男とは言い切れないかったかもしれない。
何故なら、対峙したこの男からは生きている感じがまったく感じられなかった。
まるで冷たい死体が突然動き出したかのように冷徹な雰囲気であった。
「いかにも……私はゴルベーザ様に使える四天王の一人、土のスカルミリョーネ。
暗黒騎士とその仲間達よ……貴様達の息の根を止めに来てやったぞ!」
テラの疑問を悟ったかの様なタイミングでその男――スカルミリョーネは丁重に自己紹介を始めた。
「ゴルベーザ……」
やはり自分を……狙っているのか。でもどうして?
もしかするとファブールに自らが出陣してきたのも指揮をとる為でなく、セシルに会いにきたのかもしれない。
バロンを手にするだけなら、一介の暗黒騎士――それも国を追われたものなどを
いちいち相手にするのは何故だろう? ここまで固執するのには理由があるはず……
「おい、いいからそこをどけろよ! おいら達は急いでるんだぞ」
思考に浸るセシルをよそにパロムはローブの男へ抗議をする。
「ふふふ……パラディンの試練を受けるつもりだろ。だが、そうはさせんぞ。
ふふふ……」
「無視すんなよ! 何が可笑しいんだよ」
高笑いを続けるスカルミリョーネに頭に来たのかパロムが声を荒げる。
「ふふふ……ははははは……」
「くーーー何なんだよ!」
「パロム! 危ない」
地団駄を踏むパロムに突如、側面から何者かが飛びかかってきた。

154 :299:2005/09/22(木) 01:24:19 ID:ZO284M9O
FINAL FANTASY IV #0236 4章 3節 山間(21)

「え……わっ!」
襲いかかってきたのはアンデットであった。腐食し、今にも崩れ落ちそうな腕をパロムに叩きつけてくる。
咄嗟に横に飛に回避しようとするが、振り下ろされたではポロムの脇腹をかすめた。
そのままパロムはドサッと勢いよく地面に倒れ込んだ。
「大丈夫!」
「ああ……何とか。くっ!」
慌てて駆け寄るポロムを安心させるかのように口を開く。だが、ダメージを負った脇から血が流れ始めている。
「じっとしてて、結構な傷よ」
ポロムは直ぐにでも立ち上がろうとする彼の体を押さえ白魔法の詠唱に入る。
「はははーーーっ! 思ったよりも素早いのだな」
「あったりめーだよ! いつも長老に追い回されていたからな。逃げ足だけは誰にも負けねえ……ぜ…」
勇んで言葉を返すパロムだが、最後の方は言葉にならなかった。顔は青く、かなりの無茶をしている事がうかがえる。
「じっとしてるんだ、パロム。こいつは僕らで何とかする」

155 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/22(木) 01:25:08 ID:ZO284M9O
FINAL FANTASY IV #0237 4章 3節 山間(22)

「さて……まだこんなものではないぞ」
そう言ってスカルミリョーネが指を鳴らす。途端、音を待ってましたといわんばかりに岩陰からさらに数人のアンデットが現れる。
「パロムを襲ったのはそいつらか!」
視点の定まらぬ虚空の目をみやりセシルは確信めいた様子で呟く。
「ふふ……察しがいい」
「でも……何故?」
道中、セシル達は何度もこの山の霊気に取り憑かれたアンデット達と戦ってきた。
そのモノ達の動作はいずれも緩慢で特に苦戦する事もなかったのだ。
しかし、先程パロムを襲ったアンデットの動きは目を疑うかのような速さであった。
「教えてやろうか。このアンデット達は私が直接指示を出している。本能だけで行動する
唯のアンデット達と一緒にすると痛い目をみるぞ」
セシルの疑問を感じ取ったのかスカルミリョーネは説明する。そして一息ついて、最後にこう付け加える。
「さて、暗黒騎士よ……その剣では私のアンデット達は倒せないよ。どうするかな?」
「!」
今まで心の何処かに置き去りにしていたものを暴かれた気分になった。
セシルは鞘に納められ、静かに佇む相棒を見やった。
巨鳥をも一太刀で息の根を止めてしまうデスブリンガーだが、やはり暗黒剣である。
生なきものたちには全くと言っていいほど効果がない。
「ふふ……どうするかな……」
ローブの奥、誰も伺い知る事のできない口が密かに緩んだ。

156 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/22(木) 09:35:34 ID:hQwcZNY4
299氏

GJ!!

157 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/23(金) 00:44:55 ID:Chvfp8RG
>>299
いいなぁ、書こうと思ったんだけど、
実際書くとなるとかなり難しいよね。乙でした。
>>五書き
他の書いてる人のもみながらがんばって。
書く量がかなり多いから、楽しみです。
>>433
前スレで色んな意見でたけど楽しみにしてる人はいっぱいいると思います。

158 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/24(土) 21:33:39 ID:qQjPCOmz
5の続き書いてるんだけど出来たら投下してもいいよね。
ちなみに前書いてた方とは違う者です。
ヽ(;´Д`)ノ甘口評価ヨロスコ

159 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/25(日) 11:51:56 ID:ZzThdVbW
DQ8-1 プロローグ1

トロデーン王国。
北東の大陸のほぼ全てを領し、トラペッタ、リーザス、ポルトリンクなどの街や、
南部にある砂漠地帯を含む、広大かつ強大な王国だ。
俺の名はエイト。
王国近衛軍の末端に籍を置いている。
王国に事あらば、王の直轄軍として戦場を駆け巡る身だが、この平和なご時世、
やることといえば王都トロデーン城の哨戒や王族の身辺警護くらいのものだ。
「近衛兵エイト、どこかっ?」
遠くで俺を呼ぶ声がする。まずい、鬼軍曹だ。
「星の数より飯の数」と言われる軍隊にあっては、軍属30年という経歴は圧倒的な存在感を持つ。
貴族出身のエリート中隊長ですら一目置く存在だ。
「エイト、参上しましたっ。哨戒任務、異常ありません!」
全速で駆け寄って、敬礼しつつ声高に報告する。
もちろん息も切らさない。
たとえ苦しくとも、近衛兵たるもの顔に出してはいかん。鬼軍曹の鉄壁の教えだ。
「報告よし!」
返礼する軍曹。
「近衛兵エイト、現時刻を以って哨戒任務を解く。
兵団長どのがお呼びだ、急行せよっ、駆け足!」
「はっ!」
良かった、お叱りじゃなかった・・・しかし兵団長が俺を呼ぶとは、
また例の件だろうか?
兵団長の元へと駆けながら、俺は少し面倒な気分だった。

160 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/25(日) 11:55:23 ID:ZzThdVbW
>>8を読んで、DQ8のノベライズは可と判断したんですけど、駄目っすか?
駄目ならもういたしませんので、そう言って下さい。

161 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/25(日) 11:57:40 ID:cRzHMkow
>>159
うわ、楽しみ。是非おながいします!
駄目なら別スレで・・・??

162 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/25(日) 11:57:42 ID:dHzwAn7Y
あげ

163 :158:2005/09/25(日) 12:07:17 ID:KZLr2UYa
FINAL FANTASY 5 (50) 「飛竜」1

生ける屍、アンデッド達の巣窟となっていた『船の墓場』から脱出したバッツ達は、まず地図を広げた。
もともと放浪の旅人であったバッツや、海賊の頭をつとめていたファリスは、
慣れた手つきで太陽の位置や、時刻などから大まかな現在位置を特定した。
「トルナ運河を越えて、そのまま流された。オレが知る海流の流れ、太陽の位置と時刻からして・・・この辺りだ」
そう言ってファリスは地図のある地点を指差した。
トルナ運河から東、水のクリスタルがあるウォルス地方から北に位置する地域。
ファリスの後ろから地図を見ていたレナが説明を加える。
「ここから南へ行くとカーウェンという港町が見えてくるはずよ。でも、ここから徒歩ではウォルスへは行けないわね・・・」
「でもカーウェンは港町なんだろ?だったら近くのウォルスに船が出ているかも・・」
このバッツの言葉に返されたのは、溜め息だった。
「忘れたのか、風が止まってしまったいま、船は走れないんじゃ」
「あ、そっか。俺達はシルドラの力で船を動かしていたんだったな。そのシルドラも今は・・」
「バッツ!!」
迂闊な言葉に檄を飛ばしたのはレナだった。
怪物によって海に引きずりこまれた海龍シルドラは、ファリスの無二の親友だった。
「・・・悪い・・・」
目を伏せていたファリスは、顔を上げて笑った。
「別にいいさ。今はこれからのこと、だろ?」
「・・・ああ、そうだな!」

164 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/25(日) 12:08:52 ID:KZLr2UYa
FINAL FANTASY 5 (51) 「飛竜」2

「今日はここでキャンプを張ろう。幸い見晴らしもよくてモンスターも寄り付いてる様子は無い」
結局、明日カーウェンへ向かい、その後の方針はそれから決める事にした。

ファリスが持ち前のリーダーシップを発揮して、野宿経験のほとんどないレナとガラフを指導していた。
「ガラフは、さっきあそこの林の奥にあった沢に水を汲みにいってくれ。レナはオレと火を起こすための薪を拾いに行くぞ」
「うむ、まかされた」
「はい」
ガラフは太い竹で出来た水筒を数本抱え持って林へ入っていった。
レナは最初こそ戸惑ってはいたが、今はピクニック気分のようだ。
「俺はここで見張りをしてるよ」
バッツをキャンプに残し、ファリスとレナは先ほどガラフが入っていった林へと入っていった。

薪拾いをしている間、レナは故郷タイクーン城について話していた。

「・・・それで中庭の花が春になると一斉に咲き始めるの。テラスに出ると凄くいい香りがするのよ」
仕事が忙しくて、花の香りを楽しむなんてあまりできないけどね。と最後に付け加えた。
ファリスは、レナの話を聞きながら、彼女の胸元に光るペンダントを盗み見ていた。
「そう、そのテラスには、世界で最後の1頭になった飛竜がいるんだけど・・・」
『世界で一頭しかいない最後の竜』、見たことのないはずのその姿を、何故か自分は知っている。記憶の片隅に。
「お父様が風の神殿へ飛んで行ったきりね、タイクーンに戻っていればいいのだけど・・・」
レナが心配そうに俯く。それほどに大切なのだろう。友人、いや、家族のように思っているかもしれない。
自分と、シルドラのように。
「へぇ、飛竜か、その背に乗ってみたいもんだね」
レナが笑顔に戻る。
「そうでしょ?空から下を見ると何もかもが小さく見えるのよ。まるで魔法のレビテト・・・じゃなくて、ミニマムをかけたようなの。
 ・・・何故かしら、この話をすると決まって魔法を間違えるのよね・・・」

165 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/25(日) 12:10:08 ID:KZLr2UYa
FINAL FANTASY 5 (52) 「飛竜」3

ファリス達が帰ってすぐに夜の帳が落ち始め、4人は焚き火を囲んで夕食をとっていた。
ファリスが(黒焦げにしないよう)弱いサンダーで痺れさせたところを仕留めた野鳥の肉と、
レナが帰り際に摘んだ食べられる野草と薬草で作ったスープだった。

「さて、ここらで俺達の旅の目的を確認したいんだが」
切り出したのはバッツだった。
「各クリスタルを管理する者に風のクリスタルのことを伝え、クリスタルのエネルギーを増幅する装置を止めてもらう、だよな」
ええ、とレナ。
「クリスタルが砕けてしまうと、風は止まり、水は輝きを失い、火の力は弱まり、土は痩せる」
「クリスタルは、文字通り世界の命ってわけだ」
レナが続けて言う。
「火のクリスタルはカルナック、水のクリスタルはウォルスが管理してるわ。まずはウォルスね」
「む?土のクリスタルは、一体どこに管理されておるんじゃ?」
その当然の疑問に、レナは口を濁した。
「それが、わからないのよ。だからもちろんエネルギー増幅装置も取り付けられていないはずだから大丈夫だとは思うけど」
会話を締めくくったのはファリスだった。
「とにかく目前の事を考えよう。まず明日はカーウェンに行き、そこからウォルスへわたる方法を探る。いいな?」
場の全員が頷いた。

夜の帳は完全に落ち、二人ずつ交代で見張りを立て、就寝することにした。

166 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/25(日) 12:13:36 ID:KZLr2UYa
FINAL FANTASY 5 (53) 「飛竜」4

バッツは普段から旅生活なので、落ち着いて眠ってしまった。
ガラフも老体に疲れが溜まったのだろう、深い眠りについている。
ファリスとレナが今は見張りをしているが、レナはファリスに背中を預け、うとうとと眠ってしまった。
ファリスのほうから「今日くらいは眠れ」と言ったのだが。

一人眠れないファリスは、ある予感とともに夜を過ごしていた。
自分の幼少時の記憶が戻るかもしれない、という予感。
その鍵を握っているのは、自分の背で眠っている少女。

パシン、と、小さく自分の頬を叩く。
(今は今のことだけ考えなきゃ。これからは重大な意味を持つ旅をすることになる。これまでとは違う・・・)
ぶるっと体が震えた。寒さのせいか、武者震いか、それとも・・・
夜は更ける。

翌朝は快晴となり、一行は早々に南に向かって出発し、正午を過ぎて一時間したころ、カーウェンへ到着した。

カーウェンへの道すがら、何度かモンスターと遭遇したが、何とか無事に切り抜ける事が出来た。
内海を挟んで西側のタイクーン地方とは違う、屈強な野獣型のモンスター達だったが、
彼らより恐ろしい巨大怪鳥ウイングラプターや、運河の怪物カーラボスとの戦い、
何よりあの不気味なアンデッド達の中をかいくぐって来たのだ。恐怖など元より無かった。

「割と活気のある町で良かった。情報が集まりやすいから」
宿を確保して、買い物を済ませたバッツ達はさっそく情報を集めに回った。

167 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/25(日) 12:15:46 ID:KZLr2UYa
サバイバルとか旅とかの知識は0なんでそこら辺適当になってます。スマソヽ(;´Д`)ノ
それと前書いていた方、もし書き途中だったとかでしたらほんとすいません。
その際は気にせず貼り付けてくださいな。

168 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/26(月) 10:20:31 ID:ug46IY19
DQ8-2 プロローグ2

兵団長の幕舎に着く。
門衛に来旨を告げると、すぐに中へと通された。
「ああ、堅苦しい挨拶は抜きだ」
機先を制して兵団長は言う。
あらかじめ人払いを命じていたのだろう、幕舎には俺と兵団長の2人きりだ。
「いかがなさいました?」
人払いされてることもあって、俺はくだけた口調で話しかけた。
他人が見たら、ことにあの鬼軍曹が見たら、俺は即座に営倉送りだろうな。

俺にとって、兵団長は親代わりに近い存在だ。
俺は捨て子。拾ってくれたのが兵団長夫婦というわけだ。
そして俺を城の小間使いとして斡旋してくれた。
子宝に恵まれなかったせいもあって、兵団長夫婦は何かにつけて俺を目にかけ、
可愛がってくれた。
貴族出身の家柄ゆえ、拾い子の俺を家族として迎える訳にはいかなかったが。
素性の知れぬ俺が、貴族の子弟を中心に構成される近衛軍に入隊できたのも、
ひとえに兵団長のお陰なのだ。
いや、あとひとつ、別の理由があるにはあるが・・・

俺の思索をよそに、兵団長が話を続ける。
「うむ、実はまた、姫君がな・・・」
ああ、やっぱりだ。俺は気が重くなった。

169 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/27(火) 10:54:14 ID:Zgtlf4f8
DQ8-3 プロローグ3

「またですか。今度はいったい何なんです?」
更にくだけた口調で問いかける。これも親代わりの兵団長への孝行なのだ。
子のいない兵団長には、親として振舞いたくともその機会がない。
が、俺と接する時だけは、親子を疑似体験できる。
父親として俺と接することが嬉しいのだ。それゆえの人払いなのだ。
「ああ、『なんだか胸騒ぎがする、エイトをこれへ』との仰せだ」
「そんな、俺はもう城の小間使いではないんですよ」
親孝行のつもりで、俺はさらに甘えてみせた。
兵士の返答には「はい」と「いいえ」の二つだけ、これも鬼軍曹鉄壁の教えだ。
上官、しかも兵団長に三等兵が口応えするなんて、軍曹どのが知ったら、
最低でも地獄のレンジャー特訓7日間は難くない。
「まあそう言うな、エイトよ」
満更でもなさそうな表情で兵団長は続ける。
「城には姫君と年の近い者が少ない。お前はその数少ない一人。
しかも幼馴染みとして、色々と目を掛けて貰って来たではないか」
・・・確かにその通りだ、俺が近衛軍に入隊できたのも、兵団長の後ろ盾とは別に、
姫君が俺を出来るだけ近くに置きたいと所望したせいでもあるからだ。

170 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/27(火) 11:14:49 ID:Zgtlf4f8
DQ8-4 プロローグ4

「それにだな」
父親の顔になって兵団長は続ける。
「王族の身辺警護も、近衛兵の大切な役目のひとつなのだよ」
「そんな、たかが胸騒ぎ、警護の必要などありませんよ」
「甘えるなエイト!」
口調とは裏腹に、兵団長の顔には満面の笑みが。
「これは命令だ、よいな、即刻姫君のもとに出頭せよっ、駆け足!」

「ミーティア姫、か・・・」
姫君の居室へと駆けながら、俺は姫の事を想う。
幼い頃のミーティア姫は、わがままで腕白でイタズラ好きで、俺は散々振り回されてきた。
高貴な純白のドレスから突き出た、痩せぎすで陽に焼けて真っ黒な肌・・・
それが思春期に差し掛かる頃から、心身ともに急に変化し始めた。
清楚で控えめでおしとやか、肌は抜けるように白く、その美貌は近隣諸国にまで轟いている。
あまりの変貌振りに、俺はついていけないところがある。
姫の美貌にフラフラと吸い寄せられそうになる時もあれば、
昔うけた陰湿なイタズラを思い起こし、顔も見たくないと思ってみたり・・・
正直、俺は姫に対して、どういう感情を持っているのか、よくわからない・・・

171 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/27(火) 11:27:06 ID:Zgtlf4f8
DQ8-5 プロローグ5

「!」
回廊まで差し掛かった時、突き上げるような揺れに襲われた。
同時に、周囲が怪しげな光に満たされる。
いったい何があったのか?
ゴゴゴゴゴ・・・
遠くから地鳴りの様な低い音が聞こえてくる。
俺は音源を探った。
城の中心部のようだ。もしやミーティア姫の居室?
地鳴りは徐々に音量を上げている。
まるで何かがこちらへ近づいてくるようだ。
次の瞬間、緑色の塊のようなものが、俺目掛けて突っ込んできた。
よける暇もなく、俺は緑色の塊に弾き飛ばされた。
何なんだ、いったい・・・
薄れゆく意識の中で、俺は姫君の身を案じていた。
姫、ミーティア姫・・・
暗転。


172 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/27(火) 11:38:44 ID:Zgtlf4f8
以上でプロローグ終わりです。
次回からはいよいよ本編突入したいと思ってます。

173 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/28(水) 17:06:10 ID:auWnmU/V
保守

174 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/28(水) 21:20:37 ID:J5VHoA2a
みんなGJ!
なんだかちょっと見ないうちに新しい人たちが出てきて、
いい感じに勢いついてて良いなあ!

はじめにFF5書いてた人、また気が向いたら戻ってきて欲しいな。

ところで297さんと433さんはどこに…orz
433さんは嫌気さしちゃったんかな…
それだったらなんとなくわかるけど、297さんまで一緒に消えなくっても…

175 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/28(水) 23:50:53 ID:IiBVQk68
◆HHOM0Pr/qI氏もだな…
297氏はシドの出てくるくだりが最高だった。

176 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/29(木) 09:46:18 ID:F9PqA1Mf
でもリレースレだし書き溜めしてるのかも

177 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/29(木) 21:22:45 ID:kGfv7bJn
書き手には原因不明のスランプがしばしばあるものです

178 :297:2005/09/30(金) 00:41:19 ID:/8cNpEj9
いろいろどうも……でも単に受験だったりします(´・ω・`)
連載中のみなさん頑張ってください。

179 :299:2005/09/30(金) 02:02:50 ID:n72fyiO4
何と、受験生だったんですか。
その歳であれだけの内容を書いてたとは。
いやはや…凄いです。
では、落ち着いたらいつでも戻ってきて下さい。
自分も読むのを楽しみにしてます。

180 :297:2005/09/30(金) 03:40:02 ID:/8cNpEj9
FINAL FANTASY IV #0238 4章 3節 山間(23)

 と、鞘にかけたまま動かないセシルの手を、突然テラの杖がしたたかに打ち据えた。
「セシル! 何を迷っておる!!」
「テラ……!」
「おぬしに出来ることなど一つしかないじゃろうが! ならばそれをやれッ!!」
 テラの杖が一転して弧を描き、中空に陣を描いた。その軌跡が光を発した、と思った次の瞬間、
円陣からいくつもの火球が飛び出し、迫りかけていたアンデッドたちの顔を焼き焦がした。
連中は間の抜けた仕草でしばらく火のついた自分の顔を叩いていたが、やがてその火が消えて
しまうと、またもこちらに迫ってきた。頼みの綱である魔法も、ほとんど効いてはいないようだ。
いよいよなす術がない、セシルが肩を落としかけると、再びアンデッドたちに炎が襲いかかった。
 驚いてセシルは横を見る。テラの横顔には微塵ほどの迷いも無く、既に次なる魔法の詠唱を
行っていた。落ち窪んだ瞳の中に映る炎が、セシルの躊躇を包みこんだ。
 その眼差しが逸れたときには、彼の剣は鞘から解き放たれていた。
「くらえぇ!!」
 デスブリンガーの闇が踊った。獣が喰らいつくような凄まじい暗黒波が、アンデッドの死肉を
駆け抜ける。たちまち死者たちは後方に吹き飛ばされ、力無く辺りに転がった。テラの炎で焦げ
固まっていた部分が弾け飛び、一匹の首が落ちた。
「おぉ、おぉ……!」
 後ろに控えるスカルミリョーネが仰々しく感嘆の声を上げる。そしてひとしきり感慨に耽ると、
彼はパチンと指を打ち鳴らした。それを合図に、またもアンデッドたちは起き上がった。
首を落とされた一匹も自分の頭を拾い上げると、平然と歩きだす。
「無駄、無駄。そんなものでは私の息子たちは殺せんよ」
 ことさら愉快そうに笑う魔道士に、セシルは剣を突き構えて静かに言い放った。
「それはこちらも同じことだ、スカルミリョーネ」


 ────不意にスカルミリョーネの笑みが消えた。





181 :297:2005/09/30(金) 03:41:13 ID:/8cNpEj9
FINAL FANTASY IV #0239 4章 3節 山間(24)

 その沈黙と同時に、周囲のアンデッドたちの動きまで止まってしまった。いや、正確には
止まっているわけではない。彼らは立ち尽くしたまま、まるで痙攣でもするかのように、
カタカタと身体を震わせていた。それも皆が皆、振り子のように同じ波長で揺れていた。
 その中心に、分厚いローブに包まれて、身じろぎすらしない影がいた。

「!!!」

 セシルたちは目を疑った。
 いきなりスカルミリョーネが大きく身を逸らしたと思った途端、その小さな身体がメキメキと
異形に膨れ上がり、ローブの下で暴れだしたのだ。やがて彼の身体の隆起は地面にも伝わりだす。
固い岩盤の地が波のようにうねり、その流れがローブの内側に流れ込んで、スカルミリョーネは
ますます膨れ上がってゆく。勢いは増しこそすれ、いっこうに衰える様子を見せない。
 アンデッドたちは、今や恐怖にのたうち回るがごとく強烈に震えていた。スカルミリョーネは
まだ大きくなる。ついにセシルの身の丈の二、三倍ほどにまで膨れ上がったとき、アンデッドの
一匹が弾け飛んだ。

 パチパチ、と枯れた葉を擦り合わせるような音で彼らはふっと我に返った。
 いつのまにかスカリミリョーネが拍手を贈っていたのだ。やはり小柄な姿で。
 周囲のアンデッドは、気味の悪いうなり声をあげて、フラフラと立っていた。その数はさっき
までと変わらない。首を切られた一匹が、なんとかまた身体にくっつけようと悪戦苦闘していた。
「素晴らしい」
 敬服と嘲りを均等に含むような、そろぞらしい声。
 拍手をやめると、スカルミリョーネはまたあの笑みを始めた。
「流石はゴルベーザ様のお目に止まった男、なかなか楽しませてくれる。
 だが……、その時間稼ぎがどこまで続くものかな…………クカカカ」




182 :297:2005/09/30(金) 03:45:04 ID:/8cNpEj9
FINAL FANTASY IV #0240 4章 3節 山間(25)

 残念ながらスカルミリョーネの言葉は的を得ていた。戦局は一時は均衡状態に持ち越されたが、
不利を抱えているのは明らかにセシルたちの方だった。彼らはこうして抗戦しているうちにも、
刻一刻と体力を消耗している。その一方で、疲れを知らないアンデッドたちはじわりじわりと
着実にその距離を詰めてくるのだ。このまま続けば結果は火を見るより明らかである。
 守る二人もそのことはわかっていて、先程から慌ただしく考えを巡らせているのだが、押し迫る
緊迫の最中のためか、いっこうに策が浮かばない。隣を見るもテラの方も同様らしく、しわがれた
額に焦燥の汗が照っていた。
 セシルの額にも汗がたれ始めた。
 こうしていても埒があかない。これ以上の体力の消耗は、避けた方がいいのではないか。
そんな不安が過り、無意識の内にセシルは剣を下ろしかけていた。

(このまま続けて!)

 背後にいたポロムが、風を切るような鋭い声でそれを止めた。
(ポロム…?)
(やめないで、テラ様だけでは防ぎきれませんわ!)
(だがこのままでは勝てない! これじゃどのみち時間稼ぎにしかならないんだ!)
(そう、あいつの言う通りです。ですから、その時間稼ぎをしてください!)
(────なんだって…!?)
 目を瞬いているセシルに背を向けると、どういうわけか彼女は自分の杖をローブの懐にしまい
こんでしまうと、立ち上がりざまにパロムの肩を小突いた。
(いけるわね、パロム?)

 顔を伏せたまま、苦しそうに胸を抑えていたパロムの口の一端が、不敵に持ち上がる。

「いったいオイラを誰だと思ってんだ?」



183 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/30(金) 08:14:40 ID:I01VZGnP

受験がんばってね。

184 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/09/30(金) 17:46:44 ID:sS+EdLVA
ふたりがけクル━━━(゚∀゚)━━━ッ!!!!

185 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/01(土) 01:08:46 ID:ZJtt4Gn8
悪いことは言わないから勉強しとけ。

186 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/01(土) 11:57:46 ID:5Z6Xtzqz
不自然な一行空け、改めた方がいいと思うよ。

187 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/01(土) 14:43:59 ID:be+Wy8p6
不自然というよりも読みやすいように配慮しているだけだろ。

188 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/01(土) 15:27:49 ID:dYZP//e7
携帯から見てると見難いのかな。
オレはこのままのほうが読みやすいけどな

189 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/01(土) 19:34:23 ID:ZJtt4Gn8
その辺は賛否両論なところだろうな。
文脈に応じて印象変わるよな……まぁ本職の作家なわけでもないし、いろいろと試行錯誤してるんだろう。
けど>>182は俺もちょっと見難い。

190 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/01(土) 19:54:58 ID:joNq4i/j
自分はこのままのほうが読みやすいんだが・・・・。

191 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/01(土) 20:24:45 ID:3qfUGQ8S
わたしも特に不自然とは思いませんでした…。

192 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/01(土) 21:11:56 ID:3Xki44S6
まぁ書く人が書きやすいようにでいいんじゃない?
「不自然」にはかんじなかったし

193 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/02(日) 00:05:36 ID:QCI6hrqq
受験生と知った途端みんな優しくなるw

194 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/02(日) 13:08:08 ID:gkeBMx4H
ageついでにだが、FF4又移植されるんだね。
http://www.legal-speed.com/~matsu/kup/p.php?p=15120.jpg

195 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/03(月) 10:11:04 ID:1ZfmUcNP
DQ8-5 エピローグ1

目が覚めると、俺は城の回廊に倒れ伏していた。
明るい。回廊の窓から陽光が差し込んでいる。
随分と長い間、このままでいたような気がする。

俺は何をやっていたのか?
どれ程の時が経過したのだろう?

しばらくそのままの状態でそんなことを考えていたが、
次の瞬間、全てを思い出した。

姫!ミーティア姫は?

急いで身を起こそうとするが、体が言うことを聞かない。
何とか立ち上がったものの、猛烈な立ちくらみに襲われた。
やはり相当の永きに渡って眠っていたようだ。
しかし今は姫の身が気に掛かる。
俺は自身の身体を引きずるようにして、姫の居室へと急いだ。
突如、ワーッという歓声が沸き起こった。どうやら庭園らしい。
俺は回廊から身を乗り出して、庭園を見下ろした。

あれは・・・姫!

人々の歓喜の輪が徐々に縮まっていくその中心には、トロデ王の御する馬車があり、
そこから姿を現したのは、紛れもないミーティア姫であった。
いったいどうなっているのか?

196 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/03(月) 10:51:48 ID:1ZfmUcNP
DQ8-6 エピローグ2

ここはトロデーン城の庭園。今は宴の真っ盛りだ。
振舞われたブドウ酒を舐めながら、俺は今回の騒動を振り返った。
トロデ王が語ったのは、まさに驚天動地の物語だった。

道化師ドルマゲスが、城の至聖所に侵入して神器の杖を奪い、城に呪いをかけたこと。
その呪いのせいで、城にいたものは悉く植物に姿を変えられてしまったこと。
俺が気を失う直前に見たものは、杖が発する呪いの蔦だったこと。
トロデ王とミーティア姫は、幸いにも結界のお陰で、植物になることはなかったが、
王は魔物に、姫は白馬に姿を変えられてしまったこと。
城の呪いを解くべく、王と姫はドルマゲス探索の旅にでたこと。
そして、何といっても俺が驚いたのは、呪いを解いた最大の功労者が、
幼馴染のアハトだったということだ。

197 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/03(月) 11:03:45 ID:1ZfmUcNP
DQ8-7 エピローグ3

アハトは、俺と同じみなしごだ。
俺と同じく城兵に拾われ、小間使いとして仕えた後に近衛軍に入隊した。
アハトは無口で無表情で、いつも何を考えているか良くわからない。
ネズミに名前をつけてペットにしているという、本当に変わった奴だ。
当然友人も少ないが、境遇が似ているせいもあって、俺とは気が合った。
そのアハトが、城に降りかかった呪いを解いたというのだから、本当に良く判らない。

「ああ、丁度よい機会じゃ、皆の者よう聞けい」
俺の思案をよそに、トロデ王が声高に叫ぶ。
「今回のアハトの働き、まことにもって見事であった。
アハトの功に報いるため、ワシは今ここに、
アハトとミーティア姫との結婚を宣言する!」
城内が一段と大きな歓声に包まれた。

なんてことだ・・・あのアハトが、姫と・・・
・・・今回は俺の出番はなかっったってわけか、やれやれだぜ・・・
俺は城兵に混じって酔い痴れることにした。

            (完)

198 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/03(月) 13:09:14 ID:mhs5j4pp
FINAL FANTASY 5 (54) 「飛竜」5

「・・・ったく」
「タイクーンのやつらはいったい何を・・」
がやがやと騒がしいここは、カーウェンの町のパブである。
酒、料理、煙草、汗。これらが入り混じった臭いが充満している。

そのカウンター席に、バッツ達四人の姿があった。
手にはそれぞれ、酒の入ったグラスがあった。
「注文して酒飲んで、マスターの気前良くしてからでないとちゃんとした情報が聞けないぜ」
という、自分が飲みたいだけという魂胆が丸見えのファリスの言葉に乗せられてしまっていた。
まあ、言う事も確かではあるのだが。

仕事が一段落したのか、パブのマスターがバッツ達に水を差し出した。
「あんたら冒険者かい、どっから来たんだ、こんな船以外の交流がほとんど無い町によ」
「タイクーン地方さ、まあ色々あって船が流されて、船の墓場から命辛々脱出したんだ」
バッツが出された水を一気に飲み干してから言った。
「あんなとこから!あんたらまさか幽霊じゃねえだろうな、ハハハ」
「ところでマスター、オレ達ウォルスに行きたいんだけどよ。何か方法ねえか?」
ファリスが遠い席から、白ワインを空けながら言った。
マスターは目を伏せ、溜め息をついた。
「悪いがそれは今は無理だな。船が出れないのは知ってるだろ。空でも飛べない限りな」
「そうか・・・」
先ほどバッツ達は港にも行ってみたが、東の山々から降りる風も、海から上がる風も本当に微々たるものだった。
ファリスがふと、周りを見て言った。
「まだ昼間だってのに、なんでこんなに客が?」
「彼らは漁師さ。まあ、今回ばかりはどうしようもねぇからな」
バッツ達はここでの情報収集を諦め、渋るファリスを連れて帰ることにした。

199 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/03(月) 13:10:27 ID:mhs5j4pp
FINAL FANTASY 5 (55) 「飛竜」6

パブのドアを開けたときだった。
「きゃっ!」
バッツの目の前に人型の物が飛び出してきた。どしんという音と共にバッツとぶつかり、
その人は地面に尻餅をついた。
「あっ、だいじょうぶですか!」
バッツに起こしてもらったその女性は、取り乱した風もなく頭を下げた。
「申し訳ありません。急いでいたものですから」
はあ、とバッツ。
「こんなパブにか?」
ファリスがマスターに聞かれたら皿を投げられそうな事を言った。
「ええ、うちの主人ったら、竜が北の山に飛んでいくのを見た!なんて町中に言いふらしているんですよ!
でも皆当然信じませんから、どうせまたこのパブの二階でいじけているに違いありません!」
豪気な奥さんで、ご主人がかわいそうだな、などとバッツ達が思っていると。
「本当ですか!?」
突然レナが身を乗り出した。
「その話!詳しく聞かせていただけませんか!」
女性はきょとんとして、目を丸くした。
「えぇ、あんな胡散臭い男の話をですか?・・・まあ私から何か言える訳じゃないし、
ここの二階にいるだろうから、どうせなら直接話を聞いてやってください。
・・・あ、それと私が家で待ってるって伝えておいてくださいね」
レナの勢いに毒気を抜かれたのか、まくしたてて喋り終えるとその女性は何事もなかったように踵を返した。

「どうしたんじゃ、心当たりがあるのか?」
パブ店内に戻りながらガラフは先頭を歩くレナに聞いた。レナは自分でも気づかぬまま早足になって答える。
「その人が見たって言う竜、その話が本当なら、多分間違いなく、お父様の飛竜だと思う」
「それって、昨日話してた」
ファリスの言葉にええ、とレナが頷く。四人は頑丈に作られた木製の階段を上った。
そこには、椅子に座りがくっとうな垂れた男性がいた。

200 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/03(月) 13:18:07 ID:mhs5j4pp
FINAL FANTASY 5 (56) 「飛竜」7

「なんだい・・・?わりいけど下で飲んでくんねえか、俺は一人になりてぇんだ」
男は大きな体をうな垂れたまま、四人のほうを見ずに言った。
どうやら町中の人に言ったはいいが町中の人に信じてもらえず、相当落ち込んでいるようだった。
バッツが一歩前へ出る。
「なあ、あんた北の山へ竜が飛んでいったのを見たらしいな。その事を聞きたいんだ」
途端に目を輝かせて男はがたっと立ち上がった。
「あんたら俺の話を聞いてくれんのか!おお、ここへ来てやっと信じてくれる人間が来てくれるとは!」
こんな調子のいい人間の話が本当なのか、分からなかったがとりあえず話を聞くことにした。
「うっはっは、まあ座ってくれや。どこから喋ったもんかな・・・」
話を聞いてくれるのが嬉しいらしく、バッツ達四人のことを何者なのかも聞かなかった。
バッツ達が席につくと、男は待ちかねたように喋りだした。
「今日の早朝のことなんだが、俺は港の荷物の整理をしてたんだ。そしたらよ、西から
何かが飛んできたんだ。最初は気にも止めなかった、鳥かなんかだと思ってたからな」
男は髭をもさもさといじりながら、思い出しながら話している。
「だが近づいてくるにつれ、鳥なんかじゃねえ、ありゃ竜じゃねえかって思って追いかけ
たんだ。あいつは町の北を通って北の山へ消えていった。俺は目がいいんだ!確かだぜ!」
間髪入れずにレナが質問した。
「その竜、えっと・・・そう、鎧を纏っていませんでしたか?」
「おお!嬢ちゃんあの竜を知ってんのか?確かにそうだったよ」
「間違いない、お父様の飛竜だわ」
バッツがレナに尋ねる。
「その飛竜は、俺達四人を乗せて飛べるんじゃないか?」
「ウォルスまでだって楽に飛べるはずよ」
ガラフが頷きながら歓喜した。
「うむ、上出来じゃ!では明日、北の山を目指すとしよう」
誰も異論は唱えなかった。次の目的地が決まったところで、バッツ達は宿に戻る事にした。
「そうだ、おっさん、あんたの奥さんが家で待ってるそうだ」
この伝言に、男はぎょっとなった。と思うと初めて見たときのようにがくっとうな垂れた。
「あぁ〜、明日からトイレ掃除一週間かなぁ。それならまだいいか・・・」
バッツ達は思わず苦笑した。

201 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/03(月) 13:19:05 ID:mhs5j4pp
FINAL FANTASY 5 (57) 「飛竜」8

宿に戻ったバッツ達はこれからの事を話しながら夕食をとっていた。
その中で、レナは一人沈黙を守っていた。
「・・・・・・・・・・・・」
その様子を訝しげに見ていたファリスが、レナに聞いた。
「なあレナ、さっきから黙ってどうしたんだよ。何か知ってることがあるなら少しでも話してくれ」
「・・・・・・・・・うん」
カチャ、とフォークを置くと、観念したように話し出した。
「あの山にはね、『飛竜草』という草が生えているの」
三人の視線がレナに集まった。
「飛竜は、傷を負ったり病気になるとその草を食べて治すの。飛竜草は飛竜にとってあらゆる
病気・怪我の特効薬なのよ。でもその代わり、飛竜の治療はその草でしか出来ない・・・」
「飛竜がその飛竜草が生えてる北の山に向かったってことは・・・」
「怪我か病気、ともかく治療が必要な状態ってことだな」
こくり、とレナが頷いた。皆の顔がわずかに曇る。
レナは、飛竜が四人も人を乗せて飛べないかもしれない、という事実を、皆の為に敢えて
隠していたのだった。
「明日は、出来るだけ早く出発しよう。飛竜草ってのがあるらしいから大丈夫だとは思うが、
早く行って看てやったほうがいいだろう」
しかし彼らにこれ以外の手立てはもはや無い。
ならば五分五分の可能性に賭けて、飛竜を探しに行くしかなかった。

その後彼らは翌日に備えてすぐにベッドに入った。
様々な疲れからか、四人の意識はすぐに夜の闇に溶けていった。

202 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/03(月) 13:26:32 ID:mhs5j4pp
>>166の続きです。
ヽ(´Д`;)ノヴァー 目に見えてクオリティが下がってしまいますた。
題名とかWの真似をさせていただいてますが問題ないですかね。
5はもともとストーリーの奥深さ、キャラの個性が弱いんでやりにくいっすと言い訳してみるテスツ。
まあもともとSSなんてこれが初めてなんでsうわ何をするやm・・くぁw背drftgyふじこl;p@:「」

203 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/03(月) 14:33:55 ID:g6SyyThl
乙乙!
いいよいいよー、読みやすい。次も期待してまっせ!

ところでDQの方、エピローグって……これで終わりなの?

204 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/03(月) 15:57:11 ID:mhs5j4pp
エイト≠主人公
アハト=主人公 っていうことかと。

205 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/04(火) 21:22:35 ID:gwG4WPe6
保守

206 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/05(水) 05:08:36 ID:7MvTlxqJ
FF6ノベライズスレって落ちた?

207 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/05(水) 10:15:27 ID:gYN6LC++
DQ8のプロローグ書いた者ですが、エピローグは僕ではありません。
いくらリレー小説とはいえ、これはないよ・・・

208 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/05(水) 11:40:34 ID:r31BUM1L
>>207
やっぱそうか。びっくりしたw
それならとりあえず>195-197はおいといて、続き頑張ってください。

209 :下手だけどさ:2005/10/05(水) 17:13:16 ID:3eW+kmil
かつて、この世界を愛し
この世界の仲間達と共に過ごした人々へ、
再び集いしこの時を捧ぐ――


足の下で、土埃が舞い上がり、夏の初めの爽やかな空気に溶け込んでいく。
赤銅色の前髪が視界を覆うたびに頭を一振りする。
子供達はそれをかっこいいと言う。だが、まだ幼く髪も短い彼らには少し早い。

荒野を駆け抜けて行く。
彼らと共に遠い昔歩んだ道を、子供達と共に。
目指すのは、ミッドガルの見える崖の淵。あの男の恩人が死んだ場所。
遥か後ろには、戦友たちの眠る花畑がある。
その地には妻も待っている。
クラウド、ティファ、バレット、シド、ユフィ、ヴィンセント、ケット・シー。
そこは、あの日の7人の為の楽園――「7th heaven」

ミッドガルを見下ろして、彼は、大きく吼えた。
その咆哮は、偉大で、逞しく、そして何処か悲しそうな泣き声のようだった。
それは、荒廃し、緑に覆われたミッドガルの中に長く響き渡っていた。


210 :下手だけどさ:2005/10/05(水) 17:13:47 ID:3eW+kmil
子供部屋 小さな看護婦


うぅ……

苦しげな声に、はっとして目を覚ました。
目の前の子供用のベッドに寝るデンゼルが、痛みで目を覚ましたようだ。
彼の額を覆うガーゼが黒く汚れて布団に落ちた。
看病の途中で寝てしまったのは今日が初めてだ。
遅くまで店に出ていたティファを気遣い、慣れない徹夜をして看病したせいだろう。
重たそうに腕を上げて、額に触れるデンゼル。
少し顔をしかめた後、少し顔をずらしてこちらを向くと、
「なあ マリン?どうなってる?」
と、掠れた声で聞いてきた。
きっと、怖いのだろう。
真っ黒に濡れた額を元に戻す方法は、見つかっていない。
星痕症候群。悪魔のような病気。
なす術も無く、子供達の多くはその痛みと体力を奪う力に倒れて行く。
彼の額も、前に見たときよりほんの少し酷くなって来ている。
泣きたくなった。でも、それは彼を絶望させるだけだ。
泣きそうになりながら、ほんの少しだけ笑った。
(神様、お願いです。もし居るのなら。
お願いです。どうかデンゼルを連れて行かないでください。)



211 :下手だけどさ:2005/10/05(水) 17:14:28 ID:3eW+kmil
酒場 看板娘の一日の始まり


ティファは小さな溜息を吐いた。
小さな小さなその溜息は、天井の空調設備と手元のコップの擦れる音に簡単に隠れる。
(クラウド……まだ、帰ってこないのかな?)
食器洗い機で取れなかった汚れに水をつけて、やや乱暴に擦りながらぼんやりと思う。
携帯を所持しているくせに、常に留守電。一方的にこちらの報告しか聞かない。
(……寂しいくせに)
それは、誰に向けられた言葉だったのだろう?
出ないくせに携帯を手放さないクラウド。
そんな彼を引き止めも追いもしない自分。
遠慮して甘えてこないデンゼル、マリン、孤児達。
エッジの場末のバー、セブンスヘブンの中には寂しさが蔓延しているようだ。
洗い終えたコップを戸棚に仕舞う。
食器洗い機からいくつかコップを新しく掴み出し、綺麗な物は横に置き、汚れがある物は水をためたボウルの中に突っ込んで、細く水を流しながら洗い始める。

ルルルルル……ルルルルル……

すぐに顔を上げる。そして、すぐに顔を下に戻す。
クラウドからの連絡ではない。二階の小さな事務所の電話だ。運び屋を営むクラウドへの依頼だろう。
「……もうここには居ないんですよー」
ぼそりと呟いても電話相手には通じない。諦めて手を拭き、荒い足取りで二階へと向かい、デンゼルの様子をすれ違いざまに見ながら事務所へ。旧型の電話の受話器を取った。
「はい ストライフ・デリバリー・サービスです。当社はなんでも……どちら様ですか?」
馴れ馴れしく話し掛けてきた相手に問うと、軽い口調で長ったらしく説明を始めだした。怪訝に思いながら聞いていると、相手の横から割って入った低い声が告げる。
その名に、小さく笑った。二年ぶりの名前だ。
覚えている、その口調を真似る。かつては敵対した者の口癖。
「覚えてるぞ、と」

212 :下手だけどさ:2005/10/05(水) 17:15:26 ID:3eW+kmil
ミッドガル 孤独では無かった者の墓標


ザックスは、ソルジャーの中では最高ランクである、ソルジャー1stだった。
そして、流れる黒い長髪とそのあっさりとした性格で、誰よりも人気があった。
でも、俺は、そんな彼を見殺しにしてしまった。
エアリスは、ザックスを待ち続けていた。彼の死を伝えられた彼女は、どんな顔をしていたんだろう。
そしてエアリスをも、俺は見殺しにした。
きっと、2人が死んで悲しむ人達はたくさんいた。
俺は、彼らに会ったとき、どんな顔をすればいいんだろう?

「俺さ、お前に許されるのかな?」
男の墓標を、静かに見つめる。錆にまみれたバスターソードは、ザックスの形見だ。
目を、閉じる。2人の笑顔がフラッシュバックする。
同時に、電撃のように頭が一瞬痛み、よろけて、後ろに止めていた愛車に寄りかかってしまった。
幸いきっちりとスタンドが固定してあったため、その巨大な黒塗りのバイクが倒れる事は無かった。
低くうめく。じっとしているとすぐに痛みは引いた。
光の差し込まない、暗い曇天をそのまま真っ直ぐに見つめる。
それが何だか自分のようで笑えて来た。口の端で笑った。笑った気がしなかった。そういえば最近笑っていない。
笑えるくせに、笑顔を隠して心を閉ざしてしまっている。
何時だったか。ティファに言われた事があった。
そういえば、ティファから伝言があったなぁ、とぼんやりと考えた。
ユフィやバレットからの伝言は耳が痛くなるが、ティファからの伝言はそれ以上に頭が痛くなる。
愛車に座り直し、ハンドルにぶら下げた携帯に手を伸ばした。

213 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/05(水) 20:11:56 ID:JWrVwu/i
7も始まったか乙。

>>206
落ちたよ結構前に。新しく立てようか?

214 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/05(水) 20:14:09 ID:r31BUM1L
グッジョブ。これってAC?

215 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/06(木) 05:10:15 ID:C6RM2+Wv
ちょっと思ったんだけど、これから来る人または書く人がわかりやすいように、
短編の規制とか決めておいた方がいいんじゃないかな。これまでにも質問あったし。

んで、スレのコンセプトとか既にでてる意見からすると、
 ・まだノベライズされきっていない部分を抽出した短編は不可
 ・既にノベライズされた部分に基づき、筋に反しないような短編は可
 ・登場人物とは別に、ゲームの世界背景だけを用いた短編は可(exまとめサイトの魔列車編)


……と大体こんな感じで問題ないと思うんだけど、ひとつ聞きたいのが、

 ・ゲーム中で描写の無かった、登場人物の過去等についての短編

これはどうなるんだろう。一応は補完部分に反しないことになりそうなもんだが…。
それとも、ノベライズの本筋とは別物の短編を書く事自体、そもそもスレ違いなのかなぁ。
長々と失敬。

216 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/06(木) 08:55:47 ID:V6MiaTZ/
>>213
亀レスだが頼む
>>215
未収録エピソードはぜひ見たい

217 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/06(木) 13:01:52 ID:wXp8Guy9
敢えて言わせてもらうと、
DQ8のエピローグ、結構面白かったよ。
ミステリーで言うところの「叙述トリック」って奴だね。
あ、うまいこと一本取られたぜって感じだった。

が、リレー小説スレに投稿する作品として、適しているとは言えないな。
もう少し節度を持った作品作りを心掛けて欲しい。
次回作、期待してるからね。

218 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/06(木) 13:06:01 ID:olVop48p
DQ8の小説は、ちゃんと投下できる場所があるからそこでした方が喜んでもらえるぜ。

千一夜スレッドか、小説を書いてみるスレッドとか。

219 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/06(木) 23:46:23 ID:bouzR8lW
>>216
立てたよ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1128609819/

220 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/06(木) 23:47:05 ID:bouzR8lW
ついでにageとく

221 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/07(金) 12:01:54 ID:dc1HNIW3
乙。でもボロクソ言われてるな…

222 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/07(金) 12:22:35 ID:WtN9jdbz
個人的にはこっちのFF6が盛り上がってくれればそれで言うこと無いな。
向こうのスレ他のシリーズのキャラが出てるのがちょっと嫌だったし。

223 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/07(金) 17:06:37 ID:DxvdZxwe
>>215
ゲーム中で直接の描写はなかったが設定や台詞だけで説明されてる場面とかキャラの過去とかは多いからね。特にFFには。
そういう掘り下げがあってこそのノベライズだと思う。ていうかそうじゃないとわざわざ文章化する意味が無い。

224 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/07(金) 17:13:37 ID:WtN9jdbz
>>223
同意だけど>>215が言いたいのはそれを短編として投稿していいか、という話だろう。
個人的にはいいと思うけど、判定難しそうだな……。

225 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/08(土) 20:57:22 ID:8HKntcd2
待つ

226 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/09(日) 16:00:28 ID:GzdYSvyu
FF2は公式に出てるからアウト?

227 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/09(日) 18:12:45 ID:uUUUa1jX
>>226
あの小説はそんなに評判よくないし、
別に書いてみてもいいんじゃないかな?
FFだし。

228 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/09(日) 20:49:21 ID:gbI84008
>>227
コンセプトで、公式の小説が出てるものはあえてこの板住人がノベライズする必要はない
と言っている

229 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/09(日) 21:12:14 ID:SvryzBiR
>>228
その理由はプロの作品にはかなわないということから来ている。
つまりそれを上回る自信があるなら、例外的ではあるが書いてもいいんじゃないか?
おれはその小説読んでないけど、パンデモニウム等の重要イベントはしょってるって聞いたし、
つまり小説の方はストーリーを最初から最後まで完全小説化という方のコンセプトに反してるわけで
まあ書き手のやる気次第だろ

230 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/09(日) 21:19:18 ID:gbI84008
そうかもしれんがただなあ、
FF2の小説はゲームのシナリオライター本人が書いてるんだよ
だったらもうそれはFF2の公式のひとつ(プロの仕事)として認めて
名無し住人が手を出す必要はないと思う

231 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/09(日) 22:02:08 ID:pS5IDHLt
なるほどなぁ。
ところで……管理人さん不在だな………。

232 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/10(月) 02:17:37 ID:5Nv1m7gP
まとめサイト、最近更新されてないね。
忙しいのかな

233 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/10(月) 10:15:00 ID:1gUbnRi7
別に書きたければ書けばいいよ。
無いよりあったほうがいいじゃない。そこまで強制する必要ないよ。

234 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/10(月) 21:12:24 ID:rXZca3Oc
あげ

235 :勝手にACの続きを書いてみた:2005/10/11(火) 05:03:26 ID:PrXoaeT7

折り畳み式の携帯を開き、ここ数日分の伝言を順に再生していく。
もう指が覚えてしまっているほど慣れた作業だ。
というか、携帯の機種を変えてからそれしかしていないような気がする。

「リーブです。元気ですかぁ?
 クラウドさん、たまにはそっちから連絡してくれてもいいんちゃう?
 ティファさんにこの前会いましたけど、心配してま…」
「…クラウドさぁー、ホントにいつになったら留守電解除すんだよ?
 まあいいや、それより…」

最近はこんな内容のものがほとんどだ。
無理もない。
クラウドはかれこれ一年半以上も自分から連絡を取らず、ただ聞くだけの態度に徹しているのだから。
それだけの為に持っている携帯なら、いっそのこと湖にでも捨ててしまえと思ったことが何度もあるが、出来ない。
携帯を失うと、彼と仲間との接点が一つも無くなってしまうからだ。
そうかといって、こちらから積極的に電話をかけて、彼らと連絡を取り合おうとも思わない。
何をしているのか、何処にいるのかを、彼らに知られたくないのだ。
なんとも中途半端な自分を惨めな気分で笑いながら、クラウドは伝言を聞いては次の伝言を再生していった。
もちろん、本当に笑ったわけではない。笑うような仕草をしてみただけだ。
そうしている内に、最後の伝言になった。ティファからだ。
再生する。いつもと比べて、かなり簡潔な内容だった。
「ヒーリンにいるレノから電話があったよ。急いで来てくれって。
 クラウド…元気にしてるの?」
ツー。メッセージは、以上です。

その伝言を受け取った時、クラウドは少し面食らった。
レノ…丸2年ぶりに聞く名前だ。それにクラウド達とは敵対しているはずの人物。
そんな奴が俺になんの用だ?
しかもヒーリンと言えばなかなか高級な別荘地ではないか。あいつ、そんなところで何してるんだ?
疑問が次々浮かんでくる中、クラウドはゴーグルをかけ、バイクのエンジンを吹かした。
直接会って確かめるのが一番すっきりするだろう。

236 :勝手にACの続きを書いてみた:2005/10/11(火) 05:05:14 ID:PrXoaeT7

クラウドがヒーリンを目指してバイクを走らせてから数分後、
地面に突き刺さった墓標代わりのバスターソードの前に、3台のバイクが現れた。
3台とも、クラウドのものに近い――つまり、ありえないほど巨大な――サイズで、
車体の外観はどことなく生物的だった。
バイクがバスターソードを囲むように停車する。
中央のバイクに乗っていた男が、邪魔臭そうに墓標を蹴り飛ばした。
バイクを駆って現れた3人は、みな髪は銀色で、上から下まで黒一色のスーツに見を包んでいる。
彼らは暫くの間、眼前に広がる、荒廃しきったミッドガルを眺めていた。

「なあカダージュ、あれが兄さんの街か?」
流れるような長い髪を揺らし、鋭く冷たい眼を持った3人の内の一人が問う。
「ああ…」カダ―ジュと呼ばれた男が答えた。
3人の中では最も小柄で、美少女にも見違えそうな童顔だが、瞳に宿る狂気の色は3人の中で最も強い。
「歓迎してくれると思うか?」
最初に声を発した長髪が、申し訳程度にまた訊いた。
「無理、無理」少し笑いながら、カダ―ジュ。
「ハッ、泣くなよヤズー」
それまで無言だった男が、からかうように言った。他の2人と比べてかなり筋肉質で、大柄な男だ。
「母さんも一緒なんだよな?」
大柄な男を無視し、ヤズーが念を押すように問う。
「どうかな…」カダ―ジュの答えは自信が無さそうだった。
「泣くなよロッズ」
今度はヤズーがからかう番だった。見ると、ロッズと呼ばれた大男はしゃくりあげ、泣き出している。
その時、カダ―ジュが遠くに何かを見つけ、言った。
「ほら、兄さんだ」
ヤズーはカダ―ジュが視線を送っている先を鋭く見やり、ロッズも間抜けな声を上げて泣き止むと、同じようにした。
その視線の先には、バイクに乗って遠ざかっていくクラウドの後ろ姿。

それを見て謎の3人組は一様ににやりと笑った。ヤズーとロッズは邪悪な笑顔のまま顔を見合わせると、
エンジンを派手に吹かし、急発進した。

237 :勝手にACの続きを書いてみた:2005/10/11(火) 05:08:17 ID:PrXoaeT7
書きながらちょっと思ったけど
ACの戦闘ってあれがこーなってそれがあーなってって感じの展開が細かく決まってるから
ほかのと比べてちょっと自由度低そうだね

238 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/12(水) 15:59:17 ID:4HblozTw
保守

239 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/13(木) 20:00:41 ID:+Q7VGFVZ
誰もいなくなっちゃったのか?

240 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/13(木) 20:08:44 ID:K2uTcu+x
>>236続きキボン!

241 :297:2005/10/13(木) 23:56:16 ID:xePae7Cx
>>215の意見が気になるので短編一個かいてみた。
あとAC乙ですー。

242 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/13(木) 23:58:51 ID:oUyt4JmY
>>241
何の短編?

243 :竜の騎士団:2005/10/13(木) 23:58:52 ID:xePae7Cx
 
 東西に広くその身を連ねる、雄大な山脈の山合から差し込む朝日を受けて、その城は目覚める。
積み上げられた石壁は宵闇の黒から本来の灰色へ、やがて輝くような銀に染まり、見惚れるような
美しい城郭の全貌を燦然と見せつける。その変化が終わらないうちに、尖塔の一つから勇ましい
ラッパの音が響き渡り、たちまち静まりきっていた城内に兵士達の波が溢れかえる。諸外国にその
圧倒的なまでの威を誇る、超軍事国家バロンの夜明けである。
 城下は強固な城塞で守られ、さらにその周囲を広大な海と険しい山脈地帯が囲んでおり、天然の
要塞は外敵の侵入を許さない。また同時に豊富な山川は地に実りを与え、湿潤な気候と豊饒な土が
齎してくれる恩恵は、一国の民が享受しきるにはあまりあるほどである。これら全てのおかげで、
バロンの民は今日も安らかな朝を迎えることができるのだ。だが、このような理想的な環境を手に
するまでには、もちろん容易ならざる道のりがあった。
 もともとバロン地方は魔物のはびこる大地であった。そこに多くの勇猛な部族達が決死の覚悟で
入り込んできたのだ。魔物達から土地を奪った後も彼らの争いが終わることはなく、豊かな土地を
巡って次々と戦が繰り返された。長い戦乱の歴史、その果てについに勝ち残った部族こそが、彼ら
バロンの民だった。
 それを「血塗られた歴史だ」と非難する国もあれば、「栄光の軌跡だ」と褒め讃える国もある。
バロンに生きる人々は、そのどちらでもない。そこは祖先が守ってきた土地であり、また彼らが
守るべき土地であるというだけだ。
 魔物達もこの地を諦めたわけではなく、山陰の奥深くに息を潜めながらも、自分達の領地を取り
戻そうと常に目を光らせている。このため例え争いの無い時でも、バロンの軍備が怠られるような
ことは決してない。
 そのバロンの軍隊は主に陸軍、海軍、空軍の三部隊で構成され、各部隊はさらに複数の兵団に
分かれている。比較的弱戦力である海軍は、海兵団や傭兵団。兵士達の大多数を占める陸軍は、
陸兵団、騎兵団、魔道士団、近衛兵団などで組織されている。そして、強大なバロン軍の中でも
ずば抜けた戦力を誇るのが空軍であり、この部隊はたった二つの兵団で構成されている。



244 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:02:07 ID:xePae7Cx
 そしてもう一つが、竜騎士団である。

 彼ら竜騎士は、鍛え抜かれた鋭い槍技、そして見上げるような城壁も一飛びに超える驚異的な
脚力を以て戦うが、もうひとつ、飛空艇に勝るともそうは劣らない強力な武器を持っている。
それが彼らを竜騎士と呼ばしめる由縁、空を馳せる王者、飛竜である。彼らは竜と共に戦うのだ。
 実はバロンの祖が生き残れたのも、この飛竜と言う生物のおかげだ。少数民族であったバロンが
この地の征服者になることができたのも、彼らの助けがあってこそであった。
 古の時から変わらず竜と共に生き、死んでゆく誇り高き竜騎士達。そしてその頂点に立つ男こそ
他でもないセシルの親友、カイン=ハイウィンドである。

 ところで、「カイン=ハイウィンド」という名は彼の本名ではない。
 ハイウィンドとは、空を知り、風を知り、そして竜を知る者の証。歴代の竜騎士団団長にのみ
受け継がれてゆく、偉大なる称号なのだ。
 歴代のハイウィンド達は皆その名に恥じぬ素晴らしい騎士で、よく空を知り、よく風にその身を
乗せて、またよく竜を愛した。そして先代のハイウィンド───つまりカインの父親も、もちろん
例外ではなかった。
 彼は長い歴史の中でも抜きん出た英雄と讃えられるほどの人物で、その実力はもちろんのこと、
誰からも慕われる素晴らしい指揮官だった。温厚で仁愛に満ちた人格はいつも周囲を落ち着かせ、
朗らかな顔に染め、それでいてひとたび槍を振るえば、その勢いたるやさながら鬼神のごとき
凄まじいものだというのだから、部下達はいっそう敬服を深めるばかりであった。
 だが世に英雄と呼ばれる人間の多くがそうであるように、彼にも幸福ならざる結末が用意されて
いた。あるとき治安維持のため魔物の討伐の任に赴いた先で、彼は小さなカインを遺したまま、
戦死してしまったのだ。まだ齢三十にも満たない若さである。誰にとっても、早すぎる死だった。

 人間の価値はその人物の葬儀を見れば判ると言う。王も参列した厳かな葬儀では、同列していた
大勢の騎士達が咽び泣いた。彼らの涙の一雫ずつに、団長の高潔な人柄が窺い知れたことだろう。



245 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:03:41 ID:xePae7Cx

 もっとも彼の死はある時期まで公にされなかった。当時バロンはまだ開発段階であった飛空艇の
発展に力を入れており、ミスリルとの交易を押し進めている最中だったのだ。優秀な軽金属である
ミスリルはそれだけ扱いが難しく、繊細な技術を持つミスリル人達の協力が不可欠だった。しかし
小心な彼らは軍国であるバロンに警戒を抱いており、交渉はなかなかうまくまとまらず、それでも
慎重に慎重を重ね、王自らも何度か訪問し、ようやく交易の確立にこじつけていた、その折りへの
急報だったのだ。
 この時期に国内のゴタゴタなどが知れて、折角まとまりかけていた交易が延期などということに
なってしまっては元も子もない。王は慚愧の念を飲み込んで、彼の死を伏せることにした。
 治安上の問題もあった。当然その頃の竜騎士団はバロンの最たる戦力であり、団長の急死とも
あればその影響は国の内側だけに留まらない。たちまち周辺の豪族などは活気づき、それに伴って
魔物も騒ぎだすだろう。いずれにせよ、当分は漏らしたくない事実であったということだ。
 結果、このことは竜騎士団と、各兵団の団長にのみ知らされるところとなった。
 そして、もう一つだけ。
 王の念頭には、幼いカインの存在があった。

 七歳を迎えたばかりのカインは、二年前に実の母親を病で亡くしていた。生前の母親は理知的で
穏やかな女性であり、カインもとてもよく懐いていた。それだけに、彼女が死んだときの悲しみも
大きかった。それは五歳の少年にはあまりに受け入れ難い事実で、光に満ち満ちていたカインの
世界は一変してしまった。彼は大好きな槍も捨てて、父親とも口を聞かず、ろくな食事も摂ろうと
せずに、毎日部屋にこもったままベッドの上で泣き伏せるようになった。父親にもどうすることも
できなかった。叱ったり慰めたりしたところでどうにかなるようなことではない。結局、彼自身も
深い悲しみを抱えながら、ただ時の流れに任せるしかなかった。

246 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:04:30 ID:5KjLTY+Q
 そんなカインを救ってくれたのは、幼馴染みのローザと、やがて学校で出会ったセシルだった。
ローザは毎日カインを見舞い、懸命に辛抱強く彼の心を癒した。そしてセシルは、彼のやさぐれた
心に再び槍への熱意の火を灯し、離別の悲しみからカインを遠ざけた。
 二年の歳月。時折、かすかな陰りを見せはするものの、ようやくカインの顔に昔の陽気が戻って
きだしていたのだ。
 それなのに。
 そんなカインに父の死を知らせればどうなるか。母の死を乗り越えたばかりの少年は、もう一度
肉親の死を乗り越えることが出来るのだろうか。かつて槍を捨てたように、今度こそ彼は自分の
生すら捨ててしまうのではないだろうか。王は躊躇した。
 既にその頃から大器の片鱗を見せていたカインには将来への期待も高く、できることなら時を
経て、彼が自ら事実を悟ってなおその悲しみに耐えることができるようになるまで待ちたかった。
 以前のバロン王ならば、例えカインを憂う気持ちはあろうとも、仮にも騎士の息子である人間に
そんな甘えは必要ないと思ったかもしれない。だが、セシルというかけがえのない存在を得て、
父親の心を知ったいま、彼にはそれがとても他人事には思えなかったのだ。

 しかし、そんな王よりも、もっとカインの身を案じている人間がひとりいた。


 さて、指導者を失ったとはいえ、依然として竜騎士団はバロンの周辺警備の要である。任務には
それまで以上の気負いであたる必要があり、任務をこなしていく以上、暫定的にでも次の団長を
取り決める必要があった。
 密かに行われた団長の葬儀から数日後。竜騎士団の団員達は騎士団副長の指示のもと、飛竜の
厩舎に集まっていた。厩舎と言っても、牛馬などを養う通常のそれとは規模が比べ物にならない。
何しろ住んでいるのが巨大な飛竜であるから、建物の方も厩舎というにはあまりに立派な代物に
なってしまい、団員達の間では「聖堂」などと呼ばれている。彼らがいかに飛竜を神聖視している
かがわかるというものだ。
 その聖堂の中心には、装飾を施された絢爛な台座が置かれている。飛竜の王座だ。
 玉座には、息をのむような美しい浅葱色の巨体を悠々と構えて、彼らの王が居座っていた。


247 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:05:04 ID:5KjLTY+Q
「────では、これより継承の儀を執り行う」
 副長が整列した団員達に向かって宣言する。そう、竜騎士団の長を決めるのは彼ら竜騎士達では
なく、飛竜の王の意志なのだ。すなわち王がその背を許した人間こそハイウィンドの名を冠するに
相応しいということである。この規則のため、騎士団内にはもちろん階級の上下があるものの、
王の心次第で下級団員が団長となった例も過去に何度か見られる。
 副長は静かに王座に進み出た。団員の間に緊迫が走り、気づけば堂内の他の飛竜達も静かに
儀式の様子をうかがっていた。王が首をもたげ、透き通った瞳で彼をじっと見据えた。副長は、
ゆっくりと距離を詰めていった。
 この副長も、実は一角の人物である。寡黙で思慮深い彼は、常に冷静に物事の先を見渡すことの
できる智謀の持ち主で、有能な補佐官としてよく故団長を助けた。補佐官とはいえ、先代の頃には
故団長と同じ階級にあり、彼もまた有望な団長候補の一人と謳われていた。もっとも、彼がその
力を示す前に、王は別の人間を選んでしまったのだが。
 副長はさらに歩を進める。王は先程と変わらず身を横たえたまま微動だにしない。やがて二人の
距離は手を触れられるほどにまで近づいた。団員達は息をするのも忘れて、台上に見入っていた。
触れられれば、それはつまり許されたということである。いよいよという距離まで近づき、副長は
ゆっくりと手を伸ばした。かつては与えられなかった称号。ハイウィンドの名。それが今や目前に
あるのだ。この時ばかりは、冷静な彼の胸も激しく高鳴った。しかし、それはごく数瞬のこと。
彼はすぐに心を静まり返らせた。飛竜は人の心の波を敏感に察する。あくまで安らかに、落ち着き
はらった動作で手を伸ばしてゆく。
 そして彼の指がついに飛竜の身体を撫ぜた────と思われたとき、副長は素早く身を引いた。
一瞬遅れて王の尾が鞭のように撓り、彼のいた場所を叩きつける。後ろの団員達から思わず深い
嘆息がこぼれた。

 王は彼を選ばなかった。



248 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:06:27 ID:xePae7Cx

 無理もない。むしろ当然の結果といえた。そもそも飛竜は、一生のうち一人の人間にしか心を
許さない。しかも成長すればするほど彼らは頑になる。そのため、通常は新たな王の誕生と、
主人の認識の儀式をもって竜騎士団長の位を継承することになっていた。それでも副長ならば、
あるいは────という一抹の希望があったのだが。彼ほどの男が認められなかった以上、
他に挑もうとする者もほとんどいなかった。
 結局その後にわずかな数人が挑み、最後の一人は逃げ遅れて尾撃の餌食になるという苦々しい
顛末をもらって、先行きに暗い影を残しながら儀式は中断に終わった。

 翌日から、とりあえず儀式については保留することにして、次期団長の取り決めについての
会議が開かれることになった。
 が、これがいっこうにまとまらなかった。
「ともかく早急に団長を決める必要があります。西方への遠征も控えているのですから」
「そうはいっても、我々の一案だけで裁ききれるほど容易い問題でもありますまい」
「王に決めていただいては如何か? 飛竜の王が裁かぬ以上、我らの王にご決断を仰ぐべきかと」
「王はこの件に関与しないと言われている。騎士団が解決すべき問題だと仰せだ」
「ならば私は副長殿をお立てしたい。副長殿ならば人格、能力ともに申し分無いでしょう」
「お待ちください! 継承の儀は初代の頃から守られてきた鉄の掟!
 それをないがしろにするのは、騎士団の教えに背く振る舞いではありませんか?」
「しかし儀式は行った! だが現に飛竜は主を選ばなかったでしょう」
「今は産卵期で、飛竜も気が立っております。時期を見て再度儀式を行えば……!」
「悠長な話だ! 早急な対処が必要であると申し上げたはずですぞ!」
「それは儀式に挑まなかった貴公の申し上げる所ではないでしょう!」
「そちらこそ、負け惜しみではないのか!?」
「何をッ!!」
 こんな具合である。
 次の日以後も、飽きもせずに毎回同じような議論の応酬の繰り返し。副長は、馬鹿馬鹿しいやら
苛立たしいやらでほとほとうんざりしていた。


249 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:07:20 ID:xePae7Cx
 彼の頭を痛ませているのはそれだけではない。このところよく耳にする、団長の死についての
噂がそれだ。団員達が団長は暗殺されたのではないかなどと騒いでいるらしいのである。そんな
話が広まるにしても、良くも悪くも団長は皆に愛されていたということなのだろうが。
 だが、指揮官を失って騎士団に強い結束が必要とされている時期であるだけに、それを内側から
崩すような真似を見過すわけにはいかない。まことしやかな噂の類いを耳にする度に、副長は強く
部下を叱責した。自分が悪意ある噂の標的にされているらしいこともまた気に食わなかったが、
彼が真実案じていたのは、何かのはずみでその誹謗がカインの耳に入ることだった。
 副長は団長の急死以来、実によくカインを気遣った。ほとんど毎日のように、足繁くカインの
もとに赴き、近頃では自宅よりもカインの家にいることの方が多いくらいだった。
 というより、そこはもはや彼の家でもあった。彼は団長の死後すぐに、養う者のいなくなった
カインの後見を王に申し出ていたのだ。

 それは副長という立場にあった彼の忠誠心からの行為だったのだろうか?

「こんにちはご子息」
「こんにちは、フクチョウ」
 その日も学校帰りのカインを捕まえ、そのまま家路をともにした。
 ご子息、という言葉の意味を解していない様子のカインは初め、私の名はカインです、などと
主張していたものだったが、やがてそのルールに気がついたらしく、素直に彼をフクチョウと
呼ぶようになった。副長はこのやりとりが大好きだった。
「傷だらけのところをみると、どうやら槍の稽古の帰りですかな?」
「うん、またセシルと訓練をしたのです。今日は私の方が負けてしまいました」
 すこし悔しそうに、けれどどこか誇らしそうに語るカインの横顔を見ながら、副長は内心で舌を
巻いた。生まれ持った天賦の才に加え、玩具の代わりに槍を使い続けてきたカインの成長ぶりは、
その幼少の頃から良く見知っている。技だけなら、もはや騎士団の下級団員すら打ち負かせるほど
だろう。
 そのカインを負かすとは……。
 子供というのはまったく末恐ろしい。そう思う自分は随分年をとったものだなと、ふいに何だか
可笑しくなり、笑った。カインも笑った。



250 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:07:51 ID:5KjLTY+Q
「でも私もだいぶ上達したと思います。父上にもぜひ見ていただきたいものです。今度の遠征は
随分と長いようですから、お稽古を付けていただくのが待ち遠しいです」
 かりそめの陽気がうすれ、また副長の心にいつもの罪悪感がたちこめだした。
 父はもういない。何度も何度も顔を合わせながら、彼にはどうしてもこの子にその残酷な事実を
告げることができないでいた。

「任せてよいのだな」
 後見を申し出たとき、王は副長にそう尋ねた。くたびれた目尻にいっそう皺を寄せ、王は冷たい
押しつぶすような眼差しを副長にぶつける。静かな威圧が、言葉以上に雄弁に問いかけた。
 時期を得てカインに事実を告げると言う大任。それを委ねてよいのだな、と。
 彼は即座に頷いた。
 だが、実際それはあまりに重い役目だった。第一、事実を告げればその重圧はそのままカインに
のしかかるのだ。副長は隣を歩くカインに目をやる。視線に気づいたカインは、無邪気な笑顔で
それに応えた。この笑顔を曇らすことなど、どうして自分に出来るはずがあろうか。
 彼は本当にカインを良く知っていたのだ。しわくちゃな顔で泣きわめく赤子の頃も、槍を支えに
立ちだした頃も、そして母を失った苦しみに悶えていた頃も、ずっと見ていた。初めてゴブリンを
倒したときも側にいた。入学式に参列した時などは、本当に我が子のような気すらしたものだ。
 けれど、カインは彼の息子などではない。たとえ副長が後見を引き受けようとも、カインが父の
死を知らない以上、彼はカイン=ハイウィンドであり続ける。そしてカインがそれを知ったとき、
彼が何を選ぶかは誰にも分からない。

 まだ早い。
 そうしてまた、彼はいつものいいわけを心の中でつぶやいた。まだ早い、と。
 その言葉が通用しなくなる時期は、すぐに訪れると分かっていながら。
 そして今日も、空っぽのあの家にカインと歩いていくのだ。


251 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:08:41 ID:xePae7Cx
「それではご子息、いっそのこと、これを機に父上を追い抜かしてしまってはどうです? 
 お帰りになったお父上がさぞ驚かれることでしょう」
 その提案は、カインの幼心に火をつけたようだった。
「そうだ! 今のうちなんだ!」
 言葉遣いに気をつけるのも忘れ、興奮した様子で槍を振り回しながらカインは駆け出す。
その様子をとても愛おしく思いながら、副長は淋しげなため息を漏らした。
「フクチョウ、お願いします! 稽古を付けてください!」
「もちろん喜んで。ただし、夕食を食べ終わってからですよ」
 にわかに夕日が沈みだし、城下を歩く二人の先に真っ赤な影を引いていた。


「しばしよろしいか? ひとつ気になったことがあるのだが…」
 相も変わらず煮え切らない会議の最中、一人が唐突に口を開いた。
「いったい誰が飛竜の世話をされているのか?」
 同席していた一同ははっと驚き、顔を見合わせた。
 飛竜は恐ろしく誇り高く、そしてまた忠実な生き物である。主人以外の一切の者を受け入れず、
誰も近づけようとしない。であるから、飛竜の世話は当然その主君にしかできない役目である。
そして、子を産み主人に先立たれ、役目を果たした飛竜は食することもせず、ついにはそのまま
息絶えてしまう。本来ならば長命な飛竜が、その気高さゆえに自ら死を選ぶのだ。
 一般にあまり知られていない事実だが、恐ろしいことにバロンにおける飛竜の死因の九分九厘は
「餓死」である。固い鱗に覆われた強靭な肉体は魔物の鋭い爪も通さず、疫病も彼らを蝕むことは
出来ない。飛竜を傷つけられるのは、彼ら自身の内に光る、「誇り」と言う刃だけなのである。
 加うるに、若き王竜にはまだ子がいなかった。王の血縁が絶たれては取り返しがつかない。
 飛竜の身を案じた団員達はすぐに会議を中止し、すぐに聖堂に向かった。ところが、台座に王の
姿はなかった。厩番に尋ねてみても飛竜はどこかに飛び去っていったきり戻ってこないと言う。
そう聞いてとくに焦る様子もなく、騎士達は聖堂を後にした。忠義深い飛竜が、しかもその王が、
わけもなくバロンを遠く離れるようなことはあり得ない。となれば自ずとその行方も絞られる。
副長はよく知っている道を部下を連れて、城外のハイウィンド家に向かった。


252 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:11:57 ID:5KjLTY+Q
 夜分、それもだしぬけに騎士団の重鎮達がやってきたものだから、初老の女中はひどく驚き、
すっかり取り乱してしまった。飛竜はどこにいるかと声高に問いつめると、震える声で中庭に
案内された。庭に出た一同は、息をのんだ。
 そこには果実を食みながら静かに横たわる飛竜と、小さな少年の姿があった。

 皆、唖然としていた。カインは自分をみつめる大人たちに気づき、ぺこりと頭を下げてから、
彼らの見守る前で飛竜に果実をあてがった。
「……ご子息、どうやってその飛竜を手なずけたのです」
 副長が代表して聞いた。カインは落ち着きはらって答えた。
「いいえ、手なずけてなどおりません。私は父の帰りを待っておりました。それでどうやら、
父の竜も同じのようでした。ですからこうして二人で待っているだけです」
 カインが飛竜の首筋をなでてやると、竜は穏やかに喉を鳴らした。 
 騎士達はそれでもなお信じがたいという表情で立ち尽くしていた。その中で副長がただひとり、
その身を深く恥に染めていた。
 何ということだろう。自分はいったい何年もの間、竜と共に生きてきたのか……。
 この若々しい竜は知らないのだ。己が主君の死を。未だに主の帰りを待ち続けているのだ。
それを新たな主人に従わせようなどと、屈辱もいい所である。誇り高い飛竜が二心など抱こう
はずもなかった。
 なんと自分は浅はかで、傲慢だったことか。……それなのにこの子は……カインは…。
「────ご子息、とんだ夜分にお邪魔をいたしました。これにて我々は失礼いたします」
 顔を上げた副長が一礼してその場を去ると、呆然としていた男達も我に返り、その後に続いて
ちらほらと引き上げていった。
 カインは黙って飛竜にもたれこんだまま、ぼうっと空を見つめていた。
 不思議と、その瞳は飛竜のそれととてもよく似ていた。



253 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:12:40 ID:5KjLTY+Q

 それからひと月ほどがたったある日のこと。
「副長! 外を!!」
 血相を変えた部下が執務室にかけこみ、副長を外に連れ出した。
 まもなく耳に入ってきた巨大な羽ばたきの音で彼は事態を察した。
「ご子息!」
 優雅な白い両翼を広げた飛竜の王が、その背にカインをのせて飛んでいた。
(────信じられない! 飛竜が主人以外の人間を背に乗せるなど!)
 しかし現実にカインは竜の首を撫でて誘導すると、副長のそばまでゆっくりと近づいてきた。
「フクチョウ、父を捜して参ります。どうかご心配なさらないでください」
「カインッ!!」
 思わずその名を呼び止めた時には、既に飛竜は空の彼方を泳いでいた。
 ────言えなかった。あの子に事実を、言えなかった。
 しばし立ち尽くしてから、彼はやっと思い立って自分の飛竜を呼び寄せようとしたが、すぐに
やめた。彼の竜では王に追いつけるはずもなかった。
 

 数日後。

 帰ってきたカインは異様だった。
 

「ご子息……」
 カインは飛び去った時と同じ、訓練場に戻ってきた。既に集まっていた騎士達を押しのけ、
広場の中心にいるカインの姿を見ると副長は思わず声を漏らした。
 ひどい有様だった。たった数日前まで陽気に溢れていた顔は、いまや生気を失った土気色で、
丸みを帯びていた頬は痩せこけて骨が浮き出ている。大きな瞳は落ち窪み、灯火の消えたような
哀しい色に染まっていた。────あの時と同じだ。

254 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:13:28 ID:5KjLTY+Q
 だが、ひとつだけ違う。カインはうずくまりながら、一本の槍を抱え込んでいた。その場の
誰一人としてその槍に見覚えのないものはいない。切っ先だけでなくその柄までを黒ずんだ血糊に
染めた長槍は、彼らの団長、カインの父のものだった。
 そんなカインと槍を包み込むように、飛竜がその身を寄せていた。
「………」
 はじめに、途方もない無力感。次に思い出したような責任感が、そして洪水のようにおしよせた
言葉がめまぐるしく副長の頭をかき回した。
 恐れていたことが現実となってしまった。とうとうカインを守ってやることが出来なかった。
 悔いたところで今さらどうにもならないだろう。今はただこの子を救いだせる言葉が欲しい。
 だが何を言ってやればいいのだ。いや、何か言う権利が自分にはあるのだろうか。
 わからない。誰か教えてくれ。私はどうすればいいんだ。どうすればこの子の力になれる……。

 困惑しながら目を伏せていた副長は、ふいに背後で騎士達がざわめくのを感じた。
 顔を上げると、いつのまにかカインは立ち上がっていた。そしてぎこちない手つきで槍を返し、
その切っ先をゆっくりと顔に近づけた。
「よせッ!!」
 危険を感じた副長は槍を取り上げようと駆け寄りかけたが、彼の予想に反してカインは刃先の
血を拭っただけで、すぐに槍を握り直すと、そっと飛竜の首筋に手を這わせた。そして彼の首に
かけられた一条の金色の綱を断ち切った。飛竜の王たる印、そしてその束縛を解き放ったのだ。
 その場の全員が呆気にとられた。王から王へと受け継がれる偉大な勲章を、ほんの七歳の子供が
あっさりと切ってしまったのだ。飛竜自身も戸惑っているようだった。訝しげに首をひねったり、
身をよじったりして、そのうち足下のカインに目を向けた。カインが頷いてやる。すると竜は
勢いよく飛び上がり、雄大な両翼をはためかせて遥か上空を舞い踊った。主人を失った悲しみと、
自由を与えられた歓び、その両方に彼は高々と雄叫びをあげた。


255 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:15:16 ID:5KjLTY+Q
 その様子を見上げ、カインはほんの少しだけ笑った。そして副長に向き直った。
「フクチョウ。ご心配をおかけしました……」
「…ご子息……」
「父の………槍です」
 両手で槍を差し出すと、少年は深々と頭を下げた。彼がそうしたまま、しばらくの時が流れた。
副長の心にはまたいくつもの言葉が駆け巡った。慰め、謝罪、賞讃、そしてそれらは全部、やがて
ひとつの想いに溶けていった。何も必要な言葉などない。ただ誇らしかった、なぜなら。
顔を上げたカインは、もう幼子ではない精悍な男子の面構えになっていたから。

 再び羽ばたきが近づき、見上げると飛竜が戻ってきていた。忠臣である飛竜は、自由をその翼に
与えられてなお、迷っているようだった。
 そんな飛竜を後押ししてやるように、カインは淋しげに首を振った。

 だが、彼は飛び去らなかった。じっと宙に浮いたまま、カインを見つめていた。
 カインはもう一度首を振る。そうして手で示した。お前は自由なんだよ。空に帰るんだ。
 けれど、飛竜は深い穏やかな真紅の目にカインを映し続け、やがて再び声を上げた。そして
カインのもとに降り立つと、頭を垂れて双瞼を閉じた。
 

 王は、カインを認めたのだ。



256 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:21:26 ID:5KjLTY+Q

 騎士達はうち震えていた。
 ある者は胸に手を当て、ある者は槍を掲げ、またある者は感服の涙を流していた。
 彼らは同じ竜と生きるものとして、幼いカインに対する畏敬の念を隠せなかった。
 そしてこの日、副長の提案と共に、バロン竜騎士団全員の賛をもってある決定が下された。

『バロン竜騎士団団長は不在とする!
 カイン=ハイウィンドが竜騎士となるその時まで!』


 当然ながら前例のないのことであったが、騎士団全員のたっての願いともあり、王もこれを
認めた。彼もまた王である前にひとりの騎士だった。
 また、もちろんこの決定はカインに知らされることはなかった。慢心かあるいは重圧か、その
どちらにしてもカインに与える理由はなかったし、カインならば必ず自ずから相応しい騎士に
なるだろうと誰もが確信していた。
 そのカインだが、このことがあってから彼は少しばかり無口になり、昔ほど感情を外に出さない
ようになった。もっとも彼と親しい人間からしてみれば、中身はちっとも変わってなどいないと
いうことらしかったが。
 それからハイウィンド家はそのまま残された。副長はカインに後見の旨を告げ、自分の邸宅に
移住することもできると話したが、カインは家に残りたいと言った。副長もその方がいいと思った
らしく、カインはまた空っぽの家に帰る日々を送った。それでも彼らはたびたびお互いの邸宅を
行き来したし、カインはすっかり彼を父親として受け入れていた。傍目にも、二人は本当の親子の
ように見えた。
 副長は事実上の団長という地位にありながら、長きにわたって補佐という名目を守り続けた。
彼はことあるごとに団長と言う言葉を口にし、常に自分の上に指揮官がいるように振るまった。
はじめそれはひどく奇妙に見えたが、いつのまにか団員達も見えない指揮官を信頼するように
なっていった。騎士団は不思議な結束で力強く保たれていた。
 そしてカインが竜騎士となったその日、架空の指揮官は現実となったのだ。



257 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/14(金) 00:40:10 ID:Yyy4taEY
・ゲーム中で描写の無かった、登場人物の過去等についての短編
ってやつですね。
>>297
カインかっこいいよ
Gj

258 :297:2005/10/14(金) 00:42:27 ID:5KjLTY+Q
ごめん、回線不調。まだ終わってない……。

あと>>244投稿ミスしました。


 一つは言わずと知れた飛空艇団、通称「赤い翼」だ。空を覆い尽くす鋼鉄の船団から落とされる
爆撃はいかなる堅固な城塞もたちどころに粉砕し、暗黒騎士セシルが率いる精鋭騎士団は無敵を誇る。
 そしてもう一つが、竜騎士団である。



ではもう少し続きを。

259 :297:2005/10/14(金) 00:43:19 ID:5KjLTY+Q

 竜騎士団の入団式。
 この年の式はバロンの歴史に刻まれる一日となった。

 若き見習い騎士達はひとりずつのその名を呼ばれ、彼らの所属を申し伝えられる。名を呼ばれた
青年達は次々と壇上に上がり、騎士勲章を受け取ると、まだ幼さの残る顔を誇らしげに輝かせて、
各々の隊の列に散っていった。
 ところが、カインの名だけが呼ばれない。
 そして、
「続いて騎士団長任命の式典を行う」
 途端に会場内の騎士達が一斉に立ち上がった。どうやら事情を聞いていたらしい新人騎士も
すぐに立ち上がり、何も知らない者だけが慌ててそれに習った。式典進行の騎士は、再び声を
張り上げる。
「竜騎士カイン=ハイウィンド、前へ!!」
 驚きながらも前に進み出るカインの目に、壇上で待つ副長の姿が映った。そうして壇に上がった
カインが礼をしようとした時、それを遮るように副長は深く跪いた。 
「副長……! これは……!?」
「お待ちしておりました、団長」
 驚くカインに、副長は優しく事実を告げる。
「団長? まさか…!?」
「そうです。我々はあの日から、ずっと貴方をお待ちしていたのです。
 ………長い間でした。これでようやく肩の荷が降りた思いです」
「お待ちください! そんなっ、私はそのような器では!」
「いいえ、貴方は長として必要な資質を全て備えられている。それでも足りぬと言うのなら、
どうか我々に貴方をお支えさせていただきたい」
「ですが……副長…」
「さあ、この槍をお返ししましょう。これは貴方が持つべきものです」
 副長は一本の槍を差し出す。忘れるはずもない、幼い日の彼自身が見つけ出した槍だ。
 彼の手はあの時よりもずっと大きくなったのに、槍はなおいっそう長く重々しく感じられた。



260 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:44:44 ID:5KjLTY+Q

「団長、後ろをご覧なさい」
 振り返ると、背後には整然と立ち並ぶ騎士達の姿があった。よく知った顔も、嫌いな顔もあり、
幼い頃に憧れた者の顔もあった。誰一人として彼より若いものなどいない。その全員が、自分に
敬礼をしているのだ。カインは身震いした。
「副長……彼らが私などを認めるはずがありません。私には……」
「ご子息」
 副長は、彼ら二人だけの間の暖かい口調で囁いた。
「貴方はご自分の名をお忘れか?」

 そうして彼は、カインの持つ槍の柄をゆっくりとなぞった。槍は美しく磨き上げられており、
そして、かつては血糊で見えなかった、柄に刻まれているその文字をカインは見た。

 ハイウィンド。

 胸が震えた。先程の震えとは違う。身体の底から、突き上げるような震え。
 血が騒いでいるのだ。カインは悟った。そして槍を強く握りしめると、ふいにその重みは風の
ように消え失せた。
 ハイウィンドの血が、カインの右腕を高々と押し上げた。
「────騎士団に栄光あれ!!!」
『騎士団に栄光あれ!!!』
 騎士達は沸いた。若き騎士達はその威容に見惚れ、往年の団員達は懐古に胸を焦がした。
 誰もが確信していた。竜騎士団は不滅だ。誇り高き騎士団に、栄光あれ。

 王を失った竜達は、あらたな王の帰還に雄々しく吼えた。




261 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:47:20 ID:5KjLTY+Q
 式典が終わり、にぎやかな祝宴の幕が開いた。街中の酒屋から集めてきた酒樽をひっくり返し、
一同浴びるように飲みまくる。厳正な規律を重んじる騎士団とはいえ、この日だけは無礼講だ。
熟練の隊長も、青臭い見習い騎士も、まるで百年の友のように肩を組んで酒を飲み交わす。
 そのうち壇上に人が集まりだした。宴会恒例の時間が訪れたのである。竜騎士団の入団式では、
新人騎士達が練習仕合を披露することになっているのだ。もちろん既にかなり酔いが回った頃合に
行われるから、素面なら見れたものじゃない泥仕合がほとんどになってしまうのだが、祝酒の肴と
しては十分というものだ。
 もっとも今年はカインがいたため、かなり一方的な展開が繰り広げられた。同年代どころか、
城内を探してもほとんど無双の腕前を持つカインである。多少酔っていても、その凄まじい槍技は
粗を見せない。流石は団長よ、と観衆も大いに沸き立っていた。
 そして、最後に壇上に上がった一人によって、観客はさらに盛り上がる。
「……胸をお借りしてよろしいですかな、団長?」
「望むところです、副長……!」
 一礼を交わし、副長とカインは向き合う。槍を構えたまま彼らは微動だにしない。お互いが機を
窺いあっているのだ。いつしか騒いでいた一同もぐっと壇上に釘付けになっていた。
 勝負は一瞬で終わった。
 目にも止まらぬ速さで突き出された槍は、互いの武器を寸分無く捉え、キインと鋭い音を立てて
頭上高く二本の槍が舞った。相打ちだ。
「とうとう追いつかれてしまいましたな」副長が悔しげな顔をつくり、頭をかいてみせる。
「酒のおかげでしょう」
 笑いあい、二人は握手を交わした。
 素晴らしい試合に一同惜しみない喝采を贈り、後はもう日が暮れるまでひたすら飲んだ。
 副長も彼にしては本当に珍しく、どっぷりと酔っていた。彼に付き合わされていたカインは、
後ろの方で伸びている。やがて宴は全員での団歌熱唱で幕を引き、皆千鳥足で夜道を引き上げ、
残りのものはその場で泥のように眠った。
 空では星がひときわ美しく光っていた。


 そしてその夜。


 副長は自決した。

262 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:48:20 ID:5KjLTY+Q

 彼は「ご子息へ」と記した短い手紙を書き残して、寝室で自ら腹を切った。手紙には淡々と
彼の葛藤が刻まれていた。
 ずっと先からカインの母を愛していたこと。母が父と結ばれてからも、その想いは断ち切れず、
むしろいっそう募るばかりであったこと。そして父がその母をむざむざ死なせてしまったこと。
どれだけ鍛錬を積んでも父を超えることができなかったこと。殺したいほど父を憎んでいたこと。
しかし、心の底では彼への尊敬の念を拭いきれなかったこと。孤独であった自分が、母の面影を
強く残していたカインをどれだけ大切に思っていたかということ。
 そして、父が死んだ日のこと。


 その日、竜騎士団はバロン南方の山脈に魔物の討伐に出ていた。飛竜達は産卵期を迎えて気が
立っていたため、騎士達だけでの遠征であったが、空を駆ける彼らに山道など物の数でもない。
魔物をたやすく退けながら、彼らは着々と任務を進め、やがて夜を迎えて山中に陣を張った。
 最前線に構えた天幕の中で、団長と副長は戦況を話し合っていた。 
「兵の状況は?」
「今のところ負傷者はおりません。魔物どもは窪地の周辺に逃げ込んだようです」
「順調だな。この分なら、明日には引き上げられそうだ」
「嬉しそうですね、団長」
「いや、そうでもないさ。家ではおそらく、カインの奴が槍を構えて待っていることだろう。
稽古をせがむつもりでな。まったくあいつと来たら、魔物の相手の方が何十倍も楽だよ」
 団長は苦笑しながら肩をすくめてみせる。副長も微笑を返したが、彼の幸福に満ちた愚痴に、
その心中は煮えくり返っていた。
(────なぜ貴方にはカインがいる)
(────あのひとを見殺しにしたというのに)
(────いつか貴方はカインをも傷つけてしまうんじゃないか)

263 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:49:21 ID:5KjLTY+Q
 団長の口からカインという言葉を耳にするたび、孤独な彼の胸は憎悪の火に燃えるのだった。
 だがその一方で、彼は心から団長のことを敬っていた。そしてまた、彼には団長しか友と呼べる
ような人間がいなかった。
 そのため、相反する想いはいっそう膨れ上がり、彼の胸を震わせた。あまり胸がざわめくので、
彼はそれを抑えようと手をあてがった。だが、それでも何かがまだ妙だった。
 ようやくそのことに気づいて副長が顔を上げると、団長は既に槍を握っていた。戦いに身を置く
者なら嫌でも感じ取ってしまう、あの魔物特有のおぞましい気配がそこら中に漂っていたのだ。
 天幕の外に出て、二人は目を見開いた。
 山が黒くうねっていた。窪地から、おびただしい数の魔物が駆け上がってきている。木々が
なぎ倒されていく音がここまで響いてきていた。
「全軍に知らせろ、ここで食い止める!!」
「団長!」
 横の林から飛び出してきたフロータイボールを、団長が一振りで切り伏せる。
「急げ!!!」
 副長は後陣に走った。既に異変を察知していた数名が外に出ており、副長のただならぬ様子に
血相を変えて詰め寄ってきた。
「副長、何事です!?」
「急襲だ! 大群がすぐそこまで来ている!!」
「副長! ご指示を!」
「団長はなんとご命令を!? 副長!」
「命令は……!」
 そのとき、彼の頭をひとすじの光が過った。
 彼の運命を曲げてしまう、声が聞こえたのだ。



 ────カインが待っている────


264 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:49:58 ID:5KjLTY+Q


「……撤退だ」
「は?」
「聞こえただろう、撤退だ。団長も既に場を離れられた、総員退避だ!!」
「はっ! おい、撤退だ!! 全軍撤退!!」

 騎士団は素早く陣営を引き上げた。魔物の追撃をかわしながら山道を走り抜け、夜明け前には
全軍が安全な山麓にたどり着くことが出来た。────ただ一人を除いて。

 彼は団長を置き去りにしたのだ。


 皮肉な事に、結果としてこの時の副長の指示は正しかった。魔物の数は彼らの数十倍にも及び、
飛竜なしに勝てるような相手ではなかった。その場に留まれば、全滅は避けられなかっただろう。
このため彼の言葉が疑われるようなことはなく、団長は不運の死を遂げたとされた。
 帰還後すぐに彼らは全軍を率いて引き返してきたが、団長の遺骸も、その槍も、ついに見つから
ないまま失われてしまった。やがて小さなカインが見つけるまで。
 
 ・
 ・


265 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:50:39 ID:5KjLTY+Q

 副長の死は、やはり騎士団に少なからず波紋を及ぼした。長きにわたって騎士団を守ってきた
人間の穴は簡単には埋まらず、彼を敬愛する多くの者が哀しみに暮れた。折しも飛空艇の完成が
騒がれていた時期であり、竜騎士団は落ち目であるような空気がバロン内に漂った。
 だがこの時期、カインは信じられないほどの働きを見せる。その最たる偉業の一つが、飛竜達の
救済だった。彼は主を失った後に命を絶とうとする飛竜達を軒並み救っていった。もちろん誇り
高い飛竜達に新たな主人をあてがうような真似はせず、カインは王の許しを得て、周辺の山脈に
飛竜の地を築いたのだ。主を亡くした竜達が、自由に生きることの出来るようにと。
 その最初の救済者は、他でもない副長の竜だった。主人の死を悟り、自らもその後を追おうと
していたかの飛竜は、カインに心を開くことで救われた。決して新しい主を受け入れようとは
しなかったが、彼女は騎士団に仕え続け、やがて王の子を宿すことになる。
 この効果はめざましい結果となって現れた。バロン付近の魔物が激減したのだ。王はこれを
褒めたたえ、自信を失いかけていた騎士団は活気を取り戻していった。またこの一件で、年若き
団長を侮っていた一部の連中も、すっかりその影を潜めた。
 一方。とうに忘れ去られていたはずの噂も、再び広まりだした。副長は、団長を暗殺した罪過に
耐えられず、その命を絶ったのではないかと。
 カインはそれらについてまったく介入しなかった。何一つ言及せず、否定も肯定もしなかった。 手紙の内容についても同様に、決して誰にも口外しなかった。親友のセシルや、ローザにすら。
当の手紙もカインがその場で破り捨ててしまっていたため、副長の名誉が汚されるようなことは
なかった。やがて噂は消え、後には栄光のみが残る。かつて素晴らしい騎士がおり、そして死んだと。


 カインは彼を許したのだろうか。心の底は誰にも分からない。時には本人にさえも。


 けれど、



266 :竜の騎士団:2005/10/14(金) 00:51:48 ID:5KjLTY+Q

 バロン城の地下深く、歴代の名将達を弔う墓室。そこに団長と副長の墓碑がある。
 団長の墓前には、たゆまぬ敬意と栄誉を誓って、そう記されたカインの槍が捧げられている。
 そして隣の副長の墓には、勇猛な竜騎士団団長ハイウィンドの名が刻まれた偉大な槍が手向け
られている。この者の不屈の騎士道を称えて、と。


 そしてカインの手には────





「俺には竜騎士が性に合っている。いつも父を感じられる気がするからな」






 終


267 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/14(金) 01:12:02 ID:Yyy4taEY
割り込んじゃってすまん。
上手いな。
副長の葛藤が後のカインの行動は暗示してる気がする。
理性で対処できる問題じゃないよな

268 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/14(金) 01:56:25 ID:XD0xXPCT
>297氏
乙です。
短編…にしては凄い完成度と深さですね。
副長の横恋愛は狙ったのかそうじゃないのか…

と、俺も今からAC投下します。

269 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/14(金) 01:57:52 ID:XD0xXPCT

クラウドが異変に気づいたのは、ヤズーとロッズが彼を追跡し始めてからすぐのことだった。

背後からの刺すような殺気。眼光。数百メートル離れているにも関わらず感じられる凶暴性。
肩越しに後方を振り返ると、2台のバイクが猛烈な勢いで迫ってきている。
ただならぬ気配を察知したクラウドは再び前方を向き、バイクの速度を上げて振り切ろうとした。
後ろの2台も加速して追いすがる。スピードは互角だった。

クラウドはこのままでは逃げきれないと判断し、平坦な荒野から敢えて走り辛い岩山の方へと逃げこむ。
悪路に逃げ込む事で、追跡の速度を減少させ、あわよくば追跡を断念させようとしたのだ。
尖った岩にタイヤが噛みつき、あまり減速することなくごつごつした地面を進んでいく。
彼が駆っている黒塗りの大型バイク、フェンリルは、もともと荷物配達の仕事を始めるにあたって特注した代物だ。
これしきの悪路は難なく走破できる。
再度、後ろを振り返ると、どうやらクラウドの計算は図に当たったようだった。
謎のバイクは目に見えて速度が下がり、こちらを追うのに難儀している。
振りきれる――そう思った途端、奇妙な事が起こった。
どこからともなく、モンスターが湧いて出てくるように出現したのだ。

270 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/14(金) 01:59:07 ID:XD0xXPCT

(なんだ!?)
声を出さずに驚愕するクラウド。
その暇も充分に与えず、狼のような、しかし狼と言うにはあまりにも醜悪な外見の獣が群れて襲いかかってくる。
すかさず応戦の準備に入る。ハンドルの根元の方に手を伸ばし、指先に触れたスイッチを押す。
瞬間、それまで前輪を支えていたカウルが勢いよく開き、その中に収納されていた6本の剣が出現する。
そのうちの1本を取りだし、一番接近して来ていたモンスターの胴体を両断した。
体を真っ二つにされた獣は、断末魔の吼え声を上げながら黒い煙となって霧散した。
が、その頃には既に20体を超えるモンスターに囲まれてしまっていた。
彼らは全速力で悪路を走るクラウドと並ぶように走り、機会を捉えては跳びかかるという戦法を繰り返す。
その度にクラウドは剣を一閃させて返り討ちにするが、
いかんせん思い剣を振りまわしながら片手で、しかも悪路の上でバイクを駆っていては不利だった。
たまらず岩山地帯から離れ、もとの平坦な荒野へと戻る。

それを見計らっていたように、バイクの2人組が急接近して来た。


2台の大型バイクはクラウドの後方2,30メートルにまで接近する。
クラウドはまだ、彼等が呼び出したモンスターに気を取られている。
それを認めたヤズーとロッズは、またも不敵に笑って顔を見合わせると、更に加速。
モンスターの群れを縫う様にすり抜け、あっという間にクラウドと並ぶ形になった。

271 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/14(金) 02:00:38 ID:XD0xXPCT

まずい。
クラウドの今の心情を表現するとしたなら、この一言だった。
尋常ではない殺気を放つ2人組に追いまわされ、逃げきれたと思ったところへ間が悪い事にモンスターの群れが襲来し、
それに乗じて謎の追手は完全に追いついてきた。すぐ近くまで来ている。
そう、その声が聞こえるほど、近くに。

「母さんはどこだぁ?」
謎の襲撃者の片割れがクラウドの隣まで来て並走し始めた時、はっきりとそう問いかけてくるのが聞こえた。
重く低い、どこかで聞いたことがあるような声だ。
見ると、バイクに乗っているのは屈強な体つきの男で、左腕に鍵爪のような武器――スタンクロー――を装着している。
彼がその左腕を振り上げると同時に剣で防御体勢をとり、クローの一撃を受け止める。
剣と爪とが触れ合って火花を散らし、クラウドは振り払うように剣を一閃させて引き離す。
と、同時に、逆の方向からもう一人が大型の短銃――ナイトメア――で銃撃してきた。
今度はバイクの車体を倒してなんとか回避するが、その隙に更に接近される。
「兄さんが隠してるんだろ?」
語りかけてくる。
先程の声と比べて、こちらは冷たく、鋭い。だがやはり何処かで聞いたような気がする声だ。
銃を持った追手は、クラウドが車体を起こしたところを狙って銃身で殴りつけてくる。
クラウドは剣で受け止めるが、爪を装着したほうの追手が逆側から迫って来た。
挟み撃ちの状態から脱け出すため、一瞬だけ減速する。
こうすることで2人からの攻撃は回避できたが、今度はモンスターが攻撃してくる。
クラウドが跳びかかってくる獣を斬り捨てる間に、またも2人の追手が彼に並んだ。

彼らの戦いを、カダ―ジュは丘の上から見物していた。
彼はしばらくの間楽しそうに荒野の追走劇を眺めていたが、やがて手に持っていた携帯で誰かを呼び出し始めた。
「ああ、あんたか。いきなりごめんね。ちょっと話したい事があるんだけどさぁ」
相手に繋がるや否や、勢いよく話し出す。
「彼、なんだか母さんのことを知っすらいなさそうなんだけど、どういうことかな?」

272 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/14(金) 02:02:06 ID:XD0xXPCT

「もしかして…僕を騙した?」
相変わらず悠然と戦いの様子を並べながら、カダージュは会話を続ける。
「やっぱり母さんはそっちなんだろう?」
バイクから降り、落ちつかなげに辺りをうろうろ歩き回りながら言う。
「怒鳴るなよぉ」
立てかけたバイクに寄りかかりながら、茶化すように言う。
「あんたとは話したくない。…社長に代わって」
暫しの沈黙。
「…社長?これ、どういうことなのか説明してもらいたいなぁ」
危険なほど甘い笑みを浮かべながら、脅しをきかせる響きを伴って言い放つと、また荒野の方に目をやる。
まだ戦いが続いていた。

もう何度目かわからないクローの一撃を、クラウドは相変わらず剣で受け止める。
しかし、その拍子に、ハンドルを握る左腕に激痛が走った。
その痛みは頭にも及び、偏頭痛のような感覚に一瞬目が廻る。
一年と半年以上、彼をずっと苛み、苦しめつづけてきた苦痛だった。
焼石が冷めるのを待たず、ロッズはスタンクローを器用に剣に引っ掻け、
クラウドの握力が落ちていた一瞬の内に、彼のファースト剣を投げ飛ばしてしまった。
すかさずヤズーが逆側から接近し、車体を叩きつけてバイク同士を密着させる。ロッズも同じようにしていた。
これでクラウドから全ての反撃の手段が奪われた。
剣は失われ、バイクは挟まれて身動きが取れない。さらに40匹以上のモンスターが周囲を並走している。
そしてヤズーが勝ち誇った表情で鼻を鳴らし、短銃をクラウドの側頭部につきつけた時、
―――彼等を取り囲んでいたモンスターの群れが、一瞬にして消え去った。
それを見たロッズはまたも笑いながらクラウドから離れ、ヤズーもロッズに一拍遅れて去っていった。
カダージュがモンスターを消し去り、2人に引き上げの合図を出したのだった。

クラウドはバイクを停め、彼らが去っていったほうを呆然と眺めていた。
あれほど執念深く追って来たと思ったら、いきなり退いていった。
…レノからの電話と関係があるのだろうか?
ぼんやりと思考をめぐらす。そうだ。あいつから何か聞き出せるかもしれない。
そう考えたクラウドは、地面に投げ捨てられた剣を探し出し、回収してから、彼が待つというヒーリンへ急いだ。

273 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/14(金) 02:03:33 ID:XD0xXPCT
>>271
×「彼、なんだか母さんのことを知っすらいなさそうなんだけど、どういうことかな?」
○「彼、なんだか母さんのことを知ってすらいなさそうなんだけど、どういうことかな?」

274 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/14(金) 02:05:35 ID:Yyy4taEY
乙。
限られてるのかどうかわかんないけど、
戦闘描写いいと思う。

275 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/14(金) 12:00:33 ID:wrfmIzWB
発売されて間もないACを早くもノベライズって、
未プレイの人も多くいる掲示板でする事じゃないだろ。

276 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/14(金) 12:49:52 ID:WXrIn5eQ
>>275
未プレイっていってもACはゲームじゃなくてムービーらしいから、
別にいいんじゃないかな。


277 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/14(金) 23:00:36 ID:XD0xXPCT
間もないっていってもかれこれもう1ヶ月たってるし
そりゃゲームが発売されてから1ヶ月じゃ短いかもしれないけど
ACみたいな正味一時間半のDVDとなるとそれほどでもないんじゃないかな

そもそもネタバレを嫌うなら読まなければいいだけの話だし
意識して読もうとしないかぎり「見る前から展開わかっちゃった」なことはありえない

な考え方で書いてますが、やはりダメでしょうか…?

278 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/14(金) 23:42:47 ID:yQUTWMHN
とりあえずタイトルを書けば安心じゃない?

279 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/15(土) 00:44:19 ID:WSzXIGBq
>>297
短編というかまんま本編クオリティだな・・。
でも流石に七歳のガキが騎士団長に任命ってのは話出来過ぎな希ガス。
そこがいいのか?

280 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/15(土) 01:46:44 ID:JkQiyRfG
任命はされて無いだろ。

281 :433:2005/10/15(土) 15:42:53 ID:XLUwwu+Y
読んでいる方々を不愉快にするものを投下してしまったことをお詫びいたします。
前スレ627様、お気遣いありがとうございました(わざわざ出てきてくださってすみません…)。
既に新しいスレになって話も盛り上がっている中、
こんな遅いレスをして申し訳ありません。
失礼します。

282 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/15(土) 22:27:03 ID:WSzXIGBq
>>280
そうだな、すまん。
ところで、こういうのを短編として扱っていいのかって話だったみたいだけど、(>>215
この作品に限って言えば、サイドストーリー扱いにして本編に組み込んじゃった方がいいと思う。
FF4ノベラの「継承者の旅立ち」みたいな感じに。
時代背景とかの設定がしっかりしすぎてるから、なんつうかもったいない。

・・と感じたんだが、どうだろう。


>>433氏、おかえりー。何気に続き待ってるよ。

283 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/15(土) 23:24:23 ID:pLHJ2VgK
>>433
>読んでいる方々を不愉快
過去ログちょっと読み返したけどけど(管理人さん乙)、
不愉快に思ってた人はせいぜい一人か二人じゃないかな?
他の人は支持してたじゃん。
てか人減っちゃったかな。

284 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN :2005/10/16(日) 21:53:22 ID:RWpoE9eI

ピー。
「おう、バレットだ!
 俺はやったぞ!新しい油田だ!ゆ・で・んー!すげえデカイやつだ!
 でなあ、帰る目処がついたんで、マリンに会いに行くからな!伝えとけよ!じゃあな!!」

バレットの声はいつ聞いてもうるさい。
が、いつでも力強い声だった。
あいつが荒廃したミッドガルから旅出ったのは、あの戦いが終わってからしばらくのことだったか。
その時も、どこまでも強い声だったな。
バイクに乗りながら携帯から聞こえる声を聞いている時、クラウドはそんなことを呟いた。
もちろん、携帯は簡易留守録モードのままなので、その声にクラウドは応えない。
謎の二人組に襲われてすでに数時間ほどたっていた。時計は見ていないが、おそらく正午ごろだろう。
クラウドはヒーリンに来ていた。
車道の左右には木々が生い茂り、淡い川が静かに流れている。
確かに、ゆっくり暮らすにはこんなところもいいだろうなと、思った。
その時、また電話がかかってきた。ティファからだ。

「レノからまた電話です。とにかく急いでくれだって。
 なんだか様子が変だったけど…気をつけてね」

通話が切れる頃には、クラウドは森の中心に一つだけ建てられている建物の前に停車していた。
壁に他でもない神羅カンパニーのロゴがペイントされている。わかりやすい目印だ。
神羅カンパニー。2年前まで世界のほぼ全てを掌握し、
同時に星の生命を削り、世界が荒廃する原因を作った超巨大企業。
現在はその事業を復興支援に絞り、それによって神羅を頼りにしている人間は未だに多いらしい。
ミッドガルを囲むようにして建設されている復興都市エッジは神羅の援助による部分が大半を占めているし、
そのエッジには神羅が建立した記念碑まであるほどだ。
しかし、その神羅が何故今になってこちらと接触しようとするのか解せない。
しかもクラウド達とは2年前には敵対していた関係だったというのに。
だが、なんにせよ、あの謎の襲撃者について、神羅の人間であるレノから聞き出せそうな情報は山ほどありそうだ。
クラウドは頭の中でそう呟き、後腰の皮製の鞘から剣を抜きながら、ドアを開けた。

285 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/16(日) 21:55:01 ID:RWpoE9eI

剣を手に持った状態でドアを開けたのが正しい判断だったとわかったのは、それから約1・5秒後だった。
ドアのすぐ向こうにレノその人が待ち構えており、挨拶代わりに金属製の警棒を振り下ろしてきたのだ。
クラウドは剣で受け止め、甲高い金属音が響いた。
レノは一度じりっと後ずさりすると、「うぉりゃ〜」と少し間抜けな声を上げて突進する。
身をかわすクラウド。止まりきれず、山荘の外へと出ていってしまうレノ。
彼が「あっ」とまたも間抜けな声を出して走り寄ろうとする前に、クラウドはドアを閉めた。
部屋の中を見渡す。壁に神羅のロゴが飾られている以外は、特に何も無い。

「さすがだぞ、と」
ドアの外から、レノ。
「俺に何の用だ?」
ドアの鍵を閉めながら、クラウド。
「あ、おい、閉めるなよ。…仕事の依頼だぞ、と」
「仕事だと?俺に?
 それより、俺を襲った奴らはなんだ?」
レノが答える前に、部屋の別のドアが荒々しく開かれた。
その向こうから、ゴツ、ゴツ、と大袈裟な足音を立てて誰かが現れる。
大柄な体をレノと同じ紺のスーツに身を包み、サングラスをどんな時でも外さないスキンヘッドの男。ルードだ。
「ルードぉ、カッコいい!」
ドアを隔ててレノがはやしたてた。睨み合うクラウドとルード。
出し抜けに、ルードが袖に仕込んだ警棒を素早く取り出す。しかしクラウドはもっと速い。
彼が警棒を振り上げようとした時には、剣の切っ先がその頚に突きつけられていた。
またしばらく硬直した後、ルードは曖昧な唸り声を上げて後ろに下がった。
「さすがだ、自称元ソルジャー」
ルードが現れたドアの方向から、感嘆したような声が聞こえた。
見ると、電気式車椅子に座った男が部屋に入り、クラウドと向き合って止まった。ルードがその脇に控える。
「腕は鈍っていないようだな」
車椅子に座った男は、白いスーツに身を包み、さらに右手と顔の右下以外を白い布ですっぽりと覆っていた。
手首の辺りに火傷のような傷があり、露出した右頬はケロイド状に歪んでいたが、クラウドはその人物に見覚えがあった。
「ルーファウス…なのか?」
そこにいたのは2年前に死んだはずの人物、ルーファウス神羅だった。

286 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/16(日) 21:57:05 ID:RWpoE9eI

「まだ神羅の社長をやってるのか?」
「まあそんなところだな」
ルーファウスの答えは淡々としている。
「あの日私は…」
少し沈黙した後、再び口を開く。
「俺になんの用だ」
レノにぶつけたのと同じ質問をするクラウド。
「ビルが崩れ落ちる直前に…」
無視するルーファウス。
「俺を襲った奴らは?」
また訊く。これも先程レノに訊こうとした事だ。
「なんとか…」「帰るぞ」
無視しようとするルーファウスに、クラウドはピシャリと言い放った。またも沈黙。

「…おまえの力を貸して欲しい」
暫くして、ルーファウスは単刀直入に言う。
「興味無いね」
下らない、とばかりに吐き捨てるクラウド。
「我ら神羅カンパニーは、世界に対して大きな借りがある」
少し声を大きくして、ルーファウスは遮るように言う。
「世界をこのような惨めな状態にした責任は、我々にあるといっても過言ではない。
 よって、この負債はなんとしても返さねばならんのだ」
事実だ。もうクラウドも遮ろうとせず、静かに聞いている。
「その第一歩として、我々はセフィロスが残した影響の調査を始めた」
「北の大空洞だぞ、と」
レノが外から口を挟んだが、全員が無視した。
「何があったと思う?…何も、何も無かった。安心していい。しかし予期せぬ事が起こった」
続ける。クラウドは話がだんだん核心に迫っているのを感じた。
「邪魔が入ったのだ。…お前を襲った奴ら…カダ―ジュの一味だ」
「カダ―ジュ…」
ルーファウスが告げた敵の名前を、クラウドは復唱した。

287 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/16(日) 21:59:01 ID:RWpoE9eI

「我々の計画を邪魔するのが目的らしい。
 まったく…わけがわからん」
右手の爪で車椅子の手すりをコツコツと叩き、お手上げだと言う風に言った。
「…どうして俺が襲われるんだ?」
「お前俺達の仲間だろ?」
クラウドが訊くとレノがまた口を挟む。
ふざけるな。お前らとつるんだ覚えはない。クラウドはステンレス製のドアをしたたかに蹴って黙らせた。
「…カダージュ達は若く凶暴だ。危険極まりない」
レノの声とドアが蹴られる音が全く聞こえなかったかのように、ルーファウスは話しつづける。
「そこで我々は、腕の立つボディーガードを雇おうという結論に達した」
「俺の仕事は荷物の配達だ」
「おまえしかいない」
お断りだとばかり返答するクラウドに、ルーファウスがすかさず続ける。
「頼む。元ソルジャー、クラウド」
「…自称な」
冷たく言い捨て、ドアへと引き帰すクラウド。だが、鍵を開け、ドアノブに手をかけた時、別の事が頭に浮かんだ。
それは、襲撃を受けている最中に聞いた言葉。
「”母さん”って…なんのことだ?」

「カダ―ジュが何か言ったのか?」
ルーファウスの返答は笑い混じりだった。
「まあ気にするな。こんな世の中だ。母親を恋しがっている子供は沢山いるさ」
言ってからルーファウスは、クラウドを別な方向から引きこもうとした。
「おまえは孤児達と済んでいるそうだな」
これは確かに効いたようだ。クラウドはドアノブから手を放した。
「…その子たちに、笑顔を取り戻してやりたくはないか?」 畳みかけるように、続ける。
「我々の最終目的は、世界の再建だ。クラウド」
右腕を宙に泳がしながら締めくくるルーファウス。傍らでは、ルードが相槌を打つように頷いている。
ルーファウスのこの説得は、確かに効き目があった。あと一押しだ。ルーファウスはそう思った。
クラウドはルーファウスに向き直り、「俺は…」と何かをいいかけた時に、レノがまた口を挟んだ。
「頼むクラウド。神羅カンパニーの再建だぞ、と」

288 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/16(日) 22:00:00 ID:RWpoE9eI

レノのこの余計な一言で、クラウドは全ての興味を失ったようだった。
彼は「興味ないね」と冷たく言い残すと、ドアを蹴り開けてさっさと行ってしまった。
「「レノ!」」
ルーファウスとルードが、同時に鋭く声を上げるが、ドアは重い音を立てて閉まってしまった。
その後部屋に残された二人が聞いたのは、
レノがクラウドを引きとめようとする声、彼が派手に殴り飛ばされる音、遠ざかって行くバイクのエンジン音だった。

暫くして、左頬をしたたかに殴られたレノが、顔を押さえながら入ってきた。
「…この、馬鹿が」
痛そうな表情をしているレノを、ルーファウスは冷たくなじった。
「すまねえ、社長」
「…まあいい、どの道、真実を教えないまま奴を味方にするのは難しかった」
車椅子を回転させ、窓辺に移動させながら、ルーファウス。
「しかし少しまずいな…これでは奴が来た時にどうしようもないぞ」
言って、小気味よく細い窓から外の風景を眺める。
実を言うと、クラウドにルーファウスが言った事の半分ほどは、真っ赤な大嘘だ。
彼らがカダ―ジュに襲われるには立派すぎるほど立派な理由があった。
大空洞を調査して何も見つからなかったと言うのも嘘。カダ―ジュ達の言う「母さん」の正体も知っている。
ついでに言えば、クラウドがカダ―ジュ達に襲撃されたのも、ほとんど彼らのせいだ。
カダ―ジュ達はここに来た事がある。
その際に、カダ―ジュ達が探している「母さん」はクラウドに預けた、と、その場凌ぎの言い逃れをしたのだ。
もう一度彼らが現れた時のために、クラウドを味方に引きこんで盾にしようとしたのだが、
その企みはたった今失敗した。

ルーファウスは黙ったまま外を眺めていたが、やがて、あるものがこちらに近づいてくるのを見て、ため息をついた。
「噂をすれば影だ。来たぞ」

289 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/16(日) 22:02:49 ID:RWpoE9eI
>>278
そうですね。
これからは名前欄にタイトルを入れておきます。

まだACを未見の人、読みたくない人は、NGワードに「AD」と登録してください。

290 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/17(月) 21:21:21 ID:bXeLW/LR
また6ノベライズスレが落ちた……

291 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/17(月) 21:25:36 ID:eKjM0P3Q
うわ、すごい!
05/10/17(月) 21:21:21 ID:bXeLW/LR!
キリ番みたいだ!そしてエルアール。

292 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/17(月) 21:28:41 ID:QbFcxRu7
どうでもよすぎてワロス。
しかしほんとに職人さんたち減って来たな。
最近頻繁なACの人には是非頑張っていただきたい。

>>433氏、続き楽しみにしてますよ。4、5書きの人たちも。

293 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/17(月) 21:34:09 ID:eKjM0P3Q
すんません、一人で盛り上がって。
たしかにどうでもよすぎるな。

ところで、433氏の書き込み、もう書き込まない」って言う意味なのかと
思ってた。違うんだ?
それならよかったよ。

294 :299:2005/10/18(火) 00:57:57 ID:bDM7GAlx
FINAL FANTASY IV #0241 4章 3節 山間(26)

「じゃあ、いくわよ?」
「おう。まかせとけ」
どんっと胸を叩き高らかに宣言する。その態度はついさっきまで怪我を負っていた人間には思えない。
(二人とも何をするつもりなんだ?)
この兄弟の事だ。なにやら尋常でない事を企んでるかのようであるが……
「何処を見ておる!」
だが、考える間もなく背後からアンデット達が襲いかかってきた。
慌てて振り返り、攻撃を受け止める。
「テラ! ちょっといいか?」
セシルは傍らで魔法を撃ち込み続けるテラを見やる。
「何じゃ! こんな時に?」
追いつめられたせいかその声は少しばかり怒りがちであった。
この状況に少なくとも危機感を抱いているのであろう。
「パロムとポロムに何か策が有るようなんだ」
「何じゃと! 本当か?」
「うん。だから、僕たちに時間を稼いで欲しいらしいんだ」
「よしっ! そう言うことなら任せておけ」
途端、元気を取り戻したかのように声を張り上げ、今まで
以上に激しく魔法を連打する。
「ちょっと、テラ。これは――」
だが、セシルの問いも爆音とテラの叫びに空しくかき消される。
「はははは。撃って撃って撃ちまくるぞ。どうじぁああーーーー」
「…………」
その威勢よさにセシルは見つめることしかできなかった。

295 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/18(火) 00:59:14 ID:bDM7GAlx
FINAL FANTASY IV #0242 4章 3節 山間(27)

「む、むう……」
だが、一見してがむしゃらな攻撃であるが、意外に効果があったようだ。
スカルミリョーネはこ少なからず戸惑い、どうアンデット達に
指示を仰げばいいかを悩んでいる。
(チャンスだ!)
意外ではあったが、この機会を逃すわけにはいかないだろう。
そう思い、セシルは背後の二人を見やった。
「!」
背後にいる二人の様子にセシルは驚きを隠せなかった。
二人はなにやら、声を合わせ、何かを呟いている。
「あれが、とっておきの策……」
「おいっ! セシル。手伝わんか」
テラの叱咤が、セシルを現実へと引き戻す。まだ戦いは続いている。
「分かってます」
あれだけの魔法を一気に撃ち込んだにもかかわらず、アンデット達はさしてダメージを受けた様子は
無かった。
「今度はお前の暗黒を打ち込め。何としても近づけさせるな!」
言いも終わらぬ内に魔法を打ち始める。セシルもそれに従う。
炎と黒い衝撃が何度もアンデット達の行く手を阻むかのように襲いかかる。
しかし、すでに生なき彼らはその倒れてもなお此方への侵攻を止めようとはしない。
「何を思ったのかは知らんが、とうとう自暴自棄に陥ったか。いいだろう……もうそろそろ
終わりにしてやるか」
そう言って一息つき、新たな指令を出そうとしたスカルミリョーネの動きが突如止まった。

296 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/18(火) 01:02:00 ID:bDM7GAlx
FINAL FANTASY IV #0243 4章 3節 山間(28)

「何だこの揺れは……」
地面が揺れている。最初は錯覚に思えたが、直ぐにそれが真実だと気づく。
そして、セシル達にも揺れは伝わった。
揺れは、どんどんと強くなり、やがては立っていることすらも困難になる。
さすがのアンデット達もこれには侵攻を一時止めるしかなかった。
「これは……」
後ろを振り向くと詠唱を続ける二人を中心に白い光が輝いていた。
さらに二人を守るかのように強風は吹き付け、誰も近づく事ができない。
「あの子ども達か! 全く、やりおるわい」
強風と揺れから体を守りつつ、テラはまるで自分の子供を見るかのような口調で言う。
「よしっ、一気にいけ!」
「ああ」
「はい」
二人は重なるかのような声を返した。そして――
轟音が響き、急に辺りを大きな影が覆った。
「上だ!」
空を見上げたセシルは思わず目を丸くせざるを得なかった。
小ぶりであるが岩石が今まさに降り注ごうとしていた。それも一つだけでなく、同じくらい大きさの
ものが連続してだ。

297 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/18(火) 01:02:42 ID:bDM7GAlx
FINAL FANTASY IV #0244 4章 3節 山間(29)

「まずい離れないと。このままでは僕たちまで巻き込まれてしまう」
立ちつくすテラの腕を反射的に引き、慌てて近くの岩陰まで走る。
「この辺りなら大丈夫だろう。テラ……」
振り返った先にあるテラの顔は何か信じられないものを見たような表情であった。
「これはメテオ……」
「え!」
その言葉につられるかのように、セシルは今目前で繰り広げられている光景を顧みる。
「否、断言するには早計すぎるだろう。だが、完全な形ではないにしろ間違いなくメテオ
又はそれに近いものであろう」
「そうなのか……」
ミシディアから一緒にこの山を共にしてから幾度と無く二人には助けられた。
その戦果は長老に紹介された時点での第一印象を払符する為には充分すぎるといってよいものであった。
だが、それでもセシルは二人に対し何処か子どもだからという認識があった。まさかここまで力を隠し持って
いようとは予想だにしなかった。
「全く持って……末恐ろしい子ども達だ」
苦笑混じりについそんな言葉が口からこぼれた。

298 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/18(火) 01:03:31 ID:bDM7GAlx
FINAL FANTASY IV #0245 4章 3節 山間(30)

降り注いだ岩石は巨大な音と共に、その場にいたアンデット達もろとも地面を穿ち、
窪んだクレーターが幾つも残すだけとなった。
「お……の…れぇぇ……!」
アンデットを残さず倒されたスカルミリョーネはローブに付着した土を払いつつ、
全身をわなわなと振るわせ、怒りを露わにしている。
「さあて、残ったのはあんただけだぜ」
「形勢逆転ですわね」
「かくしてはこの私が相手をしてやろう。今のお前らなど!」
ふらりといった様子で一歩ずつ歩み寄る。
「私だけでも十分だ!」
そう言った後、二人に向けて呪文を放つ。
普段の二人ならば容易く避けるだろうが、先程の呪文が相当に
体力を消耗させたようだ。
何とか攻撃を避けるものの、いずれは限界がくるだろう。
顔からは疲れが見て取れる。
「セシル! 助けるぞ」
テラが岩陰から飛び出した。次いで、セシルは剣を抜き、勢いよく前に躍り出る。
「まだ、私達がいるぞ」
「終わりだ」
テラの放った魔法に続けるかのように距離を縮め、一気に剣を振るう。
確かな手応えがある。
「くっ! 体が崩れていく」
呻きを上げるとスケルミリョーネはがっくりと崩れ去るように地面に伏した。
そのまま黒い液体を体中から噴出し、二度と起きあがることはなかった。

299 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/18(火) 01:05:20 ID:bDM7GAlx
FINAL FANTASY IV #0246 4章 3節 山間(31)

「終わったのか?」
数秒間、液体、おそらくは血を流し続けて地面に転がるスカルミリョーネを見ていたセシルであったが、
その奇妙な姿に今だ勝利を確信できず、ついそんな疑問を口からこぼす。
だが、その様子からはもう生きてはいないという結論に達し、納得するかのように剣を納める。
「取りあえずは退けたのか……」
テラも少し疑念を抱いているかのような口調であった。
「ま、いいじゃねえか。そんなに深く考えなくてもさきっと大丈夫さ」
そう言った後、行く先に見える建物を指さす。
「ほらあれがパラディンの試練を受ける所だろ。ささっといかないと日が暮れちまうぜ」
指さす方向には確かに何かの建物が見えた。特殊な材質で作られたかの様な外装は既に傾きつつある
太陽の日を直に受け光り輝いていた。
あれが試練の間……あそこに行けば今の自分とも決別できるのか。
この忌まわしき暗黒騎士の烙印そして、崩れてしまった友や愛する者との関係も。
「そうすれば君ともお別れか」
セシルは先程まで身を友にした剣に目を落とした。
戦いが終わってまだ少ししかたってない為か、鞘に納められた今でも黒き波動を微量ながら漏らしている。
「感傷に浸るのはもうちょっとばかり後だ。早く行こうぜ」
セシルを現実に引き戻したのは背中を押しながら催促する様な声を上げるパロムだ。
「分かった」
もう少しだけ一緒に戦おう。剣を見てそう誓うとセシルは皆の待つ場所へと――
「!」
歩き出そうとしたところで後ろから何かの気配を感じ振り返る。
だが、そこには二人の魔法で削れた地面が広がっているだけであった。
「どうしました?」
少しばかり心配した様子でポロムが顔を覗き込むかのように訪ねる。
「いや、何でもないよ。先を急ごうか」
確かに何かの気配を感じたような気がした。唯の思い過ごしであればよいのだが……
そんな嫌な考えを払うかのように、セシルは歩き出した。

300 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/18(火) 01:25:42 ID:b47JAJXc
>>299氏GJ!
スカルミリョーネ復活クルー((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル
どんな描写になるのか楽しみ。

301 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/18(火) 01:35:28 ID:NJrkhVRV
acの人も299も乙


302 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/18(火) 01:48:10 ID:vMEoVWVD

ティファとマリンはミッドガル5番街スラム跡地にある、もとは教会だった廃墟を訪れていた。
星痕に苦しむデンゼルを置いてくるのは気が引けたが、ティファにはどうしてもここで確かめたい事があった。
マリンはというと、教会の奥のほうにある花畑に嬉しそうに走りよっていった。
スラム街の跡地にある花畑。それがこの教会を、特別な場所にしている由縁だった。
ミッドガルのやせ細った大地に、10年以上も前から花が咲いていると言う事自体がすでにこの上なく珍しいことだ。
それに、2年前のあの日、メテオの直撃でミッドガルが崩壊した時も、この花畑は生き延びていた。
しかし、復興に奔る人々の目には、この小さな奇跡は映っていない。
ティファ自身、この教会に来たのはほぼ2年ぶりだった。

ティファはざっと教会の中を見渡し、探していたものをすぐに見つけた。
それは、花畑の傍らに散らばっている、人がそこで寝起きしたという痕跡。
それは、自分達の許を去ったクラウドがここを寝床にしていたという痕跡。
クラウドがここに来ていると、ティファは以前から人づてに聞いていた。
でも、こんなに近くにいただなんて、思いもしなかった。
ティファがそれに歩み寄ると、マリンもついてきた。
「クラウドはここに住んでるの?」
彼女もティファと同じ事を考えたらしい。
「そう…みたい、だね」
しかしティファは、これがとても「住んでいる」とは言えなかった。
荒れた床に、申し訳程度に敷かれた寝藁。小奇麗に巻かれた寝袋。
その傍らには金属製の箱――中身は恐らく、彼がユフィから預かったマテリアだろう。
マリンが箱を指差して「何?」と訊いたが、ティファは曖昧に微笑んで開けさせなかった――と、
これまた申し訳程度に置かれた木箱。その上には欠けた食器が数個置かれていた。
ここに垣間見られる、クラウドの素朴で孤独な暮らしを思うと、ティファは胸が痛くなった。

しかも、それだけではなかった。
マリンが、木箱の近くに落ちていた、使い古された包帯を見つけたからだ。
「デンゼルと同じ!クラウドも病気なの?」
黒い膿の跡が残された包帯を見て、マリンが叫ぶ。
それは、紛れもなく、クラウドが星痕症候群に冒されている証拠だった。

303 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/18(火) 01:49:45 ID:vMEoVWVD

「言ってくれればいいのに…」
不安げなマリンの視線を受け止めながら、ティファは切なげにそれだけ言う。
これについても、なんとなく察しはついていた。
言ってさえくれれば、私やマリンが支えられたのに。
なのに、クラウドは独りで重病を患った体を引きずって出ていってしまった…
「病気だから、出ていったの?」
そう訊いてくるマリンの声は、どうしようもなく悲しそうだった。
「ひとりで、戦う気なんだよ…」
「戦う?」「違う」
ティファは曖昧な答えをマリンに返したが、すぐに訂正する。
あることに思い至ったからだ。
「戦う気なんか無いんだ…」
彼は戦っているのではない。逃げているのだ。

「…ティファ?」
ふとティファが我に返ると、マリンが心配そうに見ていた。
そんな彼女に、ティファは無理に明るい笑顔を作り、言った。
「マリン、帰ろう?」
「やだ!クラウドに会いたい!」
しかし、少女は拗ねるように言った。
そう、マリンもまた、ティファやデンゼルと同じように、押しつぶされそうな毎日に耐えているのだ。
ティファはそれをまた切なく思って、「そうだよね…」と頭を垂れた。
「…会いたいよね?」「うん」
帰ってきたのは、どこまでも素直な声。
「ね、会ったらどうしようか?」
私が弱気じゃいけない。そう思ったティファは、また笑顔を作って、明るい話題を振った。
「一緒に帰る!」「その前に」
ティファはいたずらっぽく微笑んだ。
「お説教だね」
「賛成!」
マリンの朗らかな声が、辺りに響いた。

304 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/18(火) 01:51:21 ID:vMEoVWVD

カダージュはドアを荒々しく開けると、正面に待ち構えていたレノを蹴り飛ばした。
レノはそのままもんどりって反対側の壁に激突し、苦しげに呻いた。
部屋に入る。瞬間、真横から大男が肉薄してくる。ルード。
しかしカダージュは彼のほうを見ようともせず、こともなげに右腕を伸ばし、彼の頭を鷲掴みにした。
ルードはその腕を払いのけようとしたが、出来なかった。
彼の頭を掴んだ右手に、とんでもない握力が加わったからだ。
頭蓋骨が砕けるのではないかと思われるほどの圧力。ちなみに、カダージュは左利きだ。
苦痛を訴えるルードの声が次第に甲高くなり、サングラスにヒビが入った頃、レノの真上へその巨体を投げ捨てる。
そして、部屋の中央で、微動だにせず鎮座していたルーファウスに向き直った。

「ウソは嫌いだな」
甘く、シニカルな声。しかしどこまでも危険な声。
「悪かった。今度こそ正直に話そう」
赤子の手を捻るかのごとく倒されたタークスの二人のほうをみながら、ルーファウス。
「あれはお前達から逃げる途中、ヘリから落としたらしい。…全く…間の抜けた話だ。」
「 本 当 に ? 」
声色に脅しをきかせるカダージュ。
「…誓って」
即座に、ルーファウスが答える。
「じゃあ、これに誓ってよ」
言うとカダージュは、ルーファウスに背を向け、ある物を彼に投げ渡した。
足下に落ちたものを見た瞬間、布の下で無表情を決めこんでいたルーファウスの顔が、怒りで僅かにひきつる。
それは、レノとルード以外の、あと2人のタークスの、血に染まったIDカードだった。
「…目的はなんだ?」声を少し太くして、ルーファウス。
「母さんの力が必要なんだ…」彼に背を向けたまま、カダージュ。
「リユニオンには、どーしても」
「リユニオン…」
ルーファウスが復唱する。
リユニオン(再結合)。それは人間に、いやこの星にとって最も忌むべき言葉の一つ。
遥か昔に空からきた厄災、その最も象徴的な言葉だ。

305 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/18(火) 01:58:16 ID:vMEoVWVD

「母さんの細胞を貰った仲間が一箇所に集まるんだ。そして星に復讐するんだよ」
うろうろとルーファウスの前を右往左往しながら、カダージュは週末の楽しい計画でも話すようだった。
「準備は着々と進んでるけど…ほら、誰かさんが母さんを隠しちゃったからさぁ」
一旦言葉を切り、まだ動けないでいるレノとルードに目をやる。
「準備だと?」
ルーファウスはカダージュの言葉の端を鋭く取り上げる。彼らの目的をさらに深く知るためだ。
「星痕…社長もよく知ってるよね?」
カダージュは短く答えて、ルーファウスの右腕に軽く手を添える。それだけで彼は腕に激痛を感じた。
クラウドが火傷だと思った右腕の痣は、実は火傷ではない。
ルーファウスもまた、星痕を抱えていたのだった。
「ライフストリームの中で、母さんの遺伝子念が頑張ってるおかげなんだ」
誇らしげに語るカダージュ。しかし、ここから先はその声が少し震えた。
「それなのに…それなのに僕達は母さんの居場所すら知らない」
嘆くカダージュを見据え、ルーファウスはまだ痛みの残る右手の指がピクリと動くのを押さえられなかった。
――おまえの目は節穴か。馬鹿め――
カダージュのこの一言の面白さときたら、無表情を保ちつづけるのが大変だったほどだ。
だが、幸いにもそのどれにも彼は気がつかなかったようだ。
「情けないけど、仕方がないんだよ。僕達は思念体だからさぁ。
 母さんを見つけて細胞をわけてもらわない限り、元通りにはなれない」
ルーファウスの眼前に詰め寄り、続ける。
「思念と星痕だけじゃたりないんだ。本当の、リユニオンにはね」
話がすこしばかり飛躍し過ぎて、、ルーファウスは混乱した。
思念体とは?本当のリユニオンとはなんだ?お前達は何を企んでいる?
「…なんの話だ」
もっと深い所へ話を持って行こうと、ルーファウスが訊いた。

306 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/18(火) 01:59:16 ID:vMEoVWVD

すると、一瞬だけ、本当に一瞬だけ、それまでカダージュの顔に張りついていた甘い笑顔の仮面が剥がれた。
そこにあったのは凶暴性を向き出しにした顔。世界の全てを憎んでいるような、邪悪な顔。
「社長…気づいてるんだろ?」
言うと、彼は突然ルーファウスの目の前に跪いた。まるで忠誠を誓う騎士の様に。
そして、視線を上目使いでルーファウスと目を合わす。その時、ルーファウスは彼の目が、なぜか蒼色に見えた。
瞬間、ルーファウスは右腕に、先ほどとは比較にならない痛みを感じた。
同時に、こちらを見るカダージュの顔が、彼以外の誰かの顔の面影と重なる。
長い銀髪、冷たく蒼い、刺すような眼。それは紛れもなく―――

ドスッ。
クラウドは、倒されていたザックスの墓標を地面に刺しなおした。
「お前の分まで生きよう。そう決めたんだけどな」
そして、彼の形見のバスターソードに、誰にも聞かれない呟きを漏らした。いつものことだった。
もう、俺は長くないかもしれない。
そんなことをぼんやりと考え始めたのは、どのくらい前からだったか。
左腕を蝕む星痕は日に日に大きくなっていくし、それに伴って心はだんだん空虚になっていく。
もう1年と半年以上もみんなには会ってない。このまま死んで霧のように消えてしまうのも、それはそれでいいかもな。
最近では、そんな自虐的な考えも芽生え始めた。
自分勝手なのはわかっていた。だが、彼は今更どうすればいいのかわからなかった。
着実に体を蝕む不治の病、2年近くも絶縁状態になっている仲間、かつての罪。
彼もまた、苦しんでいた。

307 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/18(火) 02:00:31 ID:vMEoVWVD

ふと、目を閉じ、旧友との思い出に思考を巡らせる。
ザックス。クラウドが神羅カンパニーの兵士だった頃に、唯一人、親友と呼べた人物。
(ソルジャーになりたい?がんばれよ!)
力強く励ましてくれた、彼の横顔が目に浮かぶ。
(おい、気分はどうだ?)
…これは輸送トラックの中で乗り物酔いした時だったか。
(なあ、ミッドガルについたら…)
この時、奇妙な事が起こった。
思い出に浸っているクラウドの脳裏に、なにか、全く知らない映像が割り込んできたのだ。
誰かが眼前に跪き、上目使いでこちらを見ている。淡いグリーンのその人物の瞳が、次の瞬間、深い蒼色に変わった。
(トモダチ、だろ?)
ザックスの思い出と謎のヴィジョンがごちゃ混ぜになる。
左腕が灼けるように痛む。足がふらつく。なんとか立っていようとする。無駄な努力に終わった。
見知らぬ誰かの顔が他の誰かの顔と重なる。それは忘れもしない、あいつの顔。
――セフィ(クラウド、逃げろ!)
ザックスの叫び声が脳内に響く。クラウドは目を開けた。天地が逆転していた。
その風景を見たのを最後に、頭の中が真っ白になった。

同じ頃。
マリンは上機嫌で、鼻歌を歌いながら花をいじっていた。
ティファの方は少し不機嫌で、壁に寄りかかって腕を組んでいた。
教会を訪れてから早一時間。クラウドが現れる気配はない。バーにほったらかしにしたデンゼルの事も心配になってきた。
もう今日は諦めよう。そう思ったティファがマリンにそろそろ帰ろうと声をかけようとした、その時。
教会の扉が、バタンと荒々しい音を立てて、乱暴に開かれた。
「あっ!」と声を上げ、開け放たれた扉に駆け寄る。が、ティファが途中で制した。
現れた人物は、クラウドではなかったからだ。

308 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/18(火) 02:03:06 ID:vMEoVWVD

入ってきたのは大柄な男だった。
銀の髪を角刈りにし、左腕になにやら危険そうな武器を装備している。
ドスン、ドスンと大袈裟な足音を響かせながらやってくる男に対し、
ティファとマリンは、寄り添うようにして後退した。
しばらくして、男は膝を折り、視線の高さをマリンと同じにしてから、言った。

「遊ぼうか」
マリンは怖がるような目つきを男に投げつけた。
「…そうか、嫌か」
残念そうに呟くと、今度は「母さんは?」と訊いてきた。
ティファには男が何を言っているのか全くわからない。当然といえば当然だ。
一方で男の方は、足下に広がる花畑をなにやら厭そうな目つきで見ていた。
何だろうかと訝っていると、やがて「くせぇ!」と吐き捨てるように言い放った。
それからティファ達に向き直り、もう一度訊いた。
「なあ、母さんは?」
「誰もいないわよ!」
今度はティファが即座に言い返す。
すると男はなぜか泣きそうな顔をした後で、「じゃあ、遊ぼう」と、今度はティファに向かって言ってきた。
…どうも話が通じる相手ではないらしい。それに、何やら危険だ。
そう感じたティファは、マリンに何処かへ隠れているよう耳打ちし。
ハーフパンツのポケットから、黒いレザーグローブを取り出して填めると、ファイティングポーズを取った。
バーに強盗や盗人が現れた時は、ティファはいつもこうする。
「こりゃあ楽しみだ」
それを見た銀髪の男、ロッズも、格闘の構えに入る。

ティファは深く息を吸った。
一瞬の沈黙。静寂。そして、戦いの火蓋は唐突に切って落とされた。

309 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/18(火) 10:01:55 ID:1fGHm0a9
なんか冗長になってきてるな。
量より質を求めたい。

310 :久々にFF5:2005/10/18(火) 17:04:41 ID:8iqkv18T
FF5 58  北の山1

カーウェンから北へ向かい、鬱葱とした森を抜けた先にその山はあった。
「ここが北の山か・・・」
バッツは入り口からだんだん視線を上にやった。
頂上に行けば行くほど濃い霧が立ち込めている。
一見して入り口は静かで物音もしない。
しかし4人にとってそれが逆に得体の知れない不気味さとなっている。

「よし、さっさと行こうぜ」
ファリスが仲間、そして自分に気合を入れるかのように大きく声を出す。

北の山―――
なんとも単純で無機質な名前をつけられた山は怪物の巣窟と化し、
今や人が登山を出来る環境ではない事は4人の目に明らかだった。

「一応、道は整備されてるようじゃのう」
ガラフが恐る恐る辺りを探っている。薄暗く、土や草の独特な匂いが立ち込めている。
「とにかく急ぎましょう!」
レナは飛竜の事を思うと一刻も早く頂上に辿り着きたかった。

311 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/18(火) 17:07:34 ID:8iqkv18T
FF5 59 北の山2

山の探索を開始したさっきより緊張感から開放されていた。
襲ってくるモンスターを順調に退けていったからである。
ここに辿り着くまで様々な場所を探検し、戦闘のスキルも自然と上がっている。
「俺たちって結構やるじゃん!」
バッツは浮かれ気分だ。
「おい、気は抜くんじゃないぞ」
「わかってるって」
ファリスがお調子者に釘を刺す。海賊としての経験はこの冒険にしっかりと活きている。

そして山の中腹に差し掛かった時だった。
「・・・!あれは?」
ガラフの視界になにやら花らしきものが見える。
「もしかして飛竜草か!」
そう言いながらバッツは花の方へ向かって走り出した。
「あっ!バッツ!それは・・・」
レナが慌てて止めようとしても遅かった。その花はすでにバッツの手の中に収まっていた。
「ん〜、なんか傷を治す草にしては色が変だし・・・それになんか・・・あ、れ・・・?」
だんだんバッツの様子がおかしくなる。呂律が回っていない。指先が麻痺しだした。
「おいバッツ!」
3人が慌てて駆け寄る。バッツの顔が花の色と同じように変色していき、倒れた。

312 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/18(火) 17:08:30 ID:8iqkv18T
「バッツ、これは毒草よ!」
レナがやっとバッツにこの草の正体を伝える。毒々しい紫色をしている。
「第一、まだ頂上じゃないし、どう見ても色がおかしいだろう?」
ファリスがお調子者に釘を刺す。しかし、『ぬかに釘』である事を感じてる。
「ほれ、毒消しじゃ」
ガラフが半分呆れたようにバッツを治癒する。

「・・・よし、ぐずぐずしてらんないな!さっさと行こう!」
バッツは回復してすぐ何事も無かったかのように先へ進もうとする。
しかしその顔は少し赤く、バツが悪そうだ。
「ふぅ、調子の良いやつじゃ・・・」
ガラフが苦笑しながら呟く。しかし不思議とこの無鉄砲さに心が和んでいた。

313 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/18(火) 17:09:34 ID:8iqkv18T
FF5  60  北の山3

「だいぶ上の方まで来たな」
ファリスが辺りの景色を見回している。
もう地上は遥か下。ここへ来る為に抜けてきた森も雲に覆われて見えない。
山の上のせいか、風は地上よりかは吹いていた。

「ん?あれ、なんだ?なんか落ちてる」
バッツが目ざとく前方に落ちてる物を確認した。
「どうやら兜のようじゃが・・・」
「!」
「あっ!レナ!」
レナがとっさに兜に駆け寄る。
「これは・・・お父様の兜?何でこんな所に・・・」
レナが手にした兜には確かに見慣れたタイクーンの紋章がはっきりと刻まれていた。
間違いなく父の物と分かる。
父の兜がここにあると言う事は、父が最近までここに居たという事。
レナはそう信じたかった。

「きゃっ!!」
「「「レナッ!」」」
兜を抱え感傷に浸っていたレナに非常の毒矢が襲い掛かった。
3人は慌てて駆け寄る。
「ほら、毒消しじゃ!」
ガラフは急いでレナに毒消しを含ませる。
「罠だったのか?」
バッツは急いで剣を手に持ち戦闘体制に入る。
「ああ、しかもタチが悪そうだな・・・」
ファリスはこちらにゆっくり向かってくる人影を確認していた。

314 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/18(火) 17:12:10 ID:8iqkv18T
あっさりしすぎたかな。書き方は相変わらず下手です。

315 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/18(火) 19:21:01 ID:vMEoVWVD
>>309
どうもです。
冗長…ですか。やっぱりあれやこれや詰め込もうとしすぎたかな…?
今後は気をつけます。

316 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/18(火) 20:27:26 ID:ySF2g1d6
盛り上がって参った!
みんないいですよー、フオー。

317 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/18(火) 23:39:39 ID:JgqN5fwf
良スレ(・∀・)ハケーン
職人さんたちに期待sage

318 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/19(水) 00:17:50 ID:Fh8peCqV
>>299
プチメテオキターーーーーー!!
奮い立ちました!GJ!
パラディンの儀式イベント、めっさ楽しみにしています!

ちなみに自分はスカルミリョーネ(第1、第2形態)は無意味に強がりまくって最大化力のファイラで
焼き付くしますた。

319 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/21(金) 00:26:34 ID:Co/87GAs
昨日このスレを久々に覗いたらいつの間にかノベライズ作品が増えてて(・∀・)イイ!


ところでFF6のノベライズで、オープニング部分(ビックスとウェッジと??????の場面)が
抜けているようなので、僭越ながらそこを補うような文章を投下させて頂こうと思います。
スレとして「リレーになってないよ」等、問題があればご指摘いただければ幸いです。

320 :FF6オープニング:ナルシェ行軍:2005/10/21(金) 00:28:47 ID:Co/87GAs



 Command to the Empire Force in particular.
 Commence to launch the attack on Narche,
 the coal mines city.

 帝国軍特別指令
 炭鉱都市「ナルシェ」への侵攻作戦開始

                    ***

 魔大戦の記憶など、とうに失くしてしまった人間達が犯す過ちの始まりにして、
終焉へ向けた死の行進。あるいは、神々の呪縛からこの世界が解放されるための
戦の始まりか。
 どちらにしても、その記念すべき第一歩を踏み出そうとする三人の者達が、雪原に
立つ。魔導アーマーに搭乗した彼らの前には、延々と広がる白い大地の先に小さく
揺れる灯火が見えた――炭鉱都市・ナルシェの灯りだ。

 大地を埋め尽くす屍。どす黒く濁ったその色は、生命の持つ本来の輝きを覆い
隠し人々に恐怖と絶望をもたらす色。
 空から降り注ぐ粉雪が、大地を真っ白に染め上げる。長い時間をかけてゆっくりと、
その陰惨な光景を白一色に変えていく。目映いほどの白に埋め尽くされてしまえば、
その後にはまるで何事もなかったかの様に静寂が訪れる。その色は人々に忘却と
かりそめの平穏をもたらす色。
 空を見上げれば、どんよりと灰色の雲が広がっている。地上に差し込もうとする光を
遮り、空を支配する色。それは見えない未来への不安を煽り人々を混乱へ導く色。
 灰色の雲の隙間から、遠くに雷光が見えた。降りしきる雪に飲み込まれ、音は
届かない。

 炭鉱都市・ナルシェ。
 そこは忘却と繁栄に彩られた都市。

321 :FF6オープニング:ナルシェ行軍:2005/10/21(金) 00:31:00 ID:Co/87GAs

    魔大戦
    すべてを焼きつくした、その戦いが
    終わった時、世界から
    「魔法」という力が消え去った

    そして1000年…
    鉄、火薬、蒸気機関
    人々は機械の力を使い、世界を
    よみがえらせた

 ナルシェの大地に積もった雪がごとく、1000年という時間は人々の記憶の上に
降り積もり、あの大きな惨劇を覆い隠してしまったのだ。
 人々が忘却と引き替えに得たのは、繁栄。
 裏返せば、忘却の上に成り立つのが繁栄。
 だから忘れることが罪なのではない。

    今またここに、伝説となった
    「魔法」の力を復活させ
    その強大な武力によって
    世界を支配しようとする者がいる…

    人はまた
    そのあやまちを
    くり返そうとしているのか…

                    ***


322 :FF6オープニング:ナルシェ行軍:2005/10/21(金) 00:35:24 ID:Co/87GAs
「あの都市か?」
 装備したゴーグルとマスクをはずして、魔導アーマーに搭乗している男の一人が
問う。足元は覆われているものの、上半身は直接外気に晒されているため、吐き
出した言葉が一瞬にして白く凍り付く。
「魔大戦で氷づけになった1000年前の幻獣か……」
 問われた方の男が答える。あくまでも任務遂行上、必要な知識としてしか知らされ
ていない言葉を口にしながら。今、自分たちが触れようとしているものの正体を、
このときの彼らが知る由もない。
 そして自分たちがやろうとしている事の意味もまた、彼らが知ることはなかったの
だった。
「またガセじゃねえのか?」
 そう言って男は鼻で笑うと、瞬く間に白い息が広がる。「こんなの別になんでもな
い、いつもの任務だ。そんなに力むなよ」と、長年チームを組んできた相棒に向けて
助言してやった。
 その言葉に男は素直に頷いた。
「……だが、あれの使用許可が出るくらいだ。かなり、たしかな情報だろう」
 言いながら足元のペダルを踏み込み、アーマーごと方向転換して後ろにいた
“少女”と正面から向き合った。
「生まれながらに魔導の力を持つ娘か……。魔導アーマーに乗った兵士50人を、
たった3分で倒したとか。……恐ろしい」
 しかし男が“少女”に向ける視線は人間に向けられるそれとは明らかに違う色を
帯びていた。巨大な力への恐れ、殺戮を繰り返すだけの存在に対する侮蔑――
戦地に立てば、一瞬でかき消えてしまうほどの小さな感情だったが、自分たちが
搭乗する魔導アーマーに向けるそれと似ている。
 隠せないほどの不安が男の表情を曇らせた。顔面を覆う装備を外してはいな
かったが、そこは長年チームを組んで来た経験で表情など見なくても分かるのだ。
 不安がる相棒に、男は豪快に一笑したあとで言い放った。

323 :FF6オープニング:ナルシェ行軍:2005/10/21(金) 00:41:42 ID:Co/87GAs
「大丈夫。頭のかざりの力で思考は止まっているはずだ。俺達の命令で思い通り
に動く」
 自分たちにとって目の前に存在する“少女”は、ヒトの形をした兵器に過ぎない。
男はそんな風に言い切って、不安の色を浮かべる相棒に笑いかけたのだった。
 そうして、彼は外していた装備を装着し直すと、腕を振り上げた。
「東からまわりこむ。行くぞ!」

 静寂に沈む雪原に、魔導アーマーの稼働音が響き渡った。
 三体の魔導アーマーが目指すのは、炭鉱都市ナルシェ。
 二度と還れなくなるとも知らず、男達は軍部の命に従い任務へと赴く。
 一世一代の戦いの場へと、死の行軍を続ける。彼らの歩みを止められる者は、
誰もいない。




----------
その後自分はユミール戦でタイミングが合わず全滅しました。
…投下しておいてなんですが、中途半端ですみません。

324 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/21(金) 03:11:23 ID:1nfm7X2s
おお〜クオリティ高ぇなぁ
まず思ったのが、6のOPって地の文でも全く色褪せてないんだな。
ビッグスウェッジの会話も少ない量で読み手の好奇心をそそるようになってるし
ゲーム然としてないとでもいうんだろうか
けどそう思えるのは確実に作者さんの引き立てがあるからなんだよ
セリフそのままが逆に嬉しかった

ってわけで文句なしのGJだ。なんかもうありがとう

325 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/21(金) 03:15:12 ID:eJ50sJn+
すげえ並行して連載してるな!
作者陣ハゲ乙です!

326 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/21(金) 10:20:45 ID:e5IksQgR
おい、FF6を頭から書き始めた馬鹿!
>>5にあるまとめサイト見て来いや。
すでに途中まで進行してる物語をまた初めから書く奴があるか。
やりたきゃ先達に敬意を表して、続きから始めろや。


327 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/21(金) 14:50:17 ID:V97UFe5m
よく知らないが抜けてるとこかいたんじゃないのか?

328 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/21(金) 17:48:49 ID:7tCXLOyt
ごめん、釣り糸が見えてる

329 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/21(金) 18:10:39 ID:jTTnIcAv
クマー

330 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/21(金) 18:11:50 ID:fqzsEtE3
スレGJ

331 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/21(金) 19:49:43 ID:co/4sB1z
>>319で断りを入れてるんだしそんなに怒らなくても。

332 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/21(金) 22:11:08 ID:YiyRqXI6
いくらなんでもオープニングまるごと端折るのはどうかと思うけどなw

> ストーリーの最初から最後まで完全小説化

なんだし。

333 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/22(土) 13:06:06 ID:e7dbnGxE
細かいことは正直どうでもいいと言ってみる
クマー

334 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/22(土) 13:17:46 ID:70Cr/Gvt
同意
クマー


335 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/22(土) 15:00:02 ID:ZahsFhC2
全くゲームと同じ展開をなぞるのも嫌だと言う意見も
あるので大きく本編を逸脱した展開にならなければ多少の
改変も有っても良いと思う。
今まで書かれた1、4、5も書き手のオリジナル部分が好評を博している
事も珍しくはない。

336 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/22(土) 17:40:15 ID:+HERIgWL
つうかそういうのの判定のためにも297氏が短編書いてくれてんじゃん。
オリジナル要素マンセー。

337 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/23(日) 14:24:21 ID:QHnV4Pkj
FF8書こうかと思ったけど、よく考えたらストーリー把握し切れてないからやめとく

338 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/24(月) 00:46:45 ID:nrEHS00s

先に仕掛けたのはティファだ。
ロッズの懐に目にも止まらない素早さで飛びこみ、ニヤニヤ笑いつづける顔面に右ストレートを繰り出したのだ。
しかし、先読みされていたらしく、左腕のシールド状の武器で楽々と受け止められてしまう。
右腕と左腕で取っ組み合ったまま2秒間硬直するが、ロッズが力任せに振り解いた。

そこに僅かな隙が生じた。

瞬間、ティファは左の掌をロッズの頬めがけて叩きつける。
ぐぉ、という呻き声を上げて怯む大男に、間髪を入れず右、左と連続して掌底を浴びせた。掌打ラッシュ。
たまらず後退したロッズに走って詰め寄り、今度はハイキックを出す。避けられた。
ロッズが反撃に転じる。一瞬だけ隙だらけになったティファの顔を狙って左腕のパイルバンカーを突き出してきた。
顔面を捉える寸前でその先端を掴んで受け止めるが、その瞬間、彼女の全身に電流が流れた。

思わぬ衝撃に、後ろへと吹き飛ばされるティファ。
体勢を整えられず、花畑の真ん中に落下する。
立ちあがって前を睨むと、ロッズが左腕のクローを顔の前に掲げて笑っていた。
デュアル・ハウンド。
金属製の手甲の両端に、伸縮する2本のロケットのようなトゲが装着されているという外見で、
シールドとパイルバンカーの両方の役割を果たすその武器は、スタンガンのような機能も備えている。
足を前に突き出した格好でロッズの少し手前に着地してそのまま滑り、足払いするが、彼は大きく跳んで回避した。
すかさず床に手をついて立ちあがり、追う。
ロッズが着地し、背後を振り返ったとき、ティファの左拳がミリ単位の距離に迫っていた。

したたかに殴り飛ばされたロッズが、そのまま教会の端の壁に激突する。
彼は、追撃してくるティファと間合いを取ろうとバックステップした。
が、ティファは壁や柱を蹴って跳び、彼よりも遥かに速い動きで詰め寄り、あっという間に肉薄する。
ロッズが迎え撃つ暇も与えず、
右脚で顎を蹴り上げ、そのまま顔面に踵落とし、さらに流れるような動作でサマーソルト・キックを浴びせた。

339 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/24(月) 00:47:48 ID:nrEHS00s

怯み、顔を押さえながら後ずさるロッズ。
ティファがさらに追い討ちをかけようとする。
が、ロッズはティファが叩きつけてくる肘鉄を左腕で受け止め、また取っ組み合いになる。
ロッズは今度は振り払わずに、かわりに左腕のデュアル・ハウンドを放電させた。
予想していなかった攻撃に仰け反るティファ。その隙を逃さず、ロッズは彼女のわき腹に強烈な蹴りをいれ、壁に叩きつけた。
次いで、横殴り気味にデュアル・ハウンドを繰り出すが、ティファは危うい所でしゃがみ、避けた。
パイルバンカー状の2本のトゲが、派手な音を立てて壁に突き刺さった。
間髪入れずに、ティファはロッズの首筋を引っ掴み、背にしていた壁を右脚で蹴りつけ、彼もろとも低く跳躍する。
そのまま、空中でロッズの胸の辺りに左足を押しつけ、
―――教会の中央辺りの床に、思いきり叩きつけた。
だが、ロッズも負けてはいない。
彼を叩きつけた反動で跳び去ろうとするティファの脚を右腕で掴むと、
そのまま豪快に振り回して2,3度礼拝客用の長椅子に叩きつけ、さらに教会の奥のほうへとぶん投げたのだ。
派手なジャイアントスイングで投げ飛ばされたティファは、今度は空中で体勢を整え。
花畑のすぐ後ろの石壁に、しっかり足と手をついて「着地」した。
花が、旋風で舞い散った。
睨み合う2人。
ロッズはまた笑っていた。

ティファは壁に脚を突っ張り、ロッズ目掛けて再び跳んだ。
電光石火。
ロッズが迎撃のパイルバンカーを放った。間に合わない。
ジャンプした次の瞬間には、ティファはロッズの顔面を右手で鷲掴みにしていた。
「――いやーーーーーーーっっ!!」
一声叫び、大男を掴んで引きずりながら教会を疾走するティファ。
出入り口の扉の辺りまで来ると、ティファは彼を放り投げ、自分も追うように跳躍。
空中で再びロッズの顔を鷲掴みにすると、目についた柱の根元を狙って投げ飛ばした。
悲鳴を上げながら、ロッズはその柱に激突し、倒壊する柱の瓦礫に埋められていった。
メテオストライク。
瓦礫の山と化した柱のなれの果てを背に、ティファは華麗に着地した。

340 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/24(月) 00:49:01 ID:nrEHS00s

勝った。
崩れ去った柱を一瞥し、ティファはそう思った。
マリンも同じ考えだったようで、「ティファ!」と叫び、笑いながらこちらへ走り寄ってくる。
ティファも微笑み、膝と腰を曲げてマリンと視線の高さを同じにしたその時、場違いな音が辺りに響いた。

パン パパパパーパーパーパッパパー♪

あまりに場違いすぎて、ティファもマリンも一瞬、動きが止まった。
周囲を見まわす。また鳴った。
その時、ティファはこの音の正体がやっとわかった。
…携帯電話の着信音。
そして、その着信音が聞こえてくる方向は―――
ティファが慌てて振り返るのとほぼ同時に、ロッズが瓦礫を吹き飛ばして再び現れた。

3,4回目のコールでやっと携帯の通話ボタンを押した。
「…ここじゃねえなぁ」
携帯を耳に押し当て、暫くしてから、ロッズ。
「泣いてねぇよ!!」
今度は怒鳴りだした。その後、何故かティファとマリンを拗ねた表情で睨みつける。
「…わかった」
心なしか、声も拗ねていた。
そして、「連れてく」と短く告げて電話を切った。

ティファは脈絡が全くわからない会話に少し面食らっていたが、それ以前に大男の健在ぶりに驚いていた。
リミット技をしこたま叩きこんだのに、ダメージを受けた様子はおろか、傷一つみられないからだ。
ロッズは気だるげに首をコキコキと回している。
「…続きだ」
これまた気だるげに言うと、再び格闘の構えに入った。

341 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/24(月) 00:50:01 ID:nrEHS00s

また睨み合う、ティファとロッズ。
今度はロッズが先手を打った。
丁度足下にあった長椅子の残骸を、ティファとマリン目掛けて思いきり蹴り飛ばしたのだ。
マリンが悲鳴を上げ、頭を押さえてその場にしゃがんだ。
弾丸のような速度で迫る長椅子を、ティファは裏拳で弾き飛ばす。
が、跳ね返した長椅子の先からは、ロッズの姿が消えていた。
訝る間もなく、当のロッズがティファの背後に回り込んでいた。
速すぎる。
それまでとは明らかに違う動き。
ティファは何が起こったのかよくわからなかった。
ただはっきりしているのは、背中に彼のデュアル・ハウンドが押し当てられている事だけだ。

放電。

あまりに突然だった攻撃に対処できず、前につんのめるようにして倒れるティファ。
しかし、ロッズは彼女が床に倒れこむ前に、その首筋を引っ掴み、さらに掴んだまま手近な柱に押しつける。
また放電。
首をしっかり掴まれているため、今度はそれまでのように吹き飛ばされなかったが、変わりに後ろの柱が粉々に砕けた。
そのまま乱暴にティファを投げ捨てるロッズ。
すでに反撃どころか抵抗の余力すら奪われていたティファは、力なく花畑の中心あたりに倒れこんだ。
うう、と倒れたまま呻き声をあげるティファにロッズが歩み寄り、馬乗りになる。
そしてとどめを刺そうと、その端正な顔にパイルバンカーを押し当てたその時、彼の頭に何かが投げつけられた。

マリンだった。
訝しげな声をあげて振りかえると、彼女は唇をぎゅっと結び、敢然とした眼でロッズを睨みつけていた。
ロッズはそのあまりにもささやかな抵抗に笑ったが、少女の背後にあるものと、
自分に何が投げつけられたのかを知った時、もっと邪悪な笑みを浮かべた。
マリンの背後で、金属製の箱に詰められている物。
それは、紛れも無く、マテリア。星の力を秘めた結晶。
ロッズはティファを放し、危険な笑みを浮かべたまま、マリンの方へとゆっくり歩み寄った

342 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/24(月) 00:51:36 ID:nrEHS00s

たちまち、マリンの顔が恐怖に染まる。
ロッズの筋肉質な体は、彼女と比べるとあまりにも大きい。
ゴツ、ゴツ、という大袈裟な足音が、余計に恐怖感を煽る。
ティファは起き上がろうとしているが、出来ない。
「…逃げて!!」
叫んだが、どうしようもなかった。

同じ頃。
復興都市エッジのある路地で、デンゼルが額に鋭い痛みを覚えた。

たまらず、額を押さえてその場にうずくまった。
暫くそうしていると、痛の波がひいた。
ティファとマリンが「ちょっと出かけてくる」と言い残してセブンスへブンを出てから、2時間も経っていた頃だ。
デンゼルは2人とも店を空けるとき、こうしてこっそり外を出歩いていた。
出歩くと言っても、これといった目的があるわけではない。ただうろうろと歩き回るだけだ。
たった独りでバーの子供部屋に取り残されるのが、怖くてしかたなかったからだ。
マリンもティファも傍にいてくれない時にベッドでじっとしていると、額の星痕が体力を徐々に奪っていくのがわかる。
暗い、じめじめした、厭な重圧が、小さく弱い身体の全体にのしかかるのを感じる。
デンゼルはその着々と忍び寄ってくる死の足音が怖くて、街に出て、人々が行き交う足音で耳を塞いでいるのだった。

額を指でなぞってみる。まだちくちくと痛む。
顔をしかめて座り込み、そろそろ帰ろうかなどと考えていると、目の前に誰かが現れた。
女の子だった。歳はデンゼルとあまり変わらないだろうか。
「…君も星痕だよね?」
出し抜けに訊いてきた。見ると彼女も、モーグリのぬいぐるみを持った右腕から首筋にかけて、星痕の黒い痣を持っていた。
「行こ。治してくれるんだって」
デンゼルが口を開く前に言うと、少女は彼の手を引いて、強引にどこかへと連れ去ってしまった。

343 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/24(月) 00:52:51 ID:nrEHS00s

連れて行かれた先には、一台のトラックがあった。
その荷台には、デンゼルとほぼ同年代の子供達が、次々と乗りこんでいる。
ぬいぐるみの少女もデンゼルを一瞥すると、さっさと乗りこんでしまう。
星痕を、治してくれる。
この苦痛を、取り除いてくれる。
苦しみつづける彼らにとって、それは耐えがたい魅力だった。デンゼルも例外ではなかった。
ティファやマリンのことは、何故だか、気にならなかった。
彼はその場に立ち尽くしていたが、暫くすると、トラックの方へとまっすぐ歩み寄って行った。

これが、リユニオンの力か。
トラックから少し離れた所から、子供達が次々と集まってくる光景を眺めながら、ぼんやり考えた。
街に溢れる孤児の一人に声をかけたら、それが噂になって火のように伝播していき、
1時間もしない内にトラックに乗りきれないほどの人数が集まった。
星痕を宿しているという事は、つまり”母さん”の思念を宿しているという事。
やはり、本能的なレベルで働きかけるのだろう。
いまや集まった子供達は、数十人ほどが押し合いへし合いしながらやっと荷台に収まっている状態だ。
フン、と短く鼻を鳴らすと、ヤズーはトラックの運転席に滑り込んでエンジンをかけ、アクセルを踏んだ。

344 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/24(月) 00:54:32 ID:nrEHS00s

クラウドが教会に現れたのは、それからだいぶ時間がたった頃だった。
破壊し尽くされた教会を訝しげに見まわした彼は、教会の中に茂る花畑の上に倒れている人影を見つける。
ティファだった。
慌てて駆けより、彼女を抱き起こすクラウド。意識がない。
「…ティファ?」
呼びかけてみる。応えない。
「ティファ!!」
強く呼びかける。すると、閉じていた目がうっすらと開かれ、黒い瞳にクラウドの顔が映った。
「遅いよ…」
それだけ言う。弱りきり、かすれた声だった。
「誰にやられた?」「…知らない奴」
相変わらず弱りきった声で、短く答えるティファ。だが、次の瞬間に「マリン!?」と叫び、勢いよく体を起こした。
そして、また気を失ってしまった。
すかさず辺りを見まわすクラウド。
だが、教会のどこにもマリンの姿はない。ついでに、マテリアを入れておいた箱も消えている。

「くそっ!」
毒づいたが、その直後、クラウドの左腕に激しく鋭い痛みが走った。
とっさに右手で左腕を押さえる。と、左腕を包む布から、黒い膿が滲んだ。
黒く汚い膿はそのまま腕を伝って落ち、花を汚した。
同時に、先程のサブリミナルのような光景が頭の中に閃いては消える。しかし、今度は少し違った。見覚えのある光景だ。
それは、炎につつまれているあいつの姿。
不気味で危険な笑みを浮かべて、炎の中に消えて行くあいつの姿。
「――セ――フィ…」
その名が、口をついて出てくる。
一瞬だけ、全く別なイメージが割りこんだ。これまでとは全く違う、清らかな湖の光景が。
目を閉じていた事に気づき、開くクラウド。
クラウドとティファは、花畑の中に倒れていた。
花畑と言っても、教会の花畑ではない。どこか、全く違う場所。
クラウドは、再び目を閉じた。
狼が、見ていた……

345 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/24(月) 00:56:41 ID:nrEHS00s
せっかく指摘してもらった冗長さが直ってない、戦闘は本編をまんまコピー、展開早すぎ…文章化って難しい・・・

346 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/24(月) 03:44:22 ID:0cznNYvL
乙です。んな悲観するほどじゃないですよ。
十分読ませる文章です。
むしろあんま卑屈になると叩かれやすい・・頑張ってー。

347 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/24(月) 23:00:00 ID:sKgDQY3L
>>345
作中で描かれている細かい動作が入っていて丁寧に描写しているなと思います。
肉弾戦の様子が緊張感あって(・∀・)イイ!

教会でのバトルシーンではスロー・ストップモーションの多用と、花やピアノアレンジのBGM
といった視聴覚効果がふんだんに使われていましたよね。
その分、それらにすべて文章だけで太刀打ちするのは難しいように感じます。(自分は)
そこで、あの作品ではあまり見られなかった心理描写を入れてみてはどうでしょうか?

モーションがゆっくりになる場面(たとえば跳び去るティファの脚をロッズがつかむシーン)で、
捕らえられたティファの心情を入れてみたりだとか。
せっかく場面がゆっくりになったのだから、ここら辺で視点をマリンにしてみるのもアリかな、とか。
(あんな激しい戦闘で、マリンはどうやってそれらの被害から免れるべく協会内を逃げたのか、とか)
決して本筋から逸れることにはなりませんし、非力なマリンの目を通して見た二人の戦闘を描写すれば、
さらに緊張感が増したりするかな、などと思えるのです。
そう言った面を取り入れていくことが逆に、文章化のうまみな気もします。
(特にこの先のシーンは戦闘などの動的要素よりも会話から四者の心情を描く方に重点を置きやすいかなと。
その分、映像として見たときは戦闘シーンのように派手さがないのでそのまま文章化すると単調になるかも)
…まとまりなく長々書いてスマソ。
単に自分が読んでみたいFF7ACノベライズ像を書いただけかも知れないので、あんまり気にしなくてもいいかも(w。

348 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/25(火) 15:11:53 ID:nKt5fD7d
保守

349 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/26(水) 12:28:47 ID:V3qfNeSE
・ボリューム配分
 表現したいエピソード、シーンを絞り、それ以外は思い切って軽く流す。
 思い入れのあまり全てを描こうとすると、冗長になり却って何も伝わらない。
 読者に伝えたいことを事前に明確にしておくこと。

・キャラクターの心理描写
 いわゆる「神の視点」の濫用は極力避ける。
 全キャラについて等しく心理描写を行うのは、上述と同様、
 却ってぼやけてしまう。
 主人公から見て恋愛、敬意、畏怖の対象となるキャラについては、
 むしろ主人公の視点からの描写に留めると、緊張感を維持できる。
 進行上心理描写が必要な場面でも、可能な限り行動描写のみで
 行間を読ませるなどの工夫をすると良い。

350 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/26(水) 12:36:55 ID:p0VhgTMc
何だか偉そうな物言いでごめん。
決して7ACの作者さんにダメ出ししてるわけじゃない。
自分が原稿持ち込みに行くたびに編集者から指摘くらうことを
そのまま書いちゃった。

351 :349=350:2005/10/26(水) 12:38:40 ID:p0VhgTMc
あれ、ID変わってるけど349=350です。

352 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/26(水) 15:54:36 ID:cPE749NX
>>349
作家志望の方?
それなら是非参加していただきたいなぁ。

353 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/26(水) 20:07:47 ID:8+L3mp81
職人さんちょっと過疎ってきた?
まあ強制はできませんが。文書くのしんどいしねw。

354 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/26(水) 20:42:43 ID:4lD5BKe3
すいません、返信遅れました。

>>346
どうもです。
そう言ってもらえると励みになります。

>>347-350
貴重なアドバイス、ありがとうございます。
文章はできるだけスマートに、ですか…参考になります。
心理描写…は実を言うと苦手なのですが、早速取り入れて見ようと思います。

355 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/26(水) 20:43:50 ID:4lD5BKe3
あ、忘れましたけどAC描いてる者です。

356 :297:2005/10/27(木) 23:45:13 ID:vP5qLrG6
ff6 - 21 figaro

「お待ちなさい」

 鋭い声に振り向くと、声に違わず厳しい面持ちの老女がティナと兵士を睨んでいた。
「これは…神官長様」
 些か気を浮かせていた兵士は声を取り直し、深く頭を垂れた。ティナが自分もそれに
習うべきか迷っているうちに、老女はさらに言葉を詰める。
「そちらの女性はどなたです?」
 チラリとティナを一瞥してから、老女は鋭い視線を兵士に戻す。
「は。こちらは、エドガー様の…」
「あぁ! もう結構、聞いた私が馬鹿でした!」
 苛立たしい、うんざりだという仕草で頭を振る老女。そしてまたチラリとティナを見た。
「あなたはもう下がって結構です。他に仕事が無いわけでもないでしょう?」
「は……ですが、こちらの方のご案内を…」
「この方のことは私が責任を持ってお引き受けします。さあ!」
 凄みを利かされて、寡黙な兵士は足早に引き上げていった。どうやら神官長と呼ばれる
この女性は、ここではとても発言力のある人物らしい。
 ……でも、どうして?
 ティナはますます困惑するばかりだった。というのは、人の感情の機微に疎い彼女にも、
先程からちらちらとこちらを窺う老女の視線は、明らかに敵意のそれであると分かっていた
からだ。
 どうしてこの人は、怒っているんだろう?
「……それで!」
 二人きりになると、老女の口調はますます棘を帯びる。
「一体あなたはどこの街から連れてこられたのですか!?」
「え…?」



357 :297:2005/10/27(木) 23:48:09 ID:vP5qLrG6
ff6 - 22 figaro
  

「まったくあの子と来たら……本当に見境の無い!
 先週に三人もつれ込んだばかりと思ったら、今日また一人!」
「……あの」
 何を言っているのかさっぱり分からない。
 それでも老女は呆気にとられているティナを意ともせずに捲し立てていく。
「いえ、何も言わなくて結構。あなたの仰りたいことなどようくわかっておりますとも!
 でもね、女中なんてこの城にはもう、箒で掃いて捨てるほどいるのよ。
 あぁ! いっそ本当に掃き捨てられたら!!」
「……私は」
「ええ、もちろんそうだからといって、あなたに仕事が無いわけではありませんよ。
もっとも余っているわけでもありませんがね、とにかく」
「あの……ちょっと!」
「あら…なんです?」
 冷たい視線が刺さる。
 ティナは咳払いをして、押し戻されそうになった言葉をなんとか絞り出した。
「……その、私は……、ナルシェの街でロックという人が、私を助けてくれて………
 それで、彼に連れられて、一緒にここに……」

 ……だめ、うまく説明できない。
 ティナは困り果てて俯いた。なぜと言われても、彼女自身どうして自分がここにいるのか
分かっていないのだから、説明など出来るはずもない。
 ところが、意外にも老女は言葉をとめて黙っていた。ティナが恐る恐る顔を上げると、  
「まあ…、まあまあ!」
 老女がその顔一杯に、驚きと、歓喜の色を広げていた。
「ああ、ごめんなさい! 私としたことが、とんだ勘違いをしてしまって!」
「……?」
 やっぱり、ティナにはよくわからなかった。



358 :297:2005/10/27(木) 23:49:23 ID:vP5qLrG6
ff6 - 23 figaro


「ロックね…、あの人は立派な若者よ。とても思いやりがあって、分別もあって……、
 エドガーにも見習ってもらいたいものだわ!」
 先程までとは打って変わって、彼女の口調はすっかり親しげに満ちたものに変わってる。
その変貌に驚いているティナに気づいたのか、老女はもう一度頭を下げた。
「あぁ……本当にごめんなさい。でも、分かっていただけるかしら。
 あなたもこの城の至るところで……見たでしょう? あの女中たちを……」
 ティナはようやく頷いた。
 それは兵士に案内をされている間に彼女自身も気になっていたことだ。つまり、城中の
どこに目を向けても映る、女性たちの姿にである。その女性たちは、みんなエドガーが
方々の街から連れてきた手合いなのだそうだ。
 そうして際限なく増えていく女性たちの管理で、さぞかしこの老女は日々骨を折っている
のだろう。そこにやってきたティナの姿に、兵士の「エドガー様の…」の一言である。
彼女が早とちりをするのも無理はないというものだ。

「あぁ……それで。あなたはここにしばらく滞在されるのかしら?」
 そんな事情を伝えてから、ふと老女は口調を改めた。
 彼女の声に先程の険しさが戻りかけているのを察して、ティナはすこし緊張した。
「…いえ、ご迷惑をおかけするわけにもいきませんし。できるだけ早く、出て行こうと…」
 この返事に、老女はいよいよ気を良くしたようだった。
「まぁ、まぁ、まぁ! そんなご遠慮なさることは無いのよ!
 あなたのような理性的な方なら、いつまでだっていてくださって構わないんですからね。
 そうだわ、あなたさえよければ、私の部屋においでになってくださっても……!」
 子供のようにまくしたてる老女の喜びぶりに驚きながら、ティナはクスと笑った。
 きっとこの城にいるのは、彼女がうんざりするほど華やかな女性たちばかりなのだろう。
 そして、その人たちはきっと、先程のエドガーの言葉にも頬を染めて喜ぶことが出来る
ような人たちなのだろう。



359 :297:2005/10/27(木) 23:50:18 ID:vP5qLrG6
ff6 - 24 figaro


「この部屋はね、エドガーが子供のころに使っていた部屋なのよ。
 あの人が王位を継いでからは、私にこの部屋を譲ってくれたの」
 招き入られた神官長の部屋の中。二人分のお茶を煎れながら、老女は嬉しそうに話す。
「婆やなら、このベッドでも十分な大きさだろう、ですって! 馬鹿にしてるのよ!」
 そうやって腹を立ててみせる彼女は、けれどそれがエドガーの紛れもない愛情の表現だと
もちろんちゃんと知っているようだった。
 部屋を見回してみる。老女はその印象通り慎ましい生活を好むようで、小さな部屋には
よく整頓されており質素な空気が満ちている。でもよく見ると本棚に童話が入っていたり、
壁に背比べのような傷がついていたり、確かに昔はそこに子供がいたという名残がたくさん
残っていた。
 ふと、ティナは首を傾げた。
「二つありますね」
「え?」
「ベッド、二つありますね」
 老女はしわがれた笑顔に、少し淋しさを混ぜてティーカップを置いた。
「……えぇ。エドガーには双子の弟がいたのよ」
「双子?」
「そう……、双子といってもね、似ているようでちっとも似てなくて……」
「……エドガーの双子」
「マッシュと言うの。とても……優しい子だったわ」
 口端を歪ませながら、彼女はそっとベッドに手を伸ばした。愛おしさに溢れた彼女の
手つきは、まるでそこに小さな子供が眠っているような錯覚をティナに思わせた。



360 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/28(金) 00:11:24 ID:YdjoDXsL
久々のFF6グッジョブ!

あとトンベリもGJwww

361 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/28(金) 00:35:27 ID:16Xi/yJW
乙。神官もこうやって個性を持って書かれるといいな。
ファミコンだと没個性になっちゃう。というか、容量上掘り下げられないもんね

362 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/28(金) 00:35:30 ID:b5ZGWDsB
トンベリもってどういう意味?

363 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/28(金) 00:43:48 ID:YdjoDXsL
>362
■トンベリ復讐ものがたり■
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1129954774/


364 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/28(金) 01:46:50 ID:DX5KglEZ
319です。
>>324
ありがとうございます。
>>356-359
神官長がまさに生きてるって感じがして読んでると嬉しくなってきました。
さり気なく描かれるフィガロの案内役兵士も細かいなと。
この勢いであのケッコン娘も出て来たらエライ事になりそうだ…(w。


未プレイの方(または解釈によって)は混乱させる文章かも知れませんが、
FF6オープニング(ティナ覚醒前)補足文>>323の続きを投下させて頂きます。

365 :FF6オープニング:ナルシェ進軍:2005/10/28(金) 01:52:30 ID:DX5KglEZ



 彼らの進軍を阻むものは、降りしきる粉雪だけだった。

 こうしてナルシェに辿り着いて都市の様子を目の当たりにした彼らは、予想していた
以上に細い道路を前にはじめて北上をやめ立ち止まった。メインストリートでさえ、
魔導アーマー一体がようやく通れる程の幅しかない。そこへ降り続ける雪に加え、
蒸気機関の吐き出す煙に視界を遮られ、侵入者である自分たちにとって戦いに不利な
状況が揃っている事を思い知った。
 さすがナルシェだ。これまで帝国が侵攻作戦を展開しようとしても、容易に落とせる
都市ではないのが頷ける。
 しかし裏を返せば、そんな都市へ派兵された我々はいわば精鋭なのだ。そう思えば
自然と士気もあがる。
「この娘を先頭にして突っ込む。ザコには構うな。行くぞ!」
 兵器でありながらそれを「娘」と呼んだ自分に苦笑しながら、彼は前方に視線を向けた。
頭部の高い位置で結われた少し珍しい色の髪の毛が揺れ、露出した肩は少女のそれらしく
華奢だった。その後ろ姿だけを見れば、彼女は紛れもなく人間であるはずなのに。


 彼らは“少女”を先頭にして隊列を組みナルシェの中心部へと足を進めた。

366 :FF6オープニング:ナルシェ進軍:2005/10/28(金) 01:54:29 ID:DX5KglEZ

                    ***

 これまで帝国同盟にも反帝国組織にも加わらず、中立の立場を貫いて来たナルシェ。
蒸気機関と炭坑の発展に裏付けられた富と、ナルシェの民である事への誇りが、この
都市の独立を支えてきた。
 家々の戸は吹雪から室内を守るために堅く閉ざされ、わざと細く作られた道路は
外敵の侵入に備えたつくりだった。常に降る雪と吐き出される煙とで、視界は良好とは
言えない。しかしそれさえも都市防衛の一環だ。
 そんなナルシェを守る屈強の『ガード』達は、たった三名の侵入者に愕然となる。街の
入り口に見た侵入者の姿が、南方大陸三国を武力で制圧したと噂に聞く、帝国軍の
魔導アーマーだったからだ。
 反帝国組織リターナーとか言う連中が最近、長老に「近々ナルシェに帝国が攻めてくる」
などと言ってきたらしいのだが、どうやらそれは事実のようだった。建物の陰に隠れ、
一部始終をうかがっていた先陣隊の一人が、勇気を奮い起こして立ち上がる。頬に触れる
風が、刺すように冷たく感じた。横に並ぶ者も、彼に倣って立ち上がる。
 彼らを支えているのは、ナルシェのガードたる誇り。

 ――己の誇りにかけて、この都市を守ってみせる。

 ふたりは誓うように頷き合って、メインストリートへと飛び出していった。

367 :FF6オープニング:ナルシェ進軍:2005/10/28(金) 01:55:36 ID:DX5KglEZ

                    ***

「帝国の魔導アーマー!? とうとうこのナルシェにまで……」
 戒厳令下の都市、外をうろつく者はいない。普段は人々が行き交うこの場所が、
一瞬にして戦場へと変貌する。
 帝国軍魔導アーマー部隊の三人と、炭鉱都市のガード二名が対峙する――ナルシェ
市街地を舞台にした戦いが、静かに幕を開けた。
 しかし、この戦闘が長く続くはずもなかった。数でも劣性だったガード達には敗走の
選択肢さえも与えられなかった。魔導アーマーの放つ強大な力を前に、いくら武装して
いるとはいえ生身の人間などひとたまりもない。
 武器を振るうどころか、叫ぶ間もなく命を落としたガード二名の亡骸は灰となって、
そのままナルシェの雪と混じり合い音もなく消えていった。
 ナルシェでの初めての交戦。その勝利にも三人は特に言葉を交わすこともなく、メイン
ストリートを北上し続けた。
 文字通り、ザコに構う姿勢はなかった。



 二番隊として控えていた男達は、建物の隙間から仲間達の最期をこの目で見届けた。
 魔導アーマーの凄まじい力をまざまざと見せつけられて、本能的な恐怖心から踏み
出そうとする足が震える。
 ――死ぬかも知れない。いいや、確実に……。
 それでも、彼らは戦わなければならない。なぜならば彼らは、選ばれた誇り高きガードで
あるから。
 ふたりは意を決しメインストリートに向けて走り出す。角を曲がり魔導アーマー三体を
視認すると、縛めていたシルバリオを放った。二頭は怯むことなくまっすぐに敵めがけて
突進していった。

368 :FF6オープニング:ナルシェ進軍:2005/10/28(金) 02:00:39 ID:DX5KglEZ

                    ***

「ナルシェは、俺達ガードが守る!!」
 ガード達が言い放った声が遠くに聞こえた。魔導アーマーが通りの中央で立ち止まり、
横合いから飛び出してきた獣との戦闘に入る。
 魔導アーマーに立ち向かった生物は、死以外の道を選べない。
 しかし魔導アーマーの搭乗者には、与える死の方法を選ぶ事ができた。
 いつかファイアビームを好んで使う相棒に、その理由を尋ねたところ「操作がいちばん
簡単だから」と返事が返ってきたのを思い出した。現に今も、彼はそれを使って敵を撃退
していた。
 実際のところ操作に特別な違いはない。ただ、パネルの並び順が違うだけだ。手元の
レバーに一番近いのがファイアビームというだけで、彼はそれを好んで使うのだ。相棒の
横着ぶりにはさすがに呆れて物も言えない。
 そんなことを考えていた彼は、ふとあることを思いついた。
 男達ふたりの搭乗する魔導アーマーと、“少女”が搭乗する魔導アーマーの性能には
大きな差があった。彼は好奇心から“少女”にその能力を発揮させる事を命じたのだった。
 そのひとつが『魔導ミサイル』。帝国空軍機などに搭載されているものとほぼ同型の
ミサイルで、発射には膨大な魔導エネルギーが必要とされるはずだ。事実、そのエネルギー
補填用の装置だけでも、魔導アーマーの何倍もの大きさになる。
 それをここに――人ひとりがようやく搭乗できるほどの魔導アーマーに組み込めたのは、
やはり搭乗者自身から魔導エネルギーを補充する事が可能だからなのだろうか。生きる
兵器……この娘だからこそ、と言うわけか。しかし残念ながら魔導アーマーの構造は
軍部の最高機密であり、彼らがその真相を知ることは一生ない。
 無表情のまま手元を動かし、“少女”は命じられた通りの行動を起こした。ミサイル発射の
轟音と直後の閃光とともに、戦闘はあまりにも早すぎる決着を迎えた。残されたガード
ふたりの足が僅かに怯む様子を見せた。しかし、それでも突撃をやめることはなかった。

369 :FF6オープニング:ナルシェ進軍:2005/10/28(金) 02:03:51 ID:DX5KglEZ
 こうして立ち向かってきた相手の屍さえ残らない、あまりにも一方的な戦闘だった。
 もはや魔導アーマーの搭乗者に相手の命を奪うという感覚は薄れ、足元のペダルと
手元のレバーやパネルを間違いなく操作するという作業でしかなくなりつつあった。
 相変わらず相棒は、ファイアビームばかりを使っている。しかし今さらそんなことを指摘
したところで何も始まらない。彼は黙って二人の後について歩き続けた。


 作業をこなしながら進軍を続ける。ここまで来ると建物が間近に迫ってくるほど道幅は
細くなっていた。最後尾を歩いていたウェッジが振り返ると、後ろに控えていたガード達が
武器を構えた。
 先に声をあげたのは、彼らの方だった。
「よし! はさみうちだっ!!」
 仲間達の敗戦を見てもまだ懲りていないのか、それとも自棄になっているのだろうか。
僅かばかり考えたが、いつも結論が出る前に戦闘は終わってしまう。相棒が言っていた通りの
ザコだ、たしかに構うほどのものではない。
 そうやって人知れず自分を納得させながら、手元のパネルを操作する。レバーを引いた次の瞬間、
耳障りな機械音と共に雪の大地がオレンジ色に照らし出された。アーマーの先端から赤黒い閃光が
伸び、目の前の生物を飲み込んだ。
 ファイアビームだった。


 またしばらく北上を続けると、周囲の景色が変わり始めた。煙を吐き出す煙突や立ち並ぶ
家々ではなく、むき出しの岩場が目立つようになったのを見て、自分たちの目的である炭坑へ
着実に近づいているのだと知る。

370 :FF6オープニング:ナルシェ進軍:2005/10/28(金) 02:10:31 ID:DX5KglEZ

                    ***

「炭坑の守りをかためろ!!」
 悲壮なまでの叫び声を、やはり遠くに聞いたような気がした。目の前に現れたのは
これまでにない多勢だ。おまけに人間だけではなくメガロドルクまでいる。普通に考えれば、
こんなモンスターまで手懐けているナルシェの防衛機構には驚かされるところだ。
 しかしそれも、帝国軍の魔導アーマーの前では然したる問題にならなかった。
 彼らの操る魔導アーマーの足元で、数分前までは命を持っていたものが雪の上に積もった。
“少女”の搭乗した魔導アーマーが、その上を歩く。


 そんな少女の顔を、脳裏に焼き付ける者が居た。
 目の前で次々に仲間を殺されていった男は絶望を振り払うように、炭坑を守る最後の砦を
解き放つため、その場を離れ駆けだした。


 こうして、前進を続ける彼らの前に立ちふさがる者はいなくなった。ここまで見せつけてやれば、
いい加減逃げたのだろう。逃げるのが自然だ。今まで向かってきた奴らの方が異常とも言える。
 やがて前方には黒く口を開けた炭坑の姿が見えてきた。組まれた足場から察するに、それほど
古い物でないことが伺える。
 三人は入り口の前で一度立ち止まる。
「情報によれば、新たに掘った炭坑から氷づけの幻獣が出てきたらしい……と
いうことは、この奥か?」
 不安や疑問というのではなく、確認という意味で相棒に問う。問われた男は頷いて前進を促した。


 “少女”以外のふたりにとって、この炭坑が二度と出られない闇への入り口になるのだとも知らずに。


----------
コマンド入力が面倒くさかったのは自分だけかも知れません、ごめんなさい。

371 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/28(金) 02:17:26 ID:YdjoDXsL
神経質な方はウェッジかな?
ファイアビームの描写が兵士の「仕事柄」を思わせて凄く良い。
テンポもいいし、文章かなり上手いですね。

ただ細かいんですけど、入り口で魔導アーマーの姿は確認してるのに、
>「帝国の魔導アーマー!? とうとうこのナルシェにまで…」
は、ちょっと引っかかるかな、と思いました。乙です。

372 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/28(金) 21:02:03 ID:vdg6WbHu
>>370
乙。
確かに、最初やった時はあんなに早くいなくなるとは思ってなかったから、
ティナのすべての技を見ることはなかったなw
>>371
帝国の侵略がとうとうこのナルシェにまでのびてきたのかってことじゃないのかな

373 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/29(土) 19:07:48 ID:NJe3ngRL
>>370
乙です。
どっかで見たことある文体だと思ったら恋する小説スレの6書きさんジャマイカ(゚∀゚)
向こうのスレの作品も読ませてもらってますです。
ちなみに、俺もナルシェではファイヤービームばっかり使ってました。

それはそうと、AC投下させてもらいます。

374 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/29(土) 19:09:54 ID:NJe3ngRL

不意に、意識が取り戻された。
目を開けると、それはどこかの寝室、そのベッドの上。
壁に、クラウドとティファの子供らしい似顔絵があることから、セブンスへブンの寝室だとわかった。
クラウドは起きあがると、隣のベッドにティファが、意識を失ったまま横たわっているのを見つける。
……また、助けられなかった?
そこまで思い至ったクラウドの胸中に一つの感情が滲み出す。それは、後悔。
どうすることもできず立ち尽くし、ティファの安らかな顔を見つめるクラウド。その背後に、2人の男が立っていた。

「…重かったぞ、と」
クラウドが振りかえる。そこにいたのは、レノとルードだった。
「…あんた、子供達と住んでいるって話だったよな」
クラウドが口を開く前に、ルードが話し出す。
その抑揚のない口調に伴う重苦しさに、クラウドは厭な予感を感じる。
「空っぽだ。どこにもいねえよ」
その予感を裏切ることなく、レノがお手上げだと言う風に言った。
「…どこにも、いない?」
まだ後悔の念に沈みながら、クラウドが復唱する。
タークスの2人は沈黙で答えた。重い空気が、あたりに充満する。
「…いいのか?」
やがて、ルードが短く訊いた。
「俺は…」
のろのろと答えようとしたクラウドは、そこで言葉に窮してしまった。
―――俺は…なんだ?
俺はどうしたらいい?どうしろって言うんだ?人ひとり助けられない、この俺に?
またも、沈黙が辺りの空気を支配する。ルードがもう一度「いいのか?」と訊いたが、それでも口を開かない。開けない。

たっぷり20秒間待った後、レノは失望したようなため息をついた。
「じれったいぞ、と」
煮え切らないクラウドにそれだけ言い捨てると、全ての興味を失ったように寝室から出て行く。
ルードもサングラス越しにクラウドを冷たく一瞥すると、後に続いた。ドアを閉める音が、いやに大きかった。
クラウドは何もせず、何も言わず、その場に立ち尽くしたまま2人を見送った。

375 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/29(土) 19:12:00 ID:NJe3ngRL

日が暮れた。
クラウドはまだセブンスへブンの寝室にいて、窓から月を眺めていた。綺麗な満月だった。
タークスの2人と短い会話を交してから、ずっとそこにいたのだ。
ティファの身を案じて。否、案じるふりをして。あるいは、どうするべきか決めかねているふりをして。
彼女が呻き声をあげ、ようやく目覚めたのは、それからだいぶ後のことだ。

目を覚ますと、そこはセブンスへブンの寝室だった。
もう夜だった。慌てて起きあがる。
クラウドがいた。
彼は起きあがったティファの顔をちらりと見たが、すぐに窓の外に視線を戻し。
「レノ達が探している」とだけ告げた。ティファは「そう…」と呟いてうつむいた。
寝室に何度目かの沈黙がおりた。虫の鳴く音が、どこからか聞こえてくる。
「星痕症候群…だよね?」
暫くして、うつむいたまま、ティファが口を開いた。
クラウドは何も言わず窓の外を眺めている。その沈黙は、肯定の証。
「やっぱり…」とティファが沈んだ心で絶望的に呟くと、クラウドは
「…治療法がない」とだけ言った。その声もまた、絶望的な響きを伴っていた。
―――でも、ちょっと待って。
ティファは顔を上げた。
―――だから、逃げるの?
「でも、デンゼルは頑張ってるよね?」
―――小さい子供だって、耐えてるのに?戦ってるのに?
「このまま死んでもいい…なんて思ってる?」
―――なのに、あなたは逃げるの?
「逃げてないで、一緒に闘おう?みんなで助け合って、頑張ろう?」
このままじゃ、みんないたずらに苦しいだけだ。あなただって、マリンだって、デンゼルだって、もちろん、私だって。
まだ背を向けているクラウドに、ティファは必死に訴えかける。
しかし、それでもクラウドはこちらを見ない。応えない。
「…本当の家族じゃないから、ダメか」
石のように黙り込む彼に、ティファは諦めたように締めくくった。
すると、クラウドはやっと口を開いた。

376 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/29(土) 19:13:34 ID:NJe3ngRL

「俺には…誰も助けられないと思うんだ」
暗く、重く、絶望的な声。
「家族だろうが…仲間だろうが…誰も…」
―――ああ、それで…
そこまで言ってまた黙るクラウドの背から視線を放し、ティファはまたうつむいた。
―――まだ、あなたはあの事を…

「…ズルズル ズルズル」
何度目かの沈黙の後、やはりティファが口を開いた。
失望したような、諦めきったような、うんざりしたような、そんな声。
クラウドがやっと振りかえると、ティファはクラウドに背を向けていた。
「ズルズル ズルズル!」
また言う。先程よりも少し大きい声だった。
その後の言葉を、意外な人物が引き継いだ。

「いつまで引きずってんだよ、と」
その声のした方に、クラウドとティファは同時に振り向く。
いつのまにか、タークスの2人が寝室の中に戻ってきていた。
「見つからないの!?」
すがるようにティファが訊く。
「銀髪の奴らが連れてった。目撃者がいたぞ、と」
レノが落ちつかなげに部屋を歩き回りながら、答える。
「行き先は?」今度がクラウドが、この時ばかりは急き込んで訊く。
「忘らるる都」ルードが答える。
「…アジトだ」
彼は腕を組んで壁に寄りかかって立ったまま、付け加えた。

その後、ティファ、レノ、ルードの3人が、意味ありげな視線をクラウドに送る。
その視線の意味する所を、クラウドは解かっていた。
暫く沈黙した後、彼は口を開いた。

377 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2005/10/29(土) 19:16:09 ID:NJe3ngRL

「…頼む…」
短く、それだけ言った。
その一言は、その場にいた3人を大いに面食らわせた。
ティファもレノも、ポーカーフェイスのルードでさえも、半ば驚いたような、半ば呆れたような顔でクラウドを見た。
「俺はルーファウスと話してくる」
そう続けるクラウド。それは戦えない、闘いたくないと言う意思表示。
「逃げないで!」
間髪いれずに、ティファが悲痛に訴える。
「わかるよ?
 子供達を見つけても、何も出来ないかもしれない」
言葉を続けるティファ。
クラウドは彼女に背を向けたまま、居心地悪そうにしだしたタークスの2人を見ながら聞く。
「もしかしたら、また取返しのつかないことになるかもしれない」
レノはルードを押して部屋を出ようとしているが、ルードはそんなレノを逆に押しのけて部屋から出さない。滑稽な図だった。
「それが怖いんでしょ?」
…図星だ。
「でも、もっと今を、色んなことを受け止めてよ」
ティファの説得は続く。
「重い?だってしかたないよ。重いんだもん」
彼女はクラウドにとってもっとも触れられたくない部分に触れた。
「一人で生きていける人意外は我慢しなきゃ。
 ひとりぼっちはいやなんでしょ?出ないくせに、電話は手放さないもんね」
また、図星を突かれた。クラウドは喋り終えた彼女を背に、ただ黙って立ち尽くしていた。

ティファの言った事は正しい。どこまでも正しい。
俺だって、それぐらいは解かってる。少なくとも、解かってるつもりだ。
でも、ティファ…俺は…俺は…

クラウドが何も言えないでいると、漫才のような押し問答をやめたレノが、またため息をついた。
「アジト…お前が行けよ、と」
それだけ言って、ルードと共に部屋から出ていってしまった。

378 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/29(土) 19:18:54 ID:NJe3ngRL
本編とちょっとシーンの順番が変わりますが、セブンスへブンの会話をほぼ一通り書きました。

379 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/30(日) 17:53:33 ID:Giitfl+H
>>彼らの進軍を阻むものは、降りしきる粉雪だけだった

380 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/30(日) 19:10:26 ID:64NqQNxH
そんな細かい突っ込みせんでもw

381 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/30(日) 19:55:00 ID:qCzlHGar
その文章だけ取り立てておかしいとも思えんけど。
粉雪程度に阻まれんなよwwwヨワスwwwって事?

382 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/30(日) 20:17:49 ID:qCzlHGar
むしろ”まともに行く手を阻む物が何もない”って事なんだろうけどさ。

383 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/30(日) 23:47:46 ID:qD0EiYsY
保守


384 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/30(日) 23:51:40 ID:SdgnkeFv
>>379
お前が何を言いたいのかさっぱりわからん。
普通に良い描写じゃないか。

385 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/31(月) 02:11:52 ID:jRe714Tz
ACグッジョブ!
いいな、なんかティファの態度が切ない。

386 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/31(月) 08:15:46 ID:Gdub4NdN
 横からになりますが、その一文が後の文章と矛盾を孕んでいるという事でしょう。多分。

>>382さんの解釈が正しければ、
 進軍を阻むもの > 粉雪、細い通路、煙、侵入者であること(土地に対する知識の不足)
 ”粉雪だけ”ではない。よって矛盾。

 あるいは、
>彼らの進軍を阻むものは、降りしきる粉雪だけだった。
 という一文は後の文章と違い、ナルシェ到着後の描写ではないという解釈も可能ですが、
それではナルシェの難攻不落を表現するという文頭の意図からは浮いた意味のない文章だということになります。
 この場合調整は必要ですが、下記のような文章の流れならば可。

 それまで彼らの進軍を阻むものは、降りしきる粉雪だけだった。
 しかし、ナルシェに辿り着いて都市の様子を目の当たりにした彼らは、予想していた
以上に細い道路を前にはじめて北上をやめ立ち止まった。

387 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/31(月) 12:23:24 ID:X6dNAsx9
>こうしてナルシェに辿り着いて都市の様子を目の当たりにした彼らは、予想していた
>以上に細い道路を前にはじめて北上をやめ立ち止まった。メインストリートでさえ、
>魔導アーマー一体がようやく通れる程の幅しかない。そこへ降り続ける雪に加え、
>蒸気機関の吐き出す煙に視界を遮られ、侵入者である自分たちにとって戦いに不利な
>状況が揃っている事を思い知った。

と書いておきながら、

>魔導アーマーの放つ強大な力を前に、いくら武装しているとはいえ生身の人間などひとたまりもない。
> 文字通り、ザコに構う姿勢はなかった。
>こうして立ち向かってきた相手の屍さえ残らない、あまりにも一方的な戦闘だった。
>しかしそれも、帝国軍の魔導アーマーの前では然したる問題にならなかった。

などと書いてしまう矛盾。
凝った言い回しやレトリックなど、小手先の技術におぼれ、
プロット、筋道を明確にするのを怠った報いか。

388 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/31(月) 13:26:28 ID:PM5d5IuD
書いてるのは(おそらく)素人なわけだし、そんなに重箱の隅をつつかなくても…。
プロの小説家・漫画家だって、かなり矛盾だらけのものを発表してる人いるし。
ていうか例えばFF7なんて、小説でこそないが、あんなに売っといて本編が矛盾だらけジャマイカ? 昔文章化しようとして、あまりの穴の多さに挫折したよ…


389 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/31(月) 13:41:03 ID:Gdub4NdN
>387
 そこには矛盾点ありませんよ。
 「不利な状況をものともしない魔導アーマーの力」という表現の軸はズレていません。

>>386で書いた部分も、最初の一文の時間的配置が曖昧であるゆえに矛盾を孕むように感じさせるだけで、根本的な矛盾というわけではありません。
 むしろ作者さんのチェック(時制、語句、視点、誤字・脱字など)が少々甘いゆえのミスでしょう。そういったミスは(請われもしないのに指摘するつもりはありませんが)他にもありますしね。

>>388
 ですね。

390 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/31(月) 17:42:51 ID:jRe714Tz
>363
他スレの話は持ち出すなよ。
向こうでは名無しで投稿してたんだから、察しろ。

391 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/31(月) 18:16:58 ID:P+oD/Ymw
どうでもいい事で揚げ足とってやたらめったらに流れ悪くしようとしてるのがいるな

392 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/31(月) 18:51:39 ID:SbHms85P
それだけ賑わってるって事だ。

393 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/31(月) 19:24:39 ID:r4ExQ8qk
そんな賑わい方いやだ…

394 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/31(月) 20:31:28 ID:56DzSntx
そんな板じゃないんだから勝手にやらせてくれよってこった。
書いてる人たちだってプロじゃねえんだ文句言うな。

395 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/31(月) 20:41:34 ID:SbHms85P
まあまあマターリ汁
そんな物言いじゃ雰囲気悪くなる一方なんじゃ…

396 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/31(月) 21:20:33 ID:DSXkOjO0
でもここは、プロにも見劣りしないような作品を作るぐらいの意気込みで
真面目に書いていくスレだからな。ある程度の批評はあった方が良いと思う。
もちろんそれと同じように賞讃もしていくべきだろうが。

ちなみに俺は、粉雪の描写、問題ないと思ったけど。

397 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/10/31(月) 22:16:22 ID:P+oD/Ymw
批評と揚げ足取りとは全然違うからな
その辺の区別をしっかりつけていきたい

398 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/01(火) 07:14:10 ID:Y9lxbWU6
それはそうと、ACって頻繁に投下してる割には陰薄いな
やっぱりみんなNGに入れて見ないようにしてるんだろうか

399 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/01(火) 08:17:30 ID:X2vcbHg/
新作期待あげ

400 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/01(火) 08:50:00 ID:iELZbzmd
>>398
影が薄いとは思わないよ。面白いし。
でも、難しいんじゃない?
元々がしっかりとした科白があって、台詞回しがあって、
その瞬間瞬間の表情があって、…という映像を文字に起こすと、どうしても
台本的になってしまうと思う。
アレンジしにくいんじゃないかな。
そういう意味で、他の1,4,5,6,に比べると、「書いている人のカラー」が
出しにくいんだと思う。

401 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/01(火) 10:23:18 ID:O5zzJnQC
7AC、未プレイの人は当然NGにしてるだろうし、
プレイ中の人も、今まさにホットな時期なので、
イメージ崩されたくない(良くも悪くも)という理由でNGにしてるのでは?

402 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/01(火) 22:38:56 ID:gdiP9GfR
別にNGにしてなくてもこのスレはROMに徹する潜伏者が多いから。

403 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/02(水) 00:56:55 ID:h5YqCaYd
>>401
未プレイっていうか未見ね

404 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/03(木) 02:21:40 ID:9QX82TOV
ところでまとめサイトの管理人さんは……

405 :494 ◆yB8ZhdBc2M :2005/11/03(木) 02:34:55 ID:aG2VB03e
みなさんお久しぶりです。
更新一ヶ月半程何もしてなくてすみません・・・。
一応スレには目を通していたんですが、ここ最近どうにも忙しくて更新が滞っていました。
今週は学祭期間中で時間が取れそうなので、また少しずつ更新を開始していこうと思うので宜しくです。

てかタイトルが増えたのでサイトデザインを変更せねば、と。


406 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/03(木) 02:39:45 ID:9QX82TOV
おお、いたのか。よかったよかった。
某SS総合保管所の管理人みたいに失踪しちゃったかと思ったよ。
更新マターリがんばってください。

407 :FF8:2005/11/03(木) 11:39:08 ID:DsCVtIEF
FF8-1

訓練施設に剣戟の音がこだまする様になって、もう一時間近く経つ。
「どうしたスコール、本気を出せよ。
このガーデンにゃ、ガンブレード使いは俺とお前しかいないんだぜ。
これじゃ訓練にならんじゃないか」
荒く息を弾ませながら、それでもサイファーは強がって言う。
「それとも降参するか、おい?」
「それはない!」
安い挑発と知りつつも、俺はムキになってサイファーに切り掛かっていく。
昔からそうだ。俺は昔から、サイファーに対しては対抗意識をムキ出しにして
突っかかっていく性癖がある。
どうしてなのか、それは考えたくないし、どうでもいい事だ。
「そう来なくちゃな。
さすがは”骨のある奴リスト”ランキング上位者よ!」
しばらく止んでいた剣戟の音が、再び訓練施設にこだまする。

408 :FF8:2005/11/03(木) 11:50:11 ID:DsCVtIEF
FF8-2

ガンブレードを得物としたのは、サイファーの方が先だった。
幼少の頃に見た映画の影響だという。
愛しの姫君を守るために竜と闘う騎士を描いた、ありきたりな物語。
相手を射抜くかの様に、切っ先を真っ直ぐ水平にする独特の構えも、
その映画の主人公を真似たものらしい。
重いガンブレードを水平に、しかも片手持ちで構えるなど、およそ実際的ではない。
が、それを実現たらしめているサイファーの膂力には、侮りがたいものがある。

俺がガンブレードを使う様になったのは、サイファーに対抗するためだと、
多くの人は思っている。勿論サイファーもその一人だ。
今までの俺とサイファーの確執を思えば、それも止むを得ないが、
実際のところそれは無関係だ。
訓練生時代に色々な武器を試してみたが、一番しっくり来たのが
このガンブレードだったというだけの事だ。
が、それは誰も知らない。誰にも言ってないからだ。
別に秘密にしているわけじゃない。ただ単に面倒くさいからだ。
自分の事を知ってもらう、これは面倒なだけではなく、さして意味のない事。
俺は人の事に興味を持たないのと同様、自分の事に興味を持たれたくはない。

409 :FF8:2005/11/03(木) 12:11:20 ID:DsCVtIEF
FF8-3

あまり知られていない事だが、ひと口にガンブレードと言っても、
実は用途に応じて、様々なバリエーションがある。
俺が扱うガンブレードは「斬撃タイプ」と呼ばれるもの。
相手に切り掛る直前にトリガーを引くと、薬室内の炸薬が爆発し、
剣の峰にある噴出孔から大量のガスが噴出する様になっている。
それが斬撃の威力を後押しするのだ。
一方、サイファーが好んで用いるのは「刺突タイプ」と呼ばれるもの。
これはガスの噴出孔が、剣の峰ではなく剣先にある。
相手を突き刺したと同時にトリガーを引き、相手の体内にガスを送り込んで、
体内から破壊する事を目的としている。

とはいえ今は訓練中であり、ましてや俺とサイファーは確執こそあれ
同じガーデンの訓練生という事もあって、当然ながら安全装置が掛かっている。
だから結局のところ、単なる長剣での斬り結びに過ぎないのだが・・・

410 :FF8:2005/11/03(木) 12:30:56 ID:DsCVtIEF
FF8-4

一進一退の攻防が続く。いつもの事だ。
互いの手の内は嫌という程知り尽くしている上に、技量も似たり寄ったり。
疲労だけが蓄積されていく。
「ふぅ、埒があかんな」
退くもならず押すもならぬ展開に痺れを切らし、サイファーが漏らす。
「!」
・・・サイファー、肘が見えている・・・
サイファーの様に突きを主体とする剣法では、肘を隠すのがセオリーだ。
突きに対しては、下段から肘を払うのが最も有効とされているからだ。
肘は攻撃の起点であると同時に、唯一の弱点でもあるのだ。
積み重なった疲労で、流石のサイファーにも隙ができた様だ。
無防備になったサイファーの肘を狙い、俺はこれもセオリー通り
下段から払いに行った。
剣筋を見極められぬよう、左掌を奴の顔面に突き出す事も忘れない。
「貰ったぞ、サイファー」

411 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/03(木) 19:47:57 ID:XbQmueFi
FF8の人うまいね。生意気に批評させてもらう事にした
地の文が続くが飽きさせない出来映えだと思う
もともとの映像を読み手が知ってるという助けはあるが、
それにしても戦闘の描写が巧みだ。映像がちゃんと頭に浮かぶ
きっと書き慣れた人なんだろうな
一人称小説の利点をうまく使えてると思うよ


412 :FF8:2005/11/04(金) 09:40:01 ID:lqCX/N5C
FF8-5

「甘いっ!」
叫ぶと同時にサイファーは半歩退がり、肘をたたみ込んだ。
俺のガンブレードは虚しく空を切り裂くのみ。
肘を見せたのは隙ではなく、誘いだったのか。
いかに疲労のピークにあるとはいえ、
こんな初歩的なフェイクに引っかかってしまうとは・・・

「かかったなスコール、隙だらけだぜ」
まずい。空振りしたせいで、俺の身体は大きく横に流れている。
体制を立て直す暇を与えまいと、サイファーが突きかかってくる。
先刻俺がしたのと同様、左掌で俺の視野を塞ぎながら・・・
いや、違う、これは!
「ファイアッ!!」
サイファーの左掌から火球が飛んでくる。
ブレードを翳し、かろうじて直撃は免れたが、衝撃で俺の身体は後方へ飛ばされた。

413 :FF8:2005/11/04(金) 09:58:07 ID:lqCX/N5C
FF8-6

「おっと、魔法は卑怯とか言うなよ、スコール。
これはあくまでも実戦を想定した訓練なんだぜ。魔法に対する備えを怠ってはいかんな」
勝ち誇ってサイファーが言う。
・・・サイファー、嫌な奴だ。
しかし、奴の言うことは正しい。実戦であれば、俺だって魔法を併用するだろう。
「スコール、これは備えを怠ったペナルティーだ!」
叫びながらサイファーはガンブレードを一閃させた。
ガンッ
額に衝撃が走る。
僅かに身を反らし、脳天への直撃は避けることができたが、
それでも額の辺りを大きく切られてしまった様だ。鮮血が滴り落ちる。
「どうした、まさかもう降参てわけじゃないだろうな。
さあ立てよスコール。
もっと俺を熱くさせろ!もっと俺を楽しませろ!」

・・・そこから先の記憶が俺にはない。
気がつくと俺は、医務室のベッドに横たわっていた。

414 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/04(金) 10:11:33 ID:n8KAPmDG
OPムービーでのスコールvsサイファーを極力忠実に描写しようと努力してみました。
私の意図が上手く成功していればいいのですが。

>>441さん
有難うございます。励みにして頑張ります。

415 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/04(金) 12:29:04 ID:4eU1kbE0
FF8作者さん、乙そしてGJ!
サイファーが小さいころ見た映画の主人公って、ラグナだよね?
ルブルムドラゴン相手にミニゲームした時の、あれだよね?
それで構えが似てるのか。はじめて気がついた。
原作でそういった描写あったっけ?見落としてたよ。
あっやべー、なんかむしょうにFF8やりたくなってきた。
数年ぶりにプレイしてみよっかな。

416 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/05(土) 13:23:06 ID:6KLYwSFD
>>415
アルティマニアに裏話程度に紹介されてただけだと思う。
勘の鋭い人ならプレイ中に気づくんだろうが、俺もアルティマニア読むまで気づかなかった。

417 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/06(日) 14:45:58 ID:GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0247 4章 3節 山間(32)

山頂までには辿り着くための道中には一つの吊り橋が架かっている。
長年放置されていたのかその橋は酷く老朽化し、所々の木々が腐食し、足を載せただけで
崩れてしまいそうであった。
「やっぱりこれを昇らなきゃ駄目なんだろうな」
ぐっと息を飲みながら震えた声を口にするのはパロムだ。
「今更怖じ気づいたの?」
「別に……そんな事はないぜ。この程度の橋なんら問題ないぜ」
「ふーんじゃあ、あんたが一番最初に行く?」
「わっ! 分かったよ、そうするぜ」
そこまで言われたら黙ってわいられなかったのか。覚悟を決めたかのように歩を進み始める。
パロムが足を載せた途端、吊り橋はぶらりと左右へと揺れ動く。
「うわぁわーー! やっぱり怖い!」
猛烈な勢いでパロムはセシル達の元へ引き返してくる。
「あら、やっぱりね」
すっかり怖じ気づいたパロムを見て、意地の悪そうな顔でポロムが笑う。
「仕方ないだろう。怖いものは怖いんだから」
「僕が先に行くから。みんなは僕の後ろに付いてきて」
少しだけ見かねた様子でセシルは切り出す。
「本当か。ありがとよあんちゃん」
パロムはふうといった感じで胸をなで下ろす。
「じゃあ行くよ」
そっと足を踏み出す、またもや橋は大きく揺れ、歩を進めるたびにきしきしと音がし
今にも落ちそうである。

418 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/06(日) 14:46:40 ID:GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0248 4章 3節 山間(33)

「二人とも僕に付いてきて。大丈夫、下を見なければ怖くないよ」
「でもよ……」
「ええい、何を怖がっとる! 早く行くぞ」
躊躇を続けるパロムの背を今まで黙っていたテラがぽんっといった感じで押す。
そのまま流されるようにパロムは橋に歩み出す。
「ちょっとじいちゃん! いきなり何すんだよ」
「いいから行くぞ。ここで立ち往生って訳にもいかんからな」
「分かったよ」
急かすテラの言葉を受け、それ以降は黙りきってしまった。

419 :299:2005/11/06(日) 14:54:15 ID:GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0249 4章 3節 山間(34)

橋も終わりにさしかかった頃、前方にははっきりと浮かぶ影が一つ見渡せた。
「ようやく到着か……」
その進むごとにその影ははっきりとその形を露わにしていく。
「!」
その建物まで後少しと言ったところでセシルは一つの気配を感じ、後ろを振り返る。
「何だ! あんちゃん。そんなに構えて?」
だが、後ろには驚いた様子のパロム達が居るだけであった。
「いや、ちょっと悪い気配がしたような気がしてさ……」
「そうか? おいらは何も感じなかったな。ポロムは――」
ポロムが首を立てに振ろうとしたその時、橋がぐらりと左右に大きく揺れる。
「な……なんだよ」
パロムは振り落とされそうになり慌てて身を屈める。
フシュルッルーーー
揺れに合わせるかの様にまた山頂に向かうまでに聞こえたあの声が聞こえてきた。
「どうやら、奴はまだ生きていたようだな」
その声を聞いたテラが確信めいて呟く。
「よ……くも、私を殺してくれたな……」
返答ともつかぬ乾いた声が返ってくる。その声は聞き覚えのある――
「スカルミリョーネ! 何で?!」
確かに倒したはず、どうやって生きていたというのだ?
「グハハァーーアノ程度でこの私がぁーくたばるとでも。
死してなお恐ろしいこの土のスカルミリョーネの力を思い知るがいいっっーーー」
急に地面から現れた泥の様な物質が膨らみ始める。
中心には顔がかたどられていき、体からは大型の魔物の角ほどある牙が幾多も突出し始める。

420 :299:2005/11/06(日) 15:00:01 ID:GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0250 4章 3節 山間(35)

「私をこの様な姿にしたお前らはただでは死なせんぞ! ゆっくりといたぶりながら
この私に刃向かった事を目一杯後悔させてやるぞ!」
言い終わらぬうちに、その歪んだ口から白い煙を吐き出す。
「まずいっ、口を塞げ!」
いち早くその正体に気づいたのかテラは皆に注意を促す。
しかし、その頃にはその煙、何かのガスはセシル達の体を蝕んでいた。
たちまちに体が鉛の様に言うことをきかなくなった。
「これは……」
パロムも苦痛に満ちたような呻きを上げる。どうやらこの症状は自分だけでは
ないのだろう。
「テラ……これは……」
この状況では口を開くことさえも相当な労力を要した。
それでも何とか声を絞り出してテラに訪ねる。
「吸った人間の動きを劣化、停止させるガスじゃ。このままでは……」
「この程度はまだまだ序の口、楽しみはこれからだぞ! 簡単にくたばってもらっては
こちらが困る。ハハハァァーー」
「ふざけんなよ。さっきからおいら達を見下しやがって……なめるなよ。ファイ……」
「ふん、遅いわ」
ガスのせいで緩慢な動作で呪文を詠唱しようとするポロムを牙でなぎ払う。
さらに傍らのテラも弾き飛ばそうともう一つの牙を振るう。
「く!」
その攻撃は決して致命傷となる程、威力の高いものでは無かったが、魔法も自由に扱えぬこの状況ではいちいじるしく
此方が不利であろう。
何とかして打開策を打ち出さねばいけない。

421 :299:2005/11/06(日) 15:32:17 ID:GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0251 4章 3節 山間(36)

「ほらほらっ! どうした? いっその事、このまま麓まで突き落としてやろうか?
そちらの方が苦しまずに死ぬことができるぞ」
崖……
そも言葉に触発されるかのようにセシルは目を下に落とす。
吊り橋を構成する、板と板の隙間からはうっすらともやに覆われた森が見える。
ここから落ちたら一貫の終わりであろう。
「そうだ!」
眼下に見える風景を眺めなが、セシルにはある一つの考えが浮かんだ。
「みんな大丈夫か」
「ええ」
いまだに続く攻防の中ポロムが返答する。
「みんな僕の後ろ、つまり山頂の方まで下がって。この場を何とかやり過ごす方法があるんだ」
そこで一旦言葉を切り、皆の様子を伺う。皆、何を始めるつもりなのか疑問に感じているようだ。
「とにかく見ていて。後、テラ……少し協力してほしいんだ」
後退を始めたテラにセシルが訪ねる。
「僕が指定した場所へ魔法をうってくれないか。威力の低いやつで十分だから」
「それならおいらも手伝うぞ」
パロムが会話に割って入ってくる。
「それじゃあ、お願いしようか。念を押すけど詠唱に時間がかかる魔法だと撃つ前に
つぶされる可能性があるから……」
「逃げられると思うなよ」
話し込んでいる間にもスカルミリョーネはこちらに向かいだんだんとその距離を
詰めてきている。

422 :299:2005/11/06(日) 15:34:40 ID:GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0252 4章 3節 山間(37)

「二人とも頼んだ!」
セシルが指定したのは橋の途中であった。
「いいのか、あんなところに?」
半信半疑ながらもテラは魔法を撃ち込む。勿論、すぐに撃てるくらいの極小威力のものだ。
次いでパロムもその攻勢に加わる。こちらもテラと同じ魔法を放ったのだが、テラとの経験の差か
僅かに遅れての加勢となった。
「よし、後退だ」
「逃がすか!」
執拗に追跡を続けようとしたスカルミリョーネであったが、セシル達に追いつくことは
できなかった。
橋の一部が急に音を立て崩れ始めたからだ。
「何だと?」
落下せぬように残った部分を掴み、這い上がろうとするがそこが大きなスキとなった。
「よし今の内に攻撃を重ねるんだ!」
セシルの指示が響いた後、テラとパロムの魔法――今度は容赦ない程でかい威力のものが
スカルミリョーネに襲いかかる。更に、セシルの暗黒波が追い打ちを駆ける。
「何と! 計られたのか。こんな古い手段にこの私が――」
この波状攻撃にはさすがの四天王の一人としても相当なダメージがあったようだ。
「おのれ……この私が貴様らごときに……! グ……バァァーー!」
限界がきたらしくスカルミリョーネは大きく体勢を崩し、橋から落下した。
その姿はあっという間に小さくなり、眼下へと消えていった。

423 :299:2005/11/06(日) 15:41:34 ID:GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0253 4章 3節 山間(38)

「何とか……退けられた」
しばらくの間、下を見ていたポロムが息も絶え絶えと言った感じで声を絞り出す。
「ああ……」
同じく息を切らした様子のセシルが同意を返す。
「そういえば体がさっきよりもだいぶ軽くなったきがするぜ」
今更だと言った感じでパロムが体を動かしながら言う。
確かに先程まで体を支配していた不自由さは殆ど消え失せていた。
それでもこの山の空気は厳しいことこの上ないのだが。
「このガスの効果が薄れて来ておるのだろう。しばらくすればもう何とも感じなくなるはずじゃ」
「そうか。なら安心だ」
テラの説明を背に受けつつ、セシルは目前に見える建物に目を向けた。
それは遠くで見たときよりもさらに美しく輝いている。
「これが試練を受ける場所か……」
自分に課せられた試練。その終着点となる場所。
「でもこの入り口開くのか?」
見る限り建物の扉は堅く閉ざされていた。
強硬な鉄の扉はどんなに力を加えても開きそうにはない。
「ここまで来て、扉が開かないのかよ」
項垂れるパロムの傍らセシルが扉に手をかけようとした時――
「息子よ……」

424 :299:2005/11/06(日) 15:44:45 ID:GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0253 4章 3節 山間(38)

どこか透明感のある、それでいて懐かしい声がセシルに響いてきた。
「誰だ! それに今何て!?」
息子――確かにそう聞き取れた。
セシルは孤児である。本当の両親というものの記憶を持ち合わせてはいなかった。
自分の中にある一番古い記憶を引きずり出してもバロンでの日々である。
「セシル。どうした?」
急に声を上げたのに驚いたのかテラが訪ねる。
「今、誰かの声が聞こえて――」
「そうか? 私には何も聞こえなかったのだが」
そこまで言ってポロムの方に向き直り返答を求める。
「私も聞こえませんでした……」
「おいらもだ」
合わせるかのようにパロムも首を横に振る。
「じゃあ僕だけに聞こえたのか……」
その時、今までびくりとも動かなかった扉が音を立て横に開いた。
「おいっ! 扉が開いたぜ……」
「どうなっとんだ?」
「行こう……」
戸惑う仲間達を尻目のセシルは歩き出した。
扉が開いたのは偶然ではない。試練が自分を呼んでいるだろう。
そのような確信を持った今のセシルには何ら迷いは無かった。
テラ達もいつもと違うセシルの行動に違和感を抱きつつも後を追い、
建物の中に消えていった。

425 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/06(日) 16:43:22 ID:q0N7rOgn
やっぱり4が好き

426 :299:2005/11/06(日) 17:25:21 ID:GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0254 4章 3節 山間(39)

「お前が来るのを待っていたぞ……」
今度はよりはっきりと聞こえたその声は間違いなく外で聞こえた声だ。
「聞こえるかポロム?」
「いいえ」
そう言ってポロムは首を横に振る。テラも何も聞こえていないような雰囲気だ。
おそらくはこの声は自分にしか聞こえていないのだろう。
「あなたは……あなたは一体誰なんですか? それに僕を知ってるんですか!」
「我が息子よ……聞いてくれ。今、私にとって悲しい事が起きている。そして
その悲しみはこのままさらに加速していくだろう……」
セシルの疑問を余所に声は語り始める。ずっしとのしかかってくるような重みのある声に
セシルは質問を止め、聞きいってしまう。
「悲しみですか……」
「そうだ。そして今お前に新たなる力を授ける事になる。その事により私はさらなる悲しみに包まれることに
なるだろう。しかし、今はこの手段を用いるしかないのだ。否……私にとってこの方法しか思いつかないのだ。
お前にとって辛い試練になるであろう。だがお前ならきっと乗り越えられるはずだ……頼むぞ」
ふっとその声がとぎれるのと急にセシルの目前に剣が表れたのは殆ど同じであった。
「これは……」
古ぼけているがたいそう高名な剣であったのだろう。その格式高さは失われていない。
そして剣は滑り込むかの様にセシルの右手へと向かう。
その剣はまるで長年、苦楽を共にした愛剣かの様に、セシルの手へ馴染んだ。
「これが新しい力なのか……」
光り輝く剣を握りしめそんな事を考えていると――
突然、剣の光が増しセシル達の視界を奪った。
セシルにとってその光は何か暖かいものに包まれるかの感触であった。
光が弱まり、だんだんと視界が開けてくる。そして誰もが先程までと全く変わってしまった事に目を疑った。

427 :299:2005/11/06(日) 17:31:19 ID:GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0255 4章 3節 山間(40)

「あなたは……セシルさんですの……?」
ポロムは目の前に立つセシルをまるで初対面の人にでもあったかのような顔で見やる。
「あんちゃんなのか!?」
二人が驚くのも無理がなかっただろう、今の自分に起こった事に一番驚いたのはセシル自身であったのだから。
「ああ……そうだよ」
水晶状の物質でつくられた床から反射して見える自分自身の姿をじっくり観察しながら、ゆっくりと口を開いた。
鮮やかな銀色の髪に悟りを開いたかの様な瞳。
そして白を基調とした様相は、先程までの暗黒騎士としての面影は翳りも感じられないほどであった。
「これがパラディンというものか……」
「やりましたわね! セシル様」
「これにて一件落着だな」
皆が嬉しそうに感嘆の声を上げる中、セシルは切り出す。
「まだ終わりでないよ。これからが本番だ」
そう言った後、ゆっくりと声がした方向へと振り返る。
「さあ……血塗られた過去と決別するのだ。今までの自分を克服しなければパラディンの
聖なる力は完璧にお前を受け入れないであろう。打ち勝つのだ暗黒騎士の力に……自分の力に!」
力強いその声が終わると前方に影が人影が現れた。ゆっくりと歩を進め此方へと歩いてくるその影は――
「昔のあんちゃん!」
「一体、どうなっとんだ……?」
紛れもなく暗黒騎士セシルであった。
「どっちが本物なんだ?」
パロムはきょろきょろと二人のセシルを見比べている。
「どっちかな……」
それはセシル自身でさえ容易に答えが導き出せる事ではない。ふいに暗黒騎士が剣を抜きはなった。同じくセシルも剣を抜く。
「セシル! 戦うのか?」
「ああ……」
「テラ、手を出さないでくれ……これは僕に与えられた試練。誰にも干渉される事なく片をつけたいんだ。

428 :299:2005/11/06(日) 17:32:59 ID:GDo6iYTT
それに今までの過ちを償うためにもこいつを! 暗黒騎士を倒す!」
大切な者を殺されたミシディアの人々、自分を導いてくれた長老、憎しみを堪え、自分を試すと言ったジェシー。
ここで誰かの助けを借りる事は彼らに対する完璧な償いにはならないであろう。そして何より自分自身が
納得しない。
「さあ、行くぞ。暗黒騎士よ……血塗られた運命。ここで断ち切る!」

429 :299:2005/11/06(日) 17:35:53 ID:GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0256 4章 3節 山間(41)

地面を蹴り、暗黒騎士へと斬りかかる。
しかし、向こうは軽くセシルの太刀を受け流す。
それもほぼ確実にセシルに剣の切っ先を見切ってるかのようにだ。
「セシルよ……仮初めでなく本当にその力を手にしたければ剣を納めるのだ。
そして自分の罪を受け入れるのだ」
再び、ささやく様な声が頭に流れ込んできたのは、暗黒騎士の反撃を避け、後退した時だ。
セシルにはその意外な言葉を咄嗟には理解できなかった。にわかには信じられない思いで上を見やる。
目前には今まさに暗黒騎士が迫ろうとしているところだ。迎え撃たねば此方がやられるであろう。
「何故だ……」
目前に迫る自分の闇を振り払う事こそが今の自分に課せられた試練ではないのか。
少なくともセシル自身はそう考えていた。
「相手を倒すことだけでは決して暗黒騎士には勝てんぞ。いずれは闇に取り込まれるであろう」
確かに暗黒騎士の攻撃は幾度と続くが、そのどれもがセシルの動きを的確に分析し、全てを見据えた
かのように正確であった。
そして確実に彼の体から体力と気力を奪っていった。
「ここまでなのか……」
声の真意を理解できぬ自分では勝てぬというのか。この試練に散っていった先人達も教えを理解しなかった
為なのか。頭に様々な考えが浮かび、消えていく。
直後、暗黒騎士の剣先から黒い波動が走る。
今の疲弊しきったセシルではその攻撃を避けることはできなかった。いや、もしも充分な体力を
有していても無駄であったろう。幾多の暗黒波がセシルの体中を切り裂いた。
――暗黒騎士にとってセシルという存在は最もよく知る人物であり、身近な存在であり、その逆も然りであった。
体勢を崩し大きく倒れ伏すセシル。後方には仲間達が心配するかの様な声をかけていたが、既にセシルには
聞こえていなかった。
それでは僕はどうしたらいいんだ……。
最後に浮かんだその思考も次第に切れ切れとなりセシルに意識は薄れていった。

430 :299:2005/11/06(日) 19:11:49 ID:GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0257 4章 3節 山間(42)

だが、墜落する意識化の中で自分に話しかける声がまた一つ。
それも先程までの声ではない。何処か曇りのある声だ。
「どうだ。やはりお前にはできなかったんだ……」
「誰だ……?」
しどろもどろな口調でセシルは訪ねる。
「暗黒騎士……つまりはお前自身と言うことさ……」
つまり先程まで自分が相まみえていたものか。でも、何故すぐに止めを刺さない……
自分はこの試練に敗れ去った。つまりはもう用済みなはず。
「お前にはほとほと呆れたからさ。セシル=ハーヴィ」
見透かした様にその暗黒騎士は言う。
「正しき心を得るだの何だのと行っておきながらこの体たらく。所詮はお前もその程度の覚悟しかなかった
のだな。その癖、中途半端に国家などに背いて……こんな事ならカインの様に自分に素直になった方が幾分か
ましだったのかもな」
暗黒騎士の嘲弄に近い言葉に反論する言葉を今のセシルは持ち合わせていなかった。
「もういいよ……さっさと殺せよ。それが君の成すことなんだろ……」
そうさ……もうどうだっていい。暗黒騎士の指摘は全く持って正論だ。
所詮一人ではバロン等の強大な勢力に立ち向かう事などできやしない。
それに幼少から暗黒の道を歩んできた自分にとってはパラディン等一生届くことのない高みの存在。
このようなザマだ……今更、ミシディアに戻っても皆自分を蔑むだろう。ジェシーも長老にも申し訳が立たない。
そして仲間達にもなんて言えばいいのだ……
もういい……自分の様な中途半端な人間は排除されるべきなのだろう。
だんだんと喋るのも辛くなってきた、いっそ目を閉じて、意識を闇深くに沈めよう。すぐに楽になれるだろう……

431 :299:2005/11/06(日) 19:20:08 ID:GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0258 4章 3節 山間(43)

「セシル!」
遠くで誰かの呼び声が聞こえた。いや、確証はできない。
「セシル……」
またもやだ。そして今度は少し悲しそうな声。
更に自分を呼ぶ声が幾多にも増える。そのどれもが聞き覚えのあるものばかりだ。
そしてその中でもセシルの心に深く刻まれたものの声が聞こえてきた。
リディア、ギルバート、それにヤンの声だ。
そうか彼かはみな僕と行動を共にした。そして……
最後までは考えたくは無かった。ただ、確実に言える事はその仲間達は誰もが自分よりも
生き長らえるべきはずだった者達だ。
ヤンには信頼される仲間達が沢山いたし奥さんもその帰りを待っているであろう。
その奥さんの耳にもバロン域の船が消息を絶った事は耳に入ってきてるはずだ。その知らせを聞いた時彼女は
どう思っただろうか?
ギルバートも亡き父に代わり国を率いなければならなかった存在。それなのに……
リディアはまだ幼かった。そしてその少女を守ると自分はオアシスの村で誓ったはず。たった一人の人間を
守ると言う約束さ自分は果たせなかったのだ。つくづく情けない。

432 :299:2005/11/06(日) 19:24:58 ID:GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0259 4章 3節 山間(44)

謝罪に浸る間もなくセシルの耳に入ってくる声色が変わった、そしてその内容もなにやら自分に
怒っているかのようであった。
「貴様よくここに来れるな!」
「あなたたちのせいで私たちがどれだけ苦しんだか……」
「バロンの…暗黒騎士だー!」
憎悪と恐れに満ちたその声は紛れもなくミシディアの人々である。
そしてその声をセシルは黙って聞いていた。
そうだ。自分は国に背けずに彼らを犠牲にした。その行為は我が身の可愛さ
余っての自己保身に過ぎない。こうして自分の過去を振り返っみれば、つくづく
自分はどうしょうもない人間だ。

――あなたはそんな人ではないわ!――

絶望に暮れるセシルを叱咤するかの様な声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声だ。そう随分前から聞いていないがその優しい声は何よりもセシルを癒し、勇気づけた。
だがそれが誰の声だったのかさえ今のセシルには曖昧になってきていた。
ごめんね……思い出せなくて……そうセシルが心で謝ろうとしたとき……

バロンのセシルは――そんな弱音……吐かないはずよ!――

――私の……私の好きなセシルは――自分を蔑むような人間ではないわ――

433 :299:2005/11/06(日) 19:26:16 ID:GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0260 4章 3節 山間(45)

その叫びがセシルの意識の完全に現実へと呼び覚ます。
「ほう……まだ起きあがれるだけの力が残っていたのか」
暗黒騎士の声がする。
ありがとうローザ……僕はまだいける!
彼女がいなければ自分はここで倒れていただろう。
「ああ、まだまだだ」
喉に突き付けられた暗黒騎士の剣を払い立ち上がる。
「だが、お前がこの試練の本当の意を知らん限りは何度やっても同じ事だ」
「何となくだけど……分かったようなするよ」
「何!」」
暗黒騎士の声に珍しく動揺の色が混じった。
「そうさ。答えはそんなに遠くにはなかった。むしろ僕にとって限りなく近いところにあったんだ。
それに今まで気づかなかったなんて……」
「成る程。それで……」
「君がさっきから僕を殺さなかったのは躊躇っていたからじゃなくて、できなかったからなんだ
僕が君に決して勝つことができないように」
「ほう……してそれは何故だ?」
「君は僕という存在に於いて切っても切れない関係にあるからさ」
身じろぎし始める暗黒騎士を見て更に続ける。
「パラディンとは聖なる力、暗黒騎士は闇の力。確かに相反し合うもの同士。だが、この教えは決して
ただ、パラディンとしての力を得る訳じゃない。自分という存在の全てを肯定する事にあるんだ!」
「ふふ……上出来ではないか。気絶している間、一体何があったのかな。まあ、そんな事はどうでもいい。
その悟りを開けたならもう私は用済みだな」
「否、あなたはこれからも僕と一緒に常に歩き続ける。唯、今までどちらが表に出ていたかだけの違いだ」
「ハハハーーーッ! そこまでの考えがあったか。では一緒にさせてもらおうか」
そう言ってセシルの手を掴む。そして吸い込まれるかのようにそのまま消えていく。
「いずれお前が自分を見失ったら再び私が現れるかもしれん、それだけは覚えておけ――」
その言葉の最後の方はもう殆ど聞き取れなかった、しかしもうセシルには言わなくても分かるであろう。

434 :299:2005/11/06(日) 19:28:10 ID:GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0261 4章 3節 山間(46)

「セシルよ……ついにやったようだな」
暗黒騎士が消え去った直後、あの懐かしい声が聞こえてきた。
「私も一部終始を見届けさせてもらったが。見事なものだ」
「いえ……僕だけの力では到底無理でした……」
苦楽を共にした仲間達やローザが居てくれてこそだ。
「これから私の最後の力を託そう。今のお前にら使いこなせるはずだ。それにお節介かもしれんが一つ言葉を……正義よりも正しい事よりも大切な事がある。
この試練を乗り越えたお前になら分かるはず」
「分かりました……」
「それでは私はもう消えよう、行けっ! セシルよ。ゴルベーザを止めるのだ……否止めてくれ。
お願いだ……」
「待って下さい!」
この声にはまだ聞きたい事が沢山あった。自分の事を息子と言ったのは何故だ。
それにゴルベーザの事も知っているようであるが…
だが、もう声からは何も返事は帰ってこなかった。がらんどうとした部屋にセシルは立ちつくしていた。
「やったなセシル」
声が聞こえなくなったのか、テラ達も此方に近づき祝福の言葉を投げかけてくる。
「すごいわ! セシルさん」
「あんたやっぱり……」
「シイッ! それはまだ言わない!」
パラディン姿のセシルに魅入るかの様に見つめていたポロムの顔が少し困ったような表情に変わり、
パロムを諭す。
「でもよポロムさ……」
またもや言い合わそう二人の中でもセシルは先程までの出来事――試練の様相を何度も反芻していた。
「あの感覚、不思議と懐かしかった……あの声は一体?」
その疑問に答える者は今は誰もいない。しかし、自分が今からこの先を進んでいく中で再びこの声の主と関わり
を持つだろうとセシルは確信していた。

435 :299:2005/11/06(日) 19:32:05 ID:GDo6iYTT
FINAL FANTASY IV #0262 4章 3節 山間(47)

「おおっ……ううっ……」
そんな一行の注目を一気に集めたのが、突如呻きを上げたテラだ。
「どうしました? テラ様」
ポロムが心配し、声を掛ける。
「失われた魔法の数々が思い出せそうじゃ……何かが頭に語り掛けてくる様じゃ……」
そう言ってしばらくは天を仰ぎ見ていたテラではあるが、やがてセシル達の方に向き直り……
「思い出したぞ! 忘れた呪文の数々を! うっ……」
そこまで言ってまた頭を抱える。
「メテオ……? あの光が授けてくれたのか。封印されし最強に黒魔法を!」
あの声の主が授けたのだろう。しかしセシルには既にその声は聞こえていなかった。
「そんな魔法まで! さすがテラ様。これで百人力ですわ」
「ちょっと……ポロム……」
「何?」
その控えめな様子のパロムが珍しかったのか、ポロムが耳を傾ける。
「もう……ばら……ちゃってもいいんじゃ……ない……か」
「ああ、その事ね。分かった」
一瞬険しい顔になったが、すぐに元の表情へと戻る。
「えーと。あの〜セシルさん……」
「実はおいら達は……」
改まって二人がが何かを口にしようとするが……
「よしっ! 見ておれよっゴルベーザ! この力を持ってお前を倒しにいくぞ」
その言葉は、テラの叫びによって無惨にもかき消された。
「ゆくぞっ! セシル」
そう言って一気に外へと走り去ってしまう。あの歳の老人の何処にあれほどの体力が残ってるのか
疑いたくなる程にだ。
「あっ! 待って下さいテラ様!」
急に走り出したテラを慌てて後を追うポロム。それにつられるかのようにパロムも外へと向かった。
「ごめんなさいセシルさん。詳しい事はミシディアにでも帰ってからで」
その様子を見て、セシルも外へと出ようよ歩き出す。最後にもう一度だけ、後ろを振り返りこう口にした。
「ありがとう……」

436 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/06(日) 20:03:06 ID:GDo6iYTT
随分な量になりましたが、FF4です。
パラディン試練に関しては前スレの318さんの解釈を活かして
欲しいと言う意見がありましたので、できるだけその意見を
取り入れてみたつもりです。

437 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/06(日) 20:07:02 ID:as/HbVO9
素晴らしいです。感無量の一言に尽きます。

それにしても、セシルの髪ってやっぱりパラディンの後に銀色になったんですかね。
暗黒騎士のときに兜を脱いでくれないからはっきりしないとこですよね。
別に指摘してるわけじゃなく、前から疑問だったもので。

久しぶりの4の大量更新、お疲れさまでした。

438 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/06(日) 21:33:28 ID:48JQImNf
4の人非常にうまいね。またもや批評(というか感想か)を述べに参りました

とても引き込まれた。文章の流れがいい。三人称の流儀をよく理解された方だと思う
三人称にありがちな視点のズレもない。キャラの動きと台詞の流れもうまい
感情の部分は感傷的になりすぎず必要最低限表現できてると思う

長いが読ませる文章だった。文章のテンポというかバランス配分が巧み
もう一度言うが、とても引き込まれました


439 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/07(月) 09:55:57 ID:/Y3ROLny
デスブリンガー…

440 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/07(月) 13:10:42 ID:tUawCGC3
ff4楽しく読めた。
438氏の言うとおり視点のズレのないのがいい。
7ac作者さんにはよき手本となろう。

441 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/07(月) 13:18:52 ID:I5nykIIr
>>440
作者の方々にそういう格差をつけるのはどうかと・・
ともあれ299氏グッジョブ!

442 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/07(月) 14:00:20 ID:lg9x6+1X
格差というか、批評として許される範囲だと思う。
以下酷評かもしれないが、あえて記す。

7acの作者さん、キャラに対する愛情は伝わってくるんだけど、
それが小説としての質を下げている。

キャラの一挙手一投足にいちいち心情表現を付加してるせいで、
視点がブレすぎて、何を伝えたいのかが分からなくなっている。
結果、テンポも悪くなるし、ダラダラ読まされた感じを受ける。
幹となるものを明確に描かず、枝葉を飾ることに腐心しすぎ。

443 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/07(月) 14:41:45 ID:tUawCGC3
ついでに評

・ff4
テンポよく、無駄のないすっきりした展開でありながら、
キャラを立たせることに成功している。
ストーリー通りにキャラを動かしているといった感じがなく、
キャラが自由に動き回っているような筆致は見事。
欲を言えば、もう少しバトルシーンに緊張感があってもいいかと。
安心して読める半面、どうしても予定調和の感がぬぐえない。

・ff6
バトルシーンは秀逸。
ビジュアルに訴える筆力、緊迫感ある駆け引きの妙、
サイファーの魔法使用に至るまでのスコ−ル左手の布石など、まことに見事。
欲を言えば、一時間にもわたる激闘の割には、両者の疲労や苦痛について
もうすこし描写があってもいいかと。

444 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/07(月) 15:19:35 ID:I5nykIIr
どうせなら他のも批評してみてくれー

445 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/07(月) 20:15:49 ID:IaxfOKel
正直、書かない人の批評なんて聞きたくない・・。
感想なら聞きたいけど。
自分は批評している、なんて大前提の感想、読んでてうれしいんだろうか・・。

7ACの人の文章、そんなにやじゃないなぁ。
描写が丁寧で、それがテンポ悪いという意見もわかるが、ちゃんと書くぜ!みたいな熱意が好きだ。
続きも楽しみにしてます。

善かれと思ってこの文章はいい、この文章はちょっと、と比較や相対的な意見を書くと、誉められたほうもそうでないほうも居心地悪いものだ。

446 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/07(月) 20:17:23 ID:IaxfOKel
はたから見てる(ロムってる)人もね。居心地悪い。

447 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/07(月) 20:42:15 ID:e6Kyl7SH
>>445.446
書いてる側の人ですか?そうならば耳を貸しましょう
そうでないなら的外れかもしれない

448 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/07(月) 21:45:03 ID:S13uCgN4
作品を知らない人がする、指摘だけのレスはここでは不必要だと思う。

449 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/07(月) 22:33:42 ID:e6Kyl7SH
第三者の意見は書き手に必要
それが次の作品をより楽しく仕上げるし、自身の為にもなる

ただ批評と批判は違う。問題点を指摘するなら打開策を提示すべき
必ず、問題点と打開策をセットにすること!
素人は安易に口を出さんほうがいい

7acの人良いと思うよ。楽しく読めるし意欲に惹かれる
まめさとガッツを兼ね備えた人材。正直頭が下がる
次回作に期待している

450 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/08(火) 03:40:01 ID:rabNjpOj
>>443
どうでもいいことだけどff6じゃなくてff8だな。

451 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/08(火) 11:13:21 ID:OUszz8/9
FF6で思い出したけど、433さんはいなくなったなぁ。
あの最後のケフカの話からどこに転んで行くのかが未だに気になる。

452 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/08(火) 19:07:32 ID:6xe/tyoJ
前提としてやっぱり書いてくれてるんだから感謝してなきゃいけないと思う。
それでいて「こうしたらいいんじゃない?」っていうのは全然ありだと思う。
ただ「この書き方だめ、なってないね」とかいうのはいらないけどね。

FF4さんおつかれです!めちゃ感動しました!
やっぱ他の作品よりも抜き出てうまいと思った。
設定についてのことだけど、セシルは幼少期から暗黒騎士の道を歩んでたの?
王が入れ替わったのは本編始まる少し前のはずだから、それまでは兵には
暗黒騎士を使ってなかったんじゃないかな。
ちなみに>>430の「幼少から暗黒の道を歩んできた自分にとっては」ってやつね。
とにかく面白かったです。次も楽しみにしてます。

453 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/09(水) 23:50:33 ID:kAzBdZqX
いや、熱意とかガッツとかが凄いのは認めるんだけど、それが裏目に出てるって話なんじゃ…>AC

454 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/10(木) 09:45:55 ID:Q8vVASTh
>やっぱ他の作品よりも抜き出てうまいと思った。

こういうのは言わないほうがいいと思うな。
褒めてるつもりなんだろうけど、
同時に他の作者を貶めていることに気づいてほしい。

455 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/10(木) 17:36:29 ID:V+HWyvQ+
貶めてない事に気付いてほしい。
もしFF4の小説が不評だったら貶めてる事になるけどそうじゃないし。
他の作品が面白くないなんて一言も言ってない。

456 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/10(木) 18:23:48 ID:AkXmxISY
貶しめていることに気付かない無自覚が正直おそろしい。
文章と言うものは、「こういうつもりで自分は書いた」と言う書き手の自覚は意味がなく、むしろ些末で、
「こう受けとめられる」と言う客観こそがネットにおける社会性だ。
書き手と読み手のギャップが少なければいいけれど、
それは互いに別の価値観があるゆえに常に緊迫を孕んでいて、とても難しい問題だから、
大衆掲示板に意見を書くときは細心の注意を払わなくては…。

先日から、感想の書き方に気を付けようと言う流れがあるなか、
あの文章が貶しめていないとするなら、それは若干優しさに欠けます。
相対的な賛辞のことばしかもたない人間の感想など誰が乞うのです?
貶しめたかどうかと言う一個人の思惑よりも、その感想の書き方に疑問を感じる。
仮にも「真面目にノベライズ」された他人の文章を評するならば、
その評する側も真摯な姿勢でことばを選んでいただきたい。
ふじ

457 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/10(木) 18:30:06 ID:vOlD0bRq
ふじってなんだふじって・・・

まぁ、あの褒め方はないよなあと自分も思った。
他の作者がどう思うんだ?と、ひやっとする。

しかしFF4、いいな・・・

458 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/10(木) 19:05:51 ID:fFy5TL+2
なんだこの流れ

459 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/10(木) 19:08:53 ID:V+HWyvQ+
まあそう言われればそうなのかなと思うけど、そこまで長々と文章書かれるほどのことなのかこれって。
1,2スレ目はこんなの無かったのになー。匿名掲示板なんだし。
まあアンタも他の書き手みたいだから癪に触ったんかもしれんけどね。

460 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/10(木) 19:46:01 ID:kxCSjsuv
少し前から気になってたんだが、微妙に釣ってる様なレスするやつが紛れてないか?
スルーしてノベライズを楽しめばいいのにと思う

461 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/11(金) 00:29:40 ID:zSz53lpn
なんつーか、書き手さん皆様GJ。
自分は筆力ないのでマジ羨ましいです。どうしてもバトルが書けない・・・。


462 :297:2005/11/11(金) 00:46:50 ID:rcz2kYh6
299さん大作乙です。
後ろ向きなセシルの考え方が総仕上げのように積み重なってて、
いよいよという話の運び方は流石です。
これでやっと長い一段落にさしかかりましたね。

>>461
お互い素人なんだから是非書いて。


463 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/11(金) 01:02:58 ID:vNG5QWNd
>>461
読みたい。

464 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/12(土) 11:46:04 ID:Sv7wXisJ
読みたかない。
これ以上、駄文の羅列は御免蒙る。

465 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/12(土) 12:58:28 ID:y+q/I3ju
いや〜
なんか最近トゲトゲつーか険悪だなあ
全体的に書き手が減ってる感があるんだけど
理由はこの辺り?

466 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/12(土) 14:42:56 ID:DUu3EPlj
かもな。

467 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/12(土) 17:47:44 ID:6wU0Q4FD
今まとめのFF4読んでるんだけど、なんか本当に良い。クオリティ高いとかそういうのも勿論なんだけど、
ゲームじゃなくて読み物として集中できるから、セリフや描写の一つ一つに感動できて。
ノベライズしてくれてる人たちにすごい感謝。ありがとう!

468 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/12(土) 22:13:54 ID:oaF62BMD
>>464
露骨過ぎるぞ馬鹿

469 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/13(日) 10:28:06 ID:YLjl2o1t
不特定多数の耳目が集まる掲示板。
作品を投稿するのは自由だけど、読者が何を言うのも自由だと思う。
その一方、腫れ物に触るように作者の機嫌をとるのもまた自由だが。
たとえそれが批評の名に値しない罵倒の類であったとしても。
それが嫌なら掲示板に投稿などすべきではないよ。
個人のサイトでやればいい。

470 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/13(日) 11:08:17 ID:uoXxOl3N
いかにもプギャらしい理論だ

471 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/13(日) 11:28:20 ID:YLjl2o1t
プギャと決め付けるのも、もちろん自由。
駄作と罵倒するのが自由であるのと同じ。

472 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/13(日) 12:01:44 ID:XpZlzH5+
>>469
理論についてはおいといて、
淡々としていてなんか笑った。

473 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/13(日) 13:26:30 ID:uoXxOl3N
自由と横暴を履き違えるのはよくないな

474 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/13(日) 19:02:22 ID:eeDKxHpE
さて、このような議論はSSを投下しにくい雰囲気にするから
そろそろ終了して作品が出るまで、みんなROMってようぜ

475 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/13(日) 22:56:30 ID:pMSClUVQ
賛成〜!

476 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/14(月) 14:09:34 ID:87WBS+ZN0
まったく、凶暴な名無しどもだ
わけがわからんよ

477 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/14(月) 19:24:53 ID:IZ4AfpAV0
管理人さんはご健勝じゃろか・・
あと5の人とか。

478 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/14(月) 23:59:08 ID:RphqfPvm0
勝手に感想。

>>FF7AC
実際に見た後で読み返すとその細かさには頭が下がります。
ただ他のレスにもありましたが、もう少し削っても良さそうですね。
そのかわり、FF9みたくATEがあっても面白いかも知れないかなと思ったり。

>>FF8
一人称で語られる戦闘の様子は、緊張感がありながら安定感のある
文章運びで読みやすかったですし、巧いなと思いました。
ラグナの伏線の事はここを読んで気づきました。そんなきめの細かさもGJ!!

>>FF4
未プレイながらも毎度楽しく拝読させて頂いてます。前知識がなくても
すんなり入り込めるあたり、ちゃんとキャラクターの背景も描かれていて
読み物としてFF4に初めて触れる自分のような立場にとっても優しく
丁寧に作り込まれていると言う印象です。

書き手さんGJ!

479 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/15(火) 00:26:41 ID:hs43zf740
318です。
誤解や混乱を招くような文章投下してすみません。気づかない点をご指摘下さった
>>386には感謝です。
個人的な感想になりますが、身になるレスが多く頂けて嬉しく思います。ありがとうございます。

480 :FF6オープニング:ナルシェ懸軍:2005/11/15(火) 00:31:12 ID:hs43zf740



 他の土地に暮らす者に比べれば慣れているとは言っても、雪道を走るのは楽なこと
ではない。凍結した地面の上に積もった新雪を踏みしめながら、彼は背後に迫る
帝国軍よりも先に炭坑の奥へ辿り着かなければならなかった。
 炭坑を守る最後の切り札、それを解放するのが彼に課せられた任務である。
 走り続ける男の脳裏によみがえるのは、今見たばかりの悪夢の光景。魔導アーマーに
搭乗していたあの無表情の少女は、雪の上に僅かに残った仲間の骨を踏み越えた。
新雪を踏みしめるのとは明らかに違う、骨が砕かれる小さな音が耳から離れない。
 数時間前まで、それは確かに会話を交わしていた仲間だったのに。
(くそっ、化け物め……!)
 思わず足がもつれた。辛うじて転倒は免れたものの、派手に雪を蹴散らしながら大きく
体勢を崩した。それでも炭坑へ向かう足は止めなかった。
 仲間達の命を次々と飲み込んでいった魔導アーマー。あんな化け物に対抗できる力は、
もう1つしか残されていなかった。
 それはこれまで、忌むべき存在として炭坑の奥で眠っていたもの。呼び覚ますためには
自らの命を差し出す覚悟さえも必要とする程の存在。しかし、今となっては頼れるのは
それだけだった。
 帝国に踏みにじられた仲間達の命を、無駄にするわけにはいかない。

 彼は意を決し、檻の向こうの闇を見つめた。

481 :FF6オープニング:ナルシェ懸軍:2005/11/15(火) 00:34:50 ID:hs43zf740

                    ***

 てっきり炭坑の内部はバリケードやトラップなどが仕掛けられ、ナルシェ側は
全力で侵入を阻んでくるだろうと予測していた彼らにとって、炭鉱内はあまりにも
退屈な場所だった。おそらく洞窟に自生しているであろうモンスターに何度か
遭遇しただけで、苦もなくここまで到達することができた。
 炭鉱内ではじめて彼らの行く手に立ちふさがったのは、木で組み上げられただけの、
申し訳程度の防壁だった。
 しかしこんな物では時間稼ぎにもならないだろう。
「俺がやる、下がってろ!」
 男の一人が前へ出て言い放つと、魔導アーマーごと体当たりして木製の防壁を
破壊した。地面に散らばった廃材を踏みつけて、男は前方へ顎をしゃくった。
 そんな相棒の姿を見て、奴らしい力業だな、と、後ろに立っていた男は小さく笑った。
 その直後だった。
 たった今壊したばかりの防壁の先に広がる闇の中から、逃げるように走り出てきた男
――ナルシェのガードと対峙する。

「幻獣はわたさない! ……ユミール、行け!!」

 狂気にも思える叫び声と共にガードが脇へ飛び退くと、背後から突進してきた得体の
知れない――巨大なカタツムリのようにも見える――怪物が魔導アーマー三体の前に
現れた。彼らは反射的にレバーを握り身構える。

482 :FF6オープニング:ナルシェ懸軍:2005/11/15(火) 00:36:33 ID:hs43zf740
「待てよ! コイツは……」
 これまでに見たことのない異様な姿の怪物を目の前に、ビックスが声をあげた。
戦場における彼の知識には全幅の信頼を置いているウェッジは、相棒から
もたらされる情報を黙って待つことにした。
「思い出したぜ!」
「知ってるのか?」
 その問いに頷いたビックスは、左右のレバーを握りしめると視線を前方へ向けた
ままで言葉を発した。今し方見せた豪快さとは打って変わり、慎重な物言いだった。
「以前、雷を食う化け物の話を聞いたことがある……」
 相棒の言葉に、以前どこだかの任務で見た資料の記述を思い出したウェッジが、
記憶の中の記録を辿った。
「殻に強力な電流を蓄えるという……」
「そうだ。殻には手を出すなよ、ウェッジ!」
「わかったぜ!」
 そう言って再び戦闘態勢に入った二人の横で、“少女”は何も語らずにユミールを
見つめていた。
 最初に攻撃を仕掛けたのはビックスだった。こんな局面でもファイアビームを使用する
辺り、筋金入りの横着者なのだろうかと疑いながら相棒を横目で見やったが、パネルを
操作する手を止めることはなかった。
 相棒から遅れること数分、青白い光を纏った冷気の固まりがユミールめがけて一直線に
伸びる。ブリザービームだった。搭載された兵器の性能と、目標物自体が巨大だった事も
手伝って、それは見事に命中し相手にダメージを与えた。
 これで目の前の怪物は魔導アーマーからの攻撃を二度もまともに食らったことになる。
舞い上がった土埃の中に目を凝らし、与えたダメージの大きさを測ろうと試みる。
 しかし、ユミールは倒れていなかった。
 薄々分かっていた事だが、現実を目の当たりにしたビックスのレバーを握る手にうっすらと
汗が滲んだ。こんな風に恐怖と高揚が入り混じった心地を、戦場で味わうのはずいぶん
久しぶりのように思えた。

483 :FF6オープニング:ナルシェ懸軍:2005/11/15(火) 00:39:38 ID:hs43zf740
(……思ってたより歯ごたえがあるな)
 数分、数秒でも早く敵にダメージを与えるためにと選んだファイアビーム。
後に続いたウェッジはねらい通り敵の弱点をつくであろうブリザービームを
選択してくれた。だが、期待していたほどのダメージは与えていないらしい。
ビックスは次の手を決めあぐねていた。
 隣に並んだ“少女”にちらりと視線を送った。無表情のまま、彼女は手元の
パネルを操作している。魔導アーマーの先端にエネルギーが集まり始めた時、
地が唸るような音が耳に届いた。
 音と共に搭乗していた魔導アーマーごと大地が揺れ始めた。ユミールが殻に
身を隠そうとしている、その前兆だと気づいたビックスは声をあげた。
「……待て! 撃つな!!」
 その叫びが無駄になることは分かっている、けれども叫ばずにはいられなかった。
このまま撃てばヤツの殻に直撃してしまう。だが、ひとたび実行した操作の取り消し
機能は搭載されていない。いったん選んだ攻撃を、止めることはできなかった。
 魔導アーマーの強大な力は恐らく設計者自身の予測した以上のものだったはずで、
攻撃を止める場面を想定する必要などなかった。そう言うことだろう。
「……くそっ!」
 俺が設計する時は、コマンドの取り消し機能を搭載してやるのに。と、今さらになって
無駄な反論を呟いてはみたが、事態を変えることはできなかった。
 地鳴りがやんだ直後、“少女”の放った攻撃は見事にユミールの殻に命中する。
程なくして、殻から大量の放電が始まった。
 魔導アーマーに搭乗しているとはいえ、実体は生身の人間である。ユミールの殻から
放たれた電流が、文字通り彼らの身体に落とされる。言葉にならない喘ぎを漏らしながら、
彼らは必死でユミールの反撃に耐え続けた。
 幸か不幸か、体力の半分ほどを削られても彼らはまだ生きている。攻撃がやむと
すぐさま顔を上げた二人は、この魔導アーマーに搭乗して以来、恐らく初めて使うで
あろう機能を実行するべくほぼ同時にパネルを操作し始めた。

484 :FF6オープニング:ナルシェ懸軍:2005/11/15(火) 00:44:51 ID:hs43zf740
 ヒールフォース。搭載された中で唯一の回復機能である。
 しかもこの優れた回復機能のお陰で、搭乗者が一撃必殺の技を食らわない限りほぼ
全快にまで体力を回復することができた。つまり魔導アーマーに乗っていれば無敵を誇る、
まさに最強の戦闘マシーンだと実感する瞬間であった。
「畜生、手がまだ痺れてやがる。もうこんなのはゴメンだぜ」
「……ああ」
 そんな言葉を交わしていると再び大地がうなり声をあげた。今度は殻に隠れていた
ユミール本体が姿を現す前触れだった。
 ビックスは“少女”に向けて命令を下した。それは回復よりも攻撃を優先させるものである。
その声に驚いた表情を向けるウェッジに。
「情でも沸いたのか?」
 と、揶揄するように尋ねた。ウェッジは短い否定の句と共に首を振った。彼曰く、今は
攻撃よりも回復を優先させるべきなのでは? という主張に。
「……とりあえず回復なら俺らでもできる。だが、ヤツには独自の機能が搭載されて
いるだろう?」
 そう言って“少女”を乗せた魔導アーマーを指さした。
「なるほどな」
 やはり戦場での判断能力は相棒の方が優れていると認めざるを得ない。頷いたウェッジが
パネル上の操作をはじめると同時に、横の方から耳障りな機械音が聞こえた。
 ――魔導ミサイルか。
 彼の予想は的中し、少女の搭乗した魔導アーマーからそれが放たれる。少しだけ肩を落とした
“少女”に、疲労を見て取ったウェッジは素直な感想を呟きながらパネル操作を続ける。
「……不死身じゃないのか」
 苦笑しながらレバーを引くと、今度は“少女”に向けてヒールフォースを放った。
 直後に轟音がしたかと思ったら、続くように相棒の声が鼓膜を揺らす。
「おい、見たかウェッジ!!」
 魔導ミサイルの与えたダメージは、これまでのビーム系とは比べ物にならなかった。ビックスの
もくろみが見事に功を奏したのだ。
「殻に閉じこもっちまう前に、一気にケリをつけるぞ!」
 一時はどうなることかと思ったが、やはり魔導アーマーと互角に戦える敵などこの世には
存在しないのだ。

485 :FF6オープニング:ナルシェ懸軍:2005/11/15(火) 00:48:07 ID:hs43zf740
 時間はかかったが、魔導アーマーの性能を発揮するにはこれぐらいが丁度いいのかも
知れない。攻撃の中止機能を追加させる事とあわせて、研究所へ提出する戦闘記録には
そう書こうなどと考えながら、戦闘は幕を閉じた。

                    ***

 炭坑の一番奥深くに、目的の物を見出した一行はその前で立ち止まると、岩の上に
祀られるようにして安置されたそれを見つめた。
「これが……氷づけの幻獣?」
 その不思議な姿形に見とれながら感無量と言わんばかりにため息を吐いた相棒の横で、
ウェッジが不安を露わに呟いた。
「おい! なにか様子が変だ? ……なにか不気味な……」
 言いかけて不意に聞こえた機械音に視線を向ければ、“少女”が幻獣に歩み寄ろうと
前進していた。
 誰からの命令でもなく、“少女”自らの意志で動いた。この“少女”はやはり……。
(生きて……いる)
 兵器などではなく、我々と同じように生身の人間なのではないか。先程の戦闘でも、
ユミールからの反撃を食らった彼女は確かに疲弊した様子を見せていた。自分たちと同じように。
 ――もしかすると……。
 ウェッジの思考を遮るように、不気味な光が炭鉱内を照らし出す。歩み寄る少女を、
まるで氷づけの幻獣が拒んでいるようにも見える。


「な、なんだこの光は! ……うわわわわっー!!!」
 なにも分からぬまま、思考もろとも光に飲み込まれていった。この世界を去る前、
ウェッジの見た真実を誰も知ることはない。

486 :FF6オープニング:ナルシェ懸軍:2005/11/15(火) 00:52:32 ID:hs43zf740


「な、何だ?! ウェッジ、おい!! どこへ消えた!?」
 ――よせ。なんの冗談だ!?
 彼にとってそれは初めて味わう恐怖だった。戦場に転がっている死の恐怖、そんな
ものには慣れていたはずだった。しかし、今感じているのはそれとは別のものだ。

 ――もしかすると我々は、とんでもない過ちを……。

「あっ、か、かっからだが……」
 なにも知らなぬまま、思考もろとも光に飲み込まれていった。この世界を去る前、
ビックスの思った真実を誰も知ることはない。

 残された少女は誘われるようにして氷づけの幻獣へ向けて歩を進める。拒むように
何度も光を放つが、この少女には通じなかった。
 通じないどころか、同調するように力が増幅される。行き場を失った魔導エネルギーは
洞窟の岩肌を這うように拡散し、やがて両者の間に戻る。それを繰り返しながら蓄積された
エネルギーを抱えきれなくなった炭鉱内の空気は飽和し、解放を求めて火花を散らす。
 薄暗い洞窟内が真っ赤な閃光に包まれる中で“少女”は意識と、兵器としての存在を失った。

                    ***

 Under the command of Empire
 The strategy failed.

 なお、この任務における炭鉱都市ナルシェからの帰還者は、ゼロ。
 帝国軍司令部の最終報告書には、それだけが記されたという。

                                  −FF6オープニング<終>−
----------
その後、ゲーム本編ではティナ覚醒(433氏プロローグ)に続きます。
長くなりましたが、お付き合いいただき有り難うございました。

487 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/15(火) 01:18:39 ID:arAlC/Uj0
リアルタイムで読ませていただきましたww

ビックス、ウェッジが悟った真実が何なのか少し気になるけど
読みやすかったし、終わり方もちゃんとしていて良かったよ。
オープニング編が帝国兵側の視点だけじゃなくて、ガード側の視点も書かれているのがとても斬新だった。
こんな感じで続きも見てみたい。

とにかくオープニング編乙!

488 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/15(火) 11:34:01 ID:drVKFUHL0
ff6-OPさん乙。
前回までと比べて、文章、ボリューム、テンポともに安定している。
視点のズレについてもかなり改善されているが、やはり気になる箇所が散見される。
以下、その所感。

480はナルシェのガードの視点で、481以降はウェッジ視点。
しかし、480、481ともに「彼」「彼等」という代名詞で始まっている。
視点の主が変わったことをハッキリさせる為にも、代名詞は避けたほうがいい。
また、481以降、ウェッジ視点であるはずなのに、ところどころビックス視点が
入り混じっており、違和感を受ける。
前回からの流れでいけば、ビックスの描写はウェッジ視点からのもので統一した方がいい。

489 :488:2005/11/15(火) 12:17:23 ID:MCajW8Vl0
否定的な意見に傾きすぎた。
以下、評価点。

ユミールとのバトルでは緊張感をうまく演出できている。
取消し機能など、細部の描写にリアリティーを導入しつつも、
冗長と感じさせない様、配分をうまくコントロールできている。
行動に対する理由づけが多いせいで、スピード感には欠けるが、
これは人物造詣のためには、ある程度やむを得ない。
様はバランスの問題なのだが、全体的にうまく統制されている。

490 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/15(火) 12:19:57 ID:LashVkjJ0
うん、こういう的確なアドバイスは書き手にとっても嬉しいと思うよ?


491 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/15(火) 15:41:01 ID:fucC2nP00
>488
>480と>481はちゃんと区切りもありますし、「ナルシェ側」という表記もあるので、まあ構わないかと。
ただ、確かに視点のズレが気になるのは確か。具体的な違和感の箇所を指摘、ないし「視点の統一」の方法論をある程度示してあげてはいかがでしょう?

492 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/15(火) 17:01:13 ID:kElGpWvg0
ちと思ったが、批評に対する批評はやめとかないか?
各人思うとこはそれぞれあるだろうし、きりがないよ。
どれをとって参考にするかは書き手さんの自由だしさ。

オープニングGJです。
433氏の冒頭ともうまくつながりますね。
この具合で本編の続きにも参加していただけると最高です。


493 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/15(火) 19:56:30 ID:fucC2nP00
視点への言及が不親切と感じた故に書いたまでの事で、荒らす意図はありませんでした。お詫びします。

494 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/15(火) 21:36:31 ID:pVQtL/IT0
いや、俺も文句言ったわけじゃないんで……ごめんね
またーりROMろう。

495 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/15(火) 23:46:29 ID:vCEG0Z7S0
視点を変えながら書くのもいいね。
乙でした

496 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/16(水) 23:29:57 ID:+7BjweSRO
保守

497 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/18(金) 02:21:19 ID:S472HOBC0
久々に覗いてみたのでついでに保守。
いつのまにかすげー盛り上がってんな。
職人さん方、激乙です。全シリーズめちゃ楽しませてもらってます。
あと超亀レスだけど>>243-266、すごすぎる。本編の方でもこれ絡めてほしいな。

498 :299:2005/11/18(金) 19:36:57 ID:aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0262 4章 3節 山間(47)

「おい! 向こうから何かが近づいてくるぞ」
「本当か?」
ミシディアの早朝。店先で欠伸を一つして物思いにふける店主の耳に聞こえてきたのは城壁近くにいた
黒魔導師達の話声であった。
「速いぞ、どんどんこちらに近づいてくる」
「あれはチョコボか?」
チョコボ? この大陸にあるチョコボの主な生息地は試練の山の周囲を取り囲む森だけだ。一応、他にも
散在してはいるものの、その規模は大して大きくない。まして人間を背に乗せ走るチョコボは唯でさえ数
が少ないと言うのに。それでは――
起きたばかりでまだはっきりとしない頭で、そこまで考えていると大きな音がしてきた。
これはチョコボの足音だ、大きくなっているということは、ミシディアを目指していると見て間違いない。
やがて足音が止まり、一つの声がする。

499 :299:2005/11/18(金) 19:37:48 ID:aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0263 4章 3節 山間(48)

「よっと」
一声と共に、チョコボから降り、門をくぐるその姿には紛れもなく――
「帰ったのかパロム、ポロム!」
「おう」
森へと帰っていくチョコボに向かって手を振りつつパロムが威勢のいい返事を返す。
「それで……」
暗黒騎士はどうなったのか。それが気になり、訪ねようとした時、二人の近くに見慣れた人物を見た彼は
思わず質問を変更せざるをえなかった。
「あんたは賢者テラ……なのか?」
「ああ」
自分の事に気づいたのかテラはややそっけないといった感じの返答をする。
「何だ、おじちゃんも知ってたのか。何でも凄い高名な人物らしいぜ」
「そうなのか」
続けて最初の疑問を尋ねようとする。しかし、わざわざ質問する必要すらなかった。
「あんたは……」
試練の山から帰還した一行の中、彼が知らない人物が一人混じっていた。それに暗黒騎士の姿が見えない。
と言うことは。
「よう。どうした?」
後ろから声をかけてくる者が一人。ざわめきを聞き取ったのか、偶然に近くを通った。
「ああ。その……」
「どうした? え……」
先程、店主を悩ました光景はこの若い男にも目に入ったらしい。そうして彼もついさっきの店主と同じ
驚き方をした。
「あ……えと……とにかく長老のところへ知らせの行ってくる!」
若い男は言い終わらぬ内に走り出してしまった。

500 :299:2005/11/18(金) 19:39:29 ID:aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0264 4章 3節 山間(49)

若い男が知らせに行った後、すぐにでもセシル達は長老のいる館をへとまぬかれたのであった。
「お急ぎください……噂を聞きつけた方々が集まってくる前に」
セシル達を招待した女官は長老の元へ案内する途中に、そんな事を口走った。
当然、自分が期間するとは思っていなかった者も多いであろう。だが、自分はこうして帰ってきた。
多くの者は先程の男の様に驚くであろうし、実際にその目で本当かどうかを、確認したい人もいるであろう。
それでなくてもただ、興味本位でパラディンの姿を見たいと言う者もいるだろう。
もう少し時間がたつと、その趣の用件で神殿を訪れる者が後を絶たなくなるであろう。そうなればセシルは迂闊
に姿を見せることはできなくなる。
この女官の急げと言う言葉には、そういう意味が含まれているのだ。
「その姿……ご立派です。貴方も自身の中に、迷いを持っていたのですね。でも今は一切の迷いも感じられない。
とても良い表情をしていらっしゃいます」
最後にそう言い残して立ち去っていった。
「セシル殿……よくぞ試練を乗り越えた」
通されたのは神殿の祈りの間である。そこでは初めてあった時と同じように長老が一人佇んでいた。
「それとテラは……何処だ?」
あらかじめの報告を聞いていたのかテラが帰ってきた事を長老は知っていた。
セシル達を一瞥し、その姿が確認できなかった為、そう質問した。
「少し、神殿の中を見させて貰うと言ってましたよ。すぐに来ると言ってました」
「そうか……」
長老は珍しく、落胆した様子で肩を落とす。
セシルが試練をへてパラディンの資格を得た事も充分な話題であったが、テラの帰還もまた、
ミシディアの住人達にとっての重大な知らせであった。
テラはかつてはミシディアに住んでいた。パロムやポロムの弁によると相当名のたつ賢者として通っていた。
長老とも面識があったと見てもおかしくはないだろう。色々つもる話もあるのであろう。

501 :299:2005/11/18(金) 19:50:16 ID:aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0265 4章 3節 山間(50)

「二人は足手まといにはならなかったか?」
気を取り直して長老は訪ねる。
「ええ……それは問題ありませんでした」
むしろ、多くの局面を救って貰ったこの二人には感謝の言葉もない。
「それで……この二人は? 一体」
「ああ! そうか戻ったら話すんだったな。長老……」
そう言ってパロムは長老の方へと向き直った。代わりに話してくれと言ってるようだ。
「では、私の口から話そうか……そもそも私がパロムとポロムをセシル殿のお供につけたのは当然修行を兼ねた
手伝いとしての意味もあるが、もう一つはお主を監視するためだったのだ」
「監視?」
「ちゃんと最後まで試練をなせるかどうかを詳しくな」
「そうですか……」
「だが、その必要も無かったようじゃな。二人ともご苦労であった」
「ごめんなさい。セシル様……黙っていて」
「いや、あんな事までしたんだから疑われない方がおかしいよ」
丁寧に謝罪の礼をするポロムを見て、セシルは特に気にとめていないという趣の言葉を返す。
生真面目な彼女の事だ。黙って関しする事には抵抗があったであろう。
「ですが……」
「もう気にしていないていってるんだから。ここまでにしようぜ」
パロムが言う。ポロムと対照的に、この事に関してはもう特に気にはしていないようだ。

502 :299:2005/11/18(金) 19:51:23 ID:aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0266 4章 3節 山間(51)

「それで、パラディンになった感想はどうだ?」」
重い雰囲気を晴らそうとしてか、長老が話題を切り替える。
「正直、今になっても実感はありません。本当に僕が……って感じで」
その場を取り繕う為の方便でもなければ、遠慮しての事でもない。率直な感想であった。
「それに力に馴染むのには、少しばかり時間がかかりました」
「どういう事だ……」
「ええ、この力を手にしてから下山しようとした時でした。幾度か魔物の群れに遭遇して戦闘に突入する事が
あったのですが、戦おうにも最初はなかなか力を発揮する事ができませんでした」
「ほう……」
長老の反応を待った後、セシルはさらに続けた。
「でも。戦闘を重ねていく内にだんだんと力の使い方が分かってきました。今では特に問題はありませんよ。
おかげで下山してここめで帰ってくるのに結構な時間がかかりましたが」
もし、チョコボに乗らなければもっと時間がかかったであろう。

503 :299:2005/11/18(金) 19:52:22 ID:aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0267 4章 3節 山間(52)

「それと、ちょっと気になることが……」
ふと思い立ったかの様にセシルは口を開く。
「山頂での試練の際、剣を授かったのですが、この剣、よく見てください……」
セシル自身も下山の折、剣を扱っていく中で、偶然にも気づいた事だった。
刃の部分に何か文字らしきものが深く刻み込まれていた。
「幸い、文字が読み取れない事は無かったのですが、何について書かれているのか長老に伺っておきたい
と思いまして」
一度、セシルも全てに眼を通したのだが、今ひとつその言葉が何を意味するものなのかが分からなかった。
だが、長老なら何か分かるかも知れない。
「剣にはこう書かれています……」

504 :299:2005/11/18(金) 19:53:06 ID:aluXxVi30
龍の口より生まれしもの
天高く舞い上がり光と闇を掲げ
眠りの地にさらなる約束をもたらさん。
月は果てしなき光に包まれ
母なる大地に大いなる恵みと慈悲を与えん。

「これはミシディアに伝わる伝説と同じ内容だ……」
最後まで聞いた長老は
「ちょっと見せてくれ……」
セシルから剣を受け取った長老はその文字を一字一句、丁寧に何度も読み返した。
「間違いない」
「それで、これはどういう意味をさしているんでしょうか?」
断言した長老にセシルは聞き返す。
「ただ、伝説として伝わっているだけであってそれが何を示しているのかまでは現時点では
分かっていないのだ」
「そうですか」
となると、もうミシディアで知ってる者は誰もいないと見た方がいいだろう。
「ミシディアに伝わる起きてではこの伝説の為に祈れと言われている。ひょっとすると今がその時なのかも
しれん」
長老のことば何処か予兆めいていた。

505 :299:2005/11/18(金) 20:00:19 ID:aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0268 4章 3節 山間(53)

沈黙を打ち破るかの様に、扉が開く。
そして遠慮無く中に入ってきたのはテラであった。
「セシル、すまないな。久しぶりに帰ってきたものだからつい懐かしくてな、色々見て回ってしまったのだ」
「久しぶりじゃな」
長老が嬉しそうに声をあげる。
「ああ……」
テラの方は何処か遠慮しがちな態度であった。
さっき町中でテラを見た者達も何かをしっている素振りであった。
テラにとってこのミシディアになんらかの因縁があるのだろうか。
「この爺ちゃん凄いんだぜ! 何たって伝説の魔法。メテオを覚えたんだから」
「メテオだと……」
その単語を聞いた長老の声が裏返った。
「そうだ、セシルがパラディンの試練を超えた時、山頂で聞こえた声が私にも話しかけてきた、
そうして、力を授けてくれた」
「あの魔法の封印が解かれるとは、やはりただ事でない何かが起ころうとしているのか」
「そうかもしれんな……だが、世界の事情がどうあれメテオは私の手の中にある。この力さえあれば
ゴルベーザーも! 奴だけはこの私の手で倒す!」
「テラよ……今のお前は憎しみの力が増大しておる。そのままの状態で戦おうとするとお前自身の身を滅ぼす結果が
待っておるぞ。それにメテオなどと……」
「分かっておるわ! その位の事は……だが、あいつだけは、ゴルベーザだけは何としても!」
激しい口調のテラはこの場にいる全ての人物を黙らせるだけの覇気を感じさせた。
「駄目だ、いくらお前が強くなろうが今の考えでは決して勝つことはできん。周りの状況を見据えるのだ」

506 :299:2005/11/18(金) 20:01:12 ID:aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0269 4章 3節 山間(54)

「おい、長老――」
感情を乱した長老を見たことがないのか、やや取り乱している。
「パロムパロムが口を挟む。
ここまで!」
だが、それ以上はポロムが言わせなかった。
「出ましょ……」
パロムのがここまで感情を崩す事を見たくはなかったのだろう。
この様な場に肩を掴み静かに退出する。
二人には長老はとてもではないが耐えきれなかったのだ。
曲がり角へと消えていく二人の影を見ながら自分も引くべきかとは思ったが、やめておいた。

507 :299:2005/11/18(金) 20:02:06 ID:aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0270 4章 3節 山間(55)

「アンナが……娘が……」
二人が去った頃合いを見計らったようにテラが言う。
「…………」
セシルにもあの時のダムシアンの様相が頭に蘇ってくる。
「娘が殺されたのだ」
ずっしりとしたテラの声はとても短かったが、深い憎しみが秘められている。
「それだけで充分な理由であろう……」
「私怨で戦うというのか! 愚かな……それが、賢者として名を馳せた者の言うことか」
「何とでも言うがいい。ゴルベーザを倒せるのなら、そんな肩書き誰かにくれてやるわ!」
「頑固じゃな。昔と変わっておらん」
何とかと言った感じで長老が口から絞り出す。
「お前もだ。相も変わらずだ」
そこまで言うと、後は口を閉ざしたまま、部屋を出て行った。
「しかし、それではお前はどうなるのだ……」

508 :299:2005/11/18(金) 20:03:59 ID:aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0271 4章 3節 山間(56)

「ああ、セシル殿。ちょっとばかり見苦しいところを見せてしまったな……」
寂しげな様子でテラを見送った後、長老はセシルに切り出す。
「あいつと私は昔からの仲でな。つい本音でやり合ってしまう。仮にも国を統べるものなのに
パロムとポロムもいたというのに……」
「いえ、そんな友人はとっても羨ましいです。本当に……」
もし、自分にもそれだけ他人とうち解けあえたら……カインも。
だが、もう過ぎ去ってしまった事。その日々を取り戻す為にもこの力を手に入れたのだ。
「そうか……有難う」
「何故、テラはミシディアを出て行ったんですか?」
聞いて良いのかどうか迷ったが、今聞かなければもう聞く機会はないだろう。
多少、配慮に欠ける行為だとは思ったが、セシルは思い切って質問した。
「やはり、分かるか」
「一応、テラとの付き合いは長い方ですし、さっき長老とも何処か余所余所しかったですし」
「ミシディアでは日々、魔法の研究が成されていた。過去、多くの偉人達が研究に努めてきた
おかげで、現在でも多くのミシディアの民が魔法を使えるようになった。だが、発展には常に
挫折や犠牲がつきものであった」
いきなり語り始めたので、セシルは最初テラの事を話しているとは気づかなかった。
「テラもこの国の魔法の発展に一役買っていた。若い頃から非常に優秀だったあいつは幾つもの
研究で成功を成し、民からの信頼も相当なものであった。だが、その評価の絶頂の時に事件は
起こった……」

509 :299:2005/11/18(金) 20:04:52 ID:aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0272 4章 3節 山間(57)

身構える間もなく、長老の言葉は続く。
「事件はいたって簡単なものであった。その日、テラは古代魔法の封印を解こうとして、多数の
魔導師を動員していた。だが、研究は失敗。魔法は暴走し、そこにいた多くのものを傷つける事
となった」
「それが原因だったのですか……」
「いや、実験の失敗はミシディアでは珍しくはなかった。それに古代魔法に関する事なら尚更
であった。犠牲者が出ることもあった。この時は幸いにもなかった、その為、住人間の諍いや
テラを始めとした、研究に立ち会った者に恨みを持つものは殆どいなかった」
淡々と語る、長老の話は終わりではなかった。むしろここからが本当に話したい事であったのだろう。
「だが、テラの失敗は多くの住民を落胆させる結果となった。そして日々の研究に勤しむものの自信すら喪失
させてしまった。普通の者であったならそんな事はありえないであろう。しかし、テラだから問題だったのだ。
テラなら出来る、そんな期待に皆すがっていたからだ」
優れた才能を持つ者は一人だけで多大な人間へ影響を与える。しかし、それが必ずしもプラスに
働くとはいえない。それを端的に表した例なのかもしれない。
「誰もテラを恨まなかった。しかし、テラは去っていった。多くの者を傷つけた罪悪感も勿論あったが
それ以上に、落胆する者達を見てはおれなかったのだ」
「…………」
「それは失望したという意味ではない。むしろ皆の期待に応えられなかった自分への戒めであった。
そして、これ以上、自分へ信頼を寄せる者を増やしては民全員への不幸を招く。そう判断したのだ」
テラの存在はミシディアに発展をもたらしたが、それが住人の自らの意思を持つことを阻害していた可能性
にテラ自身は気づいたのだろう。

510 :299:2005/11/18(金) 20:06:30 ID:aluXxVi30
FINAL FANTASY IV #0273 4章 3節 山間(58)

「勝手な推測だがな……」
長老はそう付け加えた。
「だが、奴の本音くらいは分かる間柄であると自負してるつもりだ」
「誰も止めなかったのですか?」
「引き留めようともしたが、奴は聞き入れなかった。一度決めたらもうその考えを修正する事はない。
奴はそんな性格なのだ。本来なら奴こそミシディアを率いる者だったのだ……」
テラが去った後のミシディアは長老がひきたのだろう。その後どうなったかは、今の町並みを見れば明白だ。
結果的にテラが去ったことはこの国を発展に導いたのかもしれない。
それでもしばらくは住人達にはやるせない思いが残ったであろう。
誰にも罪を問うことが出来なかった。そして皆が優しさと思いやりを持っていた。だが、それが
不幸を呼んだ。そしてその不幸は恨みや、悲しみを誰にもぶつける事ができない。その例をとってみると
この類の不幸は一方的に押し寄せる不幸に比べて、なんともやりきれないものだ。
「これで私の話は終わりだ」
「……有難うございます」
長老にはつらい話をさせてしまった。無駄な詮索などしない方がよかったのかもしれない。
だが、セシルはミシディアの民の持つ、多くの悲しみを少しだけだが、理解できた様な
気がした。それはセシルにとって大きな収穫であった。

511 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/18(金) 20:24:26 ID:S472HOBC0
リアルタイム超乙です!

ただ、長文投下だからなだけかもしれませんが、
どこか展開を急いでいるような印象を受けました。
次はいよいよバロンですな。


512 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/18(金) 20:34:21 ID:JEdwi+eM0
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
あいかわらず長文なのにスラスラ読みやすいです。

513 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/18(金) 20:42:34 ID:oofwCHMK0
乙です。リアルタイムで見たの初めてだー

514 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/18(金) 23:18:00 ID:ONj9hvlh0
>「パロムパロムが口を挟む。
>ここまで!」

コピペミスかな?

やっぱうまいですね。乙でした。

そういえば本編ではこの長老はテラが死んでも、「愚か者め」としか言わないような冷たい奴だったような気がするけど、
こうやって文章化されると印象変わるね

515 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/19(土) 12:49:27 ID:E90/j0eE0
次の盛り上がりに向けての繋ぎあるいは布石?
それにしては冗長。
試練を終えたセシルや、長老の想いを深く掘り下げたかった?
それにしては拙速。

前回の出来がよかっただけに、今作を惜しむ。

516 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/19(土) 22:57:12 ID:1xORnM6i0
お、まとめサイトが・・

517 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/20(日) 16:07:01 ID:Pyj8K93G0
あげとく

518 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/21(月) 07:09:10 ID:gshyjlfd0
>>515
批評に対する批評はしたくないが、
毎回そうやって否定的な評価しか書こうとしないのははっきりいって凄く偉そうでいい印象を持てない

519 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/21(月) 11:24:43 ID:HunXZlh20
>518スルーしとけよ。
噛みついてる時点であんたも同レベルだぜ

520 :299:2005/11/21(月) 19:05:47 ID:QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0274 4章 3節 山間(59)

夜中、セシルは神殿を抜け出し夜道を歩いていた。
試練を成し、あとはバロンへと向かうだけだ。その為の手段も確保出来てる。
だが、その前にどうしてもあっておきたい人がセシルにはいた。
本当なら、こんな夜中でなく、もっと早く――できればパラディンになった後、
一番最初にでも会いに行きたかった。
しかし、ミシディアにはまだ、自分を許していない人間がいるだろう。
許したくても、多少の時間つまりは心の整理をしなけれなならない者も多くいる事はセシルも
分かっていた。
そんな者に自分の姿を見せるのは得策では無い。そう判断した為、人通りの多い昼間でなく、
皆が寝静まった時間を選んだのだ。
そして町はずれの墓地にはやはりセシルの求めていた人影が見えた。
黒い法衣をまとったその影は闇に紛れるかのようにしてそこに静かに立っていた。
「やっぱり此処にいたんだ」
その人影に声をかける。
「ジェシー……」
「なんで、ここにいるって分かったんですか……?」
振り返ったその女性はまず最初にそう問うた。
「正直、ここで君に必ず会えるとは思っていなかったよ。でも良かったよ……」
「何がです?」
「もうこの機会を逃してしまったら当分は君に会えないからね」
「そこまでしてもらわなくても結構でしたのに……」
「でも、君と二人で話したかったから。それに……」
「それに?」
「ここが、一番君と話すのに向いていると思ったし」
本当のところ、今まで余計な時間はあったのだし、その時に長老辺りにでもとりついでもらえば
いつでも話す時間を作れたはずだ、

521 :299:2005/11/21(月) 19:08:04 ID:QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0275 4章 3節 山間(60)

「馬鹿ですね……それでもし、私が此処にいなかったらどうするつもりでたの?」
「でも、結局は会えた……」
自分でもえらくいい加減な理屈だとは思ったが、敢えて言った。
「…………」
「…………」
そこまでで会話が途切れた。
「無理をしないでください。そんなに取り繕わなくても、一番言いたい事があるんじゃないですか?」
「明日にはここを発つ……」
促され、いきなり切り出す。
「それだけを言いたくて……」
言葉自体には大きな意味はなかった。他にもお互い、話す事はいくらでもあるはずだ。
だが、もうそれだけで充分だった。今更、謝罪の言葉が意味を成さない事をセシルは悟っていた。
「それじゃあ……」
踵を返し、夜闇に消えようとしたセシルをか細い腕が引き留める。
「私はまだ、あなたと面と向かって話す事はできません。それに今もあなたの事を全て許すこと
もできません。ですが……」

522 :299:2005/11/21(月) 19:08:58 ID:QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0276 4章 3節 山間(61)

セシルは後に続く言葉を待った。
「これからは、これからは少しはあなたみたいな人でも理解していきたいと思います」
「そうか……」
「長老……いえ、父にもいろいろと諭されました。お前も変わらなければならないって。それが全て
分かったとは言い切れないですけど……」
彼女が父の事を話してくれるのはこれが最初であった。
「君は長老の娘だったんだね……」
「はい」
ゆっくりと、それでいて簡潔に応える。
「話してくれて有難う。じゃあ……行くよ」
「では」
今度はジェシーも引き留めなかった。そうしてセシルは去っていった。
短いやりとりであったが、お互いを理解しあうには幾ばくかの時間が必要であろう。
だから、これで良かったのだ。
向かう道は別方向。だがいずれ交わる時もくるであろう。その時には今とは違う何か別の言葉が出てくるかも知れない。
今のセシルにはこれだけで……充分であった。

523 :299:2005/11/21(月) 19:11:47 ID:QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0277 4章 3節 山間(62)

窓から入ってきた淡い光がセシルが心地よい目覚めを誘う。
セシルはベッドから起きあがり、外の景色を眺める。快晴の青空に昇った太陽が円形状の町を
鮮やかに照らしていた。
「旅立ちには適任の天気だな……」
思わず、楽観的な言葉をこぼす。こんな天気では、彼でなくても口にはだしたくなるであろう。
己の幸運を噛みしめていると、扉を静かに叩く音が一つした。
「どうぞ……」
その声に誘われるかのように扉が開く。
「おはようございます」
その顔には見覚えがあった。
昨日、自分を長老の元へと案内してくれた女官のものだ。
「良く眠れましたか?」
「勿論です」
それは本当であった。彼にとってこの数日間は正に波乱の出来事の連続であった。
ここまで、ゆったりとした寝床で穏やかな心持ちで休息を取れたのは初めてであった。

524 :299:2005/11/21(月) 19:12:39 ID:QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0278 4章 3節 山間(63)

「それで何か御用でしょうか?」
「お荷物が届いています」
一通りの挨拶を終え、用件を尋ねると女官は部屋の前に置かれた一つの包みを指さす。
「これは?」
「武具屋の店主さんから餞別だそうです。重いのでご注意ください」
ここまで持ってくるのも相当な苦労でしたと苦笑する。
セシルもその荷物を持ち上げようとする。それは確かに見た目以上の重さを有していた。
何とか部屋まで運び込み、女官に礼を言って扉を閉める。
持ち込むのも困難であったが、梱包されたその荷物を紐解くのも結構な労力を使用した。
「これは……」
開いた荷物から覗いたものは鎧であった。
それだけでなく、篭手を始めとした防具一式が詰め込まれていた。
そのどれもが渾身を込めた出来であり、丁寧に鍛えられたものであった。
「パラディンの……」
試練の山へ向かう前準備として、武具屋に行った時があった。
その時、店の一番目立つ所に安置されていた、鎧を思い出す。
――これはパラディン用の装備さ! あんたみたいな暗黒騎士には使えるわけがねえ――
店主の皮肉めいた苦笑が思い出される。
「あの時の鎧か? でも何故……」
信じられない気持ちでその鎧を眺めていると、荷物が入っていた箱の奥底に何かが残っている事に
気づく。
拾い上げてみるとそれは小さな紙切れであった。
じっくりと眼を凝らしてみると、文字が刻まれていた。
――頑張れよ――
大雑把な文字でそう書かれていた。
「…………」
ぎゅっと紙切れを握りしめ、懐にしまう。

525 :299:2005/11/21(月) 19:18:47 ID:QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0279 4章 3節 山間(64)

昨夜の内に、長老から指定されていたのでその場所には直ぐにたどり着けた。
「セシルか?」
既に到着していたテラが声をかける。
「おはよう、テラ。早いんだね」
「良く寝付けなくてな。まあ、復讐を誓った時以来、睡眠と言うものをまともに取ることが
出来なくなってな……」
「そうか……」
「そんなに遠慮をするな。、別に気にしてはおらんよ。ところでその鎧は?」
「ああ、旅立ちの餞別として貰ったんだよ……」
「ほお……なかなか様になっとるぞ」
まじまじと見つめながら、感想を一言。
「はは、有難う……」
町はずれにぽつんとそびえる、一軒の小屋。この魔法国家の神秘的な建物に比べると、明らかに質素な
作りである。
「ここからバロンに行けるのか?」
その事は既に長老から確認済みだった。しかし、今ひとつ実感が沸かなかったので念を押すかのように
聞いてしまう。
「そう思うのも無理はないかもしれんが、このデビルロードと呼ばれた道は昔はバロンとミシディア間の
交易ルートとして、栄えたのだ。今の両国の関係を見れば、とてもじゃないが、想像できん事だがな」
確かにここ数年のバロンは各国に対し、強硬的な姿勢で外交にも臨んでいた。
そうしてその圧力に一番反感を持ったのが、ミシディアであった。
結果、ミシディアはバロンの侵攻の真っ先の的にされてしまった。その時にこの道も閉鎖されてしまったんのだ。
最も現在の世界を見れば、むしろ最初に侵攻された事さえましな事に思えるが。

526 :299:2005/11/21(月) 19:36:09 ID:QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0279 4章 3節 山間(65)

「過去この場所に空間同士を繋げ、大陸間を自由に移動できる手段を確保するために出来上がったのがこのデビルロードだ。
そもそもこの道が何故デビルロード、つまり悪魔の道などという不吉な名称で呼ばれたかというと、理由が幾つかあるのだ……
一つはこの道を使うのに相当な生命力を犠牲にしたからじゃ。ああ、安心しろ現在は創設時に比べて実験の重ねた結果、
そこまで危険な道では無くなった。
もう一つはこの道を作った後、黒き鎧を纏った男が現れた事に起因している。
当時、その姿を見た者は悪魔が現れたと思ったのだ。しかしそれは誤解であった。そいつは唯の人間であり、その上バロンのものだと
言った。つまり、は成功したと言うことだな。人々はこの道を最初使い、大陸と大陸を一瞬にして移動したその者の名を取って
デビルロードと名付けたのだ。まあ、悪魔とは違ったのだが……」
「バロンから来た黒き鎧の男とは暗黒騎士だったのか?」
長々と続くテラの講釈の終了を見計らって訪ねる。
「詳しいことは私も知らんが、今重うと確かにそうだったのかもしれんな」
かつてのバロンから暗黒騎士がこの道を通ってミシディアまでやってきた。そして今かつて暗黒騎士だった
セシルはバロンに向かおうとしている。これは何かの偶然であろうか。
「既に封印は解かれているんだね」
「ああ、それは問題ない」
「では」
扉を開けようとしたセシルを呼び止める声が一つ、いや、二つあった。
それに続くように草を踏みしめる足音が二つ、二方向から聞こえてくる。
「パロム! それにポロムか!」
現れたその姿に少しだけ驚く。
「見送りに来てくれたのか……」
そう言えば誰の姿も見えない、だが、無理もないだろう。試練を乗り越えたと言え、昨日の今日の出来事である。住人全員が
手を振って見送りとは、そう簡単にはいくまい。
「違うよ。一緒に行くことにしたんだ」
「え!」
セシルとテラが殆ど同じタイミングで声を上げる。
「そんなに驚くなよ……ちゃんと長老から許しは貰ってるぜ」
「そういう事ですわ。以後も宜しくお願いします」

527 :299:2005/11/21(月) 19:37:36 ID:QNWJJqtq0
FINAL FANTASY IV #0280 4章 3節 山間(66)

「それで長老は?」
昨日の内に礼は言っておいたが、あの人にはお世話になった。未練がましいかもしれないが、旅立つ直前に、もう一度だけ
顔を合わしておきたいと思った。
「長老は……明朝、祈りの塔に入られました」
「祈りの塔だと!」
「テラ、知ってるのか?」
「ああ……一応はな。詳しくは知らんがそこに入ったとなれば当分は出てこないと言うことだ」
そこまでして、長老は何に祈るのか? だが、セシルはそれを理解していた。
長老も世界……いや、守りたい者の為に戦いを始めたのだ。それはセシル達の様に直接的に手を動かす行為ではないかもしれない。
だが、その行いも一つの戦いである。
それだけで聞けば充分であった。此処にはいないが、長老が自分を全力で見送ってくれているのを感じる事ができた。
「そうか……じゃあ、僕たちも急ごう!」
小屋に入る途中に一度だけ後ろを振り返った。小高いこの場所からは白い町並みが一望できる。
ひょっとしたら、この町のどこから見るよりも美しい光景だったのかもしれない。
長老やジェシーの事が少しだけ、思い出される。しかし、もう迷いは無かった。
「みんな……これから行くバロンは僕の故郷と言っていい場所だ。そして戦いは激しくなる。ひょっとすると
生きて帰れないかも知れない。それでも僕に付いてきてくれるか?」
だが、そんな質問は無駄であった。
「勿論だ」
「今更、水くさいぜ」
「どこまでも」
返事は様々であったが、皆同じ思いだ。
「分かった行こう! バロンへ」
小屋の中、ひっそりと描かれた魔法陣に足を載せる。
途端、視界が揺るぎ始める。ぐにょりと曲がり始める視界の中、セシルはカインやローザ。
そしてゴルベーザの事を考えていた。

528 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/21(月) 19:58:00 ID:xX13pLR60
夢枕風にティファvsロッズ


面白そう

たまらぬ蹴りであったッ!!!


529 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/21(月) 20:32:38 ID:V1m8xr+H0
ジェシーとのオリジナル会話(・∀・)イイ!!

530 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/22(火) 02:09:37 ID:5QeVNfTo0
>>FF4
武具屋の餞別に感動。これゲームの中にあるのならなんか人情味あって良いな、FF4。
ジェシーとのやり取りが、完全なる相互理解であなく、相互理解の始まりという感じがして
良いなと思いました。個人的にこの流れだと、今後のテラが気になります。GJ!

531 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/22(火) 08:46:14 ID:FOjDfLOCO
それよりもヤンが気になる
一体何があったのか

532 :FF8:2005/11/22(火) 10:49:45 ID:Bca1IaYY0
FF8 第1章 SeeD-1

(スコール・・・スコール・・・)
(誰だ)
(スコール、やっと会えたね)
(誰だ、誰なんだ、あんた)
(忘れちゃった?寂しいな・・・)
(どこかで会ったことが?)
(思い出して。忘れられたままじゃ、寂しいから・・・じゃあね、スコール)
(おい待て)
(思い出したら、いっぱいお話しようね)
(待て、待ってくれ・・・)

「おや、気がついたかい」
保険医のカドワキ先生が、俺の顔を覗き込んで言う。
俺はあたりを見回した。ここは医務室、俺と先生の二人しかいない。
すると今しがたのは夢だったのか。不思議な、夢だ。
俺はベッドから起き上がろうとした。
「!」
激しい眩暈に襲われると同時に、眉間に鈍痛が走る。
「ああ、しばらく寝たた方がいいよ。怪我した場所が場所だからね」
・・・怪我?場所が場所?ああ、そうか・・・
俺はサイファーとバトルしていたのを思い出した。
・・・しかし、なぜここに・・・

533 :FF8:2005/11/22(火) 11:03:43 ID:MbqJAoAu0
FF8 第1章 SeeD-2

「嫌だねえ、覚えてないてのかい?」
困惑が顔に出たのだろう、カドワキ先生があきれるように言った。
「いいかい、あんたはね・・・」

カドワキ先生が話してくれた内容は、およそ次の通りだった。
あの後、つまりサイファーに眉間を斬られた後、俺は顔面を血で朱く染めながらも、
鬼神のごとき形相でサイファーに斬りかかって行ったのだそうだ。
その太刀筋があまりにも凶刃であったため、これ以上の面倒はご免とばかりに、
サイファーはとっとと逃げ出したという。
それまで二人のバトルを遠巻きに見物していたギャラリーが、
俺を心配して駆け寄ってくれたが、俺はただ「大丈夫、大丈夫」と繰り返すだけ。
しかしどう見ても大丈夫な訳がないという事で、ギャラリーたちは俺を
なだめたりすかしたりしながら、どうにか医務室まで運んで来たのだと。

「まったく、そういう年頃なのかねえ。あんまり無茶するんじゃないよ」
サイファーに行ってくれ。もともと誘ってきたのはアイツの方だ。
”なぁスコール、ちょいと体あっためないか。まさか断ったりしないよな”
そう言われたら、断れない。

534 :FF8:2005/11/22(火) 11:20:07 ID:Bca1IaYY0
FF8 第1章 SeeD-3

「余後の心配はなさそうだけど、一応、確認させてもらうよ」
俺の思惑をよそに、カドワキ先生が型通りの質問を始める。
 名前は?・・・スコール・レオンハート
 年齢は?・・・18歳
 所属は?・・・バラムガーデン、SeeD候補生、NO.41269
 担当教官は?・・・

「絶対、あなたかサイファーだと思ったわ」
俺の回答を遮る様に、だしぬけに背後で声がした。声の主を振り返る。
「キスティス先生・・・」
「キスティス先生・・・じゃないわよ。連絡受けて跳んで来たんだから」

キスティス・トゥリープ、俺より一つ上の19歳。俺の担当教官だ。
15歳の時に史上最年少記録でSeeD試験に合格、17歳の若さで教員資格をも取得した、
超エリートだ。才色兼備なだけでなく、気さくで面倒見の良い性格ゆえに、
男女を問わず多くのファンがいる。

「全く何を考えてるのよ。午後からSeeD認定試験があるの、忘れてた訳じゃないでしょうね」
「午後から試験て、本当かい?呆れた子だねぇ・・・」
だから、サイファーに言ってくれ。

535 :FF8:2005/11/22(火) 11:33:58 ID:MbqJAoAu0
FF8 第1章 SeeD-4

「それでカドワキ先生、スコールの具合はどうですか」
キスティス先生が尋ねる。
「ああ、もう心配いらないよ。ピンピンしてる。若いってのはいいねぇ」
「そう、良かった」
「でも眉間の傷は一生消えないよ。天下御免の向こう傷ってやつさね」

・・・そうか、一生残るのか、この傷・・・
傷口に手をやりながらも、俺はさほどの衝撃は受けなかった。
俺はSeeD候補生、いずれは戦いの中に身を置く者。
遅かれ早かれ、俺の体は傷で覆われる。

キスティス先生からも何か一言あるかと思っていたが、珍しく何も言わない。
いつもであれば、小姑のようにぶちぶちと小言を連ねるか、
あるいは傷なんて気にするなといった類の励ましの言葉でも掛けて来る筈だが、
いずれにしろ、黙っていてくれる方が、俺にとってはありがたい。
何気なく先生を見やると、口元に手を充てて、驚きを顕わにしている。
俺を想って黙っていたのではないようだ。衝撃で口を訊けないだけだった。

やれやれだ。
これじゃ、誰が負った傷だか判りゃしない。

536 :FF8:2005/11/22(火) 11:45:04 ID:MbqJAoAu0
申し訳ありません。コピペミスしました。
>>534のラストに、以下の3行を付け足して下さい。

「しかもね、カドワキ先生。この子、炎の洞窟の課題、まだクリアしてないの」
「おやまぁ、ますます呆れたね」
だから今朝やろうと思ってたんだ。それを、サイファーが・・・

537 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/22(火) 12:15:32 ID:FM0FcYfA0
うまいっ。まんま初期のスコールの雰囲気がよく出てる。ほんとうまい。
このままスコール一人称で行くと面白そうだな。期待して待ってます。

538 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/22(火) 16:45:27 ID:1ZtTrQmpO
すごいおもしろい!
一人称っていいものなんだねぇ、久々に新鮮な面白さだった!
スコールがすごくよく描けてる!
あの性格は描くのが難しいと思ってたけど、あなたの筆致だと、やなやつじゃなく、自然!あと、全体にくどくなくていい感じ。
頑張って!続き楽しみにしてます!てゆか早くよみたい!

539 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/22(火) 21:05:22 ID:XWCMuXbH0
528www 出だしだけ

「母さんはいないのか・・・じゃぁ遊ぼう?」
男は大げさに両手を広げ、挑発的な笑みを浮かべた。
遊ぼう?・・・そういわれて、なんのつもりなの? 
と聞き返すほど私もお嬢様じゃない。
先ほどからの男の言動を見る限り、頭の回線が複数切れているのか
母さん、母さんって、どうみても話が通じる相手ではなさそうだ。
私たちが今いるこの教会には出入り口がひとつしかなく、それも丁度男が立つ位置
によって塞がれてしまっている。
逃げ道は・・・ない。
こちらにはマリンもいる。
いま、この場で、この危険な男を戦闘不能にすること
それが私たちにとっても、一番安全で確実な方法であると思われた。
「いいわ、遊びましょう。マリン下がってなさい」
私はマリンを後ろにやると 半歩前に出て男を睨んだ。
「ティファ・・・」
マリンが心配そうに 声をかける・・・、
「問題ないわ」
私は背中ごしにマリンに返事をしつつ、男を睨み付ける。

540 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/22(火) 21:06:36 ID:XWCMuXbH0
大丈夫、こいつがどんなにでかかろうと、どんなに腕っぷしが強かろうと、ただそれだけだ。
長らく戦闘からは身を引いていたとはいえ
私は師匠に鍛えられたのだ。
2年前の戦いでは、あのセフィロスとも互角に叩きあった
素手でのタイマン それが条件なら誰が相手であろうと負ける気がしなかった・・。
両足を軽く前後に開き、拳を持ち上げる。
左拳が前 右拳が後ろ・・ザンガン流格闘術
蹴りを主体とした総合格闘技
それが私の武器だ。
「ほう! こりゃあ楽しめそうだ」
男は感嘆の声をあげると
大げさに腕を前後に広げ構えた。
フン、楽しめそうだですって?
見てなさい、今にそのへらへらした口を二度と笑えないように叩き潰してやるから
それとも、二度と楽しめないようにあそこを捻り潰してあげましょうか?
凶暴なものが内部で熱を持ちムリムリと膨れ上がっていく…
落ち着け、人に使うのは久しぶりだからって焦っちゃ駄目


541 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/23(水) 00:59:49 ID:dn2QlHh40
5tenkana...

542 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/23(水) 10:01:25 ID:j8bdUx7i0
FF8といえばどッかの個人サイトで凄い上手いのがあったよな
ディスク1の最初から終盤までとアルティ戦だけ書いてあるやつ
あれどこだっけ

543 :FF8:2005/11/23(水) 10:24:35 ID:flijhh3H0
FF8 第1章 SeeD-5

「生徒NO。41269、スコール・レオンハートです」
「教員NO.048、キスティス・トゥリープ。私がサポートします」
敬礼と共に、試験管に報告する。
炎の洞窟。最奥部にいるGF・イフリートを倒し、装備可能にする。
それが今回の課題だ。

GF、ガーディアン・フォース。その正体は強大な自律エネルギー体だ。
生体と同様に意識・自我を持っているが、知能はそれほど高くない。
それぞれが持つ特性に応じて、獣や妖精など様々な姿となって現れるが、
大半は確固とした実体を持たず、限られた時間しか実体化できない。
GFに対して力を示し、その力を認められた者は、以後、そのGFと常に
交感できるようになる。俺たちはそれを「GFを装備する」と称しているが、
これにより強大な力を得ることができる。
バトル中にGFを召還することが可能になるだけでなく、GFを媒体として、
各種魔法を自身にジャンクションすることも可能になる。
GFは強力な武器であり、同時に強固な防具でもあるのだ。

「時間を決めなさい。長くもなく、短くもなく、自分に合った時間を」
試験管が重々しい口調で言った。
「10分で構いません」
俺は即答した。傍らにいるキスティス先生が目を丸くしている。
「10分でいいのだね」
「はい」
キスティス先生の意味ありげな目くばせを無視して、俺は答える。
「では、行きなさい」
俺は駆け出した。キスティス先生も後に続く。

544 :FF8:2005/11/23(水) 10:43:21 ID:flijhh3H0
FF8 第1章 SeeD-6

足元を流れる溶岩が、洞窟内を赤く照らし出す。
しかしその猛烈な熱気ゆえに、視界は常に揺らぎ、遠くまで見通すことはできない。
肌を露出している箇所がチリチリと痛み出し、眉間の傷はズキズキとうめく。
汗は絶え間なく吹き出してくるが、流れ伝う間もなく蒸発してしまう。
炎の洞窟、その名にふさわしい、ここは常軌を逸した世界だ。

「やっぱりあなたとサイファーは別格ね。本当に強いもの」
最奥部へと向かう道すがら、半ば呆れたようにキスティス先生が言う。
「・・・ここの魔物が弱いだけだ」
そう応じつつ、俺は新たな一体を斬り伏せた。これで15体。
実際、ここの魔物はさほど強くない。
種類こそ異なるが、ガーデンの訓練施設にいる魔物と、ほぼ同レベルだ。
サイファーを相手にする方が、よほど手強く、危険だ。
「それはそうなんだけどね・・・なんていうか、ここで、こうやって、
今まで何人もの生徒をサポートして来たんだけど、ほとんどの子は、
普段の実力をなかなか出し切れないものなのよ」
そういうものなのか・・・俺にはよく判らないし、どうでもいい事だ。
「これってやっぱり、私が魅力的だからかしら?」
・・・なに考えてるんだ・・・
「冗談よ、冗談。いつもこうやって生徒をリラックスさせてるの。
でも、あなたには必要なかったみたいね」
・・・くだらない。無視して先へ進もう・・・
そう決め込んだ刹那、洞窟内に凄まじい咆哮が轟きわたった。

545 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/23(水) 23:41:47 ID:U24Tq5+yO
イフリートクル━━━(゚∀゚)━━━!!!!!

546 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/24(木) 01:30:04 ID:rJ8K44sH0
8が進んでるな。作者の頑張れ。
そういや、5とACはどうなったのかな。

547 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/24(木) 11:11:03 ID:MGEETe370
FF8 第1章 SeeD-7

大地をも揺るがす咆哮を受けて、洞窟が巨大な共鳴装置と化す。
度を越した大音響に、俺たちは堪らず耳を塞いだ。
「いよいよね。ここからが本番よ」
音が止むのを待って、キスティス先生が言う。
先程までとは打って変わって、その表情は真剣だ。
・・・言われずとも分かってる・・・
返事をする代わりに、俺は一気に奥へと駆け出した。

洞窟最奥部、そこには巨大な穴が穿たれていた。
周囲が赤く照らし出される洞窟内にあって、そこだけは漆黒の闇に覆われており、
穴の深さを雄弁に物語っている。
「!」
突如として、その穴から巨大な火柱が噴き出した。
激しい轟音と熱風が塊となって、俺たち二人にぶつかってくる。
吹き飛ばされそうになるのを堪えつつ、火柱を凝視していると、
火柱が徐々に形を変えていくのが見てとれた。
・・・これは・・・
刻々と変化していく火柱は、やがて獣神とでも形容すべき姿となった。
GF・イフリート。
隆々とした筋肉におおわれた、炎の化身、灼熱の巨人。
今までの魔物とは一線を画す、圧倒的なまでの存在感。
『人間ヨ、我ガ前ニ、ソノ力ヲ示セ』
言葉とも思念ともつかぬモノがイフリートから放たれ、赤熱した圧力となって
俺たちに襲い掛かってきた。

548 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/24(木) 11:36:10 ID:MGEETe370
FF8 第1章 SeeD-8

五合、六合、七合・・・
イフリートの攻撃を掻い潜りながら、俺は矢継ぎ早にガンブレードをうち振るう。
しかし、確かな手応えは得られない。
イフリートはひるむ様子をまったく見せることなく、新たな攻撃を繰り出してくる。
力任せの強引な攻撃ばかりなので、なんとか凌いでいられるが、
少しでも判断を誤れば、かすっただけでも致死に近いダメージを負うことだろう。

八合、九合、十合・・・
俺の斬撃は的確にヒットしている筈なのだが、イフリートにダメージを負った様子は見られない。
キスティス先生はサポートに徹し、回避と回復に専念している。
時折、冷機魔法を使うこともあるが、それはダメージを狙ったものというより、
赤化した空間の温度を少しでも和らげる事を意図したものだろう。

『ドウシタ、人間ヨ、汝ノ力ハ、ソノ程度カ』
イフリートの嘲るような思念が、熱波となって向かってくる。
相前後するように飛んできた剛腕を紙一重でかわし、俺は新たな斬撃を叩きこむ。
しかし、やはりイフリートにひるむ様子はない。

・・・ほんの一瞬でいい。奴に隙を与えることができたなら・・・

549 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/24(木) 11:48:22 ID:MGEETe370
FF8 第1章 SeeD-9

『小サキ者ヨ、私ヲ呼ビナサイ』
俺の思考に呼応するように、イフリートとは異なる思念が、どこからか伝わってきた。
・・・これは・・・そうか!
思念の主に思い当たると同時に、俺は精神を集中し、その姿を心に念じた。

俺とイフリートが対峙する、ちょうど中間地点の辺りに、突如として氷の結晶が出現した。
結晶は見る間に巨大化して行き、イフリートとほぼ同じ大きさの、氷の塊と化した。
氷塊が放つ冷機が、イフリートの放つ熱気を相殺していく。
と、出し抜けに氷塊が弾けとんだ。その跡に現れたのは・・・
『ヌウ、コ奴、シヴァヲ従エテオルノカ』
イフリートの驚愕が伝わってくる。
GF・シヴァ。
妖艶な笑みを湛えた、氷の化身、極寒の女王。
シヴァは詠唱しつつ、両手を頭の上で組んだ。そして、詠唱が終わると同時に
組んでいた両手をイフリートに向かって振り降ろす。
冷気が無数の氷の矢となって、イフリートの巨躯に次々と襲い掛かる。
グハァァァァァァッ
絶叫を上げ、大きくのけぞるイフリート。

550 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/24(木) 12:03:33 ID:MGEETe370
FF8 第1章 SeeD-10

見えた!切望していた、わずかな隙が!
イフリートの顕わになった喉元めがけ、俺は体ごとぶつかって行った。
狙いは誤たず、ガンブレードは深々と突き刺さる。
ウゴォォォォォォッ
悲鳴とも咆哮ともつかぬ叫びを発しながら、イフリートは地響きを立てて倒れた。
イフリートの体を成していたものが、火柱に逆戻りしていく。
『人間ヨ、ソノ力、確カニ見届ケタ。以後、我ガ力ヲ貸ソウ』
言い終わると同時に、火柱は消えてなくなった。

「スコール、見事だったわ」
額の汗をぬぐいながら、キスティス先生が言う。
「やっぱりあなたは別格よ。強すぎるわ。
あなたが”10分”って言った時には、なんて無謀な事をと思ってたんだけど、
まったくの杞憂だったわね」
無謀か・・・その通りかも知れない。
少なくとも、イフリートの力を甘く見ていたのは事実だ。
事前に彼我戦力を正確に把握していたとしたら、10分という選択はなかっただろう。
今後の戒めとしよう。
「さあ、戻りましょう。最短記録、樹立しなくちゃね」
キスティス先生の言葉に頷き返し、俺は入口に向かって駆け出した。

551 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/25(金) 00:15:09 ID:Tl2U6uMz0
GJ!!
戦闘描写はやっぱりうまいね。
あっけなくすら感じたけど、これくらいあっさりしてた方が続きが期待できる罠www

552 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/25(金) 00:41:44 ID:39wnMzBZ0
>>FF8
名前入力、洞窟攻略のリミット制限選択など、ゲーム中に登場する選択肢が
違和感なく登場している辺りに感動した。スコール視点ってゲーム自体もそう
だったはずなのに、ノベライズの方が良い印象で読んでいけます。乙です。

553 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/25(金) 01:32:09 ID:39wnMzBZ0
319です。
ご感想、ご指摘ありがとうございます。視点の固定…は、以前から頂いている課題(ry。
…精進します。


そんな自分ではありますが、書ける部分はリレーにも参加させて頂こうと思います。
リレーはちょっと緊張しますね…。不備などあればご指摘頂けると助かります。

554 :FF6:2005/11/25(金) 01:38:42 ID:39wnMzBZ0
ff6 - 25 figaro


 頭上に広がるのは濃すぎる程の青色、雲一つなく晴れ上がった紺に近い青空の中央で、
煌々と輝いている太陽。
 眼下に広がるのは、うねるような起伏と美しい風紋を持った熱砂の海――人の侵入を拒む
でもなく、だが歓迎していると言うには厳しすぎるこの大地に人々がつけた名は、フィガロ砂漠。
 吹き抜ける風が生み出す波紋が、砂の芸術を生み出す。そんな砂漠の中で小さくため息を
吐き出した者が居た。
「ふゥ〜。ガストラさまの命令とは言え……」
 砂漠を渡るという割にはローブなどを羽織っただけの軽装で、顔面に施された必要以上の
厚化粧は、さながら道化師だ。彼は帝国の兵士2人を従えてフィガロ城を目指していた。旅の
一座と言うにはいささか不穏な出で立ちと顔ぶれである。
 それもそのはずで、「ガストラ」と言えば今や世界で知らぬ者はいない。圧倒的な軍事力で
世界を支配しようと目論む、ガストラ帝国皇帝その人である。
 そうなれば、彼らの正体が旅の一座でないことは明かだ。
 途中、小高い砂丘の上で立ち止まると、およそ好意的ではない感想をフィガロ砂漠に向けて
吐き出した。
「まったくエドガーめ! こんな場所にチンケな城を建てやがって。偵察に派遣された私の
身にもなってみやがれ!」
 道化師のような化粧を施してはいるが、彼は旅芸人ではなく魔導士だった。先のナルシェ侵攻
作戦、その報告を受けて彼はここへ遣わされたというわけだ。偵察に自分を指名した君主殿を
恨むべきだと思うのだが、そこは権力構造の魔術だ。
 ついでに言うと、フィガロ城を建造したのはエドガーではない。八つ当たりも甚だしい独り言で
ある。後ろで控えていた兵士のひとりは、そのとばっちりが来ない事を密かに、だが必死に祈った。

555 :FF6:2005/11/25(金) 01:39:15 ID:39wnMzBZ0
「ほれ、クツの砂!」
 しかしその祈りもむなしく、被害は後ろに控える2人の兵士にも及んだ。熱せられた砂の上に跪き、
差し出された方の靴の砂を払うと、また後方に下がる。
「ハッ! きれいになりました!」
 直立不動の姿勢でもって、いま命じられた任務の達成を報告する。どんなに些細な事であっても、
これは帝国軍における掟だ。帝国軍兵である以上、その掟に背くわけにはいかない。
 その姿を見届けると、旅芸人風の男は満足そうに高笑いをあげた。
 後ろに控える兵士達は表情を変えることなくその背中を見つめていた。へたに機嫌を損ねて
不当な扱いを受けるよりも、そっとしておくのが得策だと言う事を知っているからだ。
 旅芸人風の男はひとしきり笑うと、急におとなしくなった。
「つまらん」
 おそろしく冷静な声で短く言い捨てると、また黙々と歩き始める。
 上官に恵まれなかったうえに、フィガロ砂漠へ偵察に派遣された運の悪い兵士2人は、前を歩く
その男に狂気と恐怖を感じながらも、黙って後についてフィガロ城を目指すのだった。

556 :FF6:2005/11/25(金) 01:44:04 ID:39wnMzBZ0
ff6 - 26 figaro


「いかがだったかな? 私の城は」
 フィガロ城、謁見の間へ戻ってきたティナを出迎えたのは国王エドガーの優美な
笑顔であった。問いかけながら微笑むエドガーの表情は柔らかく、ティナはつられる
ようにして首を縦に動かした。
 ティナが口を開こうとした時、背後から聞こえてきた兵士の声が彼女の言葉を遮った。
「エドガー様! 帝国の者が……」
 恭しく頭を下げ、状況を告げた兵士の声に、エドガーの表情から笑顔が消える。
「ケフカか!」
 そんなエドガーの言葉に、ティナは心の中に小さな痛みを覚えたのだった。
 ――その名前を、どこかで……?
 不安に表情を固くするティナの肩に優しく手を置いたのはエドガーだった。自分の肩に
置かれた手に気づいて顔を上げ、見上げた先にあったフィガロ国王は相変わらず柔らかな
笑みを浮かべている。
「ティナはここで待ってて」
 いつからいたのか、隣にはロックの姿がある。ふたりは幾つか言葉を交わしながら、大きな
扉の向こうへと消えていった。
 身の丈よりもはるかに大きな扉が閉められると、城内は驚くほど静かだった。

557 :FF6:2005/11/25(金) 01:48:08 ID:39wnMzBZ0
 そんな静まり返った城内で、思い出されるのは今し方聞いたばかりの言葉。ティナの脳裏に
こびりついて離れない、忌まわしい記憶の欠片。

 ――帝国。ケフカ。……魔導。

 その言葉を聞くと胸騒ぎがして、頭が痛くなる。
 あのナルシェの雪原で、私を追っていた男達は……。

『帝国の兵士だぞ!』

 ――そう、私は帝国の兵士だった。

 記憶をなくし、たった一人で放り出された薄暗い洞窟。
 私を追ってくるナルシェのガード達。
 向かってくるモンスターに、無意識のうちにも振り下ろしたナイフ。
 モンスターの断末魔を聞けば、洞窟内に押し寄せる静寂。
 名前以外のなにもかもが、未だ霧に包まれたようにぼんやりとしている。
 けれど。

 ――私は……。

 確実に覚えている。
 命の、奪い方を。 



----------
マッシュの出自に関して、ゲーム中にフィガロの大臣から聞ける王位継承に関する情報が
書けませんでした。後の方すみません。サウスフィガロor山小屋〜コルツ山辺りで…なんとか…。

558 :FF6:2005/11/25(金) 02:00:22 ID:39wnMzBZ0


 ティナは堅く閉ざされた扉を開こうと手を伸ばした。ここにいてはダメだと
強い焦燥感が少女を駆り立てる。
「……お待ち下さい」
 背後で聞こえるその言葉にも、構うことはなかった。
 しかしどんなに押しても扉はびくともしない。それでも必死で押し開けようと、
ティナは渾身の力を込めて扉を押し続けた。
「……どうか落ち着いて。今あなたが外へ出て行く必要はありません」
 静かに告げながら、ティナの腕をつかんだ。不意のことに驚いて顔を向けると、
それはついさっき、案内役を買って出たあの衛兵の一人だと気づく。
「王と、ロック様をお待ちしましょう」
 そう言ってさりげなくティナの前に立ちはだかると、扉への道をふさぐ。
 彼もまた、柔らかな表情を向けていた。
----------


ff6 - 26 figaro はここまででした、すみません…。

559 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/25(金) 02:12:32 ID:jJsRKDQx0
うーん、前回までの流れだとマッシュの思い出話が続きそうでしたけど、
ここでケフカに話移すのもテンポよくていいかも。とにかくやっぱり上手いですね。
ただあんまテンポよすぎるとゲームやってることが前提じゃないと話について
いけなくなりますからね…、そのへんを考慮していただけると幸いです。乙でしたー。

560 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/26(土) 12:04:41 ID:al6atAHb0
(・∀・)イイ!!おもしろいぞ!

561 : ◆m/UlIJepLc :2005/11/26(土) 14:11:25 ID:Hy98XmYf0
FINAL FANTASY IV #0281 4章 4節 これから(1)

一瞬の空白を挟んで、歪んでいた視界に秩序が戻る。石造りの古びた壁と、閉ざされた質素な扉。厚く積もった埃、黴臭い澱んだ空気も含め、周りの様子に大きな違いはない。
だが扉を押し開けると同時に、懐かしい風がセシルの頬を打った。
ミシディアの潮風とは明らかに違う、ほどよい水気をはらんだ空気。
カインとローザと3人で町を歩いた時も、飛空挺の甲板で間近に雲を見上げた時も。常に彼の隣で舞っていたバロンの風が、パラディンとして戻ったセシルを迎え入れた。
「……大丈夫。誰もいない」
ミシディアのそれと同様、バロン側のデビルロードも人々から忘れられて久しい。質素な小屋から現れた4人の姿を見咎める者はいなかった。
いま騒ぎをおこして得る物はない。ゴルベーザを討つまで、なるべく目立たないよう行動すると昨夜のうちに決めてあった。
が、それはセシルとテラ、二人の間のことである。
「すげ〜、ほんとに来ちまった!!」
悪魔の道といえど、生命力と探究心でいっぱいの少年を阻むことは出来ないらしい。扉を抑えたセシルの腕の下から、勢い良くパロムが飛び出す。
「あっ、こら!」
さらにポロムがそれを追い、ものの数歩も駆けぬうちに、二人そろって足を止めた。仲良く隣り合って空を眺める二人の顔を、のぼりゆく朝日が染まる。
「ものすごく長い距離を移動すると、たまにこういうことがあるんだ。
 時差、っていうらしいよ」
あんぐりと口を開けたまま振り向く双子に、笑いを噛み殺しながらセシルは説明を続けた。


562 : ◆m/UlIJepLc :2005/11/26(土) 14:11:59 ID:Hy98XmYf0
FINAL FANTASY IV #0281 4章 4節 これから(1)

一瞬の空白を挟んで、歪んでいた視界に秩序が戻る。石造りの古びた壁と、閉ざされた質素な扉。厚く積もった埃、黴臭い澱んだ空気も含め、周りの様子に大きな違いはない。
だが扉を押し開けると同時に、懐かしい風がセシルの頬を打った。
ミシディアの潮風とは明らかに違う、ほどよい水気をはらんだ空気。
カインとローザと3人で町を歩いた時も、飛空挺の甲板で間近に雲を見上げた時も。常に彼の隣で舞っていたバロンの風が、パラディンとして戻ったセシルを迎え入れた。
「……大丈夫。誰もいない」
ミシディアのそれと同様、バロン側のデビルロードも人々から忘れられて久しい。質素な小屋から現れた4人の姿を見咎める者はいなかった。
いま騒ぎをおこして得る物はない。ゴルベーザを討つまで、なるべく目立たないよう行動すると昨夜のうちに決めてあった。
が、それはセシルとテラ、二人の間のことである。
「すげ〜、ほんとに来ちまった!!」
悪魔の道といえど、生命力と探究心でいっぱいの少年を阻むことは出来ないらしい。扉を抑えたセシルの腕の下から、勢い良くパロムが飛び出す。
「あっ、こら!」
さらにポロムがそれを追い、ものの数歩も駆けぬうちに、二人そろって足を止めた。仲良く隣り合って空を眺める二人の顔を、のぼりゆく朝日が染まる。
「ものすごく長い距離を移動すると、たまにこういうことがあるんだ。
 時差、っていうらしいよ」
あんぐりと口を開けたまま振り向く双子に、笑いを噛み殺しながらセシルは説明を続けた。


563 : ◆m/UlIJepLc :2005/11/26(土) 14:15:37 ID:Hy98XmYf0
FINAL FANTASY IV #0282 4章 4節 これから(2)

太陽は、東から西へと動きながら、世界を順繰りに照らしていく。その光の当たり始めると朝が訪れ、光が去って再び当たるまでの間が夜と呼ばれる。デビルロードで海を渡るついでに、セシルたちはその境目──すなわち夜明けを追い越してしまったのだ。
とはいえ実のところ、はっきりと時間を遡るのはセシルにとっても初めての経験だ。言葉だけではどうにも伝えづらかったのだが、地面に図を描くと、双子はたちまち理解した。
「おもしれ〜!
 兄ちゃん、色んな事知ってるんだな!」
「本当です。おどろきました!」
「まあ、受け売りだけどね。
 ある人から教えてもらったんだ」
赤い翼が設立される前のことだ。飛空挺で遠出をすると、出発前に考えていたよりも日暮れまでの間隔が長い、あるいは短いような気がすると多くの者が気付き出した。古い文献をひっくり返し、このなんとも不思議な、時差という現象の存在を突き止めた。
大昔、デビルロードを用いた交易が活発だった時代には、広く知られていたらしい。
「飛空挺って……思っていたのより、ずっとすごいです。
 お日さまを追いかけてゆけるなんて」
「ほんとだよ。やるじゃんか、バロンの連中もさ!
 なあ、もしかして、ずっと飛びつづけてたら、ずぅ〜〜〜っと夜にならなかったりするのか!?」
これは思いがけない質問だったので、しばらくセシルは考え込んだ。確かに理屈の上では、それも可能な気はするが。
「さすがにそれは、試してみないとわからないな……。
 でもそんなに速く、長い時間を続けて飛べる飛空挺はないんだよ。
 君たちが大きくなる頃には、出来てるかもしれないね」
最後の言葉に確証はない。ふたりが目に見えて落胆したので思わず口にしてしまったが、なんといっても飛空挺はまだ新しい技術だ。改良を重ねた末にいったい何が可能となるのか、誰一人わかっていない。
”わしは飛空挺を、人殺しの道具になんぞしたくないんじゃ!”
──思い浮かんだ懐かしい声は、己が目指していく先に不安を抱き始めていた。その予感が現実になっってしまったとき、彼はどれほど嘆いたのだろう。
この子たちの願いを叶える為になら、喜んで知恵を絞ったろうに。

564 : ◆HHOM0Pr/qI :2005/11/26(土) 14:22:12 ID:Hy98XmYf0
久しぶりに続き描かせてもらいました……って、いきなり連投の上にトリまで間違ってるよorz

それにしても、しばらく離れている間に他シリーズも盛況だわ、まとめサイトは出来てるわで、なんというか感慨深いもんがあります。

565 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/26(土) 14:26:44 ID:ys4TE1pG0
帰ってキタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀ ゚ )━(゚∀゚)━━━!!!!!
相変わらず次への区切り方が上手い!

566 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/26(土) 18:16:34 ID:MYyAx/aX0
物語はあんまり進んで無いけど乙。
サイトの更新も気長に待ってるのでがんばってください。


567 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/26(土) 19:29:59 ID:al6atAHb0
オリジナル設定がいい味だしてる!
乙!!

568 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/27(日) 13:44:24 ID:qQwEWWdf0
皆さん乙です。ff8作者です。
好意あふれるコメントを多く賜りまして、ずいぶんと励みになっております。感謝。
また他シリーズの作者さんには、多くの刺激を頂きました。これも厚く感謝。

ところで私事ですが、明日から急遽海外出張する事になりまして、当分戻れません。
(因みに私は商社勤務で、海外取引先とのかねあい上、午後出社&午前帰宅の毎日ですので、
平日は午前中しかカキコできません)
なので、ff8シリーズにつきまして、誰かバトンを繋いでいただければと思います。
サブタイトル変更、オリジナルストーリー挿入etc、どうぞ好きになさって下さい。
唯一の縛りは「スコール一人称」てことでw
どうぞよろしく。では。

569 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/27(日) 19:47:50 ID:p47oogp60
パロムポロムの石化イベントを思い出すと、今のこの無邪気で元気な二人が自分を犠牲にするんだなぁと思う。
あれ?目にごみが・・・うっ・・

570 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/28(月) 11:59:01 ID:4GD6oPBM0
>569
軽いネタバレ。
未プレイの読者だっているだろうに、配慮を欠く。

571 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/28(月) 18:59:45 ID:W2LEzYfF0
またお前か

572 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/28(月) 20:39:26 ID:rObpNtpk0
とんでもないネタバレしてやる。

なんと、DQ3のラスボスはゾーマ!
さあ叩け

573 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/28(月) 23:24:19 ID:S+vSNqw40
保守

574 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/29(火) 00:06:57 ID:ruek9LSXO
>>572
ひどいや! ポカポカ

575 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/29(火) 09:57:01 ID:QRezJYffO
>>572
鬼畜め!!

576 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/29(火) 11:43:32 ID:ALyTAAF90
>>572
ネタバレ氏ね!!

577 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/29(火) 12:17:15 ID:lv03Dqs+0
主人公を助けるために
パロムポロムが石化するとか、ヤンが爆死するとか、
ラストダンジョンは月面とか、おまいらネタバレしすぎだぞ!

578 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/29(火) 13:15:21 ID:Cn7HAfH+O
みんな、間違っても
GBA版FF4では、パロム、ポロムとかが復活して、最終的にはキャラの入れ替えが出来るなんて言うなよ。

579 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/29(火) 22:25:28 ID:PetJXADb0
>>578
微妙にストーリーのネタバレでないあたりお前の良心を感じた。
つーか荒らしはスルーしようねみんな。俺もか。

580 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/30(水) 00:38:18 ID:clUzDZQx0
FFでは、3が一番小説化しやすいと思うんだけど(あくまで個人的意見)、
DS版が出たら書いてみようと思う人いるかな?

581 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/30(水) 00:52:29 ID:SnsuXoeD0
3はデフォルト名が決まってないし各キャラの個性が0に近いからちょっとやりにくいって
意見が初期にあったな。逆にそれがやりやすいって意見もあったけど。

582 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/30(水) 02:46:35 ID:LxTde3yG0
FF8 第1章 SeeD-11

炎の洞窟から帰還した俺は校門でキスティス先生に礼を言うと自室へと帰った。
一般生徒の自室はSEEDの部屋とは違い、二人で一部屋となっている。
ベットはそれぞれあるものの、キッチンを始めとしたダイニングルーム等は同居人との共有であった。
最も、いつも朝早く訓練に行く俺は自分の部屋の同居人と顔を合わせた事は殆ど無かった。
殆どと言うのは朝食の際、何度か顔を合わせたこともあったが、向こうも寡黙な男であり、
一切言葉を交わす事はなかった。
その点は非常に好ましい同居人の恵まれたと思っている。
「まだ時間はあるな……」
部屋の中の時計を見ると、針は十四時を指している。朝のHRによると、受験者は十六時に一階の
ホールに集合だったはず。
後、二時間。
前もって準備はしていたので特にする事がない。
試験を前にして緊張を隠せない者には心の準備がいるだろうが、俺にはこの実地試験は必ず
合格できると言う自信があった。
後はただ時間が来て、与えられた試験をこなすのみだ。
「もう行くか……」
時計が14時半を過ぎた頃に俺は決断した。

583 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/30(水) 02:47:51 ID:LxTde3yG0
FF8 第1章 SeeD-12

自室のクローゼットから学校指定の制服を取り出す。
基本的にガーデン内では授業中を除いては制服の着用は義務づけられていない。
だが、実地試験に於いては例外だ。
ガーデン側は厳しく制服の着用を要求する。
その理由は過去、それも、俺が入学する前の事に起因する。
その時にはまだ、試験時には自由な服装を許可していた。
だが、その年に行われた実地試験でガーデンの生徒が味方側に誤って撃たれるという事件が起こった。
撃たれた生徒は死亡。バラムガーデンの在校生が犠牲になる極めて稀な事件となった。
制服教官からは一度は実地試験という試験を取りやめるべきだという意見もでた。
だが、シド学園長は断固この進言を拒否した。そして翌年以降も実地試験を続ける事を取り決めた。
この取り決めには当時相当な異論が出て、中にはシド学園長は辞任するべきだという意見もあった。
だが、それは普段の信頼ゆえなのか、学園長を支持する者が教官の中にも何人もいた為、最悪の事態は
避けられた。勿論、この問題を放置する程シド学園長も甘くはなかった。
それからは味方同士の相打ちを避ける為、身元が明らかになるようガーデンの制服を着る事を
強制づけたのだ。
特に反発する者はいなく、むしろ今までが異常だったとさえ言う者もいたほどだ。
翌年からはその方法が適用された。
以来、実地試験における犠牲者はゼロである。

584 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/30(水) 02:48:48 ID:LxTde3yG0
FF8 第1章 SeeD-13

一階のホールに付いた俺は空いているベンチに腰掛け時間が来るのを待った。
来たばかりの頃にはまだ殆ど人がいなかったが、それから数十分程の時間を待つことなく、
ホールには試験を受けるであろう生徒とその見送りと思われるであろう人物でごった返していた。
見送りにくる者は後輩であったり、SEEDの先輩であったり、仲の良い同級生であったりと様々ではあった。
しかし、交わす言葉はほぼ同一のものであった。
とてもじゃないが、これからまがりなりにも戦場という場に赴く者の会話とは思えなかった。
だが、それも仕方のない事なのかもしれない。
繰り返すが、先述の事件以降、実地試験におけるガーデン生徒の犠牲者はゼロであった。
それが、生徒達から恐怖心――もしかすると死ぬのではないかと言う恐れを完璧に打ち消してしまっ
ていたのかもしれない。
そもそも実地試験という名目がついてはいるが、内容は後方支援。
要は戦場という場所の空気を体感してこいという程である。
それにバラムガーデンにはGFのジャンクションを許可してある。
これはガーデンの中でもバラムだけの特徴である。
ジャンクション――GFと呼ばれる異境の生物の力を体に宿した者は常人では考えられないような力を
発揮することができる。
これさえあれば多少の危険はものとせず退ける事ができる。少なくともガルバディアの一般兵と戦う事は
容易い。
だが、その代償として記憶に障害がでたりする等と言う症例が見受けられると提唱する者もいるが、
詳しくは定かにされていない。

585 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/30(水) 02:50:43 ID:LxTde3yG0
FF8 第1章 SeeD-14

「よう、スコール!」
物思いにふける俺の肩を軽々しくも叩く者が一人。
「何だ……ゼルか」
振り返った先にあるその顔を見て言う。
「何だとは何だよ」
文句を垂れるこの男はゼル=ディン。
顔に刻まれた刺青模様に逆立った金髪という容姿は端から見たら素行の悪い者に映るかもしれない。
しかし、根は人の良い好青年だ。少なくとも俺の判断ではだ。
それに、いくら装いを変えても小柄な体型に、顔にはまだあどけなさが残っている。
「ところでさ、やっぱり朝の訓練の奴ってお前だったのか?」
「おい……何で知ってる?」
「今更、もうガーデン中に知れ渡ってるぜ。サイファーの奴またやっちまったのかてさ」
何という事だ……常日頃から俺は必要以外の事は口にせず目立たないように努めてきた。だが、
今朝の自体は俺自身に対する無駄な印象を他人に振りまく結果になってしまったのか。
「お前もさ……相手にしなきゃいいんじゃない。あいつの悪評はもう知れ渡ってる。
教官達ですら諦めてるんだしさ。いちいち構ってるのはもうお前だけなんじゃねえの」
俺が落胆するのを見て取ったのかゼルはそんな事を言ってくる。
「いや、あいつが先に仕掛けてきた。それを俺は逃げるわけにはいかないんだ」
そう決めた。幼いあの日。お姉ちゃんの為に。
「おいおい……カッコつけすぎだぜ」
ゼルはその意見に少しばかり、呆れたようであった。

586 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/30(水) 02:51:23 ID:LxTde3yG0
FF8 第1章 SeeD-15

無理もないだろう。俺も他人がそんな事を言ってると酔狂な奴だと認識するかもしれない。
自分でもなんとも無茶な事をしてるのか自覚はあるつもりだ。
むしろ、この程度のリアクションで済んだのが不思議なくらいだ。
「ま、わざわざ俺に話してくれたのは嬉しいぜ。お前いっつも無口で何も話てくれないからよ」
別にそこまで親しくしたつもりはない。ただ、思っていた事を少しだけ言ったまでだ。
前述の通り、俺は無意味に人に本音をさらけ出したりはしない。どうせ、ガーデンという空間の中での
一時の付き合いだ。
やがてこの場から皆巣立っていく。今ここで誰かと親しくなったら後の別れが辛くなるに決まってる。
できるだけ身軽でいたい。それが俺の考えだ。
「そういや、俺もこの前サイファーの奴に酷い目に遭わされたんだよなあ……」
それなのにこのゼルという奴は何故か俺に興味を示す。
ガーデンに入ったばかりの頃から、俺は他人との接触をあまり好まなかった。
それを理解してか自然と俺に必要以上に話しかけてくる者は少なくなった。
当然俺自身も望んでいたことであったのでそれで良かった。
だが、こいつ――ゼル=ディンだけは何故か俺に話してくる事を止めなかった。
こいつの性格なら皆とも上手くつきあえるはずだ。そちらの方が奴にも俺にも幸せなはず。
「あいつわざわざガーデンスクウェアにまで現れてさ……挙げ句の果てには大口論。おかげでしばらくは
閉鎖だぜ……お……」
ゼルの話はまで続いていた。しかし、廊下から教官達の影が見えその口を閉ざす。
「教官達が来たみたいだな。じゃあなスコール。お互い合格できるといいな」
激励の言葉を残し、ゼルは去っていった。よく見れば先程まで談笑していた生徒達もすでに集合場所に
集まろうとしている。
俺もベンチを立ち上がりその行列の群れへと加わった。

587 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/30(水) 03:00:07 ID:LxTde3yG0
>>568さんへ
本編とはちょっと展開を変えましたが、SEED-10以降の続きをかいてみました。
以降は書くかどうか分かりませんが、568さんの続きに期待しています。
がんばってください。

588 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/11/30(水) 21:28:16 ID:p+ehMLxt0
イイヨイイヨー!
「おねえちゃん」がでてくるのがちょっと唐突だったような気がしたけど、
いい感じに続いてますね。次も待ってます!

589 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/01(木) 03:34:19 ID:UqpXMRlJ0
ちょっと読み直して思ったんだけど、竜の騎士団の>>251の飛竜の死因のくだり、
九分九厘じゃなくて九割九分じゃないの?なんか文脈的に引っかかったんで

590 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/01(木) 08:53:35 ID:6agn72LG0
九分九厘まちがいない……みたいな表現方法はあるよ。恐らく口語的に九割が省略されてるんだと思う。
まあ、>251の場合は「九割以上は」、「ほとんどは」、「大半は」 みたいな言い換えの方がすっきりすると思うけどね。
九分九厘と言ってしまうと、99.9%とまで言ってしまってるわけだし。


591 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/01(木) 11:41:40 ID:ptmT2jnl0
くぶくりん 3 【九分九厘】

〔一〇分のうち一厘を残すだけの意〕ほぼ確実であること。ほとんど。副詞的にも用いる。
「―だめだと思う」「―まで成功した」

三省堂提供「大辞林 第二版」より

592 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/01(木) 12:07:15 ID:ptmT2jnl0
>そう決めた。幼いあの日。お姉ちゃんの為に。

この時点でのスコールって、お姉ちゃん(エルオーネ)のこととか、
孤児院で育ったこととか、G・Fの後遺症で全図忘れちゃってたんじゃない?
違ったらゴメン。

593 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/01(木) 12:22:41 ID:VPVLRBA50
スレチガイだが
昔の単位は、0.1=「分」だった。今は一つ桁がずれて0.1=「割」で0.01=「分」
「実力は五分五分だ」とか「平熱は36度5分」とか、現代でも「分」の桁位置に名残がある

もちろん九分九厘という言葉はあるし、それは99.9%ではなく99%の事である
まぁ熟語なんで、べつに99.9%とか99%とかそんな細かい違いはどうでもいいのだが

594 :589:2005/12/01(木) 17:47:49 ID:UqpXMRlJ0
つまり特に問題ないってことなのね。
たいへん失礼しました。

>592
確かに。
あと、初期のスコールにしてはちょっとばかし愛想がいいような気がする。
でもGJです。

595 :FF6:2005/12/03(土) 01:55:15 ID:Rfb//lS70
ff6 - 27 figaro


 ――どうすればそんな顔で笑えるの?
 目の前に立ちはだかって扉の前をふさぐ衛兵から視線を離せずに、ティナは
不可解に思う。
 たとえ過去の記憶を持たなくても。自分以外の女性達が普通に抱く感情を持て
なくても。
 ――私は、他の人たちが持たない“力”を、持っている……。
 そのぐらいは分かっている。そして、いま置かれている状況も。

 ナルシェで目覚めたあの時と一緒なのだろうと思った。
 この扉の外では、私を捕まえようと必死になっている人達がる。そして、扉の外へ
出ていったロック達は、ナルシェにいたあの老人と同じ事をしようとしている。

 ――また、ひとりで逃げなければならないの?

 恐かった。
 放り出されてしまうことが。
 拠となる過去の記憶を持たず、休まる場所を知らず。
 また、ひとりで走り続けなければならない。
 ――そうなるぐらいなら……。


596 :FF6:2005/12/03(土) 01:56:38 ID:Rfb//lS70
「……開けて、下さい」
 胸を満たしあふれ出た思いが、口の外へと押し出された。けれど小さく掠れた声は、
意味を持った言葉として相手に伝わるほどの力を持たなかった。それを知って、
ティナはもう一度口を開く。
「お願いです。その扉を開けて下さい」
 自分の前に立つ衛兵をまっすぐに見つめた。彼女のあまりにも純粋で真っ直ぐ向け
られてくる視線に、衛兵は思わず一歩後ずさる。
「不安なお気持ちは分かります。ですが、王とロック様は必ず……」
 衛兵の口から気休めに取り繕った言葉が漏れたが、先が続かなかった。ティナは
一歩前へ進み出る。どうやら追い詰められているのは衛兵の方だった。
 そのときである。
「お待ち下さい」
 ティナの背後から聞こえてきたのは、他の誰よりも落ち着きのある声だった。ゆっくりと
語られる言葉の一つ一つに力が宿っているような、そんな不思議な響きで、ティナは
思わず振り返る。
 声の主はフィガロの大臣だと名乗り、頭を下げた。
 彼はずっと――ティナがここへ連れてこられた時から――後ろに控えていたのだが、
自分から何かを語ったり主張したのは今がはじめてだった。
「エドガー様はこの城のことを細部までよくご存知でいらっしゃる。それは、このフィガロという
国そのものを熟知しているということなのです」
 突然なにを言い出すのかと、ティナはじっと大臣を見つめる。
「あなたは先程、神官長からお話を伺っていましたね?」
 その名を聞いてティナの脳裏に浮かんだのは饒舌なる老女――そう、彼女のことだ。
 大臣からの問いに頷き返すと、あの部屋で神官長が語っていた事を思い出そうとして、
ティナは瞼を閉じた。

597 :FF6:2005/12/03(土) 02:01:12 ID:Rfb//lS70
ff6 - 28 figaro [About 10 years ago....]


『マッシュと言うの。とても……優しい子だったわ』
 瞼の奥にはあの神官長の姿と、その後ろに並んだ2つのベッドが浮かんだ。
「私の顔の皺だって、まだもうちょっと少なかった頃の話よ」と、神官長は過
去のフィガロを語ってくれた。

                    ***

 帝国のフィガロへの侵攻はね、あの頃が一番激しかったんだよ。
 ……フィガロは小国で領土のほとんどが砂漠だと言っても、機械技術は世界に
誇れる国だからね。帝国が目を付けるのも無理はない。
 帝国が欲していたのは領土じゃない、フィガロの持つ技術。
 だから、とても卑劣なやり方でもってこのフィガロを侵略しようとしたのよ。
 ……ああ、ごめんなさいね。この話をするとどうしても……。
 本当にごめんなさいね、私のことなんかはどうだって良いわ。話を戻すわね。
 帝国が取った方法というのが、国王の暗殺だった。先代フィガロ国王、つまり
現国王エドガーの父君にあたるお方だね――を亡き者にして、かわりに傀儡を
置こうとしたの。
 分かるかい? 帝国の息のかかった者を王として送り込もうとしたんだよ。
 もちろん、王ってのは世襲――親から代々血のつながりを持った者が王位を
継いでいくわけだから、いきなり余所から国王を迎えることはできない。
 つまり、帝国と結託して国王を暗殺し、帝国の意のままに動こうとする……
この国の内部に……。
 ……。
 自分の父親を殺された者の気持ちっていうのは、少し想像してみれば分かると
思うけど、その父親を殺したのは……帝国と……。
 …………。
 ああもう、ごめんなさいね。

598 :FF6:2005/12/03(土) 02:12:35 ID:Rfb//lS70
 奴らは、誰にも……城の中にいる人間にすら気づかれないように、先代国王を
亡き者にする必要があった。
 先代国王はある時、ご自分の身に危険が迫っていることにお気づきになられた。
 そこである日、ふたりの息子を呼んだの。近い将来、ご自分が世を去った時の
ために。
 ひとりが現国王のエドガー。
 あの子は器用で、昔から機械いじりが大好きでね。頭の回転も速かったのよ。
――即位された今だから言うわけじゃないけど、国王向きだと思うわよ。あとは
口説き癖さえ直してくれればねぇ……。まあ、彼は父君に呼ばれた時すでに、
ある程度の事情を察していたんだろうね。
 もうひとりが双子の弟のマッシュ。
 この子は体も小さくて、大人しい子だったよ。だけど、とても家族思い……いいえ、
家族だけじゃなく誰にでも優しくて、純粋な子だったわ。

『兄貴、おやじ突然どうしたんだろう? 後継ぎの話なんかしだして……』

 マッシュはね、父君が息を引き取るその瞬間まで……いいえ、この世を去った後も
信じようとしなかった、父君を手に掛ける者がいたなんて。

599 :FF6:2005/12/03(土) 02:16:01 ID:Rfb//lS70
 それに、……。
 この私も、マッシュを傷つけてしまったの……。あの日以来、マッシュの笑顔を
見てないわ。今はどこでどうしているかしら……。


 ……まあ、たいへんもうこんな時間! あなたを長く引き留めてしまったわ
ね。年寄りのおしゃべりに付き合ってくれてありがとう。
 さあ、もう行きなさい。

                    ***

 そんな話をしてくれた神官長の表情は、思い出したくなかった。彼女の顔に
深く刻まれた皺は、ここへ至るまでに歩んできた苦悩の痕跡なのだろうと、朧気
ながらに感じたからだ。
 話を終える頃には、そんな彼女の皺がいっそう深くなっていた。

 口に出す厳しい言葉とは裏腹に、日々増え続ける女中達を見つめている彼女
の方が、よほど生き生きとして見えた。



----------
書いていてやっぱりリレーは難しいと感じました。配慮不足でスマソ。
改めて神官長に命を吹き込んだ297さんは凄いなと思った次第です。

600 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/03(土) 02:18:10 ID:3X6lpg6J0
リアルタイム乙

601 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/03(土) 21:05:19 ID:r4c7gOVZ0
乙! ティナが回想をしている雰囲気がすごいいい味出してます!
前回から続けて読むと、神官長には敬語を使い通して欲しかった気もしましたが、
しかし大臣はなにを話そうとしてるのかな……。

602 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/04(日) 11:32:15 ID:rDw5Ku7y0
FF8 第1章 SeeD-16

「どうしたの、スコール。深刻な顔して」
集合場所へと歩を進める俺に並んで、キスティス先生が言う。
・・・深刻な顔?俺が?
俺の顔はいつもこんなだろ、教官ならそれくらい分かれよ。
「何か悩み事でもあるの?」
再び先生が問う。が、構っちゃいられない。
「・・・別に」
「・・・別に」
あしらうつもりで言った言葉を、綺麗にハモられてしまった。
俺の答えを予期していたというのか・・・不愉快だ。
キスティス先生は口に手をあてて笑っている。
「何がそんなにおかしいんだ?」
「おかしい?ちがうちがう、嬉しいの。生徒を少しだけ理解できた。
だから、嬉しかったの」
理解できただと?冗談じゃない。
この程度の事で、いったい何を理解できたというのか。
「俺はそんなに単純じゃない」
「じゃあ、話してよ。あなたの事、もっと話して」
だから、何でそうなるんだ?
「先生には関係ないだろ」
「・・・・関係ないだろ」
また、ハモられた・・・ますます不愉快だ。

603 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/04(日) 11:57:56 ID:rDw5Ku7y0
FF8 第1章 SeeD-17

その後しばらくの間、キスティス先生は執拗に俺に話しかけてきたが、俺は取り合わなかった。
しかし逃げ出すことも適わず、結局二人そろって集合場所に到着する。
「・・・あ、いたいた。ゼル。ゼル・ディン!こっちに来て」
シャドーボクシングしているゼルを見つけ、キスティス先生が大声で呼んだ。
「何だい先生?・・・よお、スコールも一緒か」
派手なバック転をかましながら近づいてくる。
キスティス先生にゼル・ディン・・・二人ともタイプは異なれど、
人のプライベートに首を突っ込みたがる点は、よく似ている。
俺の苦手なタイプだ。
「あなたたち、今日の実地試験では同じB班よ」
・・・冗談だろ・・・
「そうか、よろしくなスコール!」
陽気なゼルは俺の感傷など頓着せず、握手を求めてくる。
「先生、実地試験は三人一組だろ?あと一人は?」
ゼルの握手を無視しつつ、俺は先生に訊ねた。
「それなんだけどね・・・実は、サイファーなの」
「そりゃ嘘だろっ!悪い冗談だぜ!」
ゼルが大声で喚く。俺も喚きたいくらいだ。
「変更はできないわよ」
先生がピシャリとはねつけるように言った。

604 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/04(日) 12:20:53 ID:rDw5Ku7y0
FF8 第1章 SeeD-18

「マジかよ、よりによってサイファーと同じ班ってか」
「何だ、俺がどうかしたのか?」
ゼルのぼやきに呼応するように、背後で声がした。
「げ、サイファー・・・い、いや、何でもねぇよ」
「フン!」
いつもと同じく自信たっぷりの表情で、サイファーが鼻を鳴らす。
傍らには取り巻きの風神と雷神もいた。風紀委員勢ぞろいってわけだ。
「サイファー、あなたがB班の班長よ。頑張ってね」
「先生よぅ、俺は”頑張れ”って言われるのが一番嫌いなんだよ」
キスティス先生の言葉にプライドを傷つけられたかの様にサイファーが応ずる。
「そういうのは、出来の悪い生徒に言ってやってくれ」
「なるほど・・・サイファー、頑張ってね♪」
・・・痛烈だ。先生もやる時にはやる。
傍らではゼルが小さくガッツポーズをしている。正直な男だ。
サイファーはと見ると、小さく肩を震わせながら、怒りと恥辱に堪えていた。
「・・・キスティス先生をリストに加えておけ」
俯いたまま、声を絞り出すように言った。
風神・雷神が怒りに燃えた目で頷く。
リスト・・・例の『ホネのある奴リスト』のことか?
それはともかく、ゼルとサイファー、そして俺・・・
やれやれだ、前途多難な試験になりそうだ。

605 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/04(日) 12:28:12 ID:rDw5Ku7y0
ご無沙汰してました、FF8作者です。
思いのほか仕事がはかどって、昨日かえって来ました。
とりあえず帰りの機内でメモ書きしたものを投稿させていただきます。
>>582-586さん、リレーありがとうございます。
本編の大筋にそって書いてくださったお陰でつなぎやすかったです。感謝。
今後もいつにてもリレー参加してください。

606 : ◆HHOM0Pr/qI :2005/12/04(日) 22:47:16 ID:7cpRJBSw0
FINAL FANTASY IV #0283 4章 4節 これから(3)

「なにをつまらん話をしておる!
 特にセシル、おぬしは今の状況がわかっておらんのか!!」
がつがつ、がづっ。
憤怒に顔を染めたテラが、杖で三人を打ち据える。
「なるべく目立たぬようにすると、申し合わせておったではないか!
 こんなところで下らぬことをダラダラと……少しは頭をつかわんか!」
「テラ様、どうか落ち着いて!」
「じいちゃんの怒鳴り声のほうがまずいって!」
言っていることはもっともなのだが、自分はともかく、双子まで本気で殴るのはやりすぎだ。なるべく子供たちに打撃が行かないよう体で庇いながら、嵐の通過を待つ。
長く耐える必要はなかった。いくら頑健であろうとも、老人であることに変わりはない。デビルロードの影響もあってか、すぐにテラは息を切らし、その場にすわり込んだ。
いくら理由を尋ねても口を利かず、息を整え立ち上がってもまだ無言を通すテラに、セシルたちも根負けして場所を移すことにした。
みっつほど角を越えた先には共用の井戸があり、周辺が小さな広場となっている。朝一番の水を汲みに来た人々が、そこで列を作っていた。
異様なほど、静かだった。
音はある。風が生む葉擦れの音、桶に空けられる水の音、木と石が触れ合う音。水槽の縁に陣取った小鳥たちのまばらな囀り。だが人の声がない。
二十人近い女性が集まっているというのに、雑談はおろか、軽い挨拶さえ交わされていないのだ。
「……なんか、気味悪いな」
率直な感想を告げるパロムの声も、別人のように大人しい。セシルの目から見ても、やはり、荒んだ印象は否めなかった。
みな一様に顔を伏せ、黙々と自分の作業だけをこなして足早に去っていく。脇道との境に立つセシルたちに注目する者もない。たまにこちらを見たとしても、関わり合いを避けるように顔を背ける。
その女性も最初は同じように、無言のまま通り抜けようとした。セシル達が潜む路地を数歩ゆき過ぎて、あわてたように踵を返す。見開かれた眼は、まっすぐセシルへと向けられていた。

607 : ◆HHOM0Pr/qI :2005/12/04(日) 22:52:54 ID:7cpRJBSw0
FINAL FANTASY IV #0284 4章 4節 これから(4)

「セシル様……」
年齢は四十近くだろうか、呆然と彼の名を呼んだ女性の顔を、セシルはまじまじと見つめた。小豆色のエプロンドレスと、愛嬌のある丸い輪郭にはぼんやりとだが覚えがある。
「もしかして、ファレルの……?」
「ああ、やはり、お戻りになられたんですね……!」
セシルの返答に、女性は目尻に涙を浮かべ、何度もうなずいた。
「セシル様が旅立たれてからというもの、陛下はますます厳しくなられて……
 少しでも逆らった人は、片っ端から捕えられてしまうのです。
 奥様は一日中バラの手入ればかりなされて、本当に、もう、どうしていいか……」
「シャーロット」
数年ぶりの再会だったが、ひとたび記憶が刺激されれば、女性の名前を思い出すのは簡単だった。ただセシルが覚えている彼女はいつも陽気で、こんな弱音など吐いたことはない。
……主人が招いた客を相手に、愚痴を聞かせる使用人など何処を探しても居なかろうが。
「も、申し訳ありません」
セシルの呼びかけを制止と捉えたのか、シャーロットは口を噤み、半分だけ中身の入った水瓶を所在なげに抱えなおした。誤解だが、セシルも特に訂正はしない。
話を切り上げ、城に向かおうとしてセシルは異変に気がついた。
広場の端から、ざわめきが迫ってくる。草食獣の群れが互いに警告しあうように、人から人へと緊張が伝播し、空気の色を塗り替えた。
潮が引くように群集が道をあけ、異変の源とセシルたちの間が一直線に結ばれる。人垣が誘う視線の先には、ファブールのモンク僧。それも旧知の顔である。
「ヤンじゃないか、無事だったのか!」
続けざまの思わぬ再会に、セシルの顔が綻ぶ。しかしそれは、ヤンの険しすぎる表情と、彼に付き従う近衛兵の姿が目に入るまでの、ほんのわずかな間に過ぎなかった。

608 : ◆HHOM0Pr/qI :2005/12/04(日) 22:55:34 ID:7cpRJBSw0
FINAL FANTASY IV #0285 4章 4節 これから(5)

「お前は!」
「パラディンになったからわからないのか?
 僕だ、セシルだ!」
パロム、ポロムはもちろんだが、テラとヤンの間にも面識はない。彼が見知っている相手はセシルだけだ。
もしかしたら。祈るような気持ちでセシルは名乗りをあげた。
「わからいでか! 探したぞセシル!
 バロン王に逆らう犬め!」
「なんだよ、そっちこそバロンの犬じゃ……」
「パロム!!」
予期した通りの返答に落胆する暇もなかった。悪態の途中で尻餅をついたパロムの頭上を、黒い疾風が薙ぎ払う。ヤンが繰り出した蹴りの鋭さは、以前と比べて些かの遜色もない。それどころか、力強さを増してさえいた。
カインがそうであったように。
「ふん、それなりに骨はあるようだ」
「ヤン、君まで……」
以前に見せた、流れるような連撃を繰り出そうとはせず、再びセシルたちと距離をあけて構えを取るヤン。全身から殺気がたちのぼり、膨れ上がった筋肉が黒ずんだ肌を押し上げる。手加減を期待できる雰囲気ではない。
この場での説得をあきらめ、セシルは剣を抜いた。仲間は後ろに下がらせる。接近戦に弱い魔道士と、格闘に秀でたモンク僧。一度懐に入られたら、まともに呪文を唱えることも出来まい。
だが、ヤンから離れたことで、セシルと3人の間に空白が生まれてしまった。2人のバロン兵が割って入るに十分な隙が。
「……かかれ」
当然のようにヤンが命令を下し──
「はっ!」
当然のように、バロンの兵が従う。
それを契機に周囲で悲鳴が巻き起こり、遠巻きに様子を見ていた野次馬が我先にと逃げ出した。

609 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/04(日) 23:14:30 ID:rLKSZ+Tf0
>605
お帰りー。
機内でメモとは、殊勝なことでw
>606
おお、なんかまたオリキャラ出てきましたね。
戦う場所も酒場じゃなくなってますね、わくわく。

610 : ◆HHOM0Pr/qI :2005/12/05(月) 00:00:06 ID:7cpRJBSw0
引き続き捏造度が高めですが、ちょこっとイベントも進みました。

ff8作者さん、予想外の復帰おめっとうございます。8は未プレイなので注目しています。
582-586氏の文章も、ガーデン内部の日常や人間関係がわかりやすく描かれているので助かります。

ff6もいよいよ独自の掘り下げが盛り上がってきましたね〜。

>565
真面目にノベライズスレよ、私は帰ってきた!!
レスごとの区切りは、連載ものの引きを意識しておりますです。

>566
……大変お待たせしています。色々と。すいません。

>567
そういっていただけると嬉しいです。RPGの世界の形ってよく議論の対象になるし、そっとしておくかどうかかなり迷ったので。
ただ4の世界は実際ゲーム中で映像が出てくるので、やっぱり時差はあるんだろうなぁ、と。
緯度とか南北回帰線とか地軸の傾きとかは知りません。知りませんってば。

>609
早速の感想どうもです。
セシル以外はジジイと子供とおっさん、とただでさえ華がないパーティーなのに、その上おばさんですよ……
場所が変わったのは、「子供連れで酒場に行くなよ!」という教育的配慮と「いちいち敵に見つかりに行くなよ!」という本音が交錯した結果です。


そうそう、今回出てきたシャーロットおばさんですが、最低限のプロフィールはもう出してしまったので、お好きなように使ってください>他の書き手さん方

611 :299:2005/12/05(月) 00:01:31 ID:B1hBa9bW0
>>◆HHOM0Pr/qIさん
お久しぶりです。
こうして返信するのは今回が初めてになりますが、毎度
不自然ない話の進行にはただ感心するばかりです。
オリジナルキャラの「シャーロット」はローザ一家の使用人でしょうか?
会話から察するに、なにやら母君も穏やかでない様子。

612 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/05(月) 00:05:36 ID:w5588Xvb0
と思ったら、上で言及されてますね。
被っちゃいました…

613 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/05(月) 18:53:48 ID:1ouSORyY0
まとめサイトがまた新しくなってるよ

614 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/05(月) 22:07:21 ID:kVXA5DxSO
竜の騎士団がUPされてたね

615 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/05(月) 22:47:06 ID:zkZMdcgU0
◆HHOM0Pr/qIさんGJ!そしてお帰り!
これで4の基盤となる御三方が揃ったなあ、激しく期待してまつ

管理人さんも乙ー
本編の方の更新も頑張ってください
ところで竜の騎士団、副長がカインの母親に恋い焦がれてた辺りのくだりが消えてる・・?

616 :494 ◆yB8ZhdBc2M :2005/12/05(月) 23:04:05 ID:N0ZQWWUM0
>>615
すみません、その部分コピペするのわすれてました。
今修正しました。
◆HHOM0Pr/qIさんお帰りなさいませ。
4の作者陣が揃って良かったです。
良い作品期待しております。
他の作者さん方も頑張ってください、こちらも更新頑張ります。

617 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/07(水) 16:05:19 ID:XP8Jsf0bO
保守

618 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/07(水) 23:30:12 ID:oWeZJaw+0
保管庫乙ですー。
最近リニューアルが活発ですね。

619 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/07(水) 23:41:51 ID:5H/rywhT0
保守

620 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/08(木) 01:50:00 ID:VvLLKoVt0
そろそろ次スレの季節かな?

621 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/08(木) 01:52:01 ID:WJ06S3Jx0
448KBだし、まだいいんじゃないか?


622 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/08(木) 02:01:49 ID:VvLLKoVt0
そだな

623 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/10(土) 11:41:02 ID:vUG6urUq0
保守。

624 :299:2005/12/12(月) 14:48:24 ID:O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0286 4章 4節 これから(6)

堅牢な鎧を纏った兵士が一気に距離を詰めて、後方のテラ達に襲いかかろうとする。その様子は
正に、蹂躙するかのような勢いだ。
「みんな! 今助ける――」
遅れて加勢しようと踵を返し、歩を進めようとするセシルであったが、後方つまり先程までセシル
向き合っていた相手はそれを許すほど迂闊ではない。
すぐさま、振り返りヤンの攻撃に備えようとするがその時には既に寸前まで迫っている。
しまった――!
咄嗟に回避行動に移るが、あまりにも急すぎるため、セシルは大幅に体制を崩し、地面に腰をつく。
だが、予期していた追撃がこない。
「何故だ!」
スキとみなし、すぐに立ち上がり剣を握り直すが、疑問が潰える事はない。
「このまま倒してはつまらぬからな……だが、次はこうはいかんぞ」
理由はどうあれ、命拾いをしたということか。要は情けをかけられたというべきか。
「安心しろ、奴らには手を出させん」
そう言ってセシルの後ろへ顎をしゃくる。
釣られるかのようにして眺めた視線の先には、兵士達が大太刀を振るっている所だ。
「その為にお前の仲間達の相手をしてもらっている。これでいいだろう」
一騎打ち。第三者の加勢を許さぬのだろう。
「分かったよ……」
何時になく、神妙な声色でセシルは同意する。
ちらりとテラ達の様子を伺う。相変わらず兵士の強撃は圧倒されるばかりの勢いであるが、三人とも上手く立ち
回っているようだ。兵士は攪乱され、疲労の色が見て取れる者もいる。
だが、即座に唱えた微力の魔法では手にした大盾に空しく弾かれるだけだ。
強大な魔法を撃つには場所にも状況にも恵まれていない。決着には時間を有しそうではあった。
このまま上手く、凌いでくれ。
心の中でそう願い、ヤンに向き直る。

625 :299:2005/12/12(月) 14:57:38 ID:O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0287 4章 4節 これから(7)

「では……」
それを返答と受け取ったのか、攻撃は再開される。
今度はセシルとて万全の覚悟を持っての攻勢である、事前のようなスキをみせるまでもない。
だが、それでもファブールのモンク僧の中でも屈指の実力と断言できるこの男の技とぶつかりあうのは
一筋縄ではいかぬ事であった。
次々と技と技を組み合わせ、それを断続的にうちつつける。
それでいて単調でなく、複雑化したそれは大きなダメージを与えはしなくとも、受け手の体力を確実に
削ぎ落としていく。一連の行動にはスキというものが全く存在しない。
モンク僧は速さを活かし、己の肉体を武器に戦う者である。
鎧を着込み、剣を手にし、それらの武器を最大限に使用して敵を退けるセシルのような重騎士のような者
にとって相性の悪い相手なのかもしれない。
実力が同じ程度であるのなら尚更だ。
一進一退の攻防であるが、性質上ヤンが押している。
見る者を圧倒させるかのような瞬速の拳がセシルの鎧を打ち据える。
どうすれば……
続く打撃はセシルでなければとうの昔に根を上げていただろう。そんなセシルでもこの状況から反撃に転じる
事は容易くはない。
それに、相手はあつての仲間だ。向こうは手加減無くとも、こちらには最低限ヤンへのダメージを抑えなければ
ならないという前提がさらに両者の対決を一方的なものにしている。
「どうした! この程度か!?」
その有様に呆れたのかヤンは挑発と取れる発言をした。
「ヤン! 止めてくれっ! ここで僕たちがぶつかりのは無意味だ!」
触発され口から出る言葉は自分でも分かるほど意味をなさないものであった。
「何の事を言ってるのか皆目見当がつかんな!」
今のヤンにとってセシルの存在はかつて志を共にした仲間であるという
認識はからきしないのだろうか。

626 :299:2005/12/12(月) 16:17:08 ID:O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0288 4章 4節 これから(8)

「じゃあ、この場を引いてくれるだけで良い」
「ふざけたことを!」
セシルの説得を弾くかの様に脚からの技が旋回する。
その攻撃はセシルの顔をかすめる。
「!」
それだけでも外れたとは思えないほどの威力だ。セシルは小さな悲鳴を漏らす。
「ならば!」
太刀を横に薙ぎ、何とかヤンを後退させる。
同時に自分も後方へと下がる。距離ができた。
接近戦に持ち込まれなければ多少の余裕は生まれるであろう。その間に体力を回復しつつ、策を練ろうという
企てであった。
しかし、セシルは誤算をしていた。モンク僧は遠距離に於いても攻撃の手段を持っていることを……
ヤンは地面を蹴り、勢いをつけ脚を前面にして飛びかかってくる。
威力こそ通常の蹴りに比べると落ちるが、加速をつけたその攻撃の効果範囲は広い。
生半可な回避行動では逃げ切れないであろう。
迷っていては駄目だ!
覚悟を決めて強襲するヤンを剣で迎え撃つ。
防御しても今のセシルにはマイナスに働くだけだ。それならばいっそ打って出よう。そう判断した。
咄嗟の決断であったが、一応の成功を成した。
剣先を振るった一撃にヤンは直撃し、大きく後ろへと跳ね返った。
「やっとやる気になったようだな……」
受けた傷を抑えつつ、顔に笑みをつくる。

627 :299:2005/12/12(月) 17:02:34 ID:O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0289 4章 4節 これから(9)

「ヤンとはやり合いたくはないが……迷うだけではだめだ」
「そうでなくてはな」
理由はどうであれ、親愛なる友と剣を交えるのは誰にとっても耐えきれない事である。
カインの時も相当の決心をしたが、まだ万全でなかったのかもしれない。
だが、あれからの短期間の間、自分には目まぐるしいことの連続であった。
その中でセシルの想いも数多くの交錯を経て、変化があった。
迷うならば戦うな。それが、どんな相手でも。以前の様な負け方は決してしてはならない。
だが、目前の敵を単純に退けてはだめだ。
試練を乗り越えた自分にならあるいは……
攻撃は相変わらず厳しかったが、迷いを忘れ全力で立ち向かうセシルには不足はなかった。。
連撃には堅固な守りで対応し、一撃の重さに賭ける。実直な一撃は迷いの太刀とは違い、正確さがある。
「さっきとは別人のようだな!」
攻撃をやり過ごしながらもセシルは反撃をする。
描かれた剣閃がヤンの鋼の肉体を掠める。
「はは……いいぞ! いいぞぉ……!」
ヤンの技は確かに厳しかったが、戦う中、一つの変化が見られた。
最初は漫然の怒りと殺気があったが、それがだんだんと薄れつつあるのだ。
もしかするとこうしてぶつかり会う事で、かつてのヤンを取り戻せるかもしれない。
そのような確信を持ち剣を振るい続ける。相手の憎しみは殺意だけを断ち切るかのように……

628 :299:2005/12/12(月) 17:22:39 ID:O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0290 4章 4節 これから(10)

「は!」
何度目かの攻撃を受け止めヤンの声は曇りの無き明確なものであった。そう、直前までとは違う。
「セシル……殿か……?」
「気づいたのか!」
「ああ……自分が何処にいるのか、何をしていたのかは……あの時以降の記憶がまるで思い出せないが……
邪悪なる気配が私に何かを囁きかけていたような気がする」
あの時とはファブールを出航した時の事を指しているのだろう。
「記憶喪失だったのか?」
「おそらくはな。だが、今のセシル殿からは以前、行動を共にした時とは違う事は分かる。どうやら
迷いを克服できたようですな……」
「ヤン……」
穏やかな口調に思わず自分の声も震える。
「前にも言ったと思うが私は剣術の疎い、だが、セシル殿は間違いなく強くなられた。肉体的にも精神的にもな
良い太刀筋でいらっしゃる……」
評する声を聞きつつセシルは剣を収めようとする。
「さて、この状況をどうするかだな……」
「ヤン様!」
テラ達と戦闘を繰り広げていた兵士達がこちらにやってくる。
「どうした?」
ヤンはセシルの時とは違い、暗い声で応対する。つまりはこの兵士達を率いてたときの声だ。
「すいません。奴らを捕らえられませんでした。何分素早い者であって……」
「そうか。良かった」

629 :299:2005/12/12(月) 17:54:02 ID:O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0291 4章 4節 これから(11)

「は?」
片割れの兵士が疑問とも自問ともつかぬ声を上げる。
無理もないであろう。普通は叱りの声が飛んでくると思ったのだろう。しかし、実際は咎めなしどころ
か安堵に近い声を漏らしたのだから。
その上、声の調子が急に変わった事も彼を驚かせた要因の一つであった。
疑問の暇も無く、彼にはもう一つの災いが降りかかる。
急に視界が回る。
今まで町を見ていた目が、今は空を見上げている。
「これは……」
自分がヤンの足払いを受けて転ばされたと気付いたのは、地面の体が付いた後であった。
「あぐっ!」
「ヤン……様! これは一体どういうおつもりなのですか!」
痛みに呻く彼の代わりにもう一人の兵士が疑問を代弁する。
「見ての通りだ。今を持って私はバロンから抜けさせてもらう!」
「裏切るというのか!」
「そう取って貰って構わない」
「く……」
しばらく考えていたのだろうが、やがて意を決したかのように剣を抜く。
「ここで引くわけにはいかない……」
その声に呼応するかのように、救援に表れた他の兵士達も剣を抜く。
「あなたがいくら凄い実力を持とうが、今は随分と疲弊している。それにもう一人も……この数を相手に
して勝てますかな?」
見る限り兵士は五人。それも近衛兵である。

630 :299:2005/12/12(月) 18:07:33 ID:O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0292 4章 4節 これから(12)

近衛兵団に所属するその兵士達の主な任は王の護衛である。
国家の中心人物の信頼を全に受けるこの兵士達の選定には厳重な試験が有り、陸軍の中でも屈指の
実力者を中心の組織されている。
単純に剣を交えるのならセシルやカインにも引けを取らない者達ばかりであろう。
その近衛兵が四人。状況は向こうに傾いている。
だが、そんな中でセシルとヤンの表情は比較的穏やかである。
「手伝ってもらえるか、セシル殿?」
「勿論だよ……」
「では行くぞ!」
「くっ……」
その余裕な有り様に少しばかりたじろぎつつも近衛兵の一人は剣を払ってきた。
「!」
だが剣を振るった後、その兵士は驚愕した。
確かに捕らえたと思ったヤンが忽然と姿を消していたからだ。
満身の剣の一撃は石で舗装された道を砕き地面を露出させるだけにとどまった。
慌てて視線をあちこちに巡らした兵士には更なる混乱が襲う。
上空、朝日を背にした影が自分達の方向へ降下してきたからだ。
兵士達にとっては身軽に戦いの場を駆けめぐる者を見たのは初めてであったのだろう。瞬時に剣撃を
跳躍して回避した芸当に思わず迎撃する事も忘れてしまう。

631 :299:2005/12/12(月) 18:21:36 ID:O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0293 4章 4節 これから(13)

ヤンはすかさず兵士達の中心に着地、未だ空を見上げる兵士達に一気に接近し、一撃を繰り出す。
大盾の内側から放たれた攻撃は鎧越しに、大きな打撃を与える。
一人が倒れるのを確認するとヤンはすぐさま次の対象に移る。
そうしてまた同じ攻撃を繰り出す。
「く……離れろ!」
開幕後、あっという間に半分の兵士を倒されたの兵士は咄嗟にそんあ命を出すが、彼らは一つ重大な事を
失念していた。
「かかったな」
見ると、セシルが兵士の一人の目前まで迫っていた。
たちまちの内にセシルは剣を振るい、兵士の剣を遥か彼方へはじき飛ばす。
キィインと金属のぶつかり会う音と共に、剣は弧を描き、飛んでいく。
拾いに行くにはかなりのスキになるだろう。
「これで戦えるのは一人だけだ。どうする……?」
「くっ!」
勝ち目がないと思ったのだろう。一人が踵を返すと、次々と身を翻していった。
倒れていた者も何とか立ち上がりそれに続いた。もう抵抗する気力もないようであった。
「セシル殿……逃がして良かったのか?」
その姿を見送りながらヤン。
「彼らを叩いても何も出やしないよ……本当の敵はもっと別の所にいるんだ……」
「そうですか……」
それ以上は何も追求せず、ヤンは地面へとへたり込んだ。
続く、戦いに疲れたのだろう。
セシル自体も疲労を感じ流れる汗を拭う。

632 :299:2005/12/12(月) 18:23:59 ID:O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0294 4章 4節 これから(14)

「礼を言っておかねばなるまいな……」
「え?」
お互い大分の体力が戻ってきたときヤンが突然切り出す。
「私は操られていたのかもしれん……ゴルベーザという者に」
あのカインという者の様になと付け加える。
「だが、確かにいえるのは私は記憶喪失の所を利用されたのだ……」
セシルは黙ってそれに聞き入った。
「今になって言うことができるが、私はゴルベーザという者にもの凄い憎しみを持っていた。祖国の者を
無惨に殺し、クリスタルを奪っていったあの男に。そして王もあのような有様に……」
「ヤン……」
「私怨に支配されていた。今ではそう思っている。あの時、王にセシル殿との同行を進言したのも、あいつを
この手で倒したいと思っていたからなのだ。記憶を失ってもその怒りは消えていなかったのかもしれない……
そこにゴルベーザはつけ込んだのであろう。あろうことか私は憎むべき相手の手助けを……そう思うと今でも
悔しい想いは消えない」
ヤンは立ち上がる。
「だが、今の気持ちでは決して勝つこと等は……今のセシル殿の太刀を受けたらそう思った」
セシルの方に向き直る。そして言う。
「もう一度、あなたと一緒に戦いたい。過ちを犯してしまった事は認めるので――」

633 :299:2005/12/12(月) 18:28:51 ID:O9+lnhPw0
FINAL FANTASY IV #0295 4章 4節 これから(15)

「止めてよ。ヤン」
「セシル殿……」
それが拒絶の言葉に聞こえたのか、ヤンは落胆の表情をする」
「いやっ! そういう事じゃなくて……今更そんなに改まって言われても困るって言いたかっただけだよ……」
慌てて、セシルも訂正する。
「つまりは!」
「うん。これからも宜しく!」
そう言って手を差し伸べる。
「はい!」
ヤンは喜んでセシルの手をがっしりと握る。
「流石はセシル殿! 嬉しいですぞ!」
「だからそんなに固くならないで。君が生きていただけでも僕は嬉しいよ……それにそんなに特別視
なしないでくれ……」
「分かりました」
お手上げだといわんばかりにヤンは顔を赤める。
「それとヤン……」
「はい」
「ギルバートとリディアはどうなったか知らないか?」
これだけはセシルは今でも責任を感じていた事であった。
「リディア殿なら……」
「知ってるのか!」
「海に沈んだ後、意識が消えかける前に確かに見ました。あの船を襲った怪物に飲み込まれていった……」
「な……!」
そのヤンの言葉はセシルを凍り付かせるには充分すぎる位衝撃的なものであった。
「可哀相な事をした……」
「ではギルバートは!?」
ヤンは首を振る。
「分かった」
せめてギルバートだけは――祈るような気持ちであった。

634 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/12(月) 18:31:27 ID:O9+lnhPw0
以上です。
随分と時間をかけた投下となってしまいました。
申し訳ありません。

635 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/12(月) 18:39:27 ID:GMPKSex80
リアルタイム乙です!
にしても4時間書き続ける気力が凄いですw
ただ、差し出がましいようですができればテキストにまとめて
一括送信した方がいいと思います……。
しかし戦闘描写やっぱうまいですね。

636 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/13(火) 08:30:12 ID:tvQblhinO
(* ゚Д゚)おぉぉ乙!
FF4がやりたくなった!

637 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/13(火) 14:33:21 ID:U5Xtuv1M0
>>FF8
スコール視点がコントローラー握ってFF8プレイしている時の自分自身と
うまく重なってくれるような展開の仕方には、いつ見ても感心させられます。
もうずいぶん前のことなのに、ゼル登場時のムービー見た時の心境が
スコール通して蘇って来ました。さり気なく相関関係をおさらいする展開の
11-15の展開も、運びとして巧いなと思いました。

>>FF4
静かな中の再会の描写から、一気に戦いの場面へと繋ぐ連携が本当に
凄いと思った。やっぱりこのスレの根幹を成しているノベライズだと感じる
一方で、GBA版が出たら間違いなく買おうとしている自分がいる。購買意
欲(と言うよりも実際はFF4への興味ですが)を持たせるような書き方なの
は、仕様なのかなと疑うほどにw



とにかく乙です。

638 :FF6 :ナルシェ援軍:2005/12/13(火) 14:45:19 ID:U5Xtuv1M0
ff6 - 07.5 narche


 モーグリという生物の生態については研究途上であり、未だに解明されていない
部分も多い。
 一般的にモーグリは警戒心の強い動物として知られている。人間に懐く事は
ほとんどなく、相手が自分に危害を加えないと分かるまでは近づくことはもちろん、
人前に姿を見せようとすらしない。そのため、こちらから手を出さなければモーグリが
攻撃して来る事はないと言って良い。
 また愛くるしい見た目とは裏腹に、いったん攻撃性をむき出しにすると、どちらかが
倒れるまで攻撃をやめない獰猛な一面を持っている。遭遇すること自体きわめて稀
だが、万が一にでも出会してしまった場合、むやみに手を出すのは危険だ。
 主な生息域は寒冷地の洞窟などで、現在ではナルシェ炭坑の奥地のみが確認
されている。体中を覆う白い体毛は、恐らくそういった環境に適応した進化を経て
得たものなのだろう。
 群で生活し、リーダーを頂点とした独自のモーグリ社会を築いていることから、
彼らの知能は相当に高いものと推測される。
 そんなモーグリの生態について一番の謎とされているのが、背の部分に生えて
いる「ハネ」の様な形状の器官だ。鳥やその他昆虫類などの持つそれと同様の機能を
有するのかは謎である。しかし筆者の知りうる限りでは、モーグリが空を飛んでいる
という記録などは他のどの文献などを調べても見あたらない。このことから、空を飛ぶ
ための器官ではないというのが主流の説である。そうなると、この器官は何のために
存在しているのだろうか。
 モーグリについての謎は、ここに記した他にもたくさんある。そしてそのどれもが、
解き明かされないままである。

                    ***

 自称トレジャーハンターことロック=コールは職業柄、世界各地の文献を目にする。
もっとも、彼には彼自身の目的があって様々な文献(それこそ古文書から研究書物など)
を漁るのだが、モーグリについて書かれた物は珍しいと、今でも記憶に焼き付いている。
ロックにとってモーグリに関する知識の多くはこの文献の記述を拠にしていた。

639 :FF6 :ナルシェ援軍:2005/12/13(火) 14:48:25 ID:U5Xtuv1M0
 だからナルシェ炭鉱内、ガードに追われているところをモーグリ達に助けて
もらえるなどとは夢にも思っていなかった。
 その中でも特に目に付いたのは2匹のモーグリだった。彼らのことは恐らく
一生忘れないだろう。

                    ***

「クポー……」
 背後――洞窟のさらに奥へと続く洞穴――から聞こえて来たのは、文字で表現
するなら「クポ」とでも書けそうな、間延びして緊張感に欠けた妙な声だった。
 ロックは今、とある依頼を受けてひとりの“少女”を捜し求め洞窟内を疾走しこの
場所まで辿り着いたところだった。しかしようやく会えた少女は意識を失って倒れて
いて。しかも悪いことに彼女は、今やナルシェ全力を挙げてのお尋ね者なのである。
よって彼自身が置かれている状況も決して穏やかではない。案の定と言うべきか、
少女を連れて炭坑から出ようと思ったところへ駆けつけたガード達に追い詰められて
いるという状況だ。あるいは自分一人ならばガードの包囲網をすり抜けて、うまく
逃げ切れたかも知れないが、意識を失った少女を抱えていてはそうも行かない。
かといって全員の相手をしていては自分の体力がもたない。言い換えてみれば、
ちょっとした窮地に立たされている。
 そんな状況に水を差すような間延びした声のする方を振り返って見れば、武器を
手にしたモーグリの一団が、こちらへ向かってぞろぞろと行進して来るではないか。
ロックはその光景に、驚きの表情のまま視線を隊列から離せずにいたが、やがて
それが自分の周囲を取り囲んだ事に気づいて、通じないはずの言葉で思わず声を
かけてみたのである。
「……モーグリ……助けてくれるって言うのか?」
「クポー!!」
「!?」
 ロック自ら――半ば通りがかりのわらに縋る思いで――声をかけておきながら、
それでもまさか返事があるとは予想もしていなかった。予想外で期待通りの反応を
得られた事に、安堵と驚きをない交ぜにした表情でモーグリ達を見つめた。

640 :FF6 :ナルシェ援軍:2005/12/13(火) 14:51:21 ID:U5Xtuv1M0
 ちなみにロックは、モーグリがガード側の味方につくという可能性はまったく考えて
いない。自称トレジャーハンター(兼・反帝国組織リターナー関係者)にとって、持ち
合わせたロマンとプラス思考は最大の武器なのだ。自分のことをドロボウ扱いする
人々に対して、この主張は今後も続けるつもりである。
 数えてみると11匹のモーグリが、どこから持ち出してきたのかそれぞれ武器を手に
隊列を組んでいる。みなぎる闘志は、言葉を通わせない相手からでも直に伝わって
くる。いつか目にした文献通り、見た目に似合わず獰猛な生き物なのだなと実感し
ながら、群の中のモーグリに目が止まった。
「クポ!」
 周囲のモーグリ達に比べて一回り体格が大きいように見えた。言葉こそ分から
ないが、槍を振って他のモーグリを誘導している姿から察するに、どうやら配置を
指示しているようである。そのことからも、彼がこの群のリーダーなのだろうとは
すぐに見当がついた。
「……クポー」
 リーダーと思われるモーグリのすぐ後ろには、群の中でもひときわ小さなモーグリが
立っていた。リーダー格のモーグリと比べてしまうせいか、よりいっそう小ささが目立つ。
(親子……なのか?)
 そう思ってロックはその2匹の様子を観察するように、無意識のうちに目で追っていた。
3つに分けた隊列の先頭を歩くリーダー格のモーグリのすぐ後ろを、小さなモーグリは
離れずについて歩く。ときおり気遣うように後ろを振り返るリーダーに、小さなモーグリは
頷くように短い首を振って応えた。
 ロックには、残念ながらモーグリの言葉を理解する能力はない。けれどもそんな姿を
見ていると、まるで彼らが“親子”以上の絆で結ばれているように見えるのだ。
「……クポ!」
 ミスリルスピアを担いだリーダー格のモーグリが、槍を掲げる。まるで開戦を告げる
武将のような、とても勇ましい姿である。他のモーグリ達はそれに従うように武器を構えると、
いっせいに前方を見据えた。

641 :FF6 :ナルシェ援軍:2005/12/13(火) 14:59:47 ID:U5Xtuv1M0
 帝国軍にも劣らぬ整った指揮系統だった。そのことにロックは僅かに戦慄を覚える。
 ただ、帝国軍のそれと違うのは――多少ではあるが、クポクポうるさい事ぐらいだ。
「クポ……」
 控えめな声で、リーダーの後ろに立つあの小さなモーグリが寄り添うように歩み
寄った。槍を降ろしたリーダーが短い首を後ろに向けると、槍を扱うには小さく見える
手を差し出した。
(大丈夫、ボクがついてる)
 ロックの耳には「クポ」という愛らしい鳴き声の代わりに、そんな言葉が聞こえた気が
した。これも、彼曰くロマンのなせる業なのか。それは本人にさえ分からなかった。



 炭鉱内の奥深く、そこは薄暗く入り組んだ岩場と細い道が続く場所で、相手の位置を
見通せない。そのためこちらだけでなくガード側にとっても悪条件下での交戦となるだろう。
 ロックとモーグリ3匹。リーダー率いるモーグリ4匹。それからもう1つのモーグリ4匹の
グループで、少女の倒れている地点から3つに分かれた道をそれぞれ進んでいく。
彼らのうち、どこか1つでも突破されてしまえば、意識を失って倒れている少女はガード達の
手に落ちてしまう。
 ――ナルシェの連中に、道を譲るわけには行かない。
 決意を新たにしたロックは、ちょうど反対側の道を進もうとしていたリーダーと、後ろの
小さなモーグリに向けて言った。
「そのちっこいの、ちゃんと守ってやれよ」
「クポー!」
 任せろ! とでも言わんばかりに槍を担いでみせるリーダーの姿に、ロックの表情は思わず
ほころんだ。

642 :FF6 :ナルシェ援軍:2005/12/13(火) 15:04:44 ID:U5Xtuv1M0

                    ***

 薄暗い炭鉱内の細い道。出会うべくして両者は出会い、鉾をまみえる。
 口汚く少女の事を罵りながら、ガードの連中は剣先を向けて来た。
 きっと彼らにも、理由があるのだろうとは思う。武器を持って戦う理由、相手の
命を奪うことも厭わない、その理由が。
 ――もちろん、それは俺にだって言えることだ。
 ロックは手に持った短剣をためらい無く振り下ろした。彼は、彼の目的のために
武器を取り、戦いの場へと自らの意志で身を投じている。その理由を日頃から、
あるいは戦場で敵として向き合った者に教える必要性はない。
 勝つか負けるか、戦いの結末はその二択でしかない。そして、自分に求められて
いるのは「勝つ」という結果のみである。この場では逃走という選択肢も敗北を
意味している。どうあっても引き下がるわけには行かなかった。
 シルバリオの攻撃が自分の身に命中した時に、隣のモーグリがポーションを投げて
寄越してくれた。それに続き、武器を振り上げてくれた別のモーグリの姿がこれほど
までに頼もしく見えた事はない。彼らにも、武器を取って戦う理由があるのだろうか?
「リターナーに加わらないか?」
 言葉が通じないという事を忘れて、ロックはそう声をかけてみる。
「クポ?」
「クポー」
「クポポ」
 彼らは思い思いに飛び跳ねながら、一応こちらの質問に答えてくれているようだった。
「……ダメだよな、やっぱり」
 そう言って今さらながら肩を落とすロックの耳に、凄まじい轟音が届いた。おそらくこの
洞窟内のどこかで、落盤が起きているのだととっさに身構えたが、それにしては伝わって
来る振動が小さい。まさかそれがモーグリの持つ特殊能力であると言うことは、このときの
ロックが知る由もなく、またモーグリのリーダーによって、ガードリーダーが倒された事を
知るのは、もう少し道を進んで全員が合流してからのことだった。

643 :FF6 :ナルシェ援軍:2005/12/13(火) 15:17:44 ID:U5Xtuv1M0


 ガードを退け倒れている少女の元に戻ったモーグリ達は、役目を終えた事を知ると
自分たちの暮らす洞穴へと帰って行った。相変わらずクポクポと賑やかな一行が
去った後の洞窟内は、驚くほど静かだった。
「モーグリ達、恩に着るぜ!」
 モーグリ達が去っていった方向に叫んではみたものの、自分の声が反響するだけで
返事はなかった。
 心からの礼と感謝を口にした彼の手に、ミスリルシールドや複数のポーションが握られて
いるのは、職業柄か身に付いたアビリティのお陰だと言うことにして。もっとも、この場で
それをとがめる者もなかった。
 膝をついてかがみ込み、少女の様子をうかがう。まだ目覚める気配が無いことを知ると、
ロックは少女を抱え上げ、炭坑の出口へと向かった。



 ロック=コール。
 胸にはロマンを、両手に戦利品を持った彼は自らを「トレジャーハンター」と呼び、人は彼を
「どろぼう」と呼ぶ。

                         −ナルシェ援軍<終>(ff6 - 08 narcheに続く)−



----------
・ティナが意識を失っている間に起きるナルシェ炭坑のシミュレーションバトル。
時期的にはナルシェ編7と8の間。
・シミュレーションバトルというよりも崩壊後に取得できるアイテムの伏線(の、つもり)。

実はこの場面、後で振り返ると切ないと思うので書きたかった。
…全力は尽くしたので反省はしていない。お読み下さった方、ありがとうございました。

644 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/13(火) 21:20:52 ID:rqxgHHfv0
補完乙でした。


645 :494 ◆yB8ZhdBc2M :2005/12/13(火) 22:08:59 ID:91hotcwd0
299さん新作乙です。
相変わらず引き込まれる文章ですね。
自分も思わずGBA版に食指が伸びそうになりましたw
更新遅れていますが、なるべく早く追いつけるようにしますので宜しくお願いします。
>>643
FF6作者さん補完乙です。
ロックがモグとリターナーと戦う件はちょうど書かれていなかったので良かったです。
それではそのままナルシェ編7と8の間に組みこまさせて頂きますので宜しくお願いします。

646 : ◆mgMQDUQocw :2005/12/14(水) 14:15:05 ID:yVswzc2E0
どうもFF8作者です。
いつも暖かいご声援有難うございます。

実は、アルティマニア読んでて、間違いに気づきました。
>>534にて私は、スコール18才、キスティス19才と書きましたが、
正しくは、スコール17才、キスティス18才の誤りでした。
訂正してお詫び申し上げます。すんませんしたー!

久々の有給、ちょこっとだけ続きをカキコします。

647 :FF8 ◆DmmveEqU6s :2005/12/14(水) 14:31:49 ID:yVswzc2E0
FF8 第一章 SeeD-20

「はいはい、注目」
冗談はここまでとばかりに、キスティス先生が手を打ち鳴らす。
「今回の試験には、A班からD班、総勢12名が参加します。あなたたちはB班。
担当する教官は私。チームワークを大切にして、見事に試験をクリアしましょうね」
・・・チームワークか、サイファーに言ってくれよ。乱す者がいるとすれば、
それは奴しかいないだろ。
「チームワークってのはな、班長の俺に迷惑を掛けないってことだぜ」
サイファーがうそぶいた。やれやれだ。
サイファー、あんたが班長ってだけで、俺は充分迷惑してるんだ・・・
「迷惑厳禁!班長絶対!」
まるで俺の心の内を見透かしたかの様に、風神が強い口調で言ってきた。
風神、その名の通り風変わりな女性だ。
俺以上に無口で、たまに口を開いても、無駄を省いた熟語のみで会話を成立させてしまう。
銀髪に染め上げたショートカット、右目を覆うアイパッチという奇抜な格好とも相まって、
同い年の17才でありながらも、一種近寄りがたいオーラを放っている。
風神が再び口を開いた。
「ゼル?」
ただそれだけの台詞だったが、ゼルに向けられた隻眼が「反論はゆるさない」と
雄弁に語っている。
「・・・了解だ」
憮然とした表情のまま、ゼルが応じた。
ゼルの様に陽気な男にとっても、風神は苦手な存在らしい。

648 :FF8 ◆DmmveEqU6s :2005/12/14(水) 14:50:08 ID:yVswzc2E0
FF8 第一章 SeeD-21

「そうだ、これはB班のルールだ。忘れんじゃねぇ」
「ルールだもんよ!守るのは当たり前だもんよ!」
サイファーの言を受けて、今度はもう一人のとりまき、雷神が声を張り上げた。
俺より一つ上、キスティス先生やサイファーと同じく、18才の男だ。
ダミ声、いかつい顔つき、ガタイのいい体躯といった外見に反して、
雷神は意外にとっつきやすい性格をしている。
物事に深い執着を見せず、誰に対しても拘りなく話しかけるあたりは、
風神と好対照を成していると言っていい。
「雷神、だったらお前ら2人がサイファーと組めよ。いつでも喜んで代わってやるぜ」
ゼルが噛み付いた。
風神を苦手とするゼルも、雷神相手なら気兼ねなくモノが言えるのだろう。
「おう、そうしたいのはやまやまだもんよ」
ゼルに向き直って、雷神が応ずる。
「でもよ、俺たちゃこないだの筆記で赤点を、痛っ!風神、痛いもんよ」
風神が顔を真っ赤にしながら、雷神にケリを入れている。
・・・なるほど、そういうことか。
SeeD認定試験は、筆記と実技の二段階に分けて行われる。
当然ながら、筆記試験に落ちた者は実技試験を受けることができない。
サイファーと一緒に試験を受けられない不満に加え、サイファーと同じ班に
何かと確執のある俺がいることを知って、サイファーの身を案じているのだろう。
またいつかのように暴走して、試験がオシャカにならねばよいと。
その点では、おれも全く同じ思いだ。

649 :FF8 ◆DmmveEqU6s :2005/12/14(水) 15:07:09 ID:yVswzc2E0
FF8 第一章 SeeD-22

ピリリリリリリーッ!
突如、ホイッスルの音が鋭く響き渡った。
「SeeD認定試験を受けるものは集合、整列せよ」
ヤマザキ先生だ。
言に従い、俺たちは班ごとに隊列をなして、次の言葉を待つ。
「試験を行うにあたり、学園長から諸君に訓示がある。学園長、どうぞ」
ヤマザキ先生の言葉を受けて、学園長が演台に立った。
全員が敬礼で迎える。
にこやかな顔のまま返礼する学園長。

シド・クレイマー、バラムガーデンの学園長。
SeeDとはガーデンが世界に誇る傭兵のコードネームだが、SeeDno理念を提唱し、
その理念に基づきガーデンを設立したのも彼だ。

ガーデン。その入学資格は5才から。
年齢や能力に応じて3つの段階が設けられている。
5〜10才を「年少クラス」とし、まずは基礎学力・一般教養の習得を目指す。
11〜15才までが「訓練生」で、従来のカリキュラムに加え、戦闘訓練や戦史、戦術などの
研究も行うようになる。
15才以上は「Seed候補生」として、より実践的な訓練を受ける。
訓練をこなし、与えられた試験・課題をすべてクリアした者は晴れてSeeDとなり、
傭兵として各地に派遣されることになるのだ。

650 :FF8 ◆DmmveEqU6s :2005/12/14(水) 15:27:44 ID:yVswzc2E0
FF8 第一章 SeeD-23

「ええ、皆さんこんにちは」
シド学園長の話が始まる。いつもと変わらぬ、穏やかで丁寧な語り口だ。
近隣諸国にまでその名を轟かせる傭兵のプロ、Seed。
その育ての親とも言うべき人が、このシド学園長なのだが、
知らぬ人がこの光景を見たとしても、彼が学園長だとは決して思うまい。
「皆さんが待ちに待ったSeed認定試験が、今日、いよいよ開催されます。
とはいえ、皆さんがこれから向かうのは、本物の戦場。当然ながら、
行われるのは、本物の戦闘です。どうです?怖気づいた人はいませんか?」
微笑をたたえた目で受験者一同を眺め渡す。
戦場・・・生と死、勝利と敗北、栄光と屈辱、全てが隣り合わせの世界。
そんな事はもちろん全員覚悟の上だ。今さら怖気づく者など一人もいなかった。
「けっこう!」
満足そうに頷くシド学園長。
そして茶目っ気たっぷりの表情でこう付け加えた。
「今回の作戦には、君たちの他に正規Seedが9名参加します。
万が一君たちが全滅したとしても、彼らSeedが立派に任務を果たしてくれる事でしょう。
その点だけは、心配しなくてもいいですよ」
数名の生徒がお愛想程度にくすりと笑った。
「頑張ってください。健闘を祈ってますよ。私からは以上です」
敬礼に見送られ、去っていく学園長。ヤマザキ先生が後を継いで言った。
「現地へは班単位での移動となる。諸君に与えられる任務・作戦については
移動中に担当教官から話がある。では、移動にかかれ」

651 :FF8 ◆DmmveEqU6s :2005/12/14(水) 15:28:20 ID:yVswzc2E0
今日はここまで。有難うございました。

652 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/14(水) 16:57:01 ID:cADymhh70
乙っす、仕事も頑張ってな。

ところでGBAのFF4の公式サイト見てきたんだけど、
なんかかなり追加イベントとか出てきてるのな。
もしかしたらこのままSFCのノリで4を補完していくと、
GBAとは食い違う部分が出てきたりして……しょうがないかなそれは。

653 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/15(木) 00:46:51 ID:zpoWx5DR0
各シリーズ作者さん
保管人さん乙です

この書き込みでたぶん480kb?
そろそろ次スレ準備に入った方がいいと思われ

654 :テンプレ案1/2:2005/12/15(木) 17:48:11 ID:tLsehoCu0

 FFを「かなり真面目に」ノベライズしていくスレです。


□現在の進行状況
・FF4 バロンでヤンが記憶を取り戻した場面まで(前スレ>633)
・FF5 北の山、レナがマギサの毒矢を受ける場面まで(前スレ>313)
・FF6 神官長によるマッシュの回想シーンまで(前スレ>599)
   本筋はフィガロにケフカがやってくる場面まで(前スレ>558)
・FF7A セブンスヘブン、ティファとの会話が終わった場面まで(前スレ>377)
・FF8 Seed試験を控えて、学園長の挨拶が済んだ場面まで(前スレ>650)

□過去スレ
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1091624036
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その2
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1115452328
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その3
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1125830783/

□参考
セリフ集
http://members.at.infoseek.co.jp/nayuka_aaaa/wp/ff.html
まとめサイト
http://ff-novelize.main.jp/


655 :テンプレ案2/2:2005/12/15(木) 17:48:48 ID:tLsehoCu0
○このスレのコンセプト
DQはちゃんとした小説がエニックス出版から出ていますが、FFは2以外まったく刊行されていません。
文才と多少の暇のある方、どうかこのFFDQ板でFFのどの作品でもいいので、ストーリーの最初から
最後まで完全小説化してみてください。
といっても一人でこんなこと最後までやりつづける人はいないでしょう、普通。印税入るわけじゃないし。
ただの趣味だし。根気が続くはずが無い。
なので、リレー小説にするのが妥当かと。
結構おもしろい企画だと思いませんか?

ただ飽くまでも「公式の小説が出版されていない作品を情熱あるこの板の住人がノベライズする」
がコンセプトなので、FFでなくてDQでもいいです。
ただしDQ1〜7は当然対象外になるわけで、可能なのはモンスターズ等でしょう。
やはりプロの作品にはかなわないですから、DQ1〜7は書く必要がないわけです。そういうものです。




***

こんな感じでどうか。
間違いあったら指摘してくれ、多分大丈夫だと思うけど・・。

656 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/15(木) 17:57:49 ID:tLsehoCu0
つーか「現在の進行状況」を確認してて思ったけど、
シリーズ別にこのスレ見ていくのって、かなり骨が折れるな。
これじゃまとめサイトの管理人さんもさぞ大変だろう。

>管理人さん
スレからシリーズごとに抽出・簡易テキストにまとめて、うpとかしたら更新の助けになる?


657 :494 ◆yB8ZhdBc2M :2005/12/15(木) 23:12:49 ID:Ybb+bj/v0
>>655
テンプレ案どうもです。
それで大丈夫だと思います。
>>656
お気遣いありがとうございます。
そうですね、確かにそうして頂くと大分時間は省略出来ると思います。
では>>656さんもし宜しかったらお願いできますでしょうか?



658 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/16(金) 01:41:16 ID:6b9Mvo8V0
>657
ttp://uploader.fam.cx/data/u0094.lzh
うpってきました。
更新お待ちしてますぜ!

659 :494 ◆yB8ZhdBc2M :2005/12/16(金) 01:50:53 ID:4Dysl5JH0
>>658
早速ありがとうございます!
更新頑張ります(`・ω・´)シャキーン

660 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/17(土) 17:12:38 ID:1GSNYb9v0
立ててきますた
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その4
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1134807046/


661 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/19(月) 02:08:47 ID:kX6qA6yr0


662 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/20(火) 14:19:03 ID:YAtPmpde0


663 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/21(水) 00:06:50 ID:R5jyGPjm0
どうしよう・・・まだ容量ある・・・

664 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/22(木) 13:35:43 ID:y1g+4ZC10
保守


というか、死守w

665 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/22(木) 15:42:02 ID:dH4rPIFs0
こっちはもう落としてしまっていいんじゃない?

666 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/22(木) 17:19:05 ID:TPQot9Xk0
こんなとこに書かないで本スレ盛り上げて作者陣を労おうよ・・俺もだけど

667 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/23(金) 20:16:37 ID:apabLuwS0
FF4アドバンスの追加部分はノベライズされるんだろうか?w

668 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/24(土) 02:33:43 ID:gz8HgQM30
>>667
無茶言うなー!

669 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/24(土) 03:14:37 ID:Mfw2f+1h0
アドバンス追加ってクリア後のダンジョンだけだっけ。

670 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/24(土) 23:01:01 ID:H8C8qzuu0
上げ

671 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/24(土) 23:24:49 ID:AIAEGNbh0
えっ上げちゃうの?ww

672 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/25(日) 05:44:27 ID:bsnb6Yeg0
カインの試練のとこだけでも…!

673 : ◆HHOM0Pr/qI :2005/12/25(日) 18:20:51 ID:4Ru2r2fh0
>667>672
さすがに遺跡まるごと追加は辛いと思われ。
だい〜〜ぶ先の話になるが、カインの試練だったら無印幻獣神あたりにねじ込めそうな気がする。生き残ってるのが竜騎士ひとりっていう状況になりやすいし。

セシル達が真の光かどうか審判を下す、とかいう発言もあるし、今ひとつ出所のはっきりしないクルーヤの力の根源とバハムートを絡めるのも面白いかもしれないな。
パラディンの源流は月の民の血じゃなくてバハムートにあったとか。

……いま考えついただけだけど。

674 :FF5:2005/12/26(月) 18:34:45 ID:9iHahJg/0
FINAL FANTASY 5 (62) 「飛竜」13

一見して熊と見間違うかと思うような体躯を唸らせて歩き、男はマギサと並んだ。
「この人はアタシの旦那のフォルツァ。頭は悪いけど見ての通りの巨体さね」
三人はごくりと唾を飲み、再び戦闘態勢をとった。
フォルツァがそれを見てぐっと腰を落とした。
「やっちまいな!!」
「おおおおおお!!」
マギサの号令に合わせてフォルツァが、その巨体に見合わぬ速度で三人に迫った。
その勢いのまま丸太のような腕をバッツめがけて振り下ろした。
バッツはそれを横っ飛びに反転しながらかわす。フォルツァの拳はそのまま地面に
突き刺さった。
それを素早く一気に引き抜き、巨体を反転させながら背後に回ったガラフとファリス
を蹴り飛ばした。
「がっ!」
「ぬぅ!!」
二人の体は吹き飛ばされ、浮遊感に包まれる。そして落下・・
地面に叩きつけられた二人は素早く身を起こし、フォルツァに向き直る。
「よけろーー!!」
バッツの咆哮に、二人は咄嗟にその場を飛びのいた。次の瞬間、二人の居た場所が
激しく燃え上がる。
マギサの放った魔法だった。
「ちっ、ちょこまかと!」
バッツは剣を構えなおし、思う。
(──強い!今まで闘ったどんな敵よりも)
「はあああああ!!」
フォルツァが地を蹴り、バッツに突進する。作戦を考える暇も与える気はないらしい。
そのバッツの視線の左端で、レナが青ざめた顔のまま立ち上がった。

675 :FF5:2005/12/26(月) 18:37:04 ID:9iHahJg/0
FINAL FANTASY 5 (61) 「飛竜」12

やがて人影は四人の前に完全に姿をさらした。
腰に鞭を巻く、30前後の女。
「何者だ!」
バッツが剣を突きつけながら叫んだ。が、別段気にした風もなく、というよりまったく意に介せず、
蛇のような視線を四人にめぐらせる。
その視線が、レナを捉え、口の端を持ち上げニタリと笑った。
「ヒッヒッヒ、何か獲物が掛かるかと思えば、タイクーンのお姫様じゃないか」
「貴様っ・・」
『獲物』という言葉に逆上したファリスが腰の剣を抜きはなち、突進する。が、
「ふん、馬鹿だね!」
女は急にしゃがみ込み、縄らしきものを引っ張った。するとファリスの足元の土が音を立てて
勢いよく下界の森へ落ちていった。
「ファリス!!」
「落ちたよー、ヒッヒ・・・何!」
しかしファリスは落ちなかった。硬い地層に剣を突き刺し、落下を免れていた。そして器用に、す
いすいとあっさり上ってしまった。
バッツとガラフが、レナを抱えてファリスに駆け寄った。
「大丈夫か!」
「ああ、それより・・」
キッとバッツ、ファリス、ガラフの三人が女を睨む。
思わず女は腰に巻いていた鞭の柄に手をかけた。
「ヒヒ・・・いいだろう、教えてやるよ。アタシはこの山でハンターをしてるマギサってもんさ。と言
っても狩りをする相手は動物に限らない。アタシらは魔物、時には人だって狩る。今みたいにね」
ひゅっ、ぱぁぁぁぁん!と音を立て、鞭を抜き地面に打ち付けた。
三人は、まだ顔を青ざめさせているレナをそっと地面に下ろし、庇うように立つ。
・・・再び、マギサの顔が、醜悪な笑みに変わった。
「アンタ!出番だよ!!」
その声に反応してか、奥から大きな、否、巨大な男が現れた。

676 :FF5:2005/12/26(月) 18:37:57 ID:9iHahJg/0
FINAL FANTASY 5 (63) 「飛竜」14

同時にマギサは、ファリスに向け洗練された動きで素早く鞭を振った。
唸りを上げ遅い来る鞭は動きを予測するのが難しいが、ファリスはそれを剣
で受け止めた。
「へへ、ちょろいぜ」
剣に巻き付いた鞭をマギサと引き合いながら、ファリスはニッと笑った。

青魔道士の真髄は、その眼力にある。
敵の攻撃を見極める事に長け、熟練の青魔道士は敵の体内で練られる魔力
の流れを見極めることもできるという。

「でかしたファリス!」
ガラフがここぞとばかりにマギサに突進する。
しかしファリスは気付く。鞭の引き合いをしていた時から、マギサが片手で鞭を
握っている事を。
そしてもう一方の手は掌をファリスに向けられていた。
マギサの意識と視線が、ファリスからガラフへと向けられる。
「ガラフ!魔法に気をつけろ!」
言うが早いか、マギサの掌はガラフへと向けられ、間髪入れずに魔法が放たれた。
ガラフは危険を察知し、受身の事など考えずに体を捻り、地面に突っ伏した。
ガラフの背中の服が弾け、服の生地が宙を舞った。そしてそこからプシュッと血が
噴き出た。
放たれたのは渦巻く烈風の塊り、風の魔法エアロだ。ガラフの体をかすめた魔法
はそのままガラフの後方へ流れていき、山の岩肌を削り取った。

「てめぇ!!」
マギサの意識がガラフに向けられた一瞬、ファリスは剣に巻き付いた鞭を素早く
ほどき、マギサに斬りかかった。

677 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/26(月) 18:38:34 ID:9iHahJg/0
他の方々と比べると随分下手な文章かと思いますが書かせていただきました。
因みに、バッツ『ナイト』ファリス『青魔道士』レナ『黒魔道士』ガラフ『モンク』で書いています。
ファリスが罠にかかるシーンでは、オリジナルの展開だと綱渡りというのは無理があるかと
思い、こう書きました。杭とか持って無さそうだし。話の本筋には傷つけてないと思いますが・・。(´ー`;)ハラハラ
ちなみに崩れ落ちたのは足場の一部で、人が通れるくらいではあったとか思って下しあ。。
とにかく華麗にスルーしていただけると幸いです。

最後に。もう一方のほうとサブタイトルが一致していませんが、北の山1.2.3→飛竜12.13.14として
書いています。どうまとめるかはまとめサイト管理者様にお任せしたいと思います。
勝手ですかね?ヽ(´Д`;)ノすいません。

678 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/26(月) 18:39:28 ID:9iHahJg/0
あ、>>674>>675逆になっています。ミスりました。

679 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/26(月) 18:41:03 ID:9iHahJg/0
しかも>>677でも、「北の山1.2.3→飛竜9.10.11」でした。すいません。

680 :494 ◆yB8ZhdBc2M :2005/12/26(月) 23:35:38 ID:v+nW8jHa0
>>676
投稿どうもです。
ボス戦ですか、中々迫力がありますね。
5はジョブがあるので描写が細かくて大変だと思いますが頑張ってくださいね。
ではサブタイトルですが、北の山1.2.3を飛竜9.10.11にしてまとめさせて頂きます。
あとこれから投稿は新スレの方にお願いしますね。

681 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/26(月) 23:40:06 ID:8zj5d1Io0
埋めはどうしますか?

682 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/27(火) 00:57:42 ID:OzJGNIFC0
まだ容量あるし、放置しましょう

683 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/28(水) 10:27:26 ID:n8GObzPD0
保守

684 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2005/12/28(水) 15:34:23 ID:lfUsAcfL0
だからこっちに書き込むなって

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