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かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その6

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 14:35:16 ID:itoxvgh/0


 FFを「かなり真面目に」ノベライズしていくスレです。


□現在の進行状況
・FF4 バロンでヤンが記憶を取り戻した場面まで(前スレ>633)
・FF5 北の山、レナがマギサの毒矢を受ける場面まで(前スレ>313)
・FF6 神官長によるマッシュの回想シーンまで(前スレ>599)
   本筋はフィガロにケフカがやってくる場面まで(前スレ>558)
・FF7A セブンスヘブン、ティファとの会話が終わった場面まで(前スレ>377)
・FF8 Seed試験を控えて、学園長の挨拶が済んだ場面まで(前スレ>650)

□過去スレ
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。
http://ff-novelize.main.jp/kakolog1.htm
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その2
http://ff-novelize.main.jp/kakolog2.html
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その3
http://ff-novelize.main.jp/kakolog3.html
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その4
http://ff-novelize.main.jp/kakolog4.htm
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その5(dat落ち。html化待ちの状態)
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1137687422/

参考
セリフ集
http://members.at.infoseek.co.jp/nayuka_aaaa/wp/ff.html
まとめサイト
http://ff-novelize.main.jp/

2 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 14:35:59 ID:itoxvgh/0

○このスレのコンセプト
DQはちゃんとした小説がエニックス出版から出ていますが、FFは2以外まったく刊行されていません。
文才と多少の暇のある方、どうかこのFFDQ板でFFのどの作品でもいいので、ストーリーの最初から
最後まで完全小説化してみてください。
といっても一人でこんなこと最後までやりつづける人はいないでしょう、普通。印税入るわけじゃないし。
ただの趣味だし。根気が続くはずが無い。
なので、リレー小説にするのが妥当かと。
結構おもしろい企画だと思いませんか?

ただ飽くまでも「公式の小説が出版されていない作品を情熱あるこの板の住人がノベライズする」
がコンセプトなので、FFでなくてDQでもいいです。
ただしDQ1〜7は当然対象外になるわけで、可能なのはモンスターズ等でしょう。
やはりプロの作品にはかなわないですから、DQ1〜7は書く必要がないわけです。そういうものです。


3 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 14:40:08 ID:itoxvgh/0
FF12祭りの勢いが凄まじいからもしかしたらと思ったら…orz
しばらくの間は1日2、3回ぐらい保守しないと即死する悪寒。

あと、作品ごとの進行状況がいま手元にないんで、保存している人は貼ってください。

4 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 14:49:56 ID:4LUmO0Kq0
>>1
スレ立て乙。
とりあえす即死回避

5 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 16:05:55 ID:VWg+GC2y0
乙。

6 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 16:56:24 ID:qJiZ7iSo0
>>1
ff4はベイガン倒したとこまでだな
>>299
ベイガンが哀れなのがよかった。

7 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/17(金) 20:05:58 ID:pT8ye9dv0
まめにほす

8 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 00:02:56 ID:ArgaX1GV0
あーびびった
もう落とさないようにしないとな

9 :494 ◆yB8ZhdBc2M :2006/03/18(土) 00:12:25 ID:RS10+90L0
>>1
スレ立て乙です。
↓前スレのログです。
ttp://ff-novelize.main.jp/kakolog5.htm
それと前スレまでの進行状況です。
・FF2 フリオニール達が黒騎士の襲撃に遭ったところまで。(前スレ145)
・FF4 バロン城でセシルがベイガンに止めを刺したところまで。(前スレ220)
・FF5 マギサ、フォルツァと激突中。(4スレ目87)
    ジョブはバッツ『ナイト』ファリス『青魔道士』レナ『黒魔道士』ガラフ『モンク』
・FF6 エドガーとケフカが対峙し、会話を交わし終えたところまで。(4スレ目33)
・FF7AC クラウドが忘らるる都で何者かに助けられたところまで。(前スレ161)
・FF8 電波塔頂上でサイファーとビッグス、との対決。勝者サイファー。(4スレ目63)



10 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 04:49:49 ID:C/iaJqSg0
真夜中の保守。

11 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 11:02:39 ID:NaKYDye30
昼にも保守

12 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 15:54:44 ID:Y3ZLMwQC0
保守

13 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 20:08:27 ID:YGz5lB8B0
夜も保守

14 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/18(土) 20:58:44 ID:YGz5lB8B0
ついでにあげよう

15 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/19(日) 01:05:19 ID:Zu53U2ih0
今日も

16 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/19(日) 03:27:34 ID:HW6+vz3a0
数時間ごとにだね

17 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/19(日) 06:19:03 ID:Zu53U2ih0
朝一で

18 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/19(日) 12:01:15 ID:pMmTwHZqO
昼にも

19 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/19(日) 18:54:18 ID:FZPyTooE0
保守屋です。
落ち防止ですがな。


20 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/19(日) 22:51:46 ID:x4SEeUy90
保守

21 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/20(月) 01:14:40 ID:Q038kxUs0
今夜も

22 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/20(月) 16:18:20 ID:MyDlU4yDO
ほしゅ

23 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/20(月) 22:10:08 ID:TxLKtiqWO
保守

24 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/21(火) 09:17:39 ID:KwbBluga0
下がりすぎですよ。
ほしゅ

25 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/22(水) 08:26:05 ID:H7+C745aO
あげ

26 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/22(水) 18:06:06 ID:4CDTdQGr0
hasyu

27 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/22(水) 23:47:54 ID:zpZKAO5V0
保守

28 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/23(木) 10:21:01 ID:s7FL2tNGO
このスレもうだめぽ…。
やっぱり他のSSスレに比べて要求されるレベルが高すぎるのかもしれん。

29 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/23(木) 12:35:16 ID:lVr5ZZUR0
あと3日だけ待って

30 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/23(木) 15:04:55 ID:beeW+QT40
どうも保守屋でございます。
落ち防止しときますです。

31 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/23(木) 15:16:24 ID:g77wjuaR0
>>29
書き手さんですか?

32 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/23(木) 21:47:06 ID:p9XEKI2x0
ほす

33 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/24(金) 00:12:09 ID:yz9Lg1XH0
保守しておきます

34 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/24(金) 10:28:09 ID:gP4XgwME0
a

35 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/24(金) 15:38:58 ID:gP4XgwME0


36 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/24(金) 20:07:29 ID:yz9Lg1XH0
あげてみる

37 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/25(土) 03:21:44 ID:asM7XmSD0
 FF7AC Suffering and Insanity(1)

 彼が生まれて初めて感じたのは、全身を貫く苦痛だった。
 
 感覚が目覚めた瞬間、体じゅうの神経が脈打ち、のたうち、ついには千切れてしまうのを感じた。
 彼は絶叫した。
 硬い地面に何度も頭を叩きつけ、とがった岩の上を転げ回るが、体の中を駆け抜ける苦痛は誤魔化せなかった。

 彼の中にはいくつもの意思が、思念があった。
 その一つ一つが悲鳴を上げ、暴走し、彼の体を内側から破壊し、突き破り、外に逃げ出そうとしている。
 このままでは壊れてしまうと思った。
 彼はなおも絶叫しながら、暴れまわる意識を必死の思いで繋ぎとめようとした。
 が、一つにまとまったかと思った瞬間に分裂し、崩れ落ちてしまう。
 何度やっても同じ結果になる。
 無駄な試みを繰り返すうちに、彼は悪循環の泥沼の中にひきずりこまれていった。

 痛い。苦しい。助けて。誰カ助けて。助けて助けテ助ケて助k
 必死に束ねようとした思念はばらばらになり、拷問のような苦痛で体が半ば麻痺する中、彼は悲鳴だけ上げ続けた。
 もう崩壊寸前だった。
 しかしその時、彼をこの状況から脱出させる出来事があった。
 彼の中に新しい思念が入り込んできたのだ。

 彼の中のものとは比べ物にならない力を持ったその思念は、
 その強大な意思で四散しかけていた彼の意識を強引に繋ぎとめ、一つに束ねていく。
 彼は体を蝕む痛みが急速に衰えていき、失いかけた感覚が冴えていくのを感じた。
 圧倒的な力を持つ何者かは、壊れかけの彼の肉体を完全に再製したあと、現れたときと同じく、唐突に去っていった。
 この時、彼はその思念の正体を悟った。
 彼の母だ。
 それは理屈ではなかった。直感とも違った。その瞬間に、彼を救ったのは母だと「わかった」のだ。
 母さんだ。母さんが来て助けてくれたんだ。僕の母さん。
 急激に鮮明になっていく意識の中で、彼は母さん、母さんとひたすらに連呼していた…

38 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/25(土) 03:22:36 ID:asM7XmSD0
 FF7AC Suffering and Insanity(2)

 精神と肉体が完全に回復すると、彼は開いたばかりの目で辺りを見回した。
 口で空気を吸い込み、耳に吹き降ろす風の音を受ける。
 手で。足で。肌で。体に備えられた全ての感覚を使って周囲の状況を探った。
 そこは巨大なクレーターの中だった。あたりには白く薄い靄が充満し、白っぽい岩でゆるやかな坂が形成されている。
 もっとよく辺りを見ようと地面に手をつき、ゆっくりと体を起こした時、すぐ近くからなにかの悲鳴が聞こえてきた。
 その悲鳴のあまりの大きさに驚き、背後を振り返る。
 そこには、彼によく似た姿をした生命が二つ、叫び声を上げながら地面をのたうち回っていた。
 両手で顔を覆い、大きすぎる体をふりまわしてもがいている。一部の筋肉が痙攣を起こしている。
 僕の兄弟だ、と彼は思った。さっきの僕と同じ苦しみを与えられてるんだ。
 ふたりは助けて、助けてと叫び続けていた。。野太く、しかし甲高い悲鳴。聞くに堪えない悲鳴。
 彼は愕然として、よろよろとふたりのそばに歩み寄った。
 そこにあるのは苦痛だけだった。苦しみだけがそこにある全てを支配していた。
 彼はふたりのそばに座りこみ、ふたりが苦痛に悶えるのをただ見下ろすことしかできなかった。 
 
 そのうち、ふたりに変化が訪れた。
 悲鳴がみるみるうちに収まり、がむしゃらに暴れまわっていた体が落ち着きを取り戻していく。
 彼は彼のときと同じように、母が助けに来たのだとわかった。
 ―――どうして?母さん―――
 彼は無意識のうちに呟いた。
 ―――どうして、こんなに、苦しむの?―――
 そんな彼に答えるように、彼の思考は急速にまとまっていく。
 ―――僕たちの、この苦しみ―――
 まるで誘導されるかのように結論が出る。
 ―――それは、この星のせいだ―――

 やがてふたりが苦痛から開放され、完全に覚醒したたとき、彼はふたりに言った。
 行こう、と。
 
 一緒に母さんのところへ行こう。家族で力を合わせて、星に仕返しするんだ。

39 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/25(土) 03:23:39 ID:asM7XmSD0
 FF7AC Suffering and Insanity(3)

 それから彼は、兄弟とともに岩と霧の世界を練り歩いた。
 なんのあても根拠もなかったが、歩いていった先に母がいる気がした。
 母さんに会えば、どうやって星に復讐すればいいか教えてくれる。母さんさえいれば、僕たちはなんでもできる。
 彼らはそう信じて疑わなかった。
 
 どれほど歩き続けただろうか。
 そろそろ足が疲れてきたというときに、靄のむこうから、風とは明らかに違う音が聞こえてきた。
 「ツォンさん!見てください!」
 それは音ではなく声だった。しかし、彼はその声が妙に耳障りだった。
 兄弟たちも同じだったのだろう。苦々しげに顔をしかめている。
 「…あたりだな」別の声がさっきの声に応える。この声も耳に障った。
 「…気持ちワルイっすね」最初の声が、蔑んだような響きを伴った。
 彼は妙に胸騒ぎがした。その声の聞こえる方へ走った。兄弟たちも急いで追ってくる。
 『いーから急げよ、と』また別の声が聞こえてきた。これまでで一番耳障りな声だった。
 そのすぐ後、靄の向こうに声の発信源が見えた。

 そこにいたのは彼らと似通った、しかし根本的な何かが違った姿の生き物だった。
 こちらに背を向け、地面にかがみこむようにしてなにやら腕を動かしていたが、
 やがて四角い箱のようなものを小脇に抱え、立ち上がった。
 その抱えられたものを見た瞬間、彼の神経のすべてが逆立った。
 あのちっぽけな箱に閉じ込められ、運び去られようとしているのは―――
 間違いない。彼らの母だ。
 ―――やめろ―――
 彼は全身を怒りの炎が駆け巡るのを感じた。思考の一部がスパークする。
 ―――それは、僕たちの母さんだ―――
 兄弟たちも彼と同じ状態だった。拳を握り締める音と、異様なほど大きい歯軋りの音が聞こえる。
 ―――母さんを、放せ!!―――
 そこで彼の思考は途絶えた。考えるよりも先に、体が動き出す。

 甲高い咆哮を上げ、カダージュはふたりの人間に背後から襲いかかった。

40 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/25(土) 03:27:25 ID:asM7XmSD0
 FF7AC Vincent Valentaine(1)

 セブンスヘブンの窓からも見えた満月が、鏡のような水面に映って輝いている。
 辺りでは幻光虫の澄んだ光が飛び回り、漂う空気は氷のように冷たく、透明だった。
 それらは白い輝く木々とあいまって、忘らるる都の幻想的な雰囲気をよりいっそう強く演出していた。
 
 「本当に…誰も助けられないな」
 生い茂る太木の一本の根元に座り込み、クラウドは自嘲気味に呟いた。
 マリンを。デンゼルを。カダージュ達にさらわれ、操られた子供たちを。助ける事が出来なかった。挙句の果てに、あと一歩で殺されそうだったところを自分が助けられる始末。
 …なさけない。
 そんなクラウドの呟きを、助け出した本人は黙って見下ろしている。クラウドは彼を見、尋ねた。
 「ヴィンセント…何が起こってるんだ?」
 「…私はここによく来る」
 ヴィンセントと呼ばれた男はぶっきらぼうなほど短く答えた。その抑揚のない口調は、2年前から変わらない。
 血のように紅いマントを羽織り、左腕には金のガントレットという風変わりな出で立ちの彼は、火のような瞳をしていた。
 「だからカダージュ達のことは見ていた」
 ヴィンセントは続けると、クラウドの傍らまで歩み寄り。
 ―――クラウドの左腕を、思いきり掴んで握り締めた。

 「!!」
 ひきかけていた痛みがまた戻り、クラウドは反射的にその手を振り払おうとした。が、ヴィンセントは握る力を緩めず、「…星痕は」と口を開いた。
 「体内の免疫系システムの過剰な働きが原因らしい」
 ここでやっと手を離すと、ヴィンセントはあたりを歩き回り、後を続ける。
 「免疫の仕組みはライフストリームのそれと似ている。私たちも体の中にライフストリームのような流れを持ち、それが侵入してきた邪悪な物質と戦うわけだ」
 邪悪な物質…?ずいぶんと抽象的な言いかただ。クラウドがオウム返しに聞くと、ヴィンセントは頷いた。
 「そう。”それ”の正式な名前は決まっていない。そればかりか、その性質は細菌やウィルス、はたまた寄生虫といったどの病原体の分類にも当てはまらないそうだ」
  だだし…、と一旦言葉を切り、彼はクラウドを真正面から見据えた。
 「いくつかの特徴が、ジェノバ細胞のそれと酷似しているらしい」

41 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/25(土) 03:32:58 ID:asM7XmSD0
 FF7AC Vincent Valentaine(2)

 「…ジェノバ細胞!?」
 クラウドは素っ頓狂な声を上げた。同時に、左腕がまたピリピリと痛む。
 …いま、世界中に蔓延している星痕症候群。その元凶は、2年前に倒したはずの災厄、ジェノバだったというのか?
 無表情なヴィンセントの顔が、かすかに憂いの色を帯びた。
 「そうだ。奴は完全に滅びたわけではなかった。私たちが倒したのはあくまでも本体。それよりも以前から、奴の断片は思念となってライフストリームの中に生き続け、少しずつ数を増やしていた」
 クラウドは背筋が冷えるのを感じた。だが、ここで思考を止めるわけにはいかない。
 2年前のあの日。世界がメテオの驚異から、ジェノバの恐怖から解放されたと思われたあの日。
 「それで…2年前、ライフストリームが地上に吹き出してきたときに…」
 「”それ”も世界中にばらまかれ、結果…」
 ヴィンセントがクラウドの言葉の先をひきとる。
 
 「「星痕が蔓延した」」
 
 …なんてことだ。クラウドは頭を抱えた。
 2年前のあの日、クラウド達はたしかにジェノバを倒し、星をメテオから救えたかもしれない。
 だがそのせいで、もっと悪い結果を呼び寄せてしまったのだ。何年もかけて人の中に浸透し、じわじわとなぶり殺しにしていく、泥沼のような、ある意味では本当に恐ろしい災厄を。
 そこまで考えが伸びて、クラウドはあることが気にかかった。

 ヴィンセントのやつ、なんでこんなことを知ってるんだ?

42 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/25(土) 03:34:00 ID:asM7XmSD0
 FF7AC Vincent Valentaine(3)

 「…詳しいな」クラウドは声に出して問いただしてみたが、ヴィンセントは「神羅だ」と即答した。
 神羅?クラウドはその答えに首を傾げた。彼の過去と性格からして、自分から神羅の連中に接触したとは考えにくい。
 ヴィンセントはクラウドの訝しげな様子をめざとく察知した。
 「ツォンとイリーナ…死にかけの状態でここへ運ばれてきた」
 ツォンとイリーナ。レノやルードと同じタークスのメンバーだ。あいつらも未だにルーファウスの手駒なのか。ぼんやりと思うクラウドをよそに、ヴィンセントは淡々と話し続ける。
 「カダージュたちからずいぶんひどい拷問を受けていたようだ。助けてはやったが…ふん、どうだろうな」
 「拷問?」
 またオウム返しに聞くクラウド。
 「自業自得」
 ヴィンセントはこの問いにも即答したが、その抑揚のない口調には、僅かに嘲るような調子が混ざっていた。
 「やつら…ジェノバの肉片を手に入れたらしい」
 
 「…北の大空洞で、か」
 クラウドは昼にルーファウスと話したことを思い出しつつ呟いた。
 「知っていたのか?」
 ヴィンセントは少し意外そうな顔をしている。
 「ああ。本人から聞いた」
 あの時、ルーファウスは何も見つからなかったと話したが、真っ赤な嘘だったわけだ。
 なるほどな、とクラウドは思った。それなら彼らの行動の説明もつく。なぜ突然クラウドに連絡をよこし、仲間に引き入れようとしたのかも。なぜそんなことをするほど切羽詰っていたかも。そして…
 『カダージュが何か言ったのか?まあ気にするな…』
 「カダージュたちが探している母親というのは…」
 なぜ、カダージュたちの言う「母さん」の意味を笑って誤魔化したのかも。
 「十中八九、やつらが持っているというジェノバのことだろう」
 大空洞でジェノバを手に入れたばかりに、カダージュたちに追い回されているのだ。

43 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/25(土) 03:35:04 ID:asM7XmSD0
 FF7AC Vincent Valentaine(4)

 「…それで、そのジェノバの肉片っていうのはどこに?」 
 ヴィンセントは首をふり、「…そこまでは聞き出せなかった」とだけ言った。
 そのまま彼は黙り込んでしまい、その場に沈黙が訪れる。幻光虫がクラウドの目の前をよぎった。
 「カダージュたちの目的はなんなんだ?」
 しばらくして、クラウドが口を開いた。
 「…ジェノバの思念が人に入り込んだ結果が星痕なら、奴らはその思念の塊のようなもの。
  お前もさっき戦って感じただろう。あの3人は人間じゃない」
 クラウドの左腕がまたチクチクと痛み出した。
 常任離れした身体能力をもったヤズー。およそ人間ではありえない動きを見せたロッズ。そして、目を合わせただけで星痕が痛み出したカダージュ。
 たしかに、そう考えれば辻褄は合う。
 『この人はねぇ!僕たちの兄さんだ』クラウドの体内にもジェノバ細胞が生きている。考えようによっては、クラウドは彼らの兄ということになる。そして、彼らからすればクラウドは、
 『…裏切り者なんだよ』…母親を滅ぼした裏切りものというわけか。

 意味不明と思われたカダージュの言動に、だんだんと筋が通ってきた。

 だが、そんなことよりももっと大きい問題がある。
 彼らがジェノバの思念によって創られた生命だとすれば、何をするつもりなのかはわかりきっている。
 「リユニオン、か」
 声に出して言ってみる。ジェノバはたとえその体が破壊されても、体の断片が集まり、リユニオン(再結合)することで復活する能力を持っているのだ。
 ヴィンセントも同じ考えのようだった。
 「そう。奴らの最終的な狙いはそれだろう。神羅が持っているジェノバの断片を執拗に狙っているのもそのせいだ…ただ…」
 意味ありげに言葉を区切って、ヴィンセントはオレンジの瞳をまっすぐクラウドに向けた。
 「問題は、それだけで終わるのかというところだ」
 クラウドはヴィンセントのこの一言の意味するところをもう理解していた。
 さっきヴィンセントは、星痕は人の体内にジェノバの思念が侵入した結果だと話した。つまり――
 
 「星痕に罹っている人間も、リユニオンの対象にされる…?」

 クラウドの導き出した結論に、ヴィンセントは静かに頷いた。

44 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/25(土) 03:36:11 ID:asM7XmSD0
 FF7AC Vincent Valentaine(5)

 カダージュたちがエッジから子供をさらっていったのはそれが理由だったのだ。
 クラウドは先ほどの戦いで見た、子供たちの目を思い出した。あの焦点の合っていない、生気を失った目を。
 あれは、2年前に見たものと、まったく同じ目だった。
 2年前の記憶が脳裏をよぎる。数百という人々が行列をつくり、何かをうわごとのようにぶつぶつと呟きながら、ある一点を目指して歩き続ける光景。
 それがまた繰り返されようとしているのだ。

 ここまで思考が伸びて、クラウドの頭の中に何かが引っかかった。
 …では、そのリユニオンの結果、何が生まれる?
 ジェノバではない。ジェノバもまた操られているだけだろう。さらに後ろで糸を引いている存在がある。ジェノバのリユニオンの特性を利用し、再びこの地上に誕生しようとしている存在が。
 それは―――

 そのとき、すぐ近くで大きな足音がたった。

 とっさに傍らに置いてあったギミックソードを取り、すぐに立ち上がる。その横で、ヴィンセントが右脚の短銃に手を伸ばすのが見えた。
 ガサ、ガサ。
 足音の源は草むらをつっきり、クラウドのほうへと一直線に駆けてくる。目を凝らすが、長く伸びた草に隠れてよく見えない。
 やがてその突然の足音の正体が姿を現したとき、クラウドは心の中で盛大に自分を罵った。
 
 マリンのことをすっかり忘れていた!

45 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/25(土) 03:37:55 ID:asM7XmSD0
 FF7AC Vincent Valentaine(6)

 「クラウド!」
 マリンは叫んでクラウドに駆け寄り、抱きついてきた。クラウドはとっさにその頭に手を添えた。
 いろいろなものを目の当たりにされて、さぞ怖かっただろうに。クラウドはもう一度自分を罵ると、マリンの頭を撫でてやった。
 「クラウド!デンゼルが!ティファが!」
 顔を上げ、涙の溜まった目で訴えてくる。クラウドはつとめて落ち着いた声で「ティファは大丈夫だ」と教えた。
 「ティファと話したい!」
 不安げな声でそう言ってくる。クラウドは携帯を貸してやろうと、ポケットに手を入れた。が。
 ない。
 ズボンのポケットに入れておいたはずの携帯電話がなくなっている。戦闘のときに落としてしまったのだろうか。
 クラウドがぐずぐずしているのを見て、マリンはヴィンセントに向かって「持ってる?」と聞いた。
 ヴィンセントは無言で首を振った。
 マリンはまた不安げな目をクラウドに向ける。
 クラウドはそんなマリンから一旦目をそらし、ヴィンセントを見た。
 「ヴィンセント、マリンをエッジの店まで送ってくれないか?」
 「…お前は?」
 「俺は神羅の連中の話を「賛成しかねる」
 言葉を途中でさえぎられ、クラウドは面食らった。とっさに言葉が浮かばず、「でも…」と言いかけたところで、今度はマリンに遮られた。
 「クラウドはもういい!!」
 突然クラウドから突き飛ばすようにして離れ、マリンはあらん限りの叫び声を上げた。
 
 「どうして私たちの話は聞いてくれないの!?」
 子供特有の甲高さを伴った、しかし憤りと悲しみが混じった感情がむきだしにされた叫び声だった。
 マリンはそれだけ言い放つと、ヴィンセントのほうへ駆け寄っていき、ヴィンセントはマントを広げてその中に少女を隠してしまった。

46 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/25(土) 03:43:13 ID:asM7XmSD0
 FF7AC Vincent Valentaine(7)

 突然のことに一瞬呆然とするクラウド。その後、すぐにマリンを説得しようとした。
 「マリン…もう少し待ってくれ。これから戦いが始まるはずだ。でも、ただ戦えばいいってわけじゃない…わかるよな?」
 しかし、クラウドの詭弁は、ここでも簡単に粉砕された。「わかりません!」という、ティファ譲りの説教めいた一言によって。
 クラウドはヴィンセントを見た。しかし彼はクラウドに助け舟を出すようなことはせず、鋭い目で睨みつけてくるだけだった。
 気まずい沈黙が降りる。
 
 しばらくして、クラウドを睨んだまま、ヴィンセントが沈黙を破った。
 「…お前の言っていることは正しい。これから戦いが始まるだろう」マントの裏のマリンを一瞥してから、続ける。
 「しかし、この子の言っていることはもっと正しい」そして、またクラウドを睨みつける。
 「クラウド…お前はこの2年間、どこで何をしていた?」
 鋭く、刺すような目。火のような色をした瞳が、クラウドには本当に燃えているように見えた。
 「この2年間、お前はどこをほっつき歩いていた?その重荷を一人で背負って、どこに隠れていたんだ?」
 クラウドは黙り込んでしまった。しかし、ヴィンセントの火のような瞳は無言で詰問を続ける。
 ―――なぜ、私たちの話は聞いてくれなかった?
 ―――なぜ、私たちの声に耳を貸してくれなかった?
 ―――なぜ、お前のその重荷を、私たちにも背負わせてくれなかった?
 ―――どうなんだ。クラウド。

47 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/25(土) 03:50:00 ID:asM7XmSD0
 FF7AC Vincent Valentaine(8)

 クラウドはその視線を受け止め、俯いた。頭の中には、いつも通りの言い訳が浮かんでいる。
 『だって…見殺しにしたんだぞ?』
 だが、クラウドは、その言い訳を振り払い、ヴィンセントの目を正面から受け止め、口を開いた。
 「…すまない」
 ただ謝るだけという、無責任な答え方だった。答えになっていなかった。
 それでも、ヴィンセントの視線を和らげてくれた。
 「別に謝ることではない。ただお前の場合、、独りで背負い込むのは愚かだというだけのことだ」
 今度は、クラウドにも余裕が出来ていた。
 「…それ、あんたが言えたことなのか?」
 こういってやると、ヴィンセントは「フン」と鼻を鳴らして顔をマントの大きい襟にうずめた…笑ったのだろうか?
 そんなヴィンセントに、クラウドはなおも訊いた。
 
 「ヴィンセント…罪って、許されるのか?」
 「…試したことはない」
 
 その言葉が頭の中で反芻する。試す…試す、か…
 それから、クラウドはマリンに声をかけた。
 「帰るぞ」と。
 少女は朗らかな表情を浮かべ、ヴィンセントのマントから出てくる。
 「やってみるよ」
 クラウドはヴィンセントの目を見たまま、決然と言い放ち。そして、「結果は連絡する」といい、マリンとともにその場を後にした。

 「…それは電話を買えということか?」
 独り残されたヴィンセントに、クラウドは答えなかった。

48 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/25(土) 03:55:24 ID:asM7XmSD0
お久です。なんかどんどん筆が遅くなってる気がするAC書きです。
例によって例のごとく、かなり冗長な仕上がりになってしまい、
しかも最後のほうは字数制限の影響もあって、かなり雑です。
三兄弟が2歳児どころか0歳児に設定変更されてたり、星痕についてかなりマイ設定が入ってたり、
ヴィンセントがやたらと饒舌になってしまいましたが、話全体の掘り下げが必要だったので…

まとめサイトさん
前みたいなトラブルを避けるために、今回からサブタイトルを先に出す形でやっていこうと思います。
そういうことでどうかよろしくお願いします。

49 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/25(土) 13:36:04 ID:N6SRhfG30
とてもいい感じだと思います
北の大空洞などの新しい設定も本編と上手く馴染んでいますし
というかかなり(・∀・)イイ!!
ヴィンセントとの対話の場面はクラウドが結論に至るまでがよく出来ていますね
また、シリアスな会話の中に入る茶化した言葉も自然でした

ただ、マリン登場〜考えを変える、までのところ性急な気がします
変だと感じたなら時間のある時にでもまとめサイトで推敲してみたらどうでしょうか?

これから、タークスvs思念体戦とバハムート戦ですね
物語も終盤、楽しみに待ってますw

50 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/25(土) 21:26:07 ID:asM7XmSD0
>>49
そうした感想をもらえると励みになります。
>マリン登場〜
やっぱりそう感じさせちゃいましたかorz
自分で見ても明らかに薄いなぁ…不徳の至りです。
機会があったら書き直したいです。いつになるかはわからないけれど。

51 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/26(日) 02:58:22 ID:FoqZTKie0
>>FF7AC
冒頭の大空洞、ヒーリンでの出来事、忘らるる都での戦闘
…それらの点と点がきちんと結ばれていて、読みながら
頷かされる説得力がありました。GJ!!
あと、さり気なく電話屋の伏線が張られているところで思わずワロタw

52 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/26(日) 19:22:29 ID:ann1aiqa0


53 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/26(日) 19:48:37 ID:Bh4/7zog0
ACキターー!!11
そろそろくるかと待ち望んでましたよ!

54 :494 ◆yB8ZhdBc2M :2006/03/26(日) 20:29:24 ID:LhHdXNzu0
>>48
了解しました。
あとNO5以降のサブタイトルも前スレで挙げてもらった物を使わさせていただきます。

55 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/27(月) 11:53:51 ID:QcLSA/3Z0
頑張ってないことになるよ。
すくなくともネット見てダラダラと自分の能書きをたれる時間を少なくしなさいよ。
人に感動させてもらうばかりじゃなくて、自分が他人を感動させる技術を身につけないさいよ。
あなたが感動した野球選手だって、野球で努力してきたんでしょ。家でダラダラとテレビみてないでしょ。
いろんなものを犠牲にして野球やってきたから野球選手になってるんでしょ? まず、その覚悟からしてみちゃんにはないよね? 
だから、所詮みっちゃんの言ってることは、言い訳でしかないのよ。なにか見て感動するのならその辺の人と同じだよ。
ただのおっさんだよ。ミュージシャンとしてどうゆう努力をしているかをこの人は問うているんだよ?

56 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/27(月) 12:43:32 ID:xhWvHjfC0
なにその壮絶な誤爆

57 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/27(月) 21:31:37 ID:UtteByvvO
圧縮怖いから携帯から保守

誤爆ワラタw

58 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 01:11:16 ID:nLefWWop0
保守

59 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 17:08:45 ID:eTIymAUP0


60 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/28(火) 18:07:30 ID:QehfogIE0
保守派陣営

61 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/29(水) 00:44:42 ID:gkHiKQO4O
保守

62 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/29(水) 13:26:07 ID:DFMHNivk0
今日ガルバディアシティを走っているバスに乗ったら、俺の座っている横に立っていた女の
子(消防高額念位)が、ハ・クションとくしゃみをしたと同時にブビィーと音
がした後鼻が曲がりそうなくいら臭いウンコ臭がしてきた。多分、その女のが
子ウンコを漏らしたに違いない。その子の格好は、Gパン・ジャンパーで悪臭
発生後俺と同じく3つ目の停留所で降りていった。俺は、尾行を開始した。

63 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/29(水) 13:27:32 ID:DFMHNivk0
すると公園のトイレに入って行ったので俺もついて行くと
個室に入ったので音を聞いていた。カサカサ紙でシリ拭く音や
「うんうん ぶりー」と音が聞こえたので俺はすかさずとびらを開けてやった。
すると尻回りウンコちゃんだらけの若い小学生女がこっちを向いて尻を出したまま逃げようとしたので
個室に押し込んでやった。
「おじさん何も悪いことしないからね。わー臭いウンコちゃん漏らしたのかい?」と言って
拭いてやった。肥タンゴのようなくさいにおいに逝ってしまった俺は「もういいよ」と言うのを無理矢理
手を引っ張って「このままではまだくさいから・・・そうだおじちゃんが舐めてあげよう」と言って
思い存分味わいつつお尻を舐めてやった。トウモロコシのカスがあったりして「トウモロコシ食べたのか?
そのまま出てるよ」と言って口の中に入れて味わって食べた。最後は肛門に指を突っ込んでウンコを
ほじくり出して指を舐めた

これはどういう状況なのかね?
こういうことされると、掃除するとき大変なんだよ

64 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/30(木) 00:50:23 ID:c8E7ntoL0


65 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/30(木) 02:12:10 ID:wDuYWj/m0
保守。
>>62-63は無効で。

66 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/30(木) 19:12:57 ID:jZ/bmIPg0


67 :299:2006/03/31(金) 02:28:31 ID:N+TWJZK20
「セシル殿……」
立ち尽くしたセシルの肩にヤンが手を添える。
「よく――」
労いの言葉を書けようとした時――
「僕はパラディンになったのに……やはりこういう事でしか出来ないのか?」
別段、口にした疑問はヤンに問いかけたものではなかったのであろう。
「僕は時々、自分が何をしてるんだろうか? そういった疑問に駆られる事があるんだ」
ただ、己の悩みを一人呟く。答えなど求めてはいないのかもしれない。
「私には……この者はあなたに殺して欲しかったのだと思います……」
しかし、ヤンは何故か答えてしまう。
「え……」
意外な答えだったのか、答えが返ってきた事に驚いたのか、セシルはヤンを見つめる。
「それがこの男の最低限、人間として残ったものでしたのでしょう……」
確かに、ベイガンは自らに止めを刺せと最後に言った。
「でも……これでは前と変わらないんじゃないかな……」
既に、ベイガンとの対峙時の勢いは無く、弱々しい声でセシルは呟く。
「僕は、パラディンになって良かったのかな……?」
「セシル殿」
簡潔に、きっぱりとその名を呼んだ。
「私はその瞬間を見てはいない。それに、貴殿の全てを理解できるつもりはない……」
瞬間とはセシルがパラディンの力を得た事であろう。
「ですが、貴殿の通り道を否定するな。以前にもそういいましたな。それだけは分かって欲しい。
それに……」
ヤンの言葉は続く。
「悩みや、過ちはどんな人間でも背負っているものです。あなた一人だけではありません」
「でも……僕はパラディンなんだ……」
「それは自己過信ですよセシル殿」
詳しくは語らなかったセシルであったが、ヤンには悩みの意図が分かったのか。

68 :299:2006/03/31(金) 02:29:22 ID:N+TWJZK20
タイトル入れ忘れ。
FINAL FANTASY IV #0378 4章 5節 忠誠と野心(50)です。

69 :299:2006/03/31(金) 02:33:03 ID:N+TWJZK20
FINAL FANTASY IV #0379 4章 5節 忠誠と野心(51)

「あなたはパラディンになった。ですが、世界の悩みや痛みを一人で背負う事ができるわけはない」
「…………」
「特別な存在だから特別な振る舞いをせねばならない義務は何処にもありませんよ」
パラディン――光ある者。全てを背負う者。
だが、それは買い被りすぎだったのか。少なくとも今のセシルにとって、自らの理想視するパラディン像
は重荷すぎるものだったのだろう。
「有り難う。ヤン」
真意から出た言葉だった。少しだけ、ヤンの言葉で楽になった気がしたのだ。
「いえ、あなた自信が再会時言った言葉です。自分はそんなに凄くない……と」
自然と出た感謝の辞を受け止めつつ、そう言った。
「そうだったのか……」
すっかりと忘れかけていた。その間に沢山の事が頭を駆けめぐっていたからなのだろう。
「とりあえず、あまり多くは抱えすぎるなという事です……」
それだけ言ってヤンは言葉を切った。
「すまない。ヤン」
彼には自分の悩みを共有させたくない。自分の悩みだから、人に相談するのは迷惑だ。
例え話した所で、それに対する完璧な回答は得られない。
そう思って、今まで自分の内なる者はなるべく、仲間にも明かさなかった。
だが、ヤンはそんな自分もお見通しだったかもしれない。
考えれば共に国に仕えてた身。理由は違うが国を離れた者同士。
セシルのような若者の悩みを幾多も聞いてきたのかもしれない。

70 :299:2006/03/31(金) 03:04:33 ID:N+TWJZK20
FINAL FANTASY IV #0380 4章 5節 忠誠と野心(52)

「いえ、ですが私とて所詮は他人。己の問題の最終解決は、己の手によるものです」
無責任でしょうが……と付け加える。
「分かった」
「まだまだ私も未熟者ですから……互い様です」
ヤンはそう付け加えた。
「はは……」
セシルは少しだけ笑った。

しばらくの間を空けて、セシルは奥に続く扉へと手を見た。
「行こう……」
自分が今する事は、王と決着をつける事……それに、カインとも。
何もかもが中途半端で終わってしまっている関係を修復するのだ。
そう決意し、セシルは扉へ手をかけた。

その時のセシルには……すっかり失念していた事があった。
あの何度も記憶に蘇った夢。
それが――実現する予兆は心の片隅にあったのかもしれない……
しかし、もしそうだとしても、誰が阻止できるだろうか?
どのみち、セシルは……人は何者かに助けられるしかないのか?

71 :299:2006/03/31(金) 03:07:07 ID:N+TWJZK20
FINAL FANTASY IV #0381 4章 6節 双肩の意志(1)

玉座の間は、現在の城内の喧噪とは、無関係のように静かであった。
既にここを訪ねるものがいなくなって久しく、以前の謁見のように、数多くの
兵士が規則正しく並ぶ事もない。
そんな中、ただ一人だけがこの場に佇んでいた。
部屋の中央に備え付けられている玉座。その持ち主である者――バロン。
この国を治める者の名であり、近年その行動が民に不審を抱かせている者。
彼は、玉座の傍ら、高くなった場所から、天井近くに造られた窓から見え風景を
一望していた。
そんな静かな場所を打ち破る物音、唯一の入り口である、豪勢な鉄扉が開く音が部屋中に響き渡る。
「陛下!」
威勢良いかけ声と共に進入者が入ってくる。
「セシルか……」
向き直り、その者を見た王は、僅かな小声で名を呼ぶ。
「そうです! セシルです。あなたに話があって此処まで戻ってきたのです……
「…………」
激しく問いつめるセシルに対し、王は無言を貫く。
「陛下! 答えてください!」
本当なら、父上と呼びたかったが、今はひたすら私情を抑え、王の心境と明かそうとする。
「はて……何がお前を其処まで、怒りに触れたのだ?」
王の答えは素っ気ないものであった。まるで他人行儀なその姿にセシルは困惑する。

72 :299:2006/03/31(金) 03:08:23 ID:N+TWJZK20
FINAL FANTASY IV #0382 4章 6節 双肩の意志(2)

「それよりも――」
「陛下! はぐらかさないでください! 私がこの国を発ってから、明らかな変化がありました。
民も不審を抱いてます! 貴方ほどのものが気付いてはいないと思えません!」
少なくとも、セシルを知っていた王は、そこまで愚かではないはずであった……
「ベイガンは……あなたの為に、人である事を捨てました……」
「ほう……」
「知っていたのでしょう! 陛下!」
あまりにあっけない王の答えに、声を荒げるセシル。
「彼は……彼だって、国がこんな事にならなければ野望を抱かなかったでしょう……なのに、あなたは!」
「…………」
「それに何故、魔物を徘徊させたのです。挙げ句、他の者の進言を拒むなど……私の知っている陛下は……」
一旦、そこで口を紡ぐ。
「父上……あなたはそんなに、そんなに弱気人間では……なかったでしょう……」
セシルの声は先程までの強みが急に退いたかのように、弱かった。
そして、今まで言わなかった事。王を父と呼んだ彼は、王の変貌は怒りよりも悲しみに映ったのだ。
「セシル」
その熱意に静かに答える王。だが、そこには過去、息子のように自分を可愛がった暖かみはない。
「先程も言おうとしたのだが、よくぞ戻ってきたな……もう一度、私の元でやり直す気はないかね?」
何を言ってるのか、最初は理解できなかった。
「父上、ふざけているのですか!」
あそこまで問いつめた自分に今更何を……あまりにも突然な事だ。

73 :299:2006/03/31(金) 03:10:45 ID:N+TWJZK20
FINAL FANTASY IV #0383 4章 6節 双肩の意志(3)

「しかしその為にはな……その姿は頂けない」
「!」
言って、自分を見回すその目を見て、一つの可能性にやっと気付いた。
「パラディンはいかんぞ……そうだ、いかんのだ」
そんな事は……必死でその可能性を否定しようと思うが、セシルの頭ではその可能性が段々と真実味を
強くしていく。
「何故、パラディンの事を知っているんですか……?」
その裏打ちを取ろうと一つ質問をする。
「それくらい知っているぞ! 何せ私はお前を良く知っているのだからな……」
充分であった。
「父上、バロン!」
初めて、父の名を呼んだような気がした。
考えてみれば、不思議でない。
ベイガンも魔物になった。兵士達の一部もそうであった。
魔物が城にいる……これだけ国が変わっているのだ。だったら、国の代表たる王も……
「はははは……お前には分かっていたんだな。前から……」
もう驚きはしない。ベイガンの豹変は衝撃たる出来事であった、そこで慣れてしまったのか。
あるいはもっと前から、それこそ、異変を察知し始めた時。何もかもが元通りだったあの時から
予感も覚悟も全て持っていたのかもしれない。
「いつからだ!」
いつになく、声を低くしてセシルは言った。
「答えなくてもわかるだろ!」
そうであった。
「ならば! 誰の命令だ!」
「分かるだろ!」
「ならば何故!?」
「命令だ。ただそれだけだ」

74 :299:2006/03/31(金) 03:12:36 ID:N+TWJZK20
FINAL FANTASY IV #0384 4章 6節 双肩の意志(4)

返答の多くは予想通りだった。しかし、このものから、洗いざらいに真意を語らせたいそう思った。
そこまで述べた後、更に続ける。
「まあ、詳しく教えてやろうか……お前の慕っている王、父上とやらはお前が想像した通りの人間で
あったな……」
それが本当の王の話だとう事は分かった。そして、顛末も……
「大人しく、指示に従えば命だけは……助けてやったのにな」
此処にいる王が偽物ならば、かつての王、セシルの最も敬愛するその人物の行方は何処に?
そして面前の者は最も高い可能性で、セシルが予測した可能性を述べた。
「最も、そんな事なら、彼は望んで死を選んだだろう……お前ならそう言うだろう!」
その通りであった。
「だがな、寂しがらなくてもいいぞ……そう、すぐに一緒にしてやるからな!」
「そんな事!」
させてなるものか! 一心でセシルは先手を打つかのように切りかかろうとする。
だが、敵も咄嗟に身を翻す。
「おっと、俺はスカルミリョーネのように無様な事はせんぞお。何しろあいつは四天王になれたのが不思議なくらい
よわっちい奴だったからなあ!」
「ならば貴様も!」
「いかにも! ゴルベーザ様が四天王! 水のカイナッツオォ!!!!」
言うが、直ぐに壁際まで跳躍。そのまま手を壁につく。
「セシル!」
部屋の入り口の扉からテラ達がやってくる。
「話は此方にも聞こえていたぞ……」
テラには何処か遠慮がちに言う。セシルの心情を察してであろうか。
「今はあいつを倒さねばならない!」
「あれは……」
ヤンが王であったものを見て、驚きがちの反応を示す。
王は玉座後ろの壁に手をつき、その体を壁へと浸透させていた。
「気を付けろ……奴も四天王の一人だ……」

75 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/31(金) 13:10:56 ID:CSZrWVq30
カイナッツォキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!

76 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/32(土) 01:24:23 ID:xnIjTdoQ0
 FF7AC ”Help me”(1)

 砂の地面を細く浅い川が流れ、月光に照らされて白銀に輝いている。
 まるで筋のようなその川は、他の幾筋もの川と合流し、しだいに太さを増しながら下へ下へと流れていく。
 そしてその終着点、小さな水溜りのほとりに、狼がいた。

 狼は一匹だけだった。
 刺々しい体毛は曇った空のような鉛色をしており、吠えることを忘れてしまったかのように沈んでいる。
 狼は水溜りのふちに座り込み、沈んだ眼で小さな池の底を見ていた。
 
 そこにあったのは機械仕掛けの耳だった。
 ただ声を受け止め、伝えるだけで、最後までそれ以外の用途に使われることのなかった耳。
 他人の耳に呼びかけ、その声に応えることができるということを、最期まで知らなかった耳だった。
 壊れかけているその耳は、中に水が浸入したせいで回線がショートし、記憶にとどめられていた声を周囲にまき散らしていた。
 『わたし…リーブです。
  お仕事はどうですか?チラシ見ましたけどあんなので商売になるんですか?』
 『仕事の依頼だって』『ひさしぶり〜!ユフィちゃんだよ!』
 『クラウドさんらしいですけどね』『すげえデカイやつだ!』『クラウド…元気にし『よければお手伝いしたいので』
 『でなあ、帰る目処がついたんでマリンに『また電話させてもらいます…では』『てるの?』『会いに行くからな!』
 『伝えとけよ!じゃあな!』 
 ただ聞き流されただけの、一度も返答を返されなかった声。だが、決して記憶から消えることのなかった声。
 狼は物憂げにたたずみ、微動だにせずにそれらの声を受け止めていた。
 だが、この時。
 その耳は、完全に機能を停止する寸前、記憶に保存されていないはずの声を再生した。

 「悪く思ったこと…一度もないよ。
  来てくれたでしょ?それだけでじゅうぶん」

 聞いた者を安心させるような、包み込むような声だった。
 狼はその声を聞いても、ただじっとしているだけだったが、しばらくして、哀しげに一声鳴いた。

 そして立ち上がり、木々の陰へ向かって、こそこそと逃げ出してしまった。

77 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/32(土) 01:31:02 ID:xnIjTdoQ0
 FF7AC ”Help me”(2)

 カダージュたちと戦ったところへ戻ると、そこにはもう誰もいなかった。
 カダージュたちはもちろん、子供たちも、だれもいない。残されているのは、数十人分の小さい足跡と、折れた木や抉れた地面といった戦闘の痕跡だけだった。足跡を目で追ってみたが、途中で地面に大穴が開いており、そこから先は途絶えていた。
 「………」
 クラウドは無言で辺りを見回す。探していたものはすぐに見つかった。
 黒塗りの大型バイク、フェンリルが、道の端で無様にひっくり返っていた。クラウドは灰色の砂で汚れたバイクへ歩み寄り、少々苦労しながら立ち上げると、破損した箇所はないかとバイクの具合を見始めた。
 「…どう?」
 マリンが横から心配そうに声をかけてきた。
 …ヤズーとロッズの銃撃で前面のいたるところに弾痕ができ、派手に地面を転がったせいでカウルから伸びた角のような装飾は片方が折れている。ずいぶんと見てくれが悪くなっているが、ライトにはひびが入っただけで割れてはいなかった。
 エンジンもホイールも無傷。走る能力に影響はない。
 「大丈夫そうだ。乗ってくれ」
 クラウドは答えると、先にバイクに跨り、カウルを開いて中に剣を収納する。
 マリンが後ろに乗り、腰に腕を巻きつけるのを待つ間、クラウドは改めて辺りを見回してみた。
 携帯電話はどこにも見当たらなかった。
 クラウドはマリンに「つかまってろよ」と声をかけ、ため息をついてから、バイクのエンジンを吹かした。

78 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/32(土) 01:31:45 ID:xnIjTdoQ0
 FF7AC ”Help me”(3)

 メテオによる決定的な破滅は防がれたとしても、それでも被害は甚大なものだ。
 2年前の大災害以来、森林が激減するとともに土地は干からび、それによって目に見えるほどの勢いで海水が干上がり、海面の高さがどんどん下がっているという。もとは海底だったところが地面となって地上に露呈している所も少なくない。
 クラウドがバイクを走らせているのも、そうして出来た陸地の一つだった。
 両手に海が広がるこの細い荒野は、ミッドガルのある東大陸と、忘らるる都のある北大陸を結ぶ橋の役割を果たしていた。そのため、バイクやトラックでも二つの大陸を往復することが可能となり、それは物資の円滑な流通、そして復興活動の活性化に直結している。
 皮肉にも。自然崩壊の連鎖反応が、人類の復興を助けているのだ。
 そろそろ夜が明けようかという時間だった。満月が見えた星空は消え、どんよりとした曇り空に支配され始めている。
 エッジまであと4、5時間という所まできていた。クラウドはバイクをさらに加速させる。
 ―――途端に、急停止した。

 「…ん?」
 派手に車体を降り、急に止まったで、ずいぶん前から眠っていたマリンが起きてしまい、まだ眠そうな声を出した。
 その直後、一機の大型ヘリが2人の上空に現れ、独特のローター音を轟かせながらバイクの前方に着地する。
 やがて神羅のロゴマークがペイントされた機体のドアが開いて中から一人の男が現れ、クラウドはその男を睨みつけた。
 「探したぞ、クラウド」
 タークスの制服に身を包んだ男、ツォンは、そうクラウドに声をかけた。

79 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/32(土) 01:35:19 ID:xnIjTdoQ0
 FF7AC ”Help me”(4)

 独特な雰囲気を醸し出す東洋系の顔立ちをしたツォンは、切れ長の鋭い目でクラウドの睨みを受け止めている。彼はかつて――今も、か?――タークスのリーダーを務め、神羅の頭脳とまで呼ばれた猛者だ。
 後ろに座っているマリンが、不安げにクラウドの背を見上げるのを感じた。
 「…ヴィンセントに助けられたそうだな」
 「ああ。危ないところだった」
 ツォンはヘリの機体にもたれてクラウドの牽制を軽く受け流す。目はクラウドに向けたままだ。
 「俺に何の用だ?」
 慎重に探りを入れた時、クラウドはツォンの左腕の袖から包帯の端が漂っているのに気づいた。
 見れば制服である紺色のスーツのところどころに、擦り切れたような痕がある。
 「…お前に知らせなければならないことがある」
 窶れた頬についた土埃をぬぐい、ツォンは思わせぶりに切り出す。
 「ならさっさと言ってくれないか?こっちは急いでるんだ」
 強気に言ったクラウドだが、この時から何か厭な予感を覚えていた。
 昨日の夕方、セブンスヘブンでレノとルードと話したときと同じ感覚だった。タークスの面々は妙なところが似ている。
 ツォンは細い目を少し大きく開き、単刀直入に答えた。
 「社長が誘拐された」
 
 「ルーファウスが?」
 「ああ。少し前に私とイリーナがヒーリンに戻ったときには、もぬけの殻だった。
  レノとルードも昨日はずっとエッジにいたらしい。一応連絡は取ったが…」
 ツォンの答えに少し驚いたクラウドに、彼は落ち着き払った様子で付け加える。
 「…カダージュか」クラウドは少し間を置いたあと、口を開いた。いつまでも見つからないジェノバの肉片に業を煮やして、強引な手段に出たか。
 「十中八九、そうだろう」ツォンも同意する。
 「それで、居場所は?どこにいったのかはわかるのか?」
 ここでツォンが沈着な無表情を崩し、にやりとする。「奴らにしては洒落たことを考えたものだ。ロッジに置手紙を残していった」
 「それで、どこに?」 
 クラウドは聞いたが、その答えはなんとなくわかっていた。
 「…エッジだ」
 ………これがさっきの予感の正体か。

 クラウドの腰に巻きついたマリンの腕に、力が入った。

80 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/32(土) 01:42:27 ID:xnIjTdoQ0
 FF7AC ”Help me”(5)

 「奴らが社長をエッジに連れて行って何をしでかすつもりかは知らないが…まあ、だいたいの察しはつく」
 だいたいの察しはつく。クラウドも完全に同意見だった。もちろん、マリンもだ。
 クラウドに抱きついている少女の腕には異様なほどの力が入り、震え始めているほどだった。クラウドは片手をハンドルから離し、その腕を努めてやさしくさすった。
 「…俺にどうしろと?」
 なんとかマリンを落ち着かせようとするクラウドに、ツォンはあくまでも冷静に答える。もう真顔に戻っていた。
 「どうしろとは言わない。ただ…」
 「先輩、そろそろ行かないと」
 女の声が会話にとつぜん乱入してきた。クラウドが声の元を見やると、ヘリの操縦席からイリーナが顔を出していた。2年前と比べて初々しさが抜けている。秀でた額から血を流した跡があった。
 ツォンはヘリの中に体をすべりこませながら、言いかけた言葉を口にした。
 「ただ、伝えておいたほうがいいと思ってな」
 そしてドアを閉め、クラウドがジェノバの在り処やその他もろもろのことを問いただす前に、さっさと飛び去ってしまった。
 
 「…どうするの?」
 東洋系の男との話を聞き、すっかり不安になってしまったマリンが問いかける。
 ルーファウスという人についてはよく知らないが、デンゼルや子供たちをさらった者達がエッジに向かっているという情報の意味するところは、彼女でもわかりすぎるほどわかるのだ。
 クラウドは黙り込み、大型ヘリの巨体が地平線に消えるまで見送ったあと、口を開いた。
 「…マリン、やっぱり戦うしかないみたいだ」

81 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/32(土) 01:43:32 ID:xnIjTdoQ0
 FF7AC ”Help me”(5)

 その声には憂いが混じっていた。
 「でも…」「俺じゃあいつらには勝てない。とめられない」
 マリンは言いかけた言葉を、クラウドの憂い混じりの声がひきつぐ。
 だが、次のクラウドの言葉からは、その憂いは追い出されていた。
 「それなら…それなら、別の手がある」そして、決然とした声と眼でマリンのほうを振り返る。
 「マリン、ちょっと降りてくれないか」
 マリンが言われたとおりにバイクから降りると、クラウドも一旦バイクを折り、さっきまで座っていた革張りの座席を外す。座席を外した部分は、よくあるトランクのような収納スペースになっていた。クラウドはその中に手を突っ込み、中から
 見るからに古い型の携帯電話を取り出した。
 「それって…」
 「ごめんな。これで先にティファに電話すればよかった」

 訝しげな顔をしたマリンにそれだけ言うと、クラウドは手作業で番号をダイヤルし始めた。

82 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/32(土) 01:44:30 ID:xnIjTdoQ0
 FF7AC ”Help me”(6)

 プルルルルルルル。プルルルルルルル。
 機械的な呼出音が連続して耳に流れ込んでくるとき、風が肌寒いと思った。
 正直に言って、怖かった。いまさら連絡をよこして、どんな反応をされるかと思うと怖かった。
 だが、もう逃げるわけにはいかない。何を今更、などという言い訳で逃げることは、もうできないのだ。
 クラウドはそう自分に言い聞かせ、相手が電話に出るのをただ待った。 
 
 だが、相手はなかなか応じなかった。
 1分以上もコールしているのに、電話に出る気配がまるでない。
 2分がたち、諦めかけたそのとき、クラウドの耳に雷のような怒声が突進してきた。
 「っせーっつってんだろ!!誰だテメエこんな夜中に!!!」
 「…悪いな。そっちはまだ夜だったのか」
 クラウドは自分のその一言に度肝を抜かれた。ごく自然に、本当に自然に言葉が出てきたのだ。さっきまでの緊張が嘘のように。
 「…ん?その声、どっかで…」「俺だよ。シド。クラウドだ」
 電話の向こうで、シド・ハイウィンドの息が止まったのがわかった。

 「え、おま、な、クラウ……お前か!?」
 「そんなに驚かなくてもいいだろ」
 オーバーだが自然体の、いかにも彼らしい反応にクラウドは少し苦笑した。笑うことができた。
 『お、おう、すまねえ。なんせいきなり…」
 シドはとりあえず落ち着こうと息を吐いたが、次の瞬間、また声が大きくなった。「って、なんで俺様があやまんなくちゃならねえ!元はといえば…」
 「ああ。何年も電話しなかった俺のせいだ。悪かったな」
 こみ上げてきた笑いをなんとか堪えながらクラウドが言うと、シドは今度こそ落ち着きを取り戻し、「…そんで?」と聞いてきた。
 「そんで、何年も電話しなかったおめえが、今になってどういう風の吹き回しだ?」
 クラウドの顔から笑いが消えた。自然に話せていた口も急に塞がった。

 この2年間、クラウドはずっとこれが言えなかった。機会は何度でもあったのに。今までずっとその機会を逃してきた。いや、逃げてきた。
 でも、俺はもう逃げない。逃げるわけにはいかない。だから、言うんだ。

「助けてくれ。みんなの助けがいるんだ」
 なによりも先に言うべきだった、この一言を。

83 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/32(土) 01:45:29 ID:xnIjTdoQ0
 FF7AC ”Help me”(7)

 シドは黙り込んだ。
 実際はほんの数秒間だったが、クラウドにはその沈黙が異様に長く感じられた。
 風が氷のように冷たかった。電話をかけた時に最初に感じた緊張と緊張がまた首をもたげる。いまさら何を言うんだと拒絶されるかも知れない。そんな懸念がクラウドの頭の中を支配する。
 だがそんな懸念は、シドの強風であっけなく吹き飛ばされた。
 「変わんねえな、おめえは。ウジウジしてて、鈍臭くてよ」

 クラウドは目を見開いた。
 文面だけを見れば、その一言はひどく冷たく、乱暴だ。が、言うシドの声は、どこか嬉しそうで、笑い混じりだった。
 「ったく、クラウドさんよぉ、もっと早く言えってんだよ。あ?どんだけ待ったと思ってんだ」
 クラウドは胸に懐かしい暖かさを感じた。もう寒さなど微塵も感じない。それは思えば、2年前は当然のように感じていた暖かさだった。
 そう。当然のように。いつから忘れていたんだ?
 いつでもいいとクラウドは思った。もう思い出したのだから。
 「…ありがとう」自然に、というよりは無意識に出た言葉だった。
 シドは気にするなとばかり、フンと鼻を鳴らした。

 それからクラウドは、星痕の原因がジェノバであることと、その陰で暗躍するカダージュたちの存在、そして、カダージュたちがエッジに向かっていることを、出来るだけ速く、わかりやすく話した。
 「…なるほどな」
 「それで頼みがあるんだ…あんた2ヶ月くらい前、ハイウィンドの復元に成功したって言ってたよな」
 「おうよ!そんでもって名前は…」
 クラウドは少し笑いながら、シドの声を遮った。
 「”シエラ号”、だろ?奥さんとはうまくいってるのか?」
 少しの間。照れくさそうな「まあな」という声が返ってきた。
 我慢しきれず、クラウドは大声で笑った。怒って声を荒げるシドに、あわてて謝る。
 
 「わかった。それでみんなを乗せてきてくれ。みんなには俺から連絡しておく」
 「そりゃあいいぜ。じゃ、後でな」
 いろんな意味での「そりゃあいいぜ」だった。シドは電話を切ると、暗い寝室を見渡し、ふかーくため息をついた。
 「やっと目ぇ醒ましやがったか…あの馬鹿は…」

84 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/32(土) 01:50:17 ID:xnIjTdoQ0
 FF7AC ”Help me”(8)

 クラウドはPHSを耳から離し、深くため息をついた。
 結局、彼が恐れていたようなことは何もなかった。それどころか、みんなは、少なくともシドは待っていてくれたのだ。2年ものあいだ、ずっと。ずっとクラウドの答えを待っていてくれたのだった。今も2年前と変わらず、クラウドを支え続けていてくれたのだ。
 にもかかわらず、ありもしないことを恐れてずっと彼らから逃げてきた自分。
 なんだか、バカみたいだ。
 いや、「みたいだ」は要らないか。クラウドは思った。俺は正真正銘のバカだ。
 クラウドは笑い出した。思えばさっきから笑いっぱなしだったが、今度のは一際大きい、会心の笑い声だった。
 ひとしきり笑った後、マリンが怪訝そうな目で見ているのに気づいて、なんとか息をつく。
 そして、手元のPHSを見た。
 これがあるのをすっかり忘れていた。使うのをやめて2年になるが、その機能はまだ失われていなかった。
 今まで使っていた携帯を失っても、まだこれがあることを思い出せてよかった。まだ仲間たちと連絡が取れることを。
 このPHSの存在と、仲間との絆を忘れたままエッジに向かっていたら、忘らるる都の二の舞を演じるだけだっただろう。
 今度はそうはならないと、クラウドは確信していた。なぜなら、今度はみんなの助けを得られるから。
 ここで、先ほどのツォンの言葉がひっかかった。
 『ただ、伝えておいたほうがいいと思ってな』
 ………………。
 いや、考えすぎだ。
 クラウドはそう割り切り、再びPHSを手作業でダイヤルする。番号はすべて暗記していた。

85 :FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN:2006/03/32(土) 01:51:01 ID:xnIjTdoQ0
 FF7AC ”Help me”(8)

 クラウドが変わった。
 型の古い携帯で誰かと話し、大声で笑うクラウドを見て、マリンはそう思った。
 そこにいたのは、さっきまでのクラウドとは別人だった。紅いマントの人と話しているときのウジウジした彼とは、一目見ただけでも印象がまったく違うのだ。
 カダージュたちが倒れたわけでもなければ、彼らがエッジへ向かっているという事実が変わったわけでもない。それでも、マリンはその背中を見ているだけで、妙な安心感を覚えた。
 そしてマリンが気づいたのも、このときだった。
 変わったんじゃない。元に戻ったんだと。
 「この」クラウドは、紛れもなく、2年前に一緒に暮らしていたときの、あの頼もしいクラウドだった。
 重病を抱え、独り逃げるようにしてマリンたちから離れたクラウドは、いま帰ってきたのだ。
 「ああ、ユフィか?俺だ。クラウドだ………シドと同じ反応だな、お前」
 また誰かと話しだすクラウドの後ろ姿は、ひどく楽しそうだった。

86 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/32(土) 02:00:16 ID:xnIjTdoQ0
なんと、俺が書いた中では初めての完全オリジナルシーンという罠。299氏のようなアレンジ力が欲しい…

まとめサイトさん
サイトに掲載するとき、>>80-81>>84-85はそれぞれ1レスの文という扱いで(つまり一緒に)載せてください。
本文が長すぎて1レスに収まらなかったものですから…
それはそうと、最近、ことあるごとに何かお願いしてるようなorz

>299氏
GJでした!
バロン王を父と呼ぶセシルが切ないです。

87 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/32(土) 02:27:19 ID:1Fp+svPV0
お二方ともGJっす!
てかなんでバロン王がセシルの親父なの?

88 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/32(土) 02:31:24 ID:4ZTUtVEB0
新作乙です。
>>87
育ての親という意味かと。

89 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/32(土) 07:12:31 ID:mR6wbG+dO
新作乙です。

W>>父上・・・セツナス
そういや、セシルにとっちゃ父親なんだっけなぁ

AC>>所々、日本語の誤用が気になったのは俺の器が小さいからだ。きっと。

ZクラウドからACクラウドって繋がらんよな〜、て思ってた。
ACって全体的に説明不足な気がする。こういうシーン必要だよな。
これなら繋がる。GJ。

90 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/03/32(土) 10:19:29 ID:HYjBLQfQ0
>>89
わざと説明不足にしてるって言い訳もある
「みんなで色々『こうなんじゃないか、ああなんじゃないか』って話し合いながら見て欲しい」って、野村が言ってたよ

91 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/02(日) 09:43:25 ID:q7ZRBmNm0
この程度なら許容範囲じゃね?>誤用
まあ俺も少し気になったけど

92 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/03(月) 01:18:11 ID:OVOfdwB90


93 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/03(月) 20:05:10 ID:tuhtCmltO
携帯から保守

94 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/04(火) 05:04:46 ID:bvaajkp50
保守

95 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/04(火) 09:23:27 ID:3E1mCUzx0
AGE

96 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/05(水) 00:21:07 ID:Z2NWK8DC0
保守

97 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/04/05(水) 08:09:12 ID:K7G6zy8cO


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