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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/29(日) 16:15:16 ID:vi16nIqg0
ここは
「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」
ということを想像して書き込むスレです
短編/長編小説形式、レポ形式、オリジナル、何でも歓迎です

・基本ですが「荒らしはスルー」です
・スレ進行が滞る事もあります、まったりと待ちましょう
・荒れそうな話題や続きそうな雑談は容量節約のため「避難所」を利用して下さい
・スレの性質上レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角右アングルブラケット二つ)+半角数字(最後に投稿したレス番号)」)をつけると読み易くなります

前スレ
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら七泊目
ttp://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1148786712/

まとめサイト(書き手ごとのまとめ/過去ログ)
「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://corona.moo.jp/DQyadoya/bbs.cgi

2 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/29(日) 16:16:07 ID:vi16nIqg0
自治スレに依頼ありましたので立てました。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら八泊目
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1162106116/

3 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/29(日) 16:18:50 ID:7YDdUD3c0
>>1
乙!ありがとう!!

4 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/10/29(日) 16:27:12 ID:yv0LFzOi0
>>1

お疲れ様です!
助かりました!

5 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/29(日) 19:33:46 ID:WivZ6EyHO
>>1
乙ったら乙

6 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/29(日) 23:33:26 ID:dxUpsGCe0
>>1
乙v

7 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/30(月) 00:54:31 ID:XOwPvQmRO
もし目が覚めたらそこがDQ世界の>>1乙だったら

8 : ◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 12:06:15 ID:5kSvPDkf0
>>1
乙です

投下します
拙いですがよろしくお願いします

9 :プロローグ/夢 ◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 12:07:06 ID:5kSvPDkf0
妙に耳に馴染んだメロディが、頭の奥に響いてくる。
―名前を、あなたの名前を決めてください。
男とも女ともつかない不思議な声が
メロディよりもくっきりと脳を揺らす。
名前?名前なんて自分で決めるもんなの?俺の名前は、
そこで気がついた。ああ、なんだドラクエだ。ドラクエのオープニングだ。
―冒険の書を作成します。あなたの名前を決めてください。
そういえば昨夜、寝る前に再プレイやろうか迷ったっけ。
だからこんな夢・・・、
ああ、そうか夢か。意識があるまま夢、ってたまに見るもんな。
それにしてもドラクエって。はまりすぎじゃね?俺。ちょっと痛くね?


10 :プロローグ/夢 ◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 12:08:57 ID:5kSvPDkf0
―冒険の書を作成します。あなたの名前を決めてください。
えーと、そうだな。名前名前。
なんにしよっかな。いっつも悩むんだよなー。
前なんて付けたっけ?ああティムだ。
ティム・ロビンスのティム。思いつき。ダセ。
ましな名前思いつかねーよ。やべー、どうするかな。
あ、パパスの息子だからサンでいっか。サン。
うん、まあ悪くないだろ。ムスコとかよりはいいだろ。多分。
「サンです」
―サン。あなたの冒険の書が作成されました。
ではお気をつけて、冒険をお楽しみください。
言いながら声が遠くなる。
ドラクエ久し振りだなぁなんて思っていると
次第に頭の中の音楽も遠ざかっていく。
やがて世界が暗転した。

11 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 12:10:02 ID:5kSvPDkf0

不意に体がぐらりとゆれて、俺は目を開けた。
揺れは続いている。
地震かと思って身を固くしたけれど
それとは違うとすぐに気付いた。
波に乗るような緩やかな揺れが
リズムを刻むように体を掬っている。
―――波。

『どうした?まだ寝ぼけているのか?』
重低音の落ち着いた声。聞いた事の無い声。
『少し表の風に当たったらどうだ、長い船旅で疲れたろう』
それが自分に向けられていると気付くまで
僅かに時間が必要だった。
そしてその言葉の意味を理解するのに、もう数秒。

12 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 12:10:58 ID:5kSvPDkf0

弾かれるように身を起こすと、木の板で出来た壁が目に入った。
視線を巡らす。
木造建築の古いアパートのような、狭い部屋だ。
部屋の隅に同じ木材の小さなテーブルと、椅子。
そしてその椅子に窮屈そうに腰掛けた、がたいの良い男。
使い込んだ跡の目立つ皮製と思しき粗末な着衣を身に着けて
切りっ放したような髪を後ろでひとつに纏めている。
男は、体躯にそぐわないほどのやさしい眼差しで俺を見つめて、言う。
『疲れが取れないようならまだ休んでいてもいいぞ。
船が着いたら起こしてやるから』
一瞬思考が混乱する。
勿論、俺はこんな部屋で眠りについた記憶も
船に乗った記憶さえもない。
それならここはどこか。この男は誰か。
俺はここで一体何をしているのか。

夢うつつで聞いたあのメロディがよみがえる。
名前を決めてください。あの声。

頭を振る。そうだ夢の続きだろう。
ならば早く覚めればいいのに。

13 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 12:14:23 ID:5kSvPDkf0

額に当てた手の違和感に、俺はまたはっとして自分の掌に目を落とした。
小さい。
体をそろそろと動かして、床に下りる。低い。
見たことのない部屋、だけどそれくらいの感覚は残っているはずだ。
ベッドの縁に座り込んでも、足がつかない。
床に足をつくと、ベッドが腰の高さに
通常なら考えられない高さにある。

おぼつかない足で一歩、二歩と歩を進める。
体が上手く動かせない。
まるで自分の体ではないように。
『やっと目が覚めたのか?
そんなところにいないでこっちに座ったらどうだ』
さっきの男が穏やかな口調で語りかける。
座っているはずの男の表情が
顔を上げないと見えない高さにある。
肩にかかる違和感に顔を傾け手を当てると、
紫色のマントと伸びきった黒い髪が自分の頬に触れた。

14 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 12:15:07 ID:5kSvPDkf0

―――ドラクエ。5だ。幼少期、始まりの船だ。
髪の毛も払わず頬をつねる。
夢か現実かを確かめるために、今、他に方法が思いつかなかった。
じわりとした痛みが頬に広がる。

納得のいく回答を導き出すには今のところ一本の道しかなかった。
理屈では、只ひとつだ。
けれど理屈というなら、それは一番納得のいかない、理解できない答えだった。

『なにをしてる?来ないならこっちから行くぞ?』
のしりとした大きな体をおもむろに動かして、男が俺の元に歩いてくる。
恐ろしいまでに聳え立った男の体から
太い腕が二本、俺の両脇を捉えた。
軽く肩の高さまで持ち上げられる。
普段より更に高い位置の目線。その双眸をくしゃりと崩して、
『父さんな、この旅が終わったら少し、落ち着こうと思ってるんだ。
あそこは小さいが良い村だ。早くお前にも見せてやりたいな』
そう言うと男は、ゆっくりと俺に負担がかからないように床に下ろし
一度だけ俺の頭に手を乗せると
のしりとまた椅子に腰を下ろした。

15 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 12:16:22 ID:5kSvPDkf0

父さん。・・・パパス。
理解と同時にゲームでの悲しい別れが脳裏に浮かび、目が潤む。
額の間が引きつるように痛み
俺は瞬きをして涙腺を押さえ込んだ。
パパス。やっぱりそうだ。ドラクエだ。
じゃあ、やっぱりこれは夢か。
だって現実ではありえない、悪い夢としか説明がつかない。
ゲーム脳ってやつかな。相当やられてるっぽい。
しかしそれならそれで、夢を楽しんじゃえばいいんじゃねーの?
こんな夢、見たことないよ、俺。

開き直りに似た気持ちで俺はパパスに声を掛けた。
「パ・・・っと、父さん」
『ん?どうした?』
テーブルの角のため死角になっていたが
パパスは読書をしているようだった。
ぱら、とページを繰る小さな音が狭い船室に響く。
「俺、外見てくるよ」
『うん・・・ん?お前
いつからそんな大人びた口をきくようになったんだ?』
穏やかな顔はそのままに
少し意表を突かれた色を瞳に映して、パパスが顔を上げる。
「あ、その辺の本に書いてあったよ?じゃあ僕行ってくるね」
努めて子供らしい口調で言った途端
しまった、幼少期主人公は文字読めないじゃんと気付いて
突っ込まれないうちにと俺は慌てて階段を駆け上がった。

16 : ◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 12:19:39 ID:5kSvPDkf0
読みにくいですね・・・

後ほどもう少し続きを

17 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/30(月) 12:20:45 ID:Uj5f7EUi0
支援

18 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/30(月) 13:00:44 ID:Uj5f7EUi0
>>16
乙です!

5の主人公は波乱万丈なのですごく楽しみです。
読みにくいのは、「」や『』でくくった会話も段落にしちゃえば解消するかもですね。

19 : ◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 17:20:06 ID:5kSvPDkf0
>>17
感謝です

>>18
ありがとうございます

段落わけるのは考えたんですが、
自分の文章のテンポとあわなくて苦戦してます
ともかく、できるだけ段落を増やしてみました

と言うわけで>>15続き投下

20 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 17:21:03 ID:5kSvPDkf0

木の扉を開けると外は快晴だった。
明かりが差すとはいえ室内にいた俺の目に
鮮やかな太陽の色が映る。

反射的に目を閉じても、瞼を通して
容赦ない光が眼球を刺すのがわかった。
手を庇代わりに額に当てて目が慣れるまでをやり過ごす。
波は穏やかに船体を揺らし続けている。

『よう、ぼうず。今ごろ起きたのか』
頭の上から降ってきた声に目をやると
丁度逆光に紛れて真っ黒く、舵を掴む男の影が見えた。
男からも見えるように大きく頷く。今度は背後から
『ぼうずのうちは寝るのが仕事だもんな』
がっはっは、と同じような背格好をした男が大きな笑い声を上げる。

21 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 17:22:33 ID:5kSvPDkf0

船員だ。白いシャツを邪魔臭そうに肩までたくし上げ、
頭には明るいオレンジ色のバンダナを巻いている。
『父さんはまだ部屋かい?ぼうず一人で迷子になるなよ』
からかうように舵の船員が笑う。

そこまでバカじゃねーよ、と
心の中で毒づきながら改めて甲板を見渡すと
船室と同じ大きく組まれた木造の船の向こう側に
透き通るような青い空と、真っ白くそれを反射した波が見えた。

陸地らしきものはまだ見えない。
ただただ広がる青と、輝く白。
現実でだってこんな鮮やかな色の景色は見たことなかったな。
俺は少しだけその景色に見とれた後、くるりと踵を返した。

22 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 17:23:35 ID:5kSvPDkf0

とことこと小走りに船の上を駆け回る。
急ぐ必要はないのだろうけれど
幼児の歩く速度は実際は既に成人している俺には
気が遠くなるほどまどろっこしいものだった。
しかもすぐに汗が噴出し、息が上がる。

声を掛けてくる船員を適当にかわしながら船倉に潜り込むと、
案の定大きな樽が幾つも整然と並べられ、その奥には宝箱
・・・というよりはただの荷物箱のように見えたけど・・・
が幾つも並べられてあった。
樽を覗き込むがしっかりと封がしてあって開くことが出来ない。
中はいっぱいに何か詰まっているらしく、
持ち上げて割るなんてことも出来そうになかった。

なんじゃこりゃ、約束が違うじゃねーかよ。
ぶつぶつと文句を言いながら幾つかの樽を覗き込む。
そのうちのひとつ、縄で縛られた隙間に何か挟まっているのが見えた。
破らないように引き抜くと何かのチケットのようだ。
やっと見つけた獲物を大事に腰袋にしまいこみ
更に俺は船倉の探索を進めた。

23 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 17:25:21 ID:5kSvPDkf0

宝箱は厳重に施錠されてひとつとして開かなかったけれど、
別の樽の隙間から小さな袋に入った
お茶の葉のようなものを見つけた。

きっとこれが薬草だろうと思い
甲板にあった樽も入念にチェックし
結果何枚かのチケットと薬草を見つけた。

外の探索が終わって、少し休もうと扉を開けると
元の船室よりわずかに高価そうな装飾が目に飛び込んだ。
手前に小奇麗なテーブルと椅子のセットが置かれ
初老の紳士風の男と中年太りの皺の目立つ男が
親しそうに話し込んでいる。

扉の閉まる音に紳士風の男が顔を上げ、
『やあ、ぼうや。ひとりかい?』
と微笑んだ。
口にくわえたパイプから白く煙が立ち上がる。

ああ、船長だな、と俺は理解した。
明らかに船員とは趣の違った真っ白な制服に
帽子を頭に乗せてゆったりと椅子に腰掛けてこちらを見ている。
『ぼうやはお父さんと旅をしているんだよ。な?』
もう一人のほうに目をやりながら笑顔を崩さずに、船長が続ける。

24 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 17:27:13 ID:5kSvPDkf0

『この子の父さんには世話になってるんでね、
今回は特別ってことで同乗してもらってるんだ』
ああ、と頷きながらもう一人が俺に笑顔を投げてよこす。

愛想笑いでやり過ごして
俺はテーブルの横をすり抜けて奥へ向かった。
背中から、かわいいねえ、と男がつぶやくのが聞こえた。

奥の本棚にはぎっしりと本が詰め込まれている。
何冊か手に取ってみたが
内容はさっぱり何がなんだかわからなかった。
流石に日本語で書いておいてくれるほど
親切な世界ではないようだ。

喋ってるのは日本語なのに
と腑に落ちない感を抱きながらも
改めて自分がこの世界には
不釣合いな存在であるような気がしてくる。

25 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 17:28:18 ID:5kSvPDkf0

更に奥には間仕切りの置かれたバスルーム。
隙間から中を覗くと、下着一枚で鏡に向かって
鼻歌交じりに髭を剃る船員の後姿が見えた。
こいつは憶えてる。
逆に脅かしてやろうかと忍び足で背後に近付くと
鏡の向こうで男がにやりと笑うのが見えた。あ、やられた。

『がおーーーーーっっ!』
型通りの台詞に思わず表情が固まる。
いまどきがおーはないよなあ。
と込み上げる笑いを俯いて堪えていると
別の意味に取ったらしい男はにやにや笑いを隠さずに、
『おう、泣かなかったじゃねーか。やるな、ぼうず』
言いながらがしがしと俺の頭を撫でる。

堪えきれず噴出すと
一瞬きょとん、とした顔になった後
男はわっはっはと威勢よく笑いだした。
つられて俺も笑い声を上げる。

何事かと言う様に船長ともう一人の男が
入り口から覗き込んでいるのが視界の端に見えた。

26 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 17:29:44 ID:5kSvPDkf0

『ぼうずももう一人前だなあ』と
もう一度頭を撫で回そうとする男を振り切って
俺はまた甲板へ出た。
休むつもりがとんだ大騒ぎだ。
けれど、なんだか気分が良かった。

誰も彼もがおおっぴらに感情を曝して
おおっぴらに暮らしている。そう確信できた。
俺の世界では、そんなオープンな人間なんていない。
きっと滅多にいない。

青空と風を感じながら
散歩がてら船長室と反対側の甲板に出ると、
そこにはあからさまに高価そうな装飾の施された扉があり
扉の前にいた警備兵にあんまり近付くなと怒られた。

うろうろしていると甲板にいた船員に
『ぼうずなにしてんだ?』
と訝しげな目で見られたが気にせずやり過ごす。

一通り船の探索を終えたところで
海のずっと向こう側に
やっとわずかに陸地の影が見えた。

27 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/30(月) 17:31:26 ID:Uj5f7EUi0
支援

28 : ◆u9VgpDS6fg :2006/10/30(月) 17:31:39 ID:5kSvPDkf0
今日はここまでです
長々ありがとうございます。

またそのうちに。

29 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/10/30(月) 17:53:05 ID:Uj5f7EUi0
>>28

乙です!
期待wktk

ここまでまとめました
http://ifstory.ifdef.jp/index.html

30 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/31(火) 03:33:39 ID:pPE4Dy0n0
お。新職人がいる
パパスの末路を知っているようなので
これからどうなるのか期待してます

31 : ◆u9VgpDS6fg :2006/10/31(火) 10:06:09 ID:i5dXIzU50
>>タカハシさん
まとめありがとうございます。
皆さんと並べるのが
なんかすげー嬉しいです。

>>30
感謝です。
期待に添えるか自信ないですが
自分なりに頑張ってみようかと。

船をちゃっちゃと終わらせます
(十分長いですが)
>>26続き投下

32 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/31(火) 10:07:49 ID:i5dXIzU50

にわかに船上が慌ただしくなった。
船長が部屋から出て
眩しそうに目を細めて
久し振りの陸地を見つめている。

足元にそっと立つと、
『ぼうや、そろそろ港に着くからお父さんを呼んでおいで』
さっきと変わりない優しい声色で俺に言った。
眼差しの奥に僅かに寂しさが浮かんでいるのを
俺は気付いたけれどそのまま船長の傍を離れた。

船の到着を告げると
パパスは感慨深げにひとつ頷いて
二年ぶりだな、とその蓄えた髭の向こうで呟いた。
大きな体を椅子から引き上げ
数少ない荷物の点検に入る。

33 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/31(火) 10:09:13 ID:i5dXIzU50

『お前も忘れ物をするんじゃないぞ。
タンスの中も見ておいてくれ』
言われたとおりに引き出しを確認する。
その中にも薬草と、見覚えのない
小さな木の実の入った小袋があった。

首をかしげた俺に気付いて、
『体を強くする種だ。
それはお前にやるから、必要な時に使いなさい』
そう言い残すとパパスは
荷物袋を抱えて階段へ向かう。

慌てて後を追い外に出ると
あんなに小さかった陸地は
もうすぐそこまで迫っていた。

青空に映える鮮やかな緑色の草原と、その向こう
青々と連なる低い山の輪郭
でこぼこと陰を落とす岩肌までがはっきりと見て取れる。

34 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/31(火) 10:10:31 ID:i5dXIzU50

やがて船はゆるやかに速度を落とし
すべるように船着場に近付き、ぴたりと動きを止めた。
船首から聞こえていた波を分ける音も止み
静かに自然の波に船体を踊らせている。

ほっとしたような、
一息つくような空気が船員の中から立ち込め、
それはパパスがタラップの方へ向かうと同時に
別れを惜しむ空気に取って代わった。

『パパスさん、元気でな』
『ぼうず、男だったらもう泣くんじゃねえぞ』
あちこちから船員の歓声のような声と
小さな拍手さえ聞こえてくる。

その瞳に笑みを湛えたまま、
パパスは船に向かって一礼した。

『船長、世話になったな』
『パパスさん、また乗ってくださいよ。
いつでも、待っていますんで』
『うむ。またいつか、世話になる時は頼む』

名残惜しげに談笑するパパスと船長の並んだ向こう側
タラップの下から、別の大きな声が聞こえた。

35 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/31(火) 10:12:35 ID:i5dXIzU50

『船長、ルドマン様のお着きですよ』
なんだ?という表情で
パパスが船着場の方に視線を流す。
その体の隙間から首を伸ばすように下を覗き込むと
品の良い高価そうな衣服を纏った
恰幅の良い紳士が(これぞ紳士、って感じだ)
片手を挙げて船長に合図を送った。

『ルドマン様!お待たせしました!
・・・船の持ち主の方ですよ』

最後の台詞はパパスに向けて言い、頷くパパスの横
深々とお辞儀をした船長の頭の先から
大儀そうに紳士が顔を出す。

『この船に、乗り込むときが一番大変ですなあ』
人当たりの良い笑顔を顔いっぱいに浮かべて
紳士―ルドマンは失礼しますよ、と甲板に足を下ろした。
船員の表情に走る緊張感が
空気を伝って俺にも感じ取れた。

36 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/31(火) 10:14:08 ID:i5dXIzU50

『久し振りの船旅ですわ。
胃がやられなきゃいいけどねえ。
船長、なるべく揺れないように頼むよ』

船長に向かって笑いかけるルドマンの後ろ
タラップの最後の一段を踏み越えられずに
父に助けを求めるようにひらひらと舞う小さな手を
ひょい、とパパスが抱えあげる。

『ちょっとお嬢さんには難しいようですな』
おやすいません、と振り向いたルドマンの前に、
上等なワンピースを身につけた少女が足を着いた。

青色の鮮やかな細い髪が
潮風になぞられてさらりと揺れる。

『すまんな。大丈夫かい』
問いかけにこくんと頷いて
少女は父の上着に顔をうずめた。

37 :◆u9VgpDS6fg :2006/10/31(火) 10:15:44 ID:i5dXIzU50

『あ、ありがとう・・・』

顔を上げないまま言ったその声は
俺の耳に辛うじて届く程度だったが
パパスはまた穏やかな、愛しそうな笑顔で少女に頷く。

『それでは、私たちはこれで』
小さく片手を挙げて
パパスは大きな足でタラップへと踏み出した。
船員の別れの挨拶が
あちこちから重なり合って船着場にこだまする。

動かすのがもどかしい小さな体を
やっとの思いでタラップの上に下ろし、
振り向かずに真っ直ぐ進むパパスの背中を追う。

最後にそっと振り返ると、動き出す船の上で
不安げに顔を上げた少女のふたつの瞳が
真っ直ぐにこちらを見ていた。

38 : ◆u9VgpDS6fg :2006/10/31(火) 10:17:22 ID:i5dXIzU50
船は以上です。
長くかかってしまいました。
早く戦わせてあげたい・・・

続きはまた。

39 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/31(火) 13:37:13 ID:kRMdjyXi0
新職人さん乙です。
改行入って読みやすくなったと思います。
これからどう展開していくのか、wktk

40 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/10/31(火) 19:35:11 ID:byO8WQ8U0
>>38
乙です

ここまでまとめました
ttp://ifstory.ifdef.jp/warehouse/index.html

41 :カラ虎 ◆XoO/JGcPO6 :2006/10/31(火) 21:11:48 ID:b2yQ2rzD0
寝苦しくて目が覚めた。
寝返りを打とうとしても何かに当たって動けない。
目を開けてみたら真っ暗だった。
全く何も見えなくてやばいくらい焦る。

いつもと違う事態に一気に目が覚める。
とにかく起きようとするが狭くてほとんど動けない。
どうも何かに閉じ込められているみたいだ。どうしてこんな状態なのか全く分からない。
確か昨日は・・・大学行って後はずっと2ch見てて・・・1時過ぎには部屋で寝たよなぁ。
俺なんかしたっけ?


「************、****」
考えにふけっていると人の声が聞こえてきた。
咄嗟に助けを求めて叫ぶ。
「******」
「**********」
「********」
俺の声に驚いたのか一気に騒がしくなる。
ガチャガチャと音がした後、目の前にあった天井が開いた。
ようやく起きれると立ち上がって周りを見わたして・・・・自分の脳を疑った。


42 :カラ虎 ◆XoO/JGcPO6 :2006/10/31(火) 21:13:00 ID:b2yQ2rzD0

そこは石造りの大広間だった。周りの人物も日本ではありえなかった。
玉座に座っている王冠被った爺さん、派手な服を何着も着込んでいるおっさん
鎧と槍で完全武装の兵士達、そして俺のすぐそばにいる帯剣した黒髪の少年と3つの棺桶。
その場にいる全員が俺を見て騒いでいるがこっちはそれどころじゃなかった。
いくら昨日『DQ世界の宿屋だったら』スレ見てたからって・・・。俺もう死んだ方がイイのかな。
自分の脳味噌が膿んでしまった事を嘆いてうつむいたら、そこにも棺桶があった。

ああ、そうなんだ。僕は棺桶に入ってたんだね。
「ふっざけんな何で棺桶なんだよ宿屋どころかいきなり死体扱いか!!」
キレて叫びながら棺桶を蹴ったら有無を言わさず少年に取り押さえられた。情けないが全く動けない。
「*******!!」「*****!」「**********!」
おっさんと爺さんが怒鳴り出し、兵士達に何か指示を出しているのを聞いてようやく言葉が分からない事に気付いた。
なんと言っているのか全く聞き取れない、日本語と英語でない事だけは分かるが全く救いにならない。
ショックで固まっていると兵士達に引き渡され、押されるようにして別の場所へと連行された。


連行された場所はどう見ても牢屋だった。牢屋に入るまいと必死に抵抗していると数人がかりで無理やり投げ込まれた。
俺を投げ込み、錠前をかけ牢番と幾らか話した後兵士達は行ってしまった。
何でいきなり投獄されなきゃいかんのだ。せめて事情聴取が先だろうが。
何とかして牢から出してもらうべく無理を承知で牢番に呼びかけ、謝って、事情を話して、謝って、怒鳴って、脅して、罵ったあたりで諦めた。
分かっていたことだけど言葉が通じない時点で説得できるわけが無かった。
やることが無くなったのでしばらく不貞腐れていると、眠くなったころに食事が出た。
ほとんど具の無いスープで味も素っ気も無かった。おまけに量まで無かった。
それでもありがたく完食し、その日は空きっ腹を我慢して牢屋で寝た。
ちなみに牢番は俺の呼びかけに対して完全に無反応を貫いた。驚くべき職業意識だと思う。

43 :カラ虎 ◆XoO/JGcPO6 :2006/10/31(火) 21:14:32 ID:b2yQ2rzD0
翌朝の目覚めは最悪だった。牢番に水をぶっ掛けられて無理やり起こされた。
鼻に少し入ってしまい随分咳き込んだ。
見ると牢番は他の牢にも水をかけて回っている。どうやら囚人を起こす事が目的みたいだ。
空腹のために2度寝もできず、ただ只管に暇だ。
考えれば昨日丸一日と今日もDQ世界?にいることになる。

これからもこの世界にいる事になるかもしれないので今までの事を振り返ってみる。
まず最初の部屋にいた爺さんは王様だろう。ということはこの国は王国になる。
なら爺さんを説得するなりできれば、牢屋から出してもらえるはずだ。
おっさんや兵士達は王様の部下だとしてあの黒髪の少年はどういう立場なんだ?
彼だけは普通の服を着てた。まぁ日本ではまず見ない服装ではあるけどそこは別の世界みたいだし。
それに俺が入っていた棺桶を開けてくれたのはあの少年だ。王の部下という感じではなかったな。
何者なんだろうか。中学生くらいに見えたが・・・。
3つの棺桶も気にはなるが死体を見たいわけではないので見なかったことにする。   するったらする。

それで次は・・・言葉。言語が違うのはもっともな話だけど、でもどうしろっていうんだ。
辞書も無いのに外国語なんか理解できるわけが無い。身振り手振りでどこまで通じるやら。先行き不安だ。
それから牢屋か。ベットらしいでかい木の箱と石畳の床、それから頼もしすぎる鉄格子と牢番。
本当になんだってこんな事になったのか。いきなり牢屋行きはやはり酷過ぎる。
最後は自分の所持品か。これはもう何回見ても2日前寝た時のままだった。
パンツ・ハーフパンツ・Tシャツ・ソックス。ソックスがあるのは最近寒かったからだ。
これが所持品の全て。他には道具も財布もなにも無い。
せめて眼鏡は欲しかった。俺はかなり目が悪い。
眼鏡がないと視界全てがぼやけてろくに見えない。室内ならまだしも屋外だとかなりきつい。
この世界にも眼鏡はあるんだろうか。無かったらどうしよう。

44 :カラ虎 ◆XoO/JGcPO6 :2006/10/31(火) 21:17:28 ID:b2yQ2rzD0
他に考えること・・・  考えること・・・
後はこれからの事とかか。
例えば何とかして牢屋から出れたとしてそれからどうするか?
異世界に来たのであればいいが、俺の脳味噌がイカレてしまっただけという可能性もあるので下手な行動は取りたくない。
家族から見てすごく痛い人になっただけならまだしも黄色い救急車や官憲のお世話にはなりたくない。
だから犯罪沙汰になる行為は可能な限り避けたい。具体的には傷害とか窃盗とか殺人とか。家族に迷惑かけるしな。
しかし後ろ盾も無く職も金も無い状態で犯罪に触れずに生きていけるとも思えない。
本当に異世界に来たんだったら特に拘る気も無いが、それでも異世界に来たという確証は得たいし。
もしDQ世界に来たのであれば魔法か薬草辺りで十分だからこれは早いうちに・・・ん。

「************」
見ると牢番がこちらに何か話している。全く分からないが話しかけられたことが嬉しくてつい分かった振りをしてしまう。
するとすぐに俺の牢の前に人がやってきた。


45 :カラ虎 ◆XoO/JGcPO6 :2006/10/31(火) 21:18:12 ID:b2yQ2rzD0
昨日の王様とおっさんに少年、それと昨日の兵士達とは違う色の鎧を着た兵士がやってきた。王の護衛だろうか?
「***********」
王様達はやってくるとすぐに俺に話し始めた。雰囲気から察するにどうも質問しているようだ。
何度も話しかけてくるがやはり全く分からない。韓国語や中国語・スペイン語なら聞いたことはあるがどれとも違うようだ。
おまけに訛っているせいかめちゃくちゃ聞き取りにくい。
「*** *ル*  *ルす」
こちらの様子から言葉が通じていないことが分かったのか少年が自分を指差しながら同じ言葉を繰り返す。
きっと名前だ。俺も彼を指差し彼の名前を言う。
『ルス』 「*ルス アルス」『ルス アルス?』
当たったのか少年が嬉しそうな顔をする。
「アルス アルス」『アルス アルス』「アルス」『アルス』
少年が笑顔で握手を求めてくる。握手しながら彼の名前を連呼する。馬鹿みたいだがとにかく嬉しい。
今度は俺が自分を指差しながら繰り返し名前を言ってみる。
『木原 健太』『木原 健太』「*** け**」「キ** ケ**」
アルスも察してくれたらしい。でも発音が難しいみたいだ。なので名前だけにする。
『健太』「ケンら?」『健太』「ケンツ?」『ケン』「ケン」
それでもうまく発音できなかったので名前も短くする。こんなのは通じればいいんだ。
お互いの名前が分かったのが嬉しくて握手しながら呼び続けてたら、おっさんが呆れた顔でこちらを見ている。
それに気付いたのかアルスが途端に大人しくなる。  少し寂しい。

46 :カラ虎 ◆XoO/JGcPO6 :2006/10/31(火) 21:19:17 ID:b2yQ2rzD0
アルスとのやり取りを見ておっさんが王様を指しながら繰り返し喋る。
先ほどと同じやり取りを何度も繰り返すが正直長すぎて殆ど聞き取れない。
おっさんもゆっくり話してくれてるのは分かるので聞き取れた箇所だけでも繰り返す。
さっきの何倍もの時間をかけて少しずつ近い音にしていく。
「*** ア*アハ* **ウ *イ」『アアハ ウィ?』「*** アリアハン *ゥウ *イ」『アリアハン?』
おっさんは俺を見ると溜め息をつき頷いた。どうやら王様の名前はアリアハンで正しいようだが・・・。
アリアハンか。アリアハンといえばDQ3の王国だ。すると此処はDQ3の世界になるのか?
DQ3は好きではあったけどクリアしたことないんだよなぁ。途中でセーブ消えるし。最後にやったのは何年前だろ。

「*******ルビス***」『ルビス ルビス』
考えこんでいると王様がこちらに何か話しかけてきた。ルビス神?精霊ルビスだっけ?もう殆ど覚えてない。
とにかく知っている単語が出たので笑顔で繰り返す。
途端に王様が真剣な表情になり牢番に命令した。命令を受けた牢番はすぐに牢の鍵を開け俺を出してくれた。
牢を出るとアルスが握手してきた。もう片方の手で肩を叩き何か話しかけてくる。
展開が理解できないままとにかく笑って手を握り返すと、アルスは手を離し王様に向き直りなにやら話している。
王様とおっさんが真剣な表情で二言三言話すとアルスは何処かへ歩いていく。
俺が呆けているとおっさんが怒ったような顔でアルスを指差し何か話してくる。
アルスを見やると手招きして俺の名前を呼んでいる。彼に付いて行けという事みたいだ。
異世界冒険というのは楽しそうだし、言葉も通じない上暮らす当てもない。
あれこれ理由をつけて頭をよぎる不安を振り払い、アルスを追いかける。

47 :カラ虎 ◆XoO/JGcPO6 :2006/10/31(火) 21:20:52 ID:b2yQ2rzD0
>>all
受信したのでやった。

反省はしていないが後悔はしている。




正直駄文スマソ

48 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/31(火) 21:29:38 ID:byO8WQ8U0
>>47
おつです!
このスレ知ってる、言葉通じない、な展開おもしろい
後悔しないで!w
ぜひ続きをお願いします

49 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/10/31(火) 21:52:43 ID:byO8WQ8U0
まとめサイト
「カラ虎 ◆XoO/JGcPO6」氏の物語を追加しました
http://ifstory.ifdef.jp/index.html

50 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/10/31(火) 22:31:14 ID:pPE4Dy0n0
>>38
ちょっと序章が長いがなかなか読みやすいので次も待ってる

>>47
言葉通じないの面白いな
アルスがうざいのがいいwwwww

タカハシ氏仕事早いねGJ!!

51 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/02(木) 11:25:58 ID:rbWKMTWfO
保守

52 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/02(木) 17:26:16 ID:pDx9fa4G0
>>39
良かった。ありがとうございます
あんまり道筋からそれない展開になりますが
少しでも楽しんでいただければ幸いです。

>>50
序章にのみならず
今後もガンガン長くなってしまっています。
すいません・・・

タカハシさん
本当仕事早いですよね
乙です。

>>37続き投下します
サンタローズ編開始です。

53 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/02(木) 17:27:07 ID:pDx9fa4G0

『あっ?パパスさん?パパスさんじゃないかい?』
船がゆっくりと離れていくのを見送りながら、
俺は背中越しに男の声を聞いていた。
『いやあ、無事に帰ってきたんだねえ。
よかったよかった。心配していたんですよ』

振り向くと、ただでさえ丸い顔を更にしわくちゃに丸めて
男がパパスの肩に手を置いていた。
懐かしそうに嬉しそうに
パパスが笑うとその手も上下に揺れる。
『わっはっは、痩せても枯れてもこのパパス、おいそれとは死ぬものか』
予想通りの台詞が
パパスの笑い声に混ざり合って俺まで嬉しくなる。

こんな台詞普通使わねーよバッカじゃねーのウケルー
とか思ってたテレビの前の俺、ちょっと死んでこい。

54 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/02(木) 17:28:09 ID:pDx9fa4G0

思い出話に花を咲かせる二人の横をすり抜けようとすると、
パパスが顔を上げて『遠くまで行くんじゃないぞ』と叫ぶ。
片手を挙げて了解の合図を送り
俺はまず樽の調査に取り掛かった。

収穫は殆どなかったが、小さな手が幸いしてか
突っ込んだ樽の隙間から小銭を拾った。
大事にゴールド袋に滑り込ませる。

顔を上げると、風が海のにおいと草原のにおいを運んできて
俺は大きく息を吸った。
排気ガスに汚されていない空気なんて生まれて初めてだ。
こんな風なら少しは救われるかもしれない。この世界に。

俺はこの先を知っている。何もかもを。
忘れていることはあっても
憶えていることはそれより遥かに多いはずだ。

死ぬ人も。生きる人も。

今までデジタルでしかなかった
空想でしかなかった世界が、
初めてはっきりと自分の中に重くのしかかる気がした。

55 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/02(木) 17:29:20 ID:pDx9fa4G0

「うん。お父さんと一緒に」
素直な子供を演じて言葉を返すと、おかみさんは、
『そういえばねえ、ずーっと前に
ここから旅に出た人がいるのよ。
ぼうやくらいの歳の小さな子と一緒にね。
パパスさんは元気かしら。懐かしいわねえ』

小さなお客に頬をほころばせながら
昔を懐かしむ眼差しで窓の向こうを見やる。

「それ、僕だよ。パパスお父さんと一緒に今船で来たんだ」
無邪気に聞こえるように
ゆっくりと言葉を選びながら言うと
おかみさんはまあ、と声にならない声をあげて
俺の顔をまじまじと見つめ、一層明るい笑顔を零した。
『ぼうやがあの時の・・・。じゃあパパスさん、
無事に探し物は見つかったんだね。良かったねえ』

つられて微笑むと、優しく俺の頭を撫で
おかみさんは俺にこんなものしかないけど、
と言いながら飴玉を握らせてくれた。
その手が暖かくて、俺はさっきの自分の考えを恥じた。

56 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/02(木) 17:30:19 ID:pDx9fa4G0

例え夢でも、いや、夢だからこそ
俺の夢の穏やかな日常を、この世界を
壊そうとする奴を俺は許しちゃいけないんじゃないか。

俺は勇者にはなれないかもしれない。
けど、俺がこの世界を救おう。

あまりにもすんなりと、俺は誓いを立てた。
ゲーム脳で良かった、感情移入はお手のものだ。
この時ばかりは俺は自分の単純な脳みそに感謝した。

おかみさんに丁寧すぎるほど丁寧にお礼を言い
俺は改めて表に出た。
相変わらず太陽は眩しく世界を照らしている。

パパスは埠頭で主人と話し込んでいる。
俺は息を整えると、ゆっくりと港の出口へ向かった。

階段を上がる足が覚束ない。初めての戦闘だ。
生まれて初めての、実際の戦闘。
大丈夫。パパスがすぐに駆けつけてくるのはわかっている。
出口でもう一度深く呼吸をして
俺は草原へと踏み出した。

57 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/02(木) 17:32:00 ID:pDx9fa4G0
本日一旦ここまでで
ありがとうございます

58 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/02(木) 17:49:05 ID:pDx9fa4G0
>>54の次が
一区切り抜けてる・・・
非常に申し訳ないですが補填です


夢だ。夢。
誰が死のうと、殺そうと、全てはどうせ夢なんだから。
頭を振って不安を追いやって、
俺は港の傍らの小さな小屋の扉を開けた。

さっきの男のおかみさんか
小太りの女が忙しなく
小さな部屋の中を動き回っている。

外から見ると粗末な小屋も
中は綺麗に整えられていた。
窓際には、一輪挿しから伸びたピンク色の花が
申し訳なさそうに首を傾げている。

『あら、ぼうや今の船から降りたの?』
俺に気付いておかみさんが笑顔を向ける。
子供相手の、屈託のない笑顔。

59 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/02(木) 21:57:23 ID:rbWKMTWfO
応援します。時間がかかっても、必ず書き遂げて下さいね。

今後の展開がとても楽しみです。

60 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/02(木) 22:14:53 ID:PgWgNdu30
GJ!
ちょいちょい入る毒吐きがオモシロイ
DQ5をやったのは消防だったから読んでるとすげー懐かしい
続き期待

61 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/02(木) 23:50:52 ID:BciT6ADO0
ここまでまとめました
http://ifstory.ifdef.jp/index.html

>>50,>>52
まとめサイトに自分の作品が掲載されると、やる気もかなり上がると考えます。
なのでなるべく、すぐに反映できるよう今後も頑張っていきます。

>>58
乙です
抜けた部分を補完して掲載しました。

62 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/03(金) 03:28:49 ID:FFMgrSTsO
うおおおおお!!!!タカハシも乙!!!
これぐらいしか言えないが頑張ってくれ!!!

63 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/03(金) 16:00:19 ID:6+4jwphb0
>>59
ありがとうございます。
長旅になりそうな予感がしますが
大好きなシリーズなのできっと遣り遂げます。

>>60
感謝です
うわ、自分ではツマンネーかなって思ってたので
めっちゃ嬉しいです
自分も初めてやった時は消防でした。

タカハシさん乙です。
ほんとやる気出ます。モチベーション上がります

>>56続き投下します

64 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/03(金) 16:01:42 ID:6+4jwphb0

青々とした低い草の中
申し訳程度に均された道を辿っていく。
このまま寝転んで一休みしたら気持ちいいだろうけど
周りはモンスターの巣窟のはずだ。
低い草に紛れてどこからスライムが襲ってくるとも知れない。

スライムならまだいいけれど、
他のもう少しでもレベルの高いモンスターに遭遇したら。

今現状を考えれば
スライム相手にも致命傷をもらいかねないのだ。
慎重に辺りを見回しながら、
腰に巻きつけてあった木の棒を握り締める。

後ろを振り返るとまだ
港からは数歩の距離しか離れていない。

戻ろうかと思考を巡らせた刹那、
背後から甲高い鳴き声が聞こえた。

65 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/03(金) 16:02:53 ID:6+4jwphb0

動揺し思わずたたらを踏みながら振り向く。
つるんとした質感の、
頭の飛び出た青い物体が、一、二、・・・三つ。
両端に飛び出した目と大きく開かれた笑っているような口で
辛うじて生き物だとわかる。
―――来た。スライムだ。

ピキキ、と鳥の鳴くような声を発して
右端の一匹が飛び跳ねた。
とっさに身を硬くするが
右膝に鈍い痛みが走る。

ゼリー状だって聞いてたけど、結構硬いじゃねえか奴ら。
頭の片隅で冷静な俺が呟く。

左端の奴がまた飛び跳ねるのを
思い出したように木の棒で叩き落すと、
スライムは地面で一回跳ねて体勢を立て直した。

66 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/03(金) 16:03:52 ID:6+4jwphb0

やはり今の俺には、スライムさえ強敵に違いない。
警戒するように真ん中の奴が少し後ずさる。俺は息を呑む。

『サン!サン!大丈夫か!何やってる!』
後ろから不意に響いた怒号に
俺はやっと安堵の溜息をついた。
地面まで揺らすような足音を立てて
パパスが俺の元に駆け寄って来る。

『遠くへ行くなと言ったろう!全く』
俺を守るように立ちはだかるパパスの背中にも
安堵がにじんでいるのを感じて、
俺は思わずごめんなさい、と口にした。

パパスが二匹のスライムを切り伏す間に
難を逃れた別のスライムに一発食らったが、
最後は俺の一撃で三匹目のスライムも動かなくなった。
パパスが振り向き、何か呟くと
さっき受けた痛みが嘘みたいに引いていく。

ホイミ。初めて受けるパパスのホイミ。
幾度となく助けられてきたパパスのホイミ。

67 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/03(金) 16:05:21 ID:6+4jwphb0

『お前にはまだ外は危険だ。
今回はたまたま父さんが気付いたから良かったものの・・・
気をつけるんだぞ』

諭すように言いながら
パパスはスライムの亡骸を簡単に調べ始めた。
つるりと反射する三つの青い死骸から
慎重に何かを抜き取る。

『これはお前にやろう。
初めてモンスターに勝ったごほうびだ。
・・・良くやったな』
そういって笑顔で手渡されたのは、
キラキラと光る三枚のコインだった。

それを頷いて受け取り、ゴールド袋ではなく
小さなポケットに大事に押し込むと
俺はパパスの背を追って歩き出した。

つかテメー外に出ないと話動かねえじゃねーかよ。
と片隅の俺が思ったけれど、
それは心の奥にしまっておいた。

68 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/03(金) 16:07:00 ID:6+4jwphb0

村はすぐそこだとパパスは言った。
俺には途方もなく遠く長い道のりに思えた。

幼い足は長旅に慣れているらしく
すぐに疲労を感じることはなかったが、
それでも村の輪郭が遠く
地平の向こうに見える頃には
足の裏は痛み、ふくらはぎもパンパンに張っていた。

パパスは俺の手を握ったまま
俺のペースに合わせて歩いている。
それは心地好い安心感だった。
けれど戦闘の一瞬、手が慎重に解かれるその瞬間だけは
言いようのない不安が俺を襲った。

痛恨の一撃を食らったらお終いだ。
死ぬことはないと解っているけれど
その一瞬の暗闇がどんなものかを想像すると
無意識に膝が震えだす。

村のゲートをくぐるその時まで、
不安は付き纏っていた。

69 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/03(金) 16:08:07 ID:6+4jwphb0

午後の陽は傾き始めていた。
刻々と伸びていく自分の影を追いながら
緑の合間に見え隠れする村の風景が
少しずつ生気を増していく。

入り口のゲート脇の警備兵がこちらに気付き
一瞬の訝しげな表情を崩し、顔を輝かせた。

『パパスさん?パパスさんじゃないですか!戻られたんですね!』
満面の笑みで兵士がパパスに駆け寄る。
今帰った、とパパスが言い終わらないうちに
『そうだ!皆に知らせなきゃ!皆に挨拶しなきゃ!パパスさん!』
とパパスの手を引いて村の中に駆け出す。
パパスと繋いだままの手を強く引かれて
俺は慌てて歩調を合わせようと足を速めた。

『皆さん!みんな!パパスさんのお戻りですよ!』
村全体に響き渡るような大声で、兵士が叫ぶ。
何事かと顔を出した住民達が、パパスの顔を認めると
一斉に顔をほころばせるのが見えた。

老若男女。宿や商店の店員までもが
嬉しそうにパパスの元へ駆け寄り、無事を喜び、
俺の頭を撫でたり
感慨深げに顔を覗き込んだりしていった。
影が傾いていく。

70 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/03(金) 16:10:00 ID:6+4jwphb0

それぞれに挨拶を済ませ
話し足りない風の村人をなんとかそれぞれの持ち場へと戻し
パパスはゆっくりと、踏みしめるように村の奥へと向かった。

奥まった場所の、古ぼけた一軒家。
質素だが手入れの行き届いた庭。
その向こう、家の玄関先で
小さなふたつの目いっぱいに涙を溜めて
喜びに歪んだ顔の太った男が深々と頭を下げた。

『旦那様。おかえりなさいませ』
『サンチョ。随分と待たせてすまなかったな』
その大きな右手を男の肩に乗せると
男の両目からぽろぽろと雫が零れ落ちた。
『ええ、ええ。旦那様。
生きて戻られると信じてはおりましたが、
この日をどれほどに待ち侘びたことか・・・』

最後は殆ど言葉にならなかった。
深い皺の向こうに長い苦労と不安が垣間見えた気がして
俺は眉間が痛むのを感じて俯いた。

71 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/03(金) 16:12:16 ID:6+4jwphb0
本日ここまでで
ありがとうございます。

ペースを速めたいんですがなかなか
思うように行きません。
だらだらと長くて申し訳ないです。

72 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/03(金) 17:45:27 ID:6qXddtK40
>>◆u9VgpDS6fg氏
文章の節々から5への気持ちが伝わってきます

>ホイミ。初めて受けるパパスのホイミ。
>幾度となく助けられてきたパパスのホイミ。
不覚にもこの2文に目頭熱くなった
現代人の俺としての心理と、パパス息子としての心情、
この二つがない交ぜになった感じが面白いです

あんまり力まないで、出来る範囲で頑張ってください
続き楽しみにしてます

73 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/04(土) 00:14:27 ID:Q2s6duYE0
ここまでまとめました
http://ifstory.ifdef.jp/index.html

74 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/04(土) 05:00:06 ID:HoiSU/fH0
タカハシGJ!!!
いつもすばやい対応に感謝です

75 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/04(土) 18:01:41 ID:BeSJCz7+0
ご無沙汰すいません…

前スレ>>652の続きです…

76 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/04(土) 18:04:05 ID:BeSJCz7+0
                     〜Jacob's Dreame〜
――――――――――――――――――1――――――――――――――――――――

夢から唐突に目覚めた朝の現実感の無さは何なのだろうか。
起きているのは分かっているのに未だに夢の中にいるような、ごちゃ混ぜの感覚。
フィリアはその虚ろな時をベッドの中でしばし過ごす。
夢の内容を思い返そうとしていると、逆にどんどんと現実が意識を支配していった。
毎日の習慣がそうさせたのだろうか。

寝床から抜け出し、身だしなみを整える。
当然誰も起きてはいない。
しかしそのような時間に起きるのがフィリアの普通である。
早朝のお祈りをするためだ。
それは小さい頃から欠かした事はない。
場所自体は特に選ばないが、太陽の当たる所が良い。
だから大抵は外に出る事になる。

ふと隣のベッドを見ると、今日も真理奈の寝相が悪いのに気付く。
最近はその寝相を正してやるのも習慣になってきた。
変な体制なのを直そうと体を動かすと、「むー」と眉をひそめるのも何だか楽しい。
真理奈がちゃんとあお向けになったのを確認して、フィリアは部屋を出る。

夜明け前は静かだ。
特に日が昇り、その光が大地や海を照らし始める瞬間は全ての音が消え去ってしまう。
フィリアはその時が何となく好きだった。
その時に神を見出しているのかもしれない。
船首に向かい、適当な所でひざまずき祈る。
目を閉じ、自分の心の奥に向かっていく。
やがて日の光が自分の体を包み込むまで。

77 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/04(土) 18:05:22 ID:BeSJCz7+0
その時のフィリアはまさしく僧侶の名にふさわしく、美しささえ覚えるようだ。
真理奈のより若いフィリアの顔立ちは、幼さを残しつつも、整えられている。
髪は背中の真ん中辺りまで伸ばされ、一部の隙もない程ストレートだ。
しかし、真理奈と並べて見てみるとどうしても冷たい印象を受けてしまう。
と言うか、真理奈が明るすぎなのかもしんないけどさ。
ところで何を祈っているんだろう。
フィリアに聞いてみたいんだが、邪魔しては悪いしなぁ。

  「お〜フィリアちゃん、めっけ!」

と言ってる側から、突然誰かがフィリアに抱きつく。
その言動からして真理奈しかいないんだけどね。
祈りの邪魔をされたフィリアだったが、動じる事はなかった。
顔を寄せてくるリーダーを若干鬱陶しいとは思っているようだが。
やはりまだ空は暗い。まだ目を開ける時間では無い。
ましてや真理奈が起きてくるなんて事は奇跡に近い。
「んわ〜」とか意味不明な事を口にしているのを見ると凄く眠そうだが、一応起きてはいるようだ。

  「早いね」
  「ん〜? 何か変な夢見ちゃってさぁ…」

そう言いながらワワワ〜とあくびをする真理奈。

  「夢…」

フィリアは今朝の夢の事を思い出す。
やけに生々しく、記憶に残る夢だった。
何だかとても悲しかったような…
……
しかしまたしてもフィリアの思考は妨げられる。
そりゃ頭をスリスリと寄せられれば気にもなるというものだ。

78 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/04(土) 18:06:36 ID:BeSJCz7+0
  「どうして抱きつくの?」
  「え〜? だってフィリアちゃんあったかいんだも〜ん。一人は寒いよ」

ならその格好をまずどうにかしろと言いたいところだが…
毛皮のコートを羽織ってはいるが、丈が足りておらず下半身は相変わらずあらわになっている。

  「寒かったら抱きついてもいいの?」
  「そうだよ〜」
  「……」

そんな寝ぼけ眼の人に説得力も何も無いんだけどなぁ…
けれどフィリアは抱きつかれてるのに悪い気はしなかった。
その感触が心地よかったから。

  「スースー……」

黙り込んだと思ったら、真理奈は抱きついたまま再び夢の中へ行ってしまったようだ。
フィリアはその背中にそっと手を回してみる。

  「あったかい」

そして朝日が二人を包む。

79 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/04(土) 18:08:40 ID:BeSJCz7+0
その数日前――
それはエジンベアの侵略を止め、さらわれた真理奈が無事に返って来てから数日後の事である。

  「プレナさん色々とありがとうございます。船までもらっちゃって…」
  「いいのよ。気をつけて行ってらっしゃい」

そうなのだ。ついに一行は船を手に入れたのだ。
しかもポルトガ製の新品で一級品だ。
国単位の購入でないと買えないくらいの値段で、普通はとてもじゃないけど手が出ない。
さすがにそこまでは…と断ったのだが、この町を救ってくれたお礼だと言ってプレナは聞かなかった。
しかしこの船があれば、これからの旅が楽になる事は間違いなかった。
プレナの押しにも勝てそうにもないので、ありがたく受け取る事にしたのだ。
そしていよいよ出発の日。
港口に浮かぶ船の前で真理奈とジュードはプレナと話していた。
フィリアは船内の準備をしているのだが、パトリスの姿はどこにもない。

  「あ、そうだ! その代わりって訳じゃないけど……はいコレ!」

真理奈が袋からイエローオーブを取り出し、プレナに差し出す。

  「受け取って下さい! プレナさんにとって大事なものだったんでしょ?」
  「でも……」
  「いいんです! ついでにプレナさんを連合大使に任命しちゃいます!!
   私達と一緒にゾーマと戦いましょう!!」
  「真理奈ちゃん……」

満面の笑顔で、そしてなお、力強い。
それを見れば勇気付けられるのはなぜだろうか。
そこに一片の迷いも無いからだろうか。
その向こうに未来を見れるからだろうか。
それに背中を押されたのか、プレナは手を差し出しオーブを受け取る。

80 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/04(土) 18:10:19 ID:BeSJCz7+0
プレナができた勇者への唯一の恩返しの証。
それが自分の所へと返ってきたのだ。
数日前に見た時は辛かった昔を思い出したが、今は違う。
こうして手にすると、勇者にありがとうと言われている気がした。
イエローオーブの輝きはあの頃とまったく変わらずそこにあったのだから。
思わず涙が溢れてくる。

  「おいおい勝手に決めるなよ。プレナさんにだって都合があるんだからよ。
   だいたい、ついでってのは失礼だろ?」
  「い〜のっ! ね〜プレナさん!」
  「えぇ、もちろん。その役立派に果たしてみせましょう!」
  「やった!」

涙を拭いながら返事をするプレナ。
嬉しそうな真理奈と、その後ろで「何がいーんだか」と呆れているジュードの対比が可笑しい。

  「ええっと、連合はこの世界の平和の為に国同士の連携を図る目的で結成されています。
   連合参加にあたっては情報交換や武器・防具・アイテム類の交易、
   さらには人材派遣などを通して魔物との戦いを有利に進めていければ、と思います。
   あぁ、でもそういうのはプレナさん得意そうだから安心ですね」
  「おぉ〜!!」

真理奈が一息付いたところで、ジュードが感嘆の声を上げる。
しかし少し小馬鹿にした感じも含まれている。

  「…何よ」
  「いや? お前がちゃんと仕事してるから凄いな〜って感心したんだよ」
  「ふふ〜ん。まぁね」
  「丸暗記だけどな」
  「うっ…うるさいなー」
  「ふふ。分かりました。この町はもちろん、スーの村の皆も協力は惜しまないでしょう」
  「良かった。よろしくお願いしますね」

81 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/04(土) 18:13:19 ID:BeSJCz7+0
  「……ところでその連合にはエジンベアは参加しているの?」
  「まさか。そんな話をするどころじゃありませんでしたよ」
  「ならその役目、私に任せてもらってもいいかしら?」
  「それは願ってもない事じゃな」

これ以上無いタイミングでパトリスが突然現れる。
狙ってやがったな。

  「おじいちゃん! どこ行ってたの?」
  「ん、エジンベアじゃ」
  「何してたんだよ。朝からいないと思ったら…」
  「すまんのう。その代わりニュースを一つ。エジンベア王が生きておったわい」
  「え?!」
  「一命は取り留めたんじゃが、精神的にまいっているらしい。
   まぁやら命の石というアイテムのおかけで助かったようじゃな」
  「へぇ〜よく分かんないけど」

持ってて良かった命の石。
とか言う標語は無いけど、レアアイテム収集がそんなところで功を奏すなんてな…

  (元気になったら絶対ブッ飛ばしに行こっと)

とは、真理奈の心情。王様…ある意味可哀相だな。

  「あの王はともかく、エジンベアの国力は魅力じゃ。
   連合の意向に同調してくれるならそれに越した事はないじゃろ」
  「えぇ、良く話合えば分かり合えるでしょう」
  「本来なら我々の仕事なんじゃがな……」
  「いえ、どちらにせよエジンベアとは手を取り合いたいと願っていたのです。
   ましてやそれが世界の為となるのなら喜んで」

82 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/04(土) 18:16:25 ID:BeSJCz7+0
  「ありがとうございます。
   あとの詳しい事はアリアハン、及び諸国と連絡を取っていただければと」
  「分かりました。世界の平和、必ず我々の手で」
  「おー!!」
  「ピー!!」

腕を振り上げ、飛び上がる真理奈。ブルーも真理奈の肩で飛び跳ねる。

……

ブルーの事ずっと忘れてた……
この前の戦闘シーンでまったく出番なかったよね。ゴメンね…
激しい炎でも使えれば活躍出来るんだけどなぁ〜(それはドラクエ5です)
しかしこれでエジンベアの事はプレナに任せて、次の目的地へと出発できるね!

さっそく新しい船に乗りこもうとする真理奈をプレナが引き止めた。

  「はい?」
  「真理奈ちゃん、この世界の下にもう一つ世界があるって知ってる?」
  「え?! 知りません…地下帝国ですか?」

何の影響ですかそれは。プレナも分からないようで苦笑する。



83 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/04(土) 18:17:26 ID:BeSJCz7+0
  「かつて魔王ゾーマはその世界から全世界を支配しようとしたのよ。
   私も行った訳じゃないから実感なんて無いけど…
   けど勇者が行ったんだから、違う世界があるっていうのは信じてもいいみたい」
  「ほぉ〜凄いですねぇ〜」
  「うん。だから真理奈ちゃんの世界もどこかで繋がってるのかもしれないって思ったの。
   だとしたら、戻れる可能性はあるんじゃないかって。
   一方通行な訳無いと思うし。
   それに真理奈ちゃんが出会ったゾーマを名乗ったその人もその世界の人なら、
   もしかしたら何か知ってるかもしれないよ」
  「お〜なるほど! さすがプレナさん。考えもしませんでしたー。聞いてみますね!」
  「うん!」

真理奈の元気な声を聞いて安心するプレナ。もうすっかり大丈夫みたいだ。
しかし聞いてみますってアンタ…
魔王と話し合いをするっていうのも、ちょっと考えると何だかシュールな気がするよね。

  「じゃあ行きますね。色々とありがとうございました」

一人ひとりプレナと握手を交わして、一行は出発する。
やはりパーティーというのは良いものだとプレナは改めて思う。
ほんの少しだけあの頃に戻ったような感覚に陥り、勇者と別れた日の事を思い出す。

  「勇者……会いたいな。うん、今度会いに行こう」

プレナは船が見えなくなってもしばらく海を眺めていた。

84 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/04(土) 18:23:16 ID:BeSJCz7+0
今回はここまで

まず長い間行方不明になっていた事をお詫びします…
また物語の続きを書いていきます。

そして新人さんたち始めまして!
どんな物語になるのか楽しみにしてるのでよろしくです。

あとは避難所にて

85 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/04(土) 19:06:02 ID:nbtBpB8L0
うわ…一番最初に入れる文が抜けてた…
タカハシさんまとめの際、〜Jacob's Dreame〜の下に↓の文を挿入を
よろしくお願いします。

〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

    どんどん自分の中の好きって気持ちが大きくなっていく。
           抑えきれなくなりそうなくらいに。

          あなたの声を聞くだけで満たされる。
         あなたの事を思うだけで眠れなくなる。
        あなたの存在を感じるだけで幸せになる。

            でもこの恋は許されない恋。
   誰からも認められず、誰からも祝福される事はないだろう。
        だからこの気持ちは消さなくちゃならない。
他の人にバレないように、自分の心の中だけで止めて、ゼロに戻そう。
  そうすれば彼は私より良い人を見つけて、今よりもっと幸せに…
           そう幸せな日々を送れるはず。

             だから私は忘れます。
              そして姿を消します。
             この妖精の村のように。

            あぁ、あなたに会いたい……

〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜


86 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/06(月) 01:31:36 ID:jLhwfUH20
>>85
おかえりです
指定していただいた一文を教えていただいた箇所へ挿入し、まとめました。
意図と違った場合は指摘してください。


まとめサイト、ここまで更新しました
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

87 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/06(月) 03:40:21 ID:jLhwfUH20
以下の前スレからの続き
http://ifstory.ifdef.jp/log/ifyado_log007.html#R822

〜第五部〜

●魔王ゾーマ

不気味に唸る城
それはライフコッドより北に位置し、魔物を押し込めるおぞましい建造物

「ゾーマ様」

サタンジェネラル
魔王の直ぐ側へ仕える魔物
その言葉に、詠唱を止める魔王ゾーマ

広い一室
魔王が"いのちの源"から力を引き出す為に作らせた、特別で無機質な間
魔物達からは"祈りの部屋"と呼ばれ、魔王に許された者しか立ち入ることが出来ない
そして、サタンジェネラルは入室を許された一人

「何用だ」

声をかけた魔物には一瞥もくれず、魔王は返答する

「は… 私が言うことではないと思うのですが…」

サタンジェネラルは戸惑い、言葉を繋げられずにいる
その気配を感じ、魔王が聞く姿勢を見せた

88 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/06(月) 03:41:15 ID:jLhwfUH20
「言ってみろ」
「は…」

床へ片膝を付けたまま、サタンジェネラルは話し始める

「ゾーマ様はもうすでに全てを超えた力を持ったと、私は思います
 もうそれ以上"いのちの力"は必要ないのでは、と…」

魔王が目を瞑り、高揚したサタンジェネラルは更に続ける

「その力は危険すぎます!
 "いのちの力"だからでしょうか、その… 力として使うには純粋すぎるのです!
 ですから─」

「聞け…」

サタンジェネラルの言葉を遮る魔王ゾーマ
遮られた本人は相当の覚悟を決め進言したのだろう
頭を下へ向けたまま上げることが出来ずにいる

「私は… 闇雲に力を取り込んでいるわけでは、ない」

魔王は決して、己の部下である魔物に対し罰を与える事が無かった
だが、サタンジェネラルは怯えた
それは魔王ゾーマの行動に、異を唱えたからに他ならない
過去に、主の行いを疑問に考える者は皆無だったからだ

「しかし、お前の気遣いに答えようと思う」

これまで行動の理由など、一切を話す事がなかった
それは残された側近がサタンジェネラルだけになった事も、あったのだろう
側近アトラス、バトルレックスは既に倒されている

89 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/06(月) 03:42:03 ID:jLhwfUH20
「私は数百年、いやもっと過去であっただろうか…
 ルビスの遣いと戦った事がある
 その時も私は究極であった…!」

空気が、変わる
普通の人間なら気を失いかねないほどに強烈な、威圧感

「あったにも拘らず、私は倒され意識だけの存在となり…
 その後"いのちの源"へ吸収されることもせず、彷徨った…
 冷たく、永く、遠い時間を さまよったのだ……」

サタンジェネラルは物言わず、ただただと聞くだけ

「ある時、見つけたのだ この"いのちの源"には輝く力が蓄えられていると…
 そしてその力を利用する術を!」

「私はいま、そうして我が身へ取り込み、何者も敵わぬ力を手にしている」

「だが─ だが! ルビスの遣いはソレを上回ることが出来る!」

ドンと、魔王の気に押されるサタンジェネラル

「過去、己の力を過信しすぎ私は斃れた」

「その過ちは二度と! …私は力を取り込み続ける」

「神など、もはや敵ではない」

「人間だ 神々の加護を受ける人間なのだ」


90 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/06(月) 03:46:01 ID:jLhwfUH20
サタンジェネラルは思う

"なぜ、神の加護を受けたあのタカハシという人間を殺さなかったのか"
"確実に、グランバニア南で殺せていたはずだ"

わからなかった
自ら恐ろしい敵だとしながら、生き長らえさせる理由を、知りたいと思った

「それはな…」

心を読まれ狼狽するサタンジェネラル

「私は完璧として存在する必要がある
 あのルビスの遣い… タカハシと言ったか、やつはまだ完全な力を発揮できていない
 完全な力を倒さねば、真に完璧とは言えぬのだ…」



91 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/06(月) 03:53:50 ID:jLhwfUH20
サタンジェネラルが去り
"祈りの部屋"へ一人、魔王はその天井を見上げ、考えていた
決して見せてはならない、側近へ語ったモノとは違う、本心


やがてここへやってくるであろうルビスの遣い
取り込む力としてだけ生かしたつもりであったが─

"いのちの源"を取り込むほどに、我が身の運命とは…

果たして、変えられぬ物なのか
私は滅ぶべき存在だというのか

そのような意識を私に齎らすものは
魔の繁栄を阻む生命の記憶…

ならば試さねばならない
私はだが、破れはせぬ
万有の力を、この手に─



92 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/06(月) 03:54:39 ID:jLhwfUH20
今日はここまで。

93 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/06(月) 17:55:31 ID:bBLweRls0
>>72
ああ、ありがとうございます。すごい嬉しいです。

>現代人の俺としての心理と、パパス息子としての心情
これは結構、自分的にテーマの部分でもあったりするので
伝わってるんだって事がわかって感動しています。

今はまだ勢いがあるんで大きいこと言いますが
自分も楽しみながら、ゆっくり頑張りたいと思います。

>>暇潰しさん
乙です!
真理奈さんかわゆす。(こればっか)
やっぱ会話のテンポ凄いですね。
参考にしたいけど自分の文章じゃ厳しかったり・・・

>>タカハシさん
乙です!
重々しくなる空気がたまりません。
ドキドキしながら読んでます。
続き楽しみです。

自分も頑張ります。気が引き締まります。
>>70続きです

94 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/06(月) 17:56:47 ID:bBLweRls0

やっと部屋に落ち着いても
サンチョはひとしきり泣いて
ひとしきり喜びの言葉を口にしていた。
パパスはひとつひとつに頷いて、
苦労をかけたな、と一言だけ口にした。

子供として掛ける言葉が見つからず
ただそれを眺めていると
階上から小さな足音が聞こえた。気がした。

『おじさま、お帰りになられたのね!お帰りなさい』
階段の手すりから顔を覗かせて
綺麗なブロンドを両耳の上で括った少女が
弾けるように笑顔で階段を飛び降りた。
着地でぐらつき、照れたように頬を赤らめる。
姿を見なくても解った。ビアンカだ。

95 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/06(月) 17:57:35 ID:bBLweRls0

『サンチョ、この子は』
『あたしの娘だよ。パパス、久し振りだねえ』
大きな体を億劫そうに揺らしながら
パパスと同年輩の女がゆっくりと階段を下りて来て言う。
『おかみじゃないか、隣町の宿屋の。
じゃあこの子はビアンカちゃんか。いや、大きくなって』

少女とおかみを見比べるようにぱちぱちと目を瞬き
パパスが驚きの混じった笑顔を浮かべる。
『じゃあダンカンも来ているのか?』

問いかけにおかみは困り笑顔を浮かべ、
『それがあの人ったら、病気で臥せっちまってね。
ちょいとこっちまで薬を貰いに来たんだよ』
『折角なので寄っていただいたんですよ。
旦那様も私も、お世話になっておりますので』
いつの間にかすっかり涙を拭いて、サンチョが口を割る。

96 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/06(月) 17:58:35 ID:bBLweRls0

おかみが椅子につくと同時に、
隅でもじもじと足元を見ていたビアンカが俺の腕を小突いた。
『ねえ、上に行かない?大人の話って長くって』
こくんと頷くとビアンカは
じゃあ行きましょ、と俺の手を取った。

今の俺と変わりない小さな手。
その温かさになんだか俺は妙にほっとした。
なんとなく、ゲームの中でやっと
気を許せる相手を見つけた気がした。

思考が幼児化しているな、と気付く。
ビアンカ―この幼い少女を
同年代の相手と無意識に認識している。

感情移入もここまで来ると少し危うい気がして
俺はほんの少し気を引き締めた。

97 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/06(月) 17:59:41 ID:bBLweRls0

本棚とベッドだけの小さな二階の部屋に上がると
ビアンカは周りを見回して『ここって何もないのよね』と洩らした。
と、くるりと振り向き俺の両手を取って
『ね、あたしのこと覚えてる?
前にうんとちっちゃい頃、会ってるんだから。
でもあんたはもっとちっちゃいから、覚えてないかな』
にこにこと子供をあやすように語り掛ける。

曖昧に頷くとふん、と溜息をついて
『あたしはあんたよりふたつも、お姉さんなんだからね?』
と両手を腰に当て、
威張れる相手を見つけた幼子の
小さな威厳に満ちた瞳で俺の目を真っ直ぐ見下ろす。

『そうだ、ご本を読んであげるわ。お姉さんだもの』
綺麗に編み込まれたブロンドを揺らして
ビアンカは本棚に向き直った。
『どれがいいかな』と口元に指を当てる。

自分より僅かに身長の高い少女の隣について
俺は読めもしない本の中から適当に「これ」と指差した。
ビアンカの瞳が輝く。

98 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/06(月) 18:00:45 ID:bBLweRls0

『仕方ないわね。じゃあそれにしましょ』
大儀そうに分厚い本を抱えてベッドの上に開き置き
うつ伏せに寝転んでぽんぽん、と自分の隣を示す。

やはり高く感じるベッドによじ登ると、
俺は少女に倣って隣にうつ伏せた。
ビアンカは満足そうに頬づえを付いて足を揺らし
鮮やかな挿絵のページを繰っていく。

ビアンカが体を動かすたびに
ブロンドの一本一本がくすりと俺の頬を撫でる。
『そら・・・うーんと、そ、ら、に、・・・く、せし・・・難しいわ』
小さな額に皺を寄せてビアンカが整然と並んだ文字を追う。
あまりに一生懸命な少女の姿に
俺は思わず沸いてくる笑みを抑えた。

『ビアンカ、降りてらっしゃい!そろそろ戻りますよ』
押し黙って文字を追う最中
階下から聞こえた声にはっと顔を上げて、
『残念だわ、宿に帰らなきゃ。ご本はまた今度ね』
ほっとしたようにビアンカが笑う。

99 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/06(月) 18:01:35 ID:bBLweRls0

本を閉じ小さな手を俺の額に重ねて、
『また遊びに来るわ。あんたも字を覚えるといいのに』
もう一度にっこりと笑うと、
少女は本を抱えてベッドを降りていった。

本棚の隙間に分厚い本を押し込み
階下へと降りていくビアンカの背中を見送ってから
俺は体を起こした。
刹那、どすん、と大きな音がして
階下から大人たちの笑い声が響く。

『ごめんなさいね、この子ったらもう』
笑うおかみさんの声を聞きながら階下を覗き込むと
階段の真下、尻餅をついたままの体勢で
ビアンカがけらけらと笑っていた。
俺の視線に気付き
照れ臭そうに唇だけでやっちゃった、と言うと
ひょい、と身軽に立ち上がる。

挨拶もそこそこに扉をくぐると
宿まで送ろうかと言うパパスの申し出を丁寧に断り
二人は薄暗闇の中手を繋いで帰っていった。

100 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/06(月) 18:03:43 ID:bBLweRls0

階段の一番上に座り込んで
暫く大人二人の会話に聞き耳を立てる。

今までの旅のいきさつと、サンチョを気遣うパパスの言葉。
特にこれと言って収穫はなく
立ち上がろうかと言うところで
物音を聞きつけてパパスが口を開いた。

『なんだ、サン、まだ起きているのか?』
そっと立ち上がって階下に顔を出すと
サンチョが丁度腰を浮かせたところだった。

『ぼっちゃん、お疲れでしょう。今日はもうお休みになられますかな。
旦那様、少しお待ちくださいね』
笑顔で俺を抱き上げ、ゆっくりと気遣いの速度で階段を上がる。
サンチョの腕は温かく
パパスのそれとは少し違った力強さだった。

戦いに出る男と、帰る場所を守る男。
その違いだろうかと、心地好く押し寄せる睡魔の中で思った。

101 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/06(月) 18:06:40 ID:bBLweRls0
本日ここまでで
ありがとうございます。

なんだか今週は多忙になりそうです
できるだけ書いていきたいんですが・・・

102 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/06(月) 19:35:00 ID:4Q9Ure2B0
サンタクロース

103 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/06(月) 19:57:33 ID:AxHATyFf0
【中米】オルテガ元大統領の16年ぶり政権奪還が焦点【ニカラグア】
http://news19.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1162641046/

104 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/07(火) 01:05:08 ID:XxdT4ElxO
>そ、ら、に、・・・く、せし・・・
未だにこの穴埋めができなくて気になるなぁ

105 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/07(火) 01:35:44 ID:bIVIv2sb0
空にそびえる鉄の城のくせして生意気なんだからっ!
べ、べべべ別にあんたのこと心配して言ってるわけじゃないんだから、勘違いしないでよねっ!(////)

by アフロダイA

106 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/07(火) 01:48:19 ID:x2QP7WR90
>>105
バロスwwww

107 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/07(火) 04:46:03 ID:nTNgDsiZ0
ここまでまとめました

http://ifstory.ifdef.jp/index.html

108 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/07(火) 09:28:28 ID:65YWBc/B0
>>104
尻尾巻いて過去のサンタローズへお帰り

109 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/08(水) 06:58:43 ID:GPmkFC2Y0
>>91
からの続き


●なれはて〜世界

肌色に伸びる螺旋の建物
ルビスはテリーとミレーユのなれはてを、感知していた

「ありがとう テリー…
 貴方達は死んだわけではありません
 ただ少しの間、眠るだけです 本来の世界が創り直されるまで」

ベッドに横たわるタカハシは
まだ変化を見せてはいない

「タカハシ 早く戻ってきてください
 もう、もう時間がありません…
 これ以上、魔王が力を持ってしまうと手遅れに……」

答えることなく眠るタカハシ

彼はいま、己を自ら縛りつけ─

"静寂の想い"は静静と─


110 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/08(水) 06:59:28 ID:GPmkFC2Y0
●混濁

佇む心
身体は微塵も動かせず
動かす意思も無く

「俺が殺したんだ…」

何万回目の同じ言葉か
思考は一つに支配され
両の手で膝を抱えたまま
固く硬い柔らかな空間

突然、異世界へ飛ばされ
見た事も聞いた事も無い世界での毎日
その日常の中ではっきりと"生と死"を感じ
闘いの中へと身を置いて来た

今まで意識もしなかった
見慣れた景色のように
自分の手で生き死にを決定する世界

己の身を守るため
誰かを守るため
慣れない世界で剣の腕を磨き
不可解な理由で旅する事を強要され
それでも懸命に歩いてきた

それが自分の世界へと戻る唯一の方法であったから─


111 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/08(水) 07:00:04 ID:GPmkFC2Y0
旅のある日
見知らぬ男と出合った
それは混沌の根源、魔王ゾーマ

魔王との闘いのさなか
彼は仲間を斬った
まやかしに踊らされ殺した

気付いたときは手遅れで
自らの愚かさで─

無理も無い事だった
彼は閉じ篭り
感情を表に出す事に怯える

なぜ
今の現状はあるのか
その理由を求め
二度と戻ることの無い
久遠の旅路へ踏み出そうと していた

知る事のない理由を
知る事が出来ないと知る為に



112 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/08(水) 07:00:38 ID:GPmkFC2Y0
今回はここまで

113 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/08(水) 19:23:19 ID:jAK3WVCo0
XoO/JGcPO6の物語は永遠のアセリアを思い出すなぁ

114 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/09(木) 09:40:08 ID:QAi4u4AwO
☆湯

115 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/10(金) 08:16:05 ID:NwJA3Cv2O
補習

116 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/11(土) 12:52:57 ID:+86UdIN/0
みなさん乙です
>>100から続きいきます

117 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/11(土) 12:53:47 ID:+86UdIN/0

目が覚めたらもとの俺の部屋で
コントローラを握ったまま眠っていた―――

なんて都合のいい展開を期待していたけれど
目を開けるとそこは昨夜眠りについたままの簡素な寝室だった。
掌は相変わらず小さく、階下からは
食卓の準備をしているのだろう
食器のぶつかるような音が聞こえる。

ほんの少しだけ落胆した後、
俺は起き上がって簡単に身支度を整えた。

階下に下りると既に食事を終えたパパスが
のんびりとカップから飲み物を啜っているところだった。

『おはよう、サン。良く眠れたようだな』
笑顔のパパスにおはよう、と小さく挨拶すると、
『随分お疲れだったんですよ。ぼっちゃんはまだ小さいんですから。
すぐに朝食をお出ししますからね。少しお待ちください』
使い終えた食器を片付け、
新しい食器を棚から下ろしながらサンチョが笑う。

118 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/11(土) 12:54:29 ID:+86UdIN/0

最後の一滴を飲み終えるとパパスは
傍らの荷物袋を手にすると一息吐く間もなく立ち上がった。
『サン、父さんはちょっと出かけてくるからな。
いい子にしているんだぞ』
『おや旦那様、もうお出かけですか。
折角ゆっくりなさられるかと思ったのに』
『うむ・・・、もう一仕事終えれば落ち着くからな。
すまないがサンチョ、留守を頼む』

困ったように頷き、サンチョは扉の前までパパスを見送った。
お気をつけて、とその背中に投げかけて、俺を振り返る。
『まったくお忙しいお父上ですな』
にこっと笑う笑顔につられて俺も微笑む。

さあ食事ですぞ、と出された料理は
ジャンクフード慣れしていた俺の舌に驚くほど美味かった。
ふた皿分をぺろりと平らげ、
ジュースのような甘い飲み物を飲み干し
一息つくと俺は
「探検に行ってくる」
とサンチョに言い残し家を出た。

119 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/11(土) 12:55:13 ID:+86UdIN/0

今日は少し雲が多いようだった。
太陽が時折雲間から顔を出し
家々をなぞるように照らしていく。

俺はまず基本中の基本
村中の樽の探索から始めることにした。
小さな村とはいえ建物の数はそこそこある。
けれど屋外の樽や壷からは
残念なことにめぼしい収穫はなかった。

気を取り直して入り口側から順に屋内の調査に取り掛かる。
とりあえず一番近場の平屋の扉を開けると
キッチンから若い女があらあ、と笑いかけた。

『パパスさんの。ぼうや今日は一人なの?』
作り笑顔で応えると、
女はにこにこと近寄ってきて俺の目の高さまで屈んだ。
『ぼうやも大きくなったわねえ。
ぼうやがお父さんとこの村に来たときは
まだこーんな赤ちゃんだったのよ?早いものねえ』
身振りを添えながらゆっくりと話し、俺の頭を撫でる。

120 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/11(土) 12:56:03 ID:+86UdIN/0

正直、やりにくいな、と思った。
ゲームならこっちからコマンドを入れない限り
相手は俺がいないと同じ振る舞いをするのに。
こう話しかけられると簡単にタンスの中なんて漁りにくい。
子供の無邪気さを武器にしたって
勝手に他人の家を荒らせば咎められるに決まっている。

面倒くさいな。
そう思ったところに後ろから老人が語りかけた。

『パパス殿はここに来る以前は
一体何をしておったんじゃろうなあ。
わしが見るに、あれは只者ではない筈じゃよ。
ぼうやは小さすぎて、昔のことは覚えておらんじゃろうがなあ』
『おじいいちゃんてば、
昨日パパスさんが帰ってからあればっかりなの』
くすくすと小声で笑い、
『きっとおじいちゃんはパパスさんに夢を見てるのね。
おじいちゃんも、昔は旅をしていたらしいから』
耳元でささやくと、女はおじいちゃんお薬は?と
老人に向かって立ち上がった。

121 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/11(土) 12:57:25 ID:+86UdIN/0

王様だよ
と言ってしまおうかと思ったけれど、まあやめておいた。
突っ込まれても困るし
パパスが隠しているんだから言うべきではないだろう。

子供の幻想だと笑い飛ばしてくれる可能性もあったけれど
面倒ごとは起こさないことに今決めた。

老人と女のやり取りを尻目に、
俺は奥の引き出しに目をやる。
めぼしいものは、外から見た限りでは解らなかった。
引き出しを開けてみる度胸もなく
俺は「探検の途中だから」と
目一杯無邪気に言うと、家を後にした。

122 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/11(土) 12:58:16 ID:+86UdIN/0
本日ここまでで
ありがとうございます

ではまた

123 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/11/11(土) 14:10:11 ID:1aF9bmVI0
>>122
お疲れ様でした。8スレ目では始めて投下するレッドマンです。
今後もよろしくお願いします。

124 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/11/11(土) 14:10:54 ID:1aF9bmVI0
もょ「おはよう。タケ。」
タケ「もょ、起きたのか。昨日はお疲れ様。」
もょ「さすがにきょうはタケにまかせるぞ。かなりつかれた。」
タケ「それは無理もあらへんな。もょにビッグニュースがあるんよ。」
もょ「どうした?」
タケ「俺も呪文が使える様になったんや。」
もょ「ほ、ほんとうなのか!?」
タケ「ああ、さっきゼシカに魔力を引き出してもらったんよ。しかし俺等の場合はどうなるんやろな?」
もょ「う〜ん・・・・おれにじゅもんをうたせてくれないか?」
タケ「ええけど。ただ一発分しか打てへんからな。」

俺達は外に出た。

もょ「しかしいったいどんなじゅもんなんだ?」
タケ「サマルのギラやリアちゃんのヒャド、ムーンのバギに比べたらかなり劣るんやけどな。」
もょ「そうなのか。」
タケ「メラって言う呪文なんだけど取り合えずやってみてれへんか。」

確かゼシカが言うには『呪文を打つ時は集中力を高めて唱える。』って事らしい。
とりあえずもょもとに唱えさせたのだが全く反応が無い。

もょ「あれ!?なんにもでないぞ?」
タケ「じゃあ俺がやってみよか。」

俺が集中力を高めてメラを唱えたが直径30センチくらいの火炎球が出てきたのだ。


125 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/11/11(土) 14:12:05 ID:1aF9bmVI0
タケ「おおっ!!やっぱ使えるで!!」
もょ「じゃあなんでタケだけがつかえるんだ?」
タケ「ゼシカが言うには実戦で呪文に揉まれたから使えるようになったって言っていたで。」
もょ「じゃあおれもつかえるするはずだぞ。」
タケ「もょの場合は生まれつき呪文が使えない体質かもしれへんな。」
もょ「そうなのか・・・・・・・・・」

もょもとも流石にショックを受けたようだ。

タケ「まぁ、気にすんなや。そんなに落ち込む事はないやろ。」
もょ「しかしなぁ・・・・・・・・」
タケ「アホか。お前は呪文を使えない代わりに常人には無い力とスピードがある。人間皆個性があるって言うこっちゃ。」
もょ「な、なるほど。おれはおれらしくすればいいんだな!」
タケ「そやで。判り易く言えばもょはスピードは最低でもククール並み、パワーはヤンガス以上って所やな。ある意味最強の戦士や!」
もょ「ほ、ほめすぎじゃないのか?」
タケ「おう。褒め過ぎやで。」
もょ「まったくタケはひどいやつだなぁ。」
タケ「オマエモナー。実際の話二人と戦って俺なりの判断やけど。まぁ、ええんちゃう?」

しばらく話し込んでいるうちにムーンがやってきた。



126 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/11/11(土) 14:13:59 ID:1aF9bmVI0
ムーン「おはよう!もょもと!」
  タケ「おはよ。やたら元気がいいな。」
ムーン「あたりまえじゃない。新しい朝は希望の朝って言うでしょう?」
  タケ「それもそうだな。しかしムーンがうかれるって珍しいな。」
ムーン「実は船を提供してくれる人が見つかったの!」
  タケ「マジ!?」
ムーン「詳しい事はシャールさんが話してくれるのだわ。」
  タケ「わかった。とりあえず旅立つ準備をしようか。サマルとリアちゃんを呼んできてくれ。しかしムーンも手際がいいな。」
ムーン「そんなのあたりまえじゃない!ほらほら!さっさと準備するわよ!」

ムーンは去っていった。

宿屋の玄関で待っていたらシャールがやってきた。
シャール「やぁ。もょもと。おはよう。」
   タケ「どうも。おはようございます。」
シャール「君のおかげで何とか上手くいったんだよ。ありがとう。」
   タケ「ええッ!?本当ですか!?」

あんな励まし方で上手くいったのかよ・・・・・・?

シャール「まぁ大目玉は喰らったんだがな。それはともかく親父が船を貸してくれるんだそうだ。」
   タケ「それは助かります。しかし流石に無償って言うわけには行きませんよ。」
シャール「わしも何か対価が必要ではないかと思っていたのだがその点は親父が別に構わないって言ってくれたんだ。」
   タケ「本当にありがとうございます。上手くいって良かったですね。」
シャール「その前に親父とマリンに会ってくれないか。どうしてもお礼がしたいらしいんだ。」
   タケ「それは構いませんよ。同行させていただきます。」


127 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/11/11(土) 14:15:24 ID:1aF9bmVI0
   *「おおっ!!もょもと!シャールが世話になったそうじゃな。父として礼を言わせてもらいますわい。」
  タケ「とんでもないですよ。私も命を助けられたんですから。」
 マリン「ありがとう。お兄さん。お父さんが戻ってきてすごくうれしかった。」
  タケ「親父が無事でよかったな。」

俺はマリンの頭を撫でた。

  マリン「えへへ。」
   タケ「話は変わりますが本当に無償でよろしいのですか?」
    *「ああ。もょもとなら構わんぞ。わしら家族の『絆』を戻してくれたんじゃからな。」
シャール「これからはワシもここで薬剤師として頑張っていくよ。お礼にこれを渡しておこう。」

シャールから上薬草を受け取った。

   タケ「何から何までありがとうございます。」
シャール「ラダトームにはここから大体東に向かえば到着するのだがここへ向かうのかい?」
   タケ「まずはローレシアに向かいます。ここで仲間達と合流予定ですので。」
シャール「ローレシアにはラダトームより更に東だ。ちょっと時間がかかるぞ。」
   タケ「そうなのですか。」
    *「では、気をつけて行くんだぞ。後1つ言っておく事がある。」
   タケ「どうしたのです?」
シャール「海には荒神がいるらしい。なんでも大昔に船を沈没させたらしいんだ・・・聞いた話しなんだがな。」
   タケ「それはまた物騒な話しですね・・・・」
    *「何でもこの町の富豪が嵐に巻き込まれたのがその荒神の仕業じゃないかって噂が立っているくらいじゃ。
       相当珍しいものに対して強欲だという事も言われているがの。」
 
荒神=海賊みたいなものか。しかし噂だけじゃ信憑性は無いがとりあえずは頭に叩き込んでおくか。

  タケ「そろそろ出発しようと思います。仲間たちを宿屋で待たしていますので。」
   *「それならワシらも見送らせてもらいますわい。」



128 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/11/11(土) 14:17:13 ID:1aF9bmVI0
宿屋に戻るとムーン達が待っていた。いつでも出発が出来そうだ。

 ムーン「シャールさん。ありがとう。こうして船旅が出来るのは貴方のおかげよ。」
シャール「それ以上に感謝しているのは私達のほうだ。君達の力にいつでもなるよ。」
   リア「マリンちゃんも良かったね!!これからお父さん達と一緒に過ごせるんだよ!」
  マリン「うん!ありがとうリアお姉ちゃん!!絶対に遊びに来てね!!」

マリンの存在がリアに溜まっていたストレスを解消させたみたいだ。良い表情だなぁ・・・

サマル「ぼーっとしてどうしたんだい?もょ?」
  タケ「ああ…すまねえ。それよりゼシカを見なかったか?サマル?」
サマル「ええっ!?ゼシカさんも一緒に来るのかい?」
  タケ「そうだけど……何か不都合な点があるのか!?」
サマル「ええっと……その……ぉ、ぉっぱぃが気になるんだ……」

やっぱりこいつもムッツリスケベか。ロト一族はある意味陰湿だなぁ。

  タケ「………………………………アーッハッハッハッハッ!!!」
サマル「ど、どうしたんだい!?もょ?」
  タケ「いやー君も男なのにそんなつまらん事で気にするなんてさ。これも男のサガだな。思わず笑ってしまったよ。」
サマル「しかし気になっても仕方が無いよ!!」

サマルが必死に弁明した。ある意味戦っている時よりも必死だ。

  タケ「まぁ俺も確かにアレは中々見逃せないな。お前の気持ちが分からん事でもないがな。」
サマル「だろ!?僕の気持ちが分かってくれるだろ?」

よしよし。ここはおちょくらないといけないターイムだな。


129 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/11/11(土) 14:19:56 ID:1aF9bmVI0
  タケ「ああ。わかったよ。おーい。ムーン。」
ムーン「どうしたの?」
  タケ「サマルがゼシカのおっ……」
サマル「わー!わー!わー!!」
ムーン「ど、どうしたの!?サマル?」
  タケ「すまんすまん。何でもないよ。」
ムーン「変な二人ねぇ……………………」

ムーンは呆れて離れていった。

サマル「ひどいじゃないか!!もょ!!」
  タケ「何で必死に慌てる必要があるんだ?サマル君。ムーンは関係ないだろう?」
サマル「そ、そんな事女の子に言わないでよ!!」
  タケ「ごめんごめん。おっ!ゼシカが来たみたいだな。」

タイミング良くゼシカが来てくれた。何とかミッション成功という所か。

ゼシカ「おはよう。もょもと。」
  タケ「おぃっす。」
  リア「もょもとさん、ゼシカさんも一緒に来るの?」
  タケ「ああ。ローレシアまで限定だけどな。」
ムーン「そういえばククール達とローレシアで合流する約束をしていたわね。」
ゼシカ「ええ。少しだけの間だけど皆さんよろしくっス!!」

ゼシカが仁王立ちの構えから頭を下げた。

  タケ「おい、サマル。」
サマル「どうしたの?」
  タケ「今一瞬だけどゼシカの胸の谷間が見えたぞ。」
サマル「ええっ!!見逃してしまったよ。」
  タケ「残念だったな。」
サマル「くすん。」

130 :レッドマン ◆U3ytEr12Kg :2006/11/11(土) 14:22:19 ID:1aF9bmVI0
ムーン「こぉ〜ら二人共何やっているのよ!!朝から変よ。もょもと!サマル!」
サマル「え、えっと…」
  タケ「おいおい、何言っているんだ!?」
ムーン「えっ!?」
  タケ「今日は女性陣に負担をかけない様に俺達男が頑張ろうなって気合入れていただけだぞ。」
ムーン「そ、そうなの!?」
サマル「そ、そうだよ。なぁ、もょ。」
  タケ「ああ。昨日はゼシカもかなり疲れただろうし、リアちゃんも危なかった状態だっただろ。俺達がしっかりしないといけないだろう?」
ムーン「確かにその通りね。変に疑って悪かったわ。」
  タケ「気にするな。男同士の決意だからあんまり話したくなかったんだけどな。聞かれたら恥ずかしいじゃねーか。」

何とか上手くごまかせた。―――――――――って俺は母親にエロ本がばれるのに必死に弁明している中学生か!!ちゃうっちゅーねん!!

サマル「う、上手くごまかせたね。」
  タケ「女の勘はある意味恐ろしい程当たるみたいだからな。気をつけろよ。」
サマル「今後気をつけよう。僕ももっとしっかりしなくっちゃ。」

ゼシカ「しかし間に合ってよかったわ。」
  タケ「良く酒場側が止める事を許可してくれたなぁ。結構大揉めしたんじゃないか?」
ゼシカ「それはシャールさんのお父さんが話をつけてくれたの。まぁ私も一肌脱いだんだけどね。」
  タケ「マジッすか?」
ゼシカ「それはね…(ここで途切れました。詳細を読むにはハッスルハッスルと書き込んでください)」




 サマル「おーい!!もょ。出港するよ!!」
   タケ「おう。直に行くよ。親父さん。シャールさん。マリンちゃん。お世話になりました。お元気で!!」
シャール「気をつけな。」
 マリン「元気でねー!!バイバーイ!!」



131 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/11(土) 16:19:36 ID:uL9T3qur0
>>122
なんか何処となく切なさを感じて好きだ。
懐かしいというか、不思議な感じ。
楽しみにしてるんで、これからもゆっくりでいいんでよろしく。

規制に引っかかって遅くなったぜ……。

132 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/11(土) 20:19:38 ID:P5ixTjidO
ハッスルハッスル!

133 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/11(土) 23:17:19 ID:rCfdsEsd0
>>◆U3ytEr12Kg
ハッスルハッスル!!

>>◆u9VgpDS6fg
家人の前で堂々とタンスを漁りにくい〜ってところに共感してなんか笑えた。
プレイ初期の頃は他人のタンス漁るなんて常識的に考えて
ありえないだろ!と思ってた。冒険進めるにつれてタンス漁りはDQならではの醍醐味だと思うようになったなぁ
他人の家で鍋の蓋やらステテコパンツやら盗んで装備したのはいい思い出w



134 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/11(土) 23:26:04 ID:6tjNoSoA0
>>133
>鍋の蓋やらステテコパンツ
一般家庭の日用品まで盗んで行くって考えてみると恐ろしいもんだなw

135 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/12(日) 11:52:19 ID:Zzhn9QMl0
>>122,>>130

お疲れ様です
まとめサイトをここまで更新しました
http://ifstory.ifdef.jp/warehouse/index.html

136 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/12(日) 13:28:27 ID:tLC7CT9j0
タカハシ氏GJです

137 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/13(月) 18:52:45 ID:BGg1IPAd0
>>レッドマンさん
ハッスルハッスル!!

乙です新人です
こちらこそ宜しくお願いします。

>>131
ありがとうございます。
自分の中でドラクエは、レトロというか
どこか懐かしいイメージがあるので
そういうのが出てるのかも知れないですね。
頑張ります!

>>133
醍醐味、わかります!
でも物語の中でその醍醐味を取り払ってしまったので
今後どうしようかと結構深刻に悩んでいます・・・

>>タカハシさん
いつもまとめ乙です

>>121続き投下します

138 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/13(月) 18:54:02 ID:BGg1IPAd0

さて困ったのは、屋内の探索だった。
念のため宿屋を覗いてみると
階下の酒場ではバーテンが忙しそうに仕込みをしていた。

「探検してるんだ」と言うと
バーテンは愉快そうに笑って
『ここにはぼうやの喜びそうなものはないなあ』
と言った。

言ったとおりで、隅の樽の隙間まで調べたが
役に立ちそうなものは見つからなかった。
二階に上がりながら、
まだビアンカ達が滞在していることを思い出す。

手前の部屋は空き部屋だった。引き出しも空っぽだ。
奥の部屋のドアをノックしようとした時
中からおかみの『困ったわ』と言う声が聞こえた。
思わず動きを止めて声に聞き入る。

『どうしようねえビアンカ。親方さん、まだ戻らないみたいよ』
『じゃあ戻るまでここに居ればいいじゃない。
あたしまたサンと遊びたいな』
『そんな訳にも行かないでしょう。お父さんが待ってるんだよ。
誰か探しに行ってくれないかねえ。パパスも留守だったしねえ』

139 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/13(月) 18:54:59 ID:BGg1IPAd0

とんとん、と扉をノックすると
『親方さんかしら!』とおかみの声と、軽い足音が聞こえた。

ガチャリと勢い良く開いた扉の向こう
ビアンカの顔が輝くのと同時に、その奥で
おかみの顔が少しだけ残念そうに曇る。

「こんにちは」
努めて明るく呼びかけると、ビアンカが
『遊びに来てくれたのね!嬉しいわ!』
と本当に嬉しそうに俺の手を引いた。

『そうだわ、今度はあたしのご本を読んであげる』
部屋に入り傍らのベッドに腰掛けると
ビアンカは飛び跳ねるようにくるくると室内を行き来
自分の荷物袋から一冊の絵本を探し当てた。

『この村って大人しか居ないんだから。
あたしずっと退屈だったのよ。サンが居て良かったわ』
にこにこと喋りながら、俺の隣にぴったりと座り
お互いの足に渡らせて大きな薄っぺらい絵本を開く。

140 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/13(月) 18:55:44 ID:BGg1IPAd0

『あたしの住んでるアルカパには男の子が居るけど、
みんな子供っぽくって。
じゃあここからよ。あたしが読んであげるから
あんたは絵を見ていればいいわ』

妙にませた口調を使うビアンカに
おかみはくすくすと笑いながらまた
不安げに窓の外に目を落とす。

『すてきな、なかよしよにんぐみ。
かしこいボロンゴ、やさしいプックル
かわいいチロル、ゆうかんなゲレゲレ。
・・・聞いてるの?サンってば』
ビアンカの指摘に慌てて本に視線を落とす。

昨日見た本よりも明らかに少ない単純な文字が並び
ページを大きく使って賑やかな絵が描かれていた。

『・・・もう。いい?ここよ?
みんな、ちっともにていない。
とくいなことも、すきなたべものも、
ぜーんぶちがってる。』

141 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/13(月) 18:57:01 ID:BGg1IPAd0

ビアンカの声と文字をなんとなしに追っていく。
この世界の文字はまだ読めないが、
それでもゆっくりとしたビアンカの声にあわせて
文字も理解できるような気がした。
おかみが溜息をつく。

「どうしたんですか?」
悪いとは思いながらもビアンカの声を押しやって
知らない振りで俺はおかみに声を掛けた。
きょとんとした顔のビアンカと、困ったように笑うおかみ。

おかみの顔から目線を外さずに居ると
やがておかみはもうひとつ溜息をついた。
『ごめんね、あんたにまで心配かけちゃ悪いね。なんでもないんだよ』
そう言うと俺とビアンカの座るベッドの前に屈み込み
俺の頭を撫でた。

『・・・もうご本はいいみたいね』
面白くなさそうにビアンカが呟いた。

142 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/13(月) 18:58:30 ID:BGg1IPAd0

また今度、俺がもう少し文字を覚えたら。
無理矢理の約束を取り付けて、
俺はそそくさと部屋を辞した。

宿屋を出ると、日は随分と高くなっていた。
雲から外れた太陽が俺の足元にも小さな影を作る。

パタパタと駆け出して、俺は小川を渡り村の奥に向かった。
教会の裏を抜けて傾斜を上がると
洞窟のような入り口に
申し訳程度の看板がかかっているのが見えた。
文字はやはり読めない。

そっと扉を開くと、店先のカウンターには誰も居なかった。
頭を突っ込み奥を覗き込むと、若い男が一人
心配そうに忙しなく室内を歩き回っている。
上の空の状態で、声を掛けてもすぐには俺に気付かなかった。

143 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/13(月) 18:59:53 ID:BGg1IPAd0

『やあ、ぼうや。悪いけど店はお休みなんだ』
小さな訪問者に気付き慌てて笑顔を作った男の表情から
まだ不安の色は消えなかった。
まいったなあ、としきりに口元に手をやって
落ち着きなく体を揺らす。

「親方さんはまだ戻らないんですか?」
尋ねると意外そうな顔で
『ぼうやも知ってるのかい?』
と声を上げる。
『いつもならもう戻ってるはずなんだけど。何かあったのかなあ。
俺が探しに行きたいんだけど、擦れ違ったら厄介だしね』

よく見れば奥のテーブルには
薬草と幾つかの装備品が投げ出されていた。
この男も葛藤してるんだな、と何となく思った。

「じゃあ僕が探しに行くよ」
俺が言うと男は困ったようにその整った顔を崩して
『ぼうや、ありがとう』と言った。
子供のたわ言だと思っている顔だった。

144 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/13(月) 19:00:58 ID:BGg1IPAd0
本日ここまで。
ありがとうございます。

145 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/13(月) 20:51:45 ID:iH8xrwcc0
>>144
洞窟探検編がんばれ。

146 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/13(月) 21:21:49 ID:v9/NPYmd0
>>133
そういえば、他人のステテコパンツはくのも、すごいな。
呪われた音楽が鳴って、かゆくなったりしたらやだな・・・。

147 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/13(月) 22:22:56 ID:dUMD5YJY0
>>144
大人(作者)目線でストーリーが進んでいくから、いつもとは違った視点で
眺められて懐かしいと同時に新鮮ですごくおもしろい
十数年ぶりにまじで5をやりたくなってきた

148 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/14(火) 10:31:20 ID:X8ci4Gfh0
>>144
お疲れ様です

まとめサイト
ここまでまとめました
http://ifstory.ifdef.jp/index.html

149 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/14(火) 11:10:42 ID:DJkbV8fM0
今北産業
まとめの文章に触発され、久々に筆を取ろうと思うww

150 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/14(火) 17:03:58 ID:SNL7lTHN0
タカハシ氏GJです
>>149
いいね!
期待ほっしゅ

151 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/15(水) 06:20:25 ID:Mv7GmTJaO
>147
むしろ一昨日リメイク版買った。

>144
乙です。ゲームと平行して楽しませてもらってます。

152 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/16(木) 08:16:28 ID:/EGCTUPG0


153 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/16(木) 19:39:12 ID:XI++634T0


154 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/16(木) 20:59:04 ID:LwiDVBw4O


155 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/17(金) 13:26:58 ID:r1KQzLZkO


156 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/17(金) 17:55:59 ID:6c11duPV0
>>145
頑張ります。

>>146
それすげーやだw

>>147
ありがとうございます
ゲームだとプレイヤー目線は当たり前なのに
文字にしてみると自分でも新鮮で面白いです
一緒に楽しんでいただけたら幸いです

>>タカハシさん
乙です

>>149
期待!

>>151
ありがとうございます。頑張ります

では>>143続きです。

157 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/17(金) 17:57:22 ID:6c11duPV0

方向を変え、村はずれまで歩く。
只でさえ森に囲まれた村道は
洞窟近くになるとさらに深く影を落としていた。

洞窟の入り口は目に見えてわかりやすかったが
くぐもったその先に足を踏み入れるのは
やはり少しだけ躊躇われた。

村までの道のりはパパスがついていたから
不安はかなり小さかった。
今回は頼れるのは自分ひとりだ。
しかもこの奥は記憶が確かなら
おおきづちとかが出るはずだ。
痛恨を食らったらどうなるか。あまり想像したくない。

自覚している以上に緊張していたのか
肩を叩かれるまで声に気がつかなかった。
はっと息を飲んで振り返ると
緑に映える鮮やかな赤い鎧を着た男が
心配そうにこちらを覗き込んでいた。

158 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/17(金) 17:58:30 ID:6c11duPV0

『ぼうや、大丈夫か?どうしたんだ?』
額の汗を手のひらで拭って、俺はひとつ深呼吸をした。

「大丈夫。ちょっと探検に行くんだ」
我ながら固い口調だったが
鎧の男はふんと頷いて、
『この先の洞窟か。
ぼうやには少し、危険じゃないかな』
諭すような声色で言う。

どうしても中が見たい、一人で行きたい、と
子供らしく駄々をこねると、男は

地下には降りないこと
危なくなったら大声を出すこと
(反響して入り口にも声が届くから)

という二つの約束を俺にさせ
『迷子になるなよ』と笑って送り出してくれた。

159 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/17(金) 17:59:53 ID:6c11duPV0

入り口から数歩進むだけで
外の明かりは洞窟内にはもう届かなくなった。
どこかに光源があるのか、中はぼんやりと
進むのに支障がない程度に照らされている。

右手から僅かな水音が聞こえるのは
村の中央に流れる小川の水源だろう。

モンスターはまだ姿を現さないが
岩壁の向こう、もしくは背後に
今にも奴らの呼吸が聞こえてきそうで
俺は唯一の武器、木の棒を握り締めながら慎重に進んだ。

手前に分かれ道が見える。
陰から何か飛び出してくるんじゃないかと息を詰めたが
奥を見渡してもまだ
モンスターの気配すら見当たらなかった。
左に向かう道に進む。

水音が背後に回る。その音に混じった
キキッ、という小さな鳴き声を
俺は聞き逃さなかった。

反射的に振り向く。
向こうは足元の岩陰に隠れたが
鮮やかな青い色を視界の端に捉えた。
スライム。一匹だけか。

160 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/17(金) 18:01:55 ID:6c11duPV0

足音を殺しながら一歩、踏み出そうとした時
今度は背後から衝撃を受けた。
それに合わせるように
手前のスライムが岩陰から飛び上がる。

もう一匹いた。
囮だったのか。
頭使いやがる。
なんだこいつら。

思考が頭を巡る間に近付いてくる
最初のスライムのつるんとした質感。
俺は咄嗟に右手の木の棒を振り下ろした。

ばちん、と衝撃音がして、スライムが地に転がる。
立て直してくるかと思ったが
それはそのまま沈黙した。

もう一匹がピキーッと甲高い声を上げる。
それに向けてもう一度棒を振り下ろすと
避ける間もなくスライムは地面に転がって動かなくなった。

・・・強くなってる。そう直感した。
パパスの背に隠れて、殆ど戦いに参加する機会はなかったのに。
ちゃんと強くなってる。
不意に緊張が解けるのがわかった。

161 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/17(金) 18:03:25 ID:6c11duPV0

スライムの死骸から小銭を抜き取ることも忘れずに
俺はさらに奥へ進んだ。

分岐の奥は行き止まりだったが(勿論わかっていた)
奥に打ち捨てられたような、小さな箱が転がっていた。

手に取ると端のほうからぽろぽろと木の屑が落ちる。
壊すようにして蓋を開けると
中から薬草の包みが転がり落ちた。
それを腰袋にしまいこみ、俺は来た道を戻った。

レベルは上がっていく。
それがわかって、俺は少し安心した。

適度に戦闘をこなしながら行けば
この洞窟は問題なく最深部まで辿り着けるだろう。
武器が木の棒だけと言うのが不安だったが、
まあなんとかなる。

何度かスライムや
土から顔を出した昆虫みたいなの(名前忘れた)を叩き潰して
俺は突き当たりの分かれ道に差し掛かった。
右からは水音。左側は道が湾曲していて奥は見えない。
俺は迷わず左の道を行き、最初の階段を下りた。

162 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/17(金) 18:05:03 ID:6c11duPV0
本日ここまで
ありがとうございます。

やっと冒険らしくなってきた。
こういうの書いてて楽しいです。

163 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/17(金) 18:09:22 ID:LHkQHASu0
リアルタイム遭遇ktkr!

楽しませていただきました。

164 :帰ってきた暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/17(金) 18:13:56 ID:CPxgHfcB0
>>162乙〜ニアミスするところだったw
続きwktkですよ〜

さてさて、こっちは新章突入って事で軽くおさらいしておきましょう。
展開を忘れた方はご覧下さい。

学校に向かう途中に突然ドラクエ世界に召喚された能登真理奈さん。
いきなりのモンスターとの戦闘も、仲間の援護に救われ何とか勝利。
その功を称える為の王様との会見で、真理奈はルビスが遣わせた救世主だと思い込まれてしまう。
そこには魔王が復活し、モンスター達が再び活動を始めた事が背景にあったのだ。
以前魔王退治に挑んだのは勇者ロトの少人数パーティーだけだった事を懸念したアリアハンの王は、
今度は世界中の人間が結束して立ち向かうべきだと考え、連合の結成を思いつく。
その大使として真理奈は世界を回る事になったのだ。
真理奈がその役を受けたのは、この世界を救えば元の世界に帰れるというルビスの言葉があったからだ。

武道家・戦士・僧侶・魔法使い、そしてスライムの4人と1匹のパーティーは、
まずロマリアとイシスの王族の結婚話を手伝い、両国を加盟させる事に成功する。
次にエジンベアと商人の町との戦争に巻き込まれるが、犠牲を出さずに治める事に成功した。
その混乱の中で、真理奈は魔王ゾーマを名乗る者に出会う。
アッサラーム・バハラタ・ダーマなどのモンスター襲撃を指揮していた魔王ゾーマとは、
何と真理奈と同じ世界の青年だったのだ。
真理奈は青年に立ち向かうが、レベルの違いなのか、まったく敵わなかった。
しかしその出会いによって、かねてからの悩みだったものの答えを垣間見た真理奈は、
再び連合結成に意欲を燃やす事になったのだ。

そして、かつて勇者ロトの仲間だったという商人プレナのおかげで船を手に入れた真理奈達。
彼女らが次に向かう先は――


とまぁこんな感じですかね。
んじゃあ>>85の続きをどうぞ。

165 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/17(金) 18:15:59 ID:CPxgHfcB0
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
  「愛しているよ」

それが私の父親の記憶。

  「幸せになってね」

それが私の母親の記憶。
けれどその声はとてもあいまいで、男の声なのか女の声なのか分からない。
だからリフレインされるその声が本当に心の底から発せられたものなのかどうか、
私はいつも判断できない。
だから私と私を産んだ者達を繋ぐ唯一の言葉達は私を苦しめる。

愛しているのならどうして私から離れるの?
私の側にいてくれなかったのに幸せを願う権利なんかあるの?

私の思考がそこにたどり着くと、その二つの声は次第に遠ざかって行く。
そして私はこの世界で1人ぼっちになってしまう。
そこで私は、私の光を求めて走る。
走る。
走る。
走る…
走る……
その内、何の為に走っていたのか分からなくなる。
そして私自身の存在意義を疑問に思ったところで、この世界は終わる。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜


166 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/17(金) 18:18:19 ID:CPxgHfcB0
今日も快晴。
世界は曇る事を知らぬかのように、太陽を遮るものは何も無い。
人が雨の中に絶望を見るのならば、この世界には希望しか存在しないだろう。
そんなくらいに晴れ、という事だ。
そうだよ。
本当にこの世界を支配したいのなら魔王はアレフガルドの様に暗闇で覆うべきなんだ。
さすれば人間達の反抗は影を潜めるだろう。
しかし、この地上には飽きる事無く朝が来る。
いかに人の世が苦しみに満ちていたとしても、その度に光を見るのだ。
また今日が始まるという光を。
また明日もあるという光を。
未来という光……

  「ねーねー、ほんで次はどこに行くの〜?」
  「ジパングだろ。ってかそうするって昨日話したろ?」
  「えへへ〜聞いてなかったw」
  「ったく…」

プレナから貰った新しい船。
真理奈達の、船。
船首が波をかき分けていくにつれて、この船が自分達の物だという感覚が強くなっていく。
嬉しい。
必要な物がようやく手に入ったからだろうか。
誰かの役に立ったという事が、物として現前しているからだろうか。
どちらにせよこの船は、いつ終わるともとも分からないこの旅の支えの一つとなるだろう。

  「でもさ〜鉄の爪直さないと私戦えないんだけどー」
  「そうじゃなぁ…」
  「新しいの買えばいいじゃねーか」
  「え〜ダメ! 思い出があるんだからっ!」
  「ピ〜…」


167 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/17(金) 18:20:35 ID:CPxgHfcB0
その鉄の爪、この世界に来た時からずっと使ってるもんな。
ってか、抱きかかえてるブルーが苦しそうだから力を込めるのは止めた方が…

  「それとも、もう直らない…?」

根元からぽっきりと折れた爪の部分。
今はまったく武器としての機能を果たしていない。

  「……ロマリアの北にカザーブという村がある。
   そこに腕の良い武器職人がおるんじゃ。
   頼んでみれば、もしやな」
  「行く行く〜!」
  「仕方ないの。寄り道じゃな」
  「のんびりしてる暇あんのかよ…」
  「まぁ一応順調に連合参加国も増えておるしのう。
   それに何も大国だけではなく、小さな集落にも呼びかけるのも使節の仕事じゃ」
  「カザーブはロマリアがどうにかしてくれてるんじゃねーの?」
  「そんなに行きたくなきゃ船で待っておれ」
  「……サマンオサに向かった使節の方はどうなったの?」

お、フィリア良く覚えてたな。
連合参加を呼びかける使節として活動しているのは真理奈達だけではない。
アリアハンにいた冒険者の多くはそっちに参加したようだ。
その点、真理奈達のパーティーは残り物と言われてもしょうがないかもしれない……
4人中3人は若者だし、1人はもう老人だ。
世界を旅するには少々心もとないかもしれない。
まぁ今さらだけどね。

  「そうじゃったの。一旦アリアハンに戻って状況を聞かねばいかんかもしれんなぁ」
  「もうアリアハンを発ってから大分経ったよな」
  「時が経つのはいつの時も早いものよう」


168 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/17(金) 18:20:36 ID:q2IdK7+J0
支援

169 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/17(金) 18:23:41 ID:6c11duPV0
ニアミス支援w

170 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/17(金) 18:24:07 ID:CPxgHfcB0
そんな会話を背に、真理奈は改めて鉄の爪を見てみる。
その切り口を見ると、ゾーマの事を思い出す。
まったく普通の青年だった。
プレナの言う通り、彼は何か知っているのだろうか。
私達が、この世界に来た理由を。
この世界とあっちの世界の事を。

  (ルビスは何て言ってたんだっけ……?)

携帯が使い物にならなくってルビスと話してない。
もうかなり昔の事に思える。
……
携帯…
携帯電話の事だ。
モバイルフォンの事だ。(二回言った)

  (お〜携帯!! アイツも携帯持ってるかな!!)

アイツはゾーマの事か。
まぁ、有り得無くは無いわな。
ルビスとの繋がり。
それは真理奈の場合、携帯を通じて行われたものであるが、
それは同時に、この世界とあっちの世界の繋がりでもあるように思えた。
もし、だ。
ゾーマを名乗ったあの青年が携帯を持っていたら。
そしてもし。
その携帯がまだ使える状況にあるのならば……
帰れるかもしれない。
しかし"魔王に携帯を借りる"って…
う〜ん、ますますシュール。


171 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/17(金) 18:26:33 ID:CPxgHfcB0
  (ん〜…ルビスはこの世界を救えば帰れるって言ってたけど…)

どうなんだろうね。
まぁルビスが嘘を付くとは思えないけどな。

  (あ〜もう分かんないや。やーめた)

止めんなよ…
物語の核心に迫る大事なトコだろー?
そんな心配をよそに真理奈は暇そうにしているフィリアに近づいて行く。

  「ね〜ね〜フィリアちゃん。いつもあんなに早く起きてるの?」
  「うん」
  「凄いね〜」
  「理奈は何であんなに遅く起きるの?」
  「んん〜……摩訶不思議だね」

眉をしかめて、さも困ったかのように言う真理奈。
ったく、不思議じゃねーよ。
ちゃんと起きなさいよ。

  「まか…?」
  「そう。七不思議みたいな」
  「……分かんない」
  「不思議と言えば、呪文って不思議だよね〜」
  「何で?」
  「ってかこの世界は不思議だらけだよ〜」
  「理奈の方が不思議だよ…」
  「マジ? じゃあ皆不思議だw」


172 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/17(金) 18:28:11 ID:CPxgHfcB0
いまいち理解できないという表情のフィリア。

  「不思議なの好きなの?」
  「うん! フィリアちゃんは何が好き?」
  「……見た事無いものを見る事、かな」
  「へぇ〜だから色んなもの真剣に見てるんだね」
  「……そう?」
  「うん。その時のフィリアちゃん可愛い!」

そう言って楽しそうに笑う真理奈を真剣に見るフィリア。
真理奈の論理がイマイチ分からない。
だからフィリアにとっては真理奈はいつまで経っても不思議の対象だった。
だいたい今だって、何故ブルーを自分の顔にくっつけてくるのかフィリアには理解不可能だ。
でも理由を聞いてもきっと分からないんだろうなと、既に諦めの境地である。
女神なら、真理奈の事も分かるのだろうか。
いつか自分にもその心が分かる日が来るのだろうか。

  (やっぱり私も不思議なのが好きなのかも)
  「ピ〜」

フィリアはブルーのツノを引っ張って、真理奈と笑い合った。



173 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/17(金) 18:30:35 ID:CPxgHfcB0
そんなこんなで商人の町から北東の方角へ進むと、やがてエジンベアが見える。
そこを北に迂回していくと、やがてノアニールという村の付近に着く。
この辺りには港が無い為、海岸ギリギリまで船を寄せて停泊させた。
座礁の危険はあるが、強力なモンスターに船を傷付けられるよりはマシだ。
海底の浅い所には比較的弱いモンスターしかいないのだ。
ここからは小さな船で陸に上がる事になる。
もっともこの船は頑丈に造られている上、モンスターが近づきにくい仕掛けがしてあるらしい。
その秘密は材木にあって、トヘロスがどうとかパトリスが言ってたけど…
詳しくは国家機密らしい。
ま、それ故に世界を回るのに最も適した船だと言われるのだけれど。

  「では行くとするか。2人はノアニールで待っておれ」
  「え〜? あそこの浜まで皆で行こうよ〜」
  「い、や、じゃ! ワシは小船が嫌いなんじゃ」
  「ぶーぶー」

頬を膨らませる真理奈をよそに、パトリスはいそいそとルーラを唱えてカザーブへと消えた。

  「さてと、俺らはノアニールに行くとするか」

ジュードの問いかけにコクン、とフィリア。
ブルーは真理奈に付いて行ったから、2人きりだね。
上陸して少し歩くと集落が見えてくる。
最北の緯度に位置する村、ノアニールだ。
……
しまった。
今回はパトリスがいないから土地の説明ができないぞ。
……
まぁいいか。
何だか寒いらしいよ?

174 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/17(金) 18:32:13 ID:CPxgHfcB0

  「散歩してくる」

と、宿屋のベッドに寝転ぶジュードに告げてフィリアは村を出た。
娯楽も特に無い小さな村だ。
酒場があるみたいだったが、フィリアはまだお酒には興味は無い。
フィリアにはたぶん一生縁が無さそうだけどね。
村の周りには森ばかりで見晴らしの良い景色はまったく無かった。
まぁその森のおかげで冷たい風が吹き抜けないので、海上よりは寒さが楽なんだけど。
毛皮のフードを被っているので耳がかじかむ事もないしね。
道端に落ちていた手頃な長さの木の棒を広い、それをフリフリして歩く。
そして森の奥に入り込んで迷う事の無いように、時々地面に印を付けて行く。
けど1人で出歩くなんて無謀だろ……常識的に考えて……

  「危ない!!」

言わんこっちゃ無い。
突然の声とガサガサという草をかき分ける音。
その直後、誰かが背後から飛び掛ってきた。
フィリアはその衝撃に耐えられず、そのまま前へ倒れこんでしまう。
直後、頭上を何かがかすめていくのを感じた。

  (モンスター?)

背中に乗っているのが誰だかは知らないが、守ってくれたのだろうと判断し、
フィリアはモンスターの方に気を配る事にした。
素早く立ち上がり上空を索敵する。

  「うわっ……!」

後ろの人を振り落としてしまったが、今は気にしていられない。


175 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/17(金) 18:34:50 ID:CPxgHfcB0
しかし、茂みや木々のせいでモンスターの姿は見えない。
どこかに隠れているのだろうか。
"目がダメなときは耳を頼れ"
これが冒険者の常識らしい。
ちなみに耳の次は"勘"だそうだ。
フィリアは意識を周囲の音に向ける。
獣のうなり声は聞こえない。
枝が風に揺れ、葉が互いにぶつかり合う…

  「……! バギ!」

聞こえた! 羽ばたきの音が!
左方上空に呪文を放つ。
一点集中の狙いはつけられなかったが、モンスターの右腕と右翼を切り裂く事に成功する。

  グギャアァァァアアー!!

羽を失ったモンスターはバランスを崩し、地面に落下。
残った左翼をバタつかせながら這いつくばり、茂みの奥へと消えていった。

  「ふっ……」

戦闘終了の一息をつくフィリア。
あれはバンパイアだったろうか。
いつか本で読んだ事がある。
ヒャドを使うらしいが、直接攻撃に徹してもらえたおかげで助かった。

  「アンタ、大丈夫か?」

声をかけてきたのは、フィリアよりも身長の小さい少年だった。


176 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/17(金) 18:38:57 ID:jVh3Uz61O
猿くらった\(^o^)/

177 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/17(金) 18:39:32 ID:q2IdK7+J0
支援

178 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/17(金) 18:52:29 ID:jVh3Uz61O
仕方ない…また後で投下しますね(´・ω・`)
あと少しだったんだけどなぁ

179 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/17(金) 19:04:58 ID:q2IdK7+J0
(´・ω・`)

180 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/17(金) 20:23:37 ID:xtONbCdu0
>>162
洞窟突入からスライム撃破まですごい臨場感。
初めてのスライム戦と比べたら明らかに強くなってるのがわかって、
自分が主人公育てた時みたいに嬉しくなった。

>>178
続き待ってます!

181 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/17(金) 20:53:24 ID:4/bqkImA0

  「あんな風にボケっと歩いてると危ないぞ?
   森の中の歩き方知らないのか?」

えらそーな口を利くが、どうみても立派な子供だ。
十代になりたてといったところだろうか。
金に近い茶髪で、少しクセのあるハネっ毛が少年らしくて可愛らしい。
けれど、つり上がった眉と目が少年の自信の強さを表している。

  「アンタどこの人? 冒険者らしいけど、1人なのか?」

何も喋らないフィリアをジロジロと見上げる。

  「とにかく、さっきの奴が仲間を呼んだらマズイ。
   こっち来て!」

少年はフィリアの手を取り、走り出す。
この森の事をよく知っているのだろう。
ノアニールの村の子だろうか。
何度とつまづきそうになるフィリアに対して、森の中での走り方を心得ている。
引っ張られるままに十分程走ると、やがて目の前に小さな広場が現れた。
広場の中央には大人の背丈くらいの高さを持つ岩が埋まっている。
その岩の所まで連れてこられて、ようやく手を放してくれた。

  「ふ〜……よし、もう大丈夫だろ。
   ったく、オレがいなかったらアンタやられてたぜ?
   ま、貸しにしといてやるからもう村に戻りな。
   ここなら樹に邪魔されないでキメラの翼が使えるからさ」

一方的に喋り続けた少年は、ポケットから羽根を一つ取り出してフィリアに差し出す。
しかしフィリアはすぐには受け取らない。


182 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/17(金) 21:05:04 ID:4/bqkImA0
  「一緒に帰らないの?」

冒険者の自分が村に帰って、この少年がここに残るのはおかしい。
いくら慣れているとは言え、どう見たって少年の方が危険にさらされるだろう。

  「あ〜…オレはちょっと用事があるからまだ帰らないよ。
   あ、キメラの翼ならまだあるから大丈夫だって」
  「……」
  「いいから帰れってば。仲間も心配してるぞ」

明らかに何かを隠すように慌てている。
しかし出会ったばかりの、そして一応命の恩人でもあるらしい少年の言う事だ。
用事とやらを済ませば、少年は1人でもちゃんと帰れるんだろう。
そう思い、ご好意に甘えようとフィリアは羽根を受け取ろうと手を伸ばした。

  「……ソール?」

突然誰かの声がした。
広場には誰もいなかったはず…

  「あ……」

その反応で、その声が少年にかけられたものだと気付く。
フィリアが少年の目線の先に顔を向けると、
そこには少年と同じくらいの年頃の少女がいた。
一番最初に目につくのは少女の鮮やかな若緑色をしたストレートの髪。
それが寒風に揺れるのを見ただけで、サラサラなんだろうと分かる。
フィリアは知っている。
これも本で読んだ事がある。
あれはエルフと呼ばれる種族だ、と。


183 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/17(金) 21:08:43 ID:4/bqkImA0
今日はここまで〜
タカハシさん&u9VgpDS6fgさん&>>180さんサンクスでした
書き込めてよかったお( ^ω^)

184 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/17(金) 21:35:15 ID:q2IdK7+J0
>>162,>>183
お疲れ様です

>>111
からの続きです


●悪夢

「タカハシ! 起きて!」

ん… 誰だ俺を起こそうとするのは…
俺は眠りたいのに……

「今日から一緒に旅するって言ったでしょう! 私よ、メイよ!」

メ…イ?
メイ?!

ガバッと、声のする方へ勢いを付け立ちあがる

「どうしたの? 目は覚めた?」

目の前にいるのは紛れもなく─ メイ

「メイ……!」
「寝坊よ! 待っていたのに寝てるなんて!」

この場所は、見覚えがある
そう確か…… フィッシュベルの宿屋だ

185 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/17(金) 21:36:11 ID:q2IdK7+J0
「ここはフィッシュベルの宿屋… か」
「そうよ 扉を叩いてもあなたは出てこないし、部屋の中まで迎えにきたんだから」
「メイ… 生きて………」

時間が戻ったのか
俺がずっと悪い夢をみていたのか
目の前で生き、少し怒った顔のメイに俺は、涙が出そうになる
存在を、確かめようと手を伸ばす─

「迎えにきたのよ、あなたを相応しい場所へ連れていくために…」
「え、連れていくって…」

な、なんだ これはメイじゃ、ない……?

「私は生きていない、なぜ?
 だって、フフフフフ… あなたが殺したじゃない フフッ
 あなたが剣で、私を斬り殺した…!!」
「な………?!」

メイの姿が突如、霧状の魔物へと変化する
景色も一変し、宿屋の一室から赤く黒くウネウネと動く空と、草一本生えていない土の大地になる
一瞬、言葉が頭の中から消滅し、目の前の出来事が色を無くしてしまったかのよう─

「フフフフ… あなたが、殺した……」

「あ、ああ・…」

186 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/17(金) 21:36:49 ID:q2IdK7+J0
ゾーマとの闘い…
俺のこの どろどろとした、心

苦し、い…
現実が、事実がこんなにも苦しい…

これ、で、何度目だ
何度、おなじ光景を見てきた
わかってるじゃ、ないか
もう戻らないなんて、こと

しばらくすれば、気を失うんだ
そうして、また、繰り返す

到底、許されることは、なく
許すこと、なんて、出来ない─



187 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/17(金) 21:37:35 ID:q2IdK7+J0
●触れるもの

「タカハシ!!」

響く声にハッと気を取り戻す

「!?」

霧状の魔物は変化無くニヤリと俺を見ている
声の主は目の前じゃない!

「目の前にあるのはあなたが作り出した幻!
 事実とは違うのよ!」

なな、何を言ってるんだ
事実とちがうなんて、違う…
事実なんだ
違うことなんて、何もないんだ!

「違う違う! 私を信じてタカハシ! お願い…!」

信じると言ったって…

「俺は、この声が誰の声なのかを知らないんだ
 いや─ 知ってる
 知ってるけど、それは本当じゃないかもしれない…!
 いや本当で、あるはずがないんだ!」

だからもう、眠らせてくれ
悪い夢のなかで空っぽな夢を、みさせてくれ…

188 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/17(金) 21:38:41 ID:q2IdK7+J0
霧の魔物は動かない
ただただ、俺を見下すように、その細く青白い目で刺すだけ

「信じて─」

声の主が言ったその刹那
からだのなかへ何かが入り込んでくる
とても暖かくって切なくって
ずっとずぅっと、欲心深く欲し続けてきたこの感情

目の前の魔物は空気と混ざり合いながら消え
ぎゅうぎゅうに抑え込んでいた感情が、当たり前のように膨れ上がっていく

「こんなこと ほんとに」

景色は一変し暗闇の中
俺の心に触れてくれる確かな声

「メイ… どうして…」



189 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/17(金) 21:40:09 ID:q2IdK7+J0
●最善

どうしてメイが…
死んでしまったはずじゃあ

「覚えてる? 静寂の玉を」

ああ、覚えている
だけどあの後いったいどうなってしまったのか
俺はわからないんだ
ここがどこなのかすらも…

「ここはあなたの心の底
 そして私は、ルビス様の手助けであなたの心に触れることが出来たの」

ルビスが?
…どういう事なのかわからない
なんでこんな事になってしまったのか

「それはすぐにわかるわ」

メイ
すまない
俺は取り返しのつかないことをしてしまった
この手で、メイを殺してしまった…

「タカハシ あの時の事は誰も悪くないの
 あれは魔王の見せたまやかしなのよ
 あなたはそれに騙されてしまっただけ
 だから─」

190 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/17(金) 21:43:30 ID:q2IdK7+J0
ダメなんだ
もう、どうしようもなく俺は自分に失望したんだ
結局、守れなかったよ
なんにも、この手はちっとも役に立たなかった
よりによって大事な人を、殺めてしまったんだ…

「私はあれからたくさんの事を知った…
 なぜあなたがこの世界にいるのか、なぜ魔王が存在してしまったのか
 他にも、いろいろ」



「あなたはきっとこう思ってる
 "きっと許してくれない" "許される事じゃない"」

そうだな
その通りだよ

「私は、一度だってあなたに悪い考えを持ったことなんて、ない
 それどころか、あなたに出会えてよかったって、思ってる」

それは─
そんな事、だって本人を前にして言えないだろう
本心なんて、言えるはずもない

「ふふ… 私は今、あなたの心に触れているのよ?
 嘘なんてすぐに伝わってしまうわ
 ね?」

191 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/17(金) 21:46:14 ID:q2IdK7+J0
ん…

だけど、でも俺は、自分が許せない
こうして話をしてるけど、失くしてしまった事は事実なんだ…

「固い心ね、もう…
 でもそこまで私の事を考えてくれるのは、正直にうれしいな」



目の前には暗闇がどこまでも続く

今、俺は戸惑っている
メイが、自分を斬った俺をどう思っているか、はっきりいえば少し不安もあった
だけど今はっきりと、その不安は全く無くなった
俺はどうすればいい?
知ったから、どうなるものでもあるまい?
やはり俺は、ここで自分の愚かさを悔い続けるべきなのでは─

「あなたはこの世界を救うため行動の出来るただ一人の人間なの
 私は、私の事は考えずに、その使命を全うしてほしい」

使命?
どういうことだ?

「そう、使命
 これはね、"いのちの源"の意思でもあるのよ」

"いのちの源"
それはいったい…

192 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/17(金) 21:49:50 ID:q2IdK7+J0
「詳しいことはルビス様に聞いて
 私にはうまく説明できない…」

ルビスか

なぁ、メイ
そうする事が今の俺にとって、一番の償いになるんだろうか
そうする事でメイにした事への、償いになりえるんだろうか…

「…私は償ってほしいとか、そういう気持ちは全然ないの
 ……けれどあなたがそう思い、行動してくれるのなら、きっと」

そうか………

「私だけじゃない たくさんの人が救われるの
 あなたも自分の世界へ戻ることが出来る
 …あなたが自分の為に動くことが、私や世界の為になる…」

……少し、考えを整理させてくれないか

俺はずっと考えていた
どうしてこんな事になったのかを
自分の未熟さを、愚かさを
どうすれば償えるのかを…

俺は……





193 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/17(金) 21:59:11 ID:FYpT+rHk0
私怨

194 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/17(金) 21:59:17 ID:q2IdK7+J0
わかった気がする
どうするべきなのかを…

「うれしい… 伝わった、心から伝わってきたわ…」

俺は、できるだけの事をしようと思う
心配かけてすまなかった
もし、もしメイが来てくれなかったら俺はずっとこのままだった…

ありがとう

「うん! 詳しいことはルビス様に聞いて
 気がついた先で待ってるから」

ああ、そうする
だけど─

もし魔王を倒せたとしても、メイは戻らないんだよな…

「もういかなくちゃ… タカハシ、あなたならやり遂げられる
 私、信じてるから…
 自分を取り戻すために、感情をゆっくり開放して…」

ボウと、眼前にメイの姿が薄く
俺は思わず手を伸べるが、それは空しく空を掴むばかり

「……ねぇタカハシ 私は、肉体は失ったけれど心までは失っていないの
 わかる? あなたが私を想ってくれたら、それだけで側にいる………」

声は長いエコーが掛かったように響き、やがて、空間のチリとなり
俺の意識はスウと、上とも下ともわからない方向へ引かれていった


195 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/17(金) 22:02:49 ID:q2IdK7+J0
>>193
ありがとうございます、助かりました。
今回はここまでです。

まとめサイト
ここまで更新しました。
http://ifstory.ifdef.jp/index.html

196 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/18(土) 01:19:59 ID:3Rz2f+RQ0
>>162
GJ!一人旅で痛恨の一撃は即全滅に繋がりかねないからガクブル
 >土から顔を出した昆虫みたいなの(名前忘れた)
これ何てモンスターでしたっけ?本気で思い出せない…気になります
>>183
真理奈とフィリアのかけあいが軽快なテンポで楽しいです
キメラの翼を放り投げる時は要注意ですよね
何度勇者達の頭を天上にぶつけたことか…
続きwktk
>>195
主人公タカハシの苦悩がすごく伝わってきます
悪夢の無限ループから抜け出る事ができてよかった…
続き期待!
そしてタカハシ氏まとめ乙です


197 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/18(土) 01:49:23 ID:K9LGYiQO0
>土から顔を出した昆虫みたいなの(名前忘れた)
たぶん”せみもぐら”
ttp://www.parabox.or.jp/~takashin/d5p2.htm

198 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/18(土) 07:35:03 ID:3Rz2f+RQ0
>>197
せみもぐらかぁ。すっきりしました、dクス

199 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/18(土) 13:48:46 ID:Qd6pfb7F0
>>163
感謝です。
リアルタイム遭遇ドキドキしますねw

>>暇潰しさん
新章乙です
やっぱ真理奈さんかわゆす。
エルフ登場wktkです

>>180
ありがとうございます
意識して丁寧に書いてみました
強くなった実感、って本当に嬉しいですよね!

>>タカハシさん
抜けましたか!乙です
うっかり三部のラスト読み返してしまいました
ちょっと泣きました。
今後のタカハシに期待です

>>196
>>197
ありがとうございます
そう、せみもぐらです

昨日の今日ですが>>161続きです

200 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/18(土) 13:49:48 ID:Qd6pfb7F0

下り切ったところは、左右に伸びる道の真ん中だった。
どっちだっけ、と僅かな時間考え込む。

宝箱が幾つかあったはずだから
歩き回っても問題ないだろう。
そう考えて俺は、そこから
左に向かう道のほうへ歩き出した。

すぐに右手に分かれる道が見える。
曲がって進むとすぐに突き当たったが
装飾のはがれかけた荷箱の中から小銭袋を拾った。
中身は確認せずそのまま自分のものにする。

少し戻りさらに進むと
僅かに水音が聞こえてくるのがわかった。
視界が開ける。

大きくはない、けれど渡れそうもない洞窟内の湖だった。
上階の水源から染み出してくるのか
壁伝いに幾つか筋が出来て
透明な水が湖に流れ込んでいる。

どこからか同じように水が流れ出しているらしく
湖は一定の深度を保ったまま静かにたゆたっていた。
水面を覗き込むと恐ろしく深い。底は見えない。

201 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/18(土) 13:51:46 ID:Qd6pfb7F0

奥まったところには中瀬のような陸地が出来て
誰が作ったのか階段が設えてあった。
あの奥にはパパスがいるんだろう。
こっちじゃないな、と俺は思う。

スライムや、昆虫や
どらきち(早く仲間にしたい)とかを叩きながら道を戻る。
反対側の道が開けて
また左右に分かれる道が出来ていた。

ここは繋がってるはずだからととりあえず右へ曲がると
ぐるりと迂回した向こうに
木箱がひとつあるのが見えた。
期待を込めて駆け寄る。中身は――盾だ。

皮をなめして貼り付けただけのような
粗末な盾だったが俺にはありがたかった。
これで随分と楽になるだろう。

意気揚々と進んでいくと、また分かれ道に出た。
盾を手に入れた安心感から
俺は何も考えずに左へ進む。行き止まり。

202 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/18(土) 13:52:38 ID:Qd6pfb7F0

戻ろうと振り向いた時
今までとは違う低い鳴き声が洞窟に響いた。
反響から一瞬。相手の居所がわからない。

慌てて見回した俺の目の前。
岩陰から不意にそいつは姿を現した。

丸々として、異様な毛を蓄えた外観。
手にした大きなハンマー。

出た。おおきづちだ。
こいつの一撃がやばいのはわかっていた。
慎重に少しずつ後ずさる。
背後に、今後にしたばかりの、壁。

そいつがぐう、と低い鳴き声をあげると
陰からもう二匹のおおきづちが姿を現した。
追い詰められた。やばい。

盾に安心して回復を怠っていたことをはたと思い出す。
左腕の痛みが不安と同じ速度で体を巡っていく。

203 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/18(土) 13:53:38 ID:Qd6pfb7F0

薬草を取り出そうとした刹那
一匹がハンマーを振り上げた。
つんのめる様に壁沿いに身をかわす。
やつら、やっぱり動きは遅い。これなら避けられる。

もう一匹の攻撃を盾で受け止めると
相手は芯を外したようで跳ね返って転がった。
痛んでいた腕が更にじわりと熱を持つが
まだ致命傷には遠い。

右手の棒で一匹の動きを捉え、叩きつける。
ぐう、と一声鳴いてそいつは後ずさったが
相手にも致命傷を与えることは出来なかった。
敵の目に、怒りの色が滲む。

ちっと舌打ちした次の瞬間
背中に重い衝撃を受けて俺はよろめいた。
体を捻ってどうにか尻をつく。
攻撃に気を取られて、背後への注意が疎かになっていた。
肩口がひどく痛む。痛恨だ。くそ。

薬草を取り出そうと腰袋に手を突っ込んだ時
最後の一匹がハンマーを振り上げるのが見えた。
咄嗟に両手を目の前に掲げるが、間に合わなかった。

視界が暗転する。

204 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/18(土) 13:55:35 ID:Qd6pfb7F0
今回ここまでで。
多分後程また投下しに来ます

最近時間が出来るとPCの前に・・・

205 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/18(土) 18:59:23 ID:Qd6pfb7F0

『ぼうや。ぼうや、気がついた?』
涼やかな女の声に、俺は目を開けた。
様々な色が眩しく俺の上に降りかかってきて、眉間に皺を寄せる。

『ああ、よかった。気がついたのね。神父様』
女が呼びかけると、隣で何か呟き続けていた男が
声を止めて組んでいた手を解いた。

『洞窟の奥で倒れていたんですって。
少しやんちゃが過ぎるんじゃないかしら』
身を起こすと、女が優しくそれを支えてくれた。
教会の中だとすぐに解った。

ああ俺死んだんだな、と
まだぼんやりと霞む頭の中で思う。

なんかの映画で見たのと同じ
色ガラスを組み合わせた天井から光が差し込み
白い床に不思議な模様を描いている。

紺色の修道服姿のシスターと
刺繍が施された真っ白い衣服の男。これが神父様、か。

206 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/18(土) 19:00:38 ID:Qd6pfb7F0

『彼が見つけて運んできてくださったのよ』
示す方向に目をやると
少し離れた椅子に赤い鎧の男が心配そうに腰掛けていた。

『戻るのが遅いんで、探しにいったんだよ。
まさかあんな所まで降りているとはな』
約束を破ったな、と男は微笑んで見せる。

ぺこりと頭を下げると
男は立ち上がって真新しい
小さな布袋を俺の膝の上に置いた。
中から金属のこすれるような音がする。

中を覗くと何枚かのコインが
色ガラスを反射して虹色に光っていた。

『袋が破れていてな。出来る限り拾ったが・・・
足りていなくても恨まんでくれ』
『あら、助けていただいて恨むなんて』
少しばつが悪そうな鎧の男に、シスターが笑う。

鎧の男とシスターを見比べながら
俺はありがとう、と口にした。
シスターの頬がほころび、
男が照れ臭そうに兜の上から頭をさする。

207 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/11/18(土) 19:02:00 ID:Qd6pfb7F0

『お父様とサンチョ様には内緒にしておいてあげる』
というシスターにもう一度礼を言って
俺は鎧の男と連れ立って教会を後にした。

日はもう傾きかけ
次第に橙色に染まっていく太陽が
点在する家屋を照らしている。

『ぼうや、もう無茶をするんじゃないぞ』
兜の奥の瞳を少しだけ細めて
男は言いながら、腰を落とした。
真っ直ぐに真剣な眼差しが、俺の両目を捉える。

『正直、ぼうやを見くびっていた。ぼうやは勇敢な子だ。
でもな、勇敢なのと、無茶をするのは少し違う。わかるな?』
俺がはい、と頷くと、男は満足げに俺の頭を撫で
『さて仕事に戻るか』と踵を返した。

俺はもう一度頭を下げると
夕暮れ色に染まっていく空気の中
帰るべき我が家へと歩き出した。

208 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/18(土) 19:03:08 ID:Qd6pfb7F0
今度こそここまでで
ありがとうございます。

ではまた。

209 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/18(土) 20:52:26 ID:0vxzak7lO
乙ー
まだ早いけど、未来の自分に会うトコ期待w

210 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/19(日) 08:05:30 ID:2nGqguXC0
俺昔あえて未来の自分に話しかけないでシナリオ進めたことが

211 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/19(日) 09:01:12 ID:ZYhvrXiZ0
>>210
あるあ…ねーよwww
>>208
やられた後のゴールド半減仕様は鬼だと思う。
>夕暮れ色に染まっていく空気の中
>帰るべき我が家へと歩き出した。
ってのが切ないなー。
この先サンが向かうのは孤独で暗い時代だって事を感じざるをえない。

212 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/19(日) 13:53:28 ID:RhagEX+f0
乙です

>>210
俺もあるよ
特に何も変わらんかったよね

213 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/19(日) 13:54:30 ID:nekJYNrJ0
ここまでまとめました
http://ifstory.ifdef.jp/index.html

214 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/19(日) 17:32:28 ID:PQPRQHqO0
乙!
このスレはいいスレですね

215 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/19(日) 19:03:05 ID:SIMjOgc7O
活気が出て来たかな

216 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/20(月) 00:18:01 ID:YsR8SfZH0
タカハシ氏乙です

217 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/21(火) 11:08:11 ID:Om0b//7cO
保守

218 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/22(水) 12:04:02 ID:9tjMcrzl0
ほす

219 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/23(木) 09:37:58 ID:OVvdQ4iyO
保守

220 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/24(金) 12:14:01 ID:ZgA8Dc/eO
保守

221 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/24(金) 17:31:27 ID:4XSjwTS80
>>209
感謝です
結構先になりそうですね
時間かけすぎですかね・・

>>210
>>212
あるあるw

>>211
厳しいですよね
そんな時に限ってセーブしてなかったり
そのまま泣く泣く進めたり

孤独で暗い未来を
自分がどんな風に描けるかが不安ですが
頑張ります

>>タカハシさん
乙です
いつもありがとうございます

>>207続きを少しだけ

222 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/24(金) 17:32:17 ID:4XSjwTS80

リセットしてえええ
と思ったが無理な話だった。

大体にして、この世界で
セーブなんてどうしたら良いのか解らない。
教会で『セーブひとつ』『リロードひとつ』と言ったら
聞き入れてもらえるんだろうか。
念のため明日試してみようかな。
首をかしげながら、俺はその日の床についた。

家での動きは昨日と殆ど変わらなかった。
サンチョの腕に抱かれると心地好い睡魔が押し寄せ
目を覚ますとパパスが
『仕事が片付かん』と言いながら出て行く。
見送るサンチョとともに食事をし、俺は
「今日も探検」と言って家を出た。

朝の日差しは眩しかった。
まだ上りかけている太陽が
色鮮やかに緑の木々を染め上げている。

今日の俺は昨日とは違う。
呟きながら俺は迷わず武器屋の方へ向かった。
袋の中の小銭と相談しながら、品揃えを眺める。

223 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/24(金) 17:33:25 ID:4XSjwTS80

武器屋の店主は簡単に
それぞれの武器の使い方を教えてくれた。
中から、動物の骨を削っただけと言う
長めのナイフのようなものを選ぶ。

なけなしの小銭をはたくと
奥からおかみさんが顔を出してこちらに笑顔を向けた。

『随分小さいお客様ねえ』
ころころと笑うとちょっと待って、と部屋の中に取って返し、
『ずっとタンスにしまってあったんだけど
うちじゃ使わないから。おまけね』
そう言って俺に薬草をひとつくれた。
礼を言って武器屋を出る。

新しい武器を何度か素振りすると
なんとなく自分の手に馴染んだような気がした。

洞窟に入る前に教会に寄る。
シスターに改めて昨日の礼を言い
神父の下へ向かった。
「お祈りをしたいんですけど」
俺が言うと神父は穏やかに目を細めて
祈りの言葉を口にする。

セーブ音を期待した。
だが、何も起こらなかった。

224 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/24(金) 17:34:48 ID:4XSjwTS80

洞窟の入り口まで行くと
赤い鎧の男が『また来たのか』と笑った。
買ったばかりの武器を見せ
無茶をしないこと、とだけ約束をして、
俺は二度目の冒険に出た。

昨日よりも明らかに体が軽かった。
受ける衝撃も随分弱く感じる。

寄り道はせず、真っ直ぐに地下へ降り
更に階段を下りようとしたところで、
また三匹のおおきづちに出くわした。

体力は問題ない。先制して新たな武器を振り下ろす。
その衝撃に、芯を捉えた事が自分でも解った。
おおきく体を仰け反らせて、一匹目が動かなくなる。

残りの二匹に動揺が走るのが解った。
足を止めず、攻撃をかわす。
攻撃。回避。防御。

一発痛恨を食らったが、それだけだった。
二匹目、三匹目が倒れ、俺はほっと息をついた。

225 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/24(金) 17:35:52 ID:4XSjwTS80

その時。

不意に頭の中に何語ともつかない声が浮いた。
辺りを見回す。誰も居ない。
話しかけられたような感じもない。

俺の頭に浮いたそれは、すぐに形を失い
今はもう静寂が辺りを包んでいる。

あ、と思って俺はもう一度意識を集中してみた。
回復、回復、ホイミ。

また、何語ともつかない声が脳を支配し、
俺は自分の意思ではなく喉からそれを発していた。
丁度今、おおきづちにやられたばかりの傷みが
空気に溶けるように消えていく。

レベルが上がった。
それは初めての実感だった。

三匹の亡骸を背に、俺は階段を下った。

226 : ◆u9VgpDS6fg :2006/11/24(金) 17:39:44 ID:4XSjwTS80
タイトル入れ忘れたー
短いですが本日ここまでです
ありがとうございます

皆様にお伺いしたいんですが
短いのを頻繁に投下するより
半月ペースとかで長く書き込んだほうが
読み易いでしょうか?

227 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/24(金) 20:46:47 ID:YhDYqvFeO
職人様の好みでいいと思います

228 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/24(金) 21:47:26 ID:3RYmI6bbO
あんま短くても、長くてもなぁ
一区切り投下がいいんじゃないかと
今日のだったらもう少し読みたいよね

229 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/25(土) 00:45:04 ID:oXnpkvCe0
>>226
投下について、>>228に同意です。一区切り毎の投下が読みやすいと思います。

LVうpとホイミゲトオメです
魔法を会得するくだりがイイ!魔法って摩訶不思議だよなーと改めて思いました。
これで冒険がちょっと楽になるかなw

230 :名無し一般人 ◆CT1nwypRBY :2006/11/25(土) 02:19:50 ID:AmTY/1Q5O

 〜序章〜 『全ての始まりは、常に唐突に』


 見始めたことをさっそく後悔させてくれるテレビ番組の占いコーナー。
 愚痴るのもなんだが、俺が見るときは決まって結果が同じ気がする。
 「さて、今日最も運勢が悪いのは〜」
 こういうのって、最初から見てたら11位までで充分だよなぁ。
 ま、分かりきってても見ちゃうんだけど。
 「ごめんなさ〜い、天秤座のあなたで〜す」
 はいはい。そんじゃ今日はどんだけ悪いことが起きるのかな、っと。
 すでに一人っきりの誕生日迎えてるってのに。我ながら泣けてくるぜ。
 枕元のリモコンを掴んでテレビに向ける。
 「あなたは今日、とても大切な決断を迫られるでしょう。ラッキープレイスは近所の公園――」
 テレビを途中で消して、俺はリモコンをソファーへと投げつけた。
 リモコンは一度だけ弾み、ソファーの隅、ぎりぎりで動きを止めた。
 敷きっぱなしの布団に寝転び、顔を埋める。

231 :名無し一般人 ◆CT1nwypRBY :2006/11/25(土) 02:23:50 ID:AmTY/1Q5O
 「はぁ、つまんなー」
 誕生日の息子を残して旅行に行った両親を、恨むわけはない。行くのを断ったのは自分自身だ。
 懸賞で当たった期間限定の旅行だし、俺の誕生日と被ってしまったのも両親のせいではない。
 そもそも高校生にもなって両親と旅行に行くなんてことを、俺はとても気恥ずかしく思ったし。
 誕生日を祝ってもらうなんて、よくよく考えれば馬鹿馬鹿しい。というかもはや気持ち悪い。
 第一、最初は両親がいない間に普段できないようなことができると、胸を躍らせていたはずだ。

 それだってのに。

 いざとなったらやりたいことなんてなかった。
 「考えてみりゃ、そりゃそーか・・・・・・」
 俺にはこれといった願望も欲望も、いわゆる趣味すらないのだから。
 しかし、それならせめて誕生日らしく友達とどっか遊びに行けよと、偽物の自分は促してくる。
 でも友達に迷惑かけたくないしな、なんて。変に気遣う自分が本物で。

232 :名無し一般人 ◆CT1nwypRBY :2006/11/25(土) 02:27:49 ID:AmTY/1Q5O

 ――あ〜あ、本当に俺って何なんだろう?

 無意味な人生を歩んでる人なんていないって、ヒットソングは唄うけど、本当にそうか?
 今こうしてる俺にも何か意味があるのか?
 「――なんてな」
 くだらねー、ほんと。
 不毛で、そのうえ余りにも飛躍した問い掛けを俺は自嘲して交わす。
 俯せから仰向けの状態に転がり、深く息を吐き出して。また吸い込む。
 新鮮な空気が、俺の身体を満たしてゆく。
 「せめて外にでも出掛けてみるか・・・・・・」
 なんでか、そう思った。
 言いようのない感情に締め付けられた身体を無理矢理に持ち上げる。
 でも、何処へ行こう? 別にしたいことがあるわけじゃないからな。
 しばらく考えて、ふとテレビの占いを思い出す。運勢最悪。近所の公園がラッキープレイス。
 せっかくだし――久しぶりに行ってみる、か?
 俺はゆっくりと布団から起き上がった。

233 :名無し一般人 ◆CT1nwypRBY :2006/11/25(土) 02:31:54 ID:AmTY/1Q5O
 思い立ったが吉日って言葉もあるもんで、俺はさっそく準備を始めた。
 パジャマを脱ぎ、部屋のタンスから緑のTシャツと紺色のジーパンを引っ張り出す。
 別に洒落た服を着ていく必要はない。ただ気分転換に行くだけだ。
 顔を洗って、歯を磨き、寝癖でぶっ飛んだ髪の毛をブラシとスプレーで強引に撫でつける。
 鍵と、携帯に財布。全部をポケットに詰めたら、これで準備は完了。
 「いってきます」
 惚れ惚れするスピードで準備を済ませ、俺はマンションをあとにした。

 公園まではマンションから徒歩たった2分。インスタントラーメンもびっくりの超近所だ。
 しかもやたら広い。なんか偉そうな肩書きがついた公園で、休日には結構人が集まったりする。
 ああ、そういえば一時期そのせいでゴミ問題が騒がれたりもしたっけ。
 なんてことを思い出しつつ公園に入ると、案の定いたるところに人の群れが見えた。
 中にはレジャーシートを持ってきて、ピクニック気分の家族までいる。

234 :名無し一般人 ◆CT1nwypRBY :2006/11/25(土) 02:36:52 ID:AmTY/1Q5O
 「すげー晴れてんな」
 木陰のベンチに腰を降ろして、秋晴れの青空をすーっと見上げる。
 雲量が1までなら快晴だったっけか。まぁ間違いなく今日は快晴だ。
 あー、ここに来たのも、随分久しぶりだな。
 や、正確には通学の通り道にしているから、ほぼ毎日のように通り過ぎちゃいるか・・・・・・。

 そのまま呆けていると、アキアカネが視線の上でホバリングを始めた。
 すいすいと、泳ぐように空をあちこち飛び回る。

 ――ああ! こんな風に空を飛べたらどんなに気持ちいいだろう!

 なんてこと別段考えたりせず、なんの感慨もなしに俺は見上げていた。
 すると、前触れもなく唐突に、アキアカネは地面に落ちた。まったくの不意打ちだった。
 着陸というより、むしろ墜落に近い。ほぼ垂直落下だ。
 慌ててベンチから離れ、そこにしゃがみ込んで地面に目を見張る。
 アキアカネは地面に伏したまま、ぴくりとも動こうとしない。

235 :名無し一般人 ◆CT1nwypRBY :2006/11/25(土) 02:43:23 ID:AmTY/1Q5O
 「おい、なんだ? 死んじまった、のか?」
 いや、聞いても意味ねぇよな。不っ思議ー。
 「いたいた。ここにも動けるやつがよぉ!」
 ただでさえ聞こえるはずないと疑わなかった返事は、加えてさらに俺の思いがけない方向から聞こえてきた。
 瞬間、強烈に頭を締め付けられるような感覚が全神経を凍らせる。
 続けざま、視界が強制的に引き上げられる。
 なんなのか、全く分からなかった。
 状況を飲み込むのに、時間がかかった。いや、最後まで、飲み込むことは出来なかった。
 は、当たり前だ。こんな光景いったい誰が信じられる? なぁ?

 有り得ねぇよな。

 ありえないって。

 絶対、ありえない。

 「あー、どうして人間てのはいつ見ても旨そうなんだろうなあぁ」
 鷲掴みにされて持ち上げられた先に表れたのは、顔中毛むくじゃらの、猪みたいな化け物だった――。

236 :名無し一般人 ◆CT1nwypRBY :2006/11/25(土) 02:51:11 ID:AmTY/1Q5O
 「う・・・・・・あ・・・・・・」
 なんだよお前!?
 そう叫んだつもりだったが、声は出なかった。
 喉がカラカラに渇いて、砂漠化していく。
 「ぐふ」
 化け物は鼻を鳴らすと、黄ばんだ前歯をちらつかせながら、べろりと舌なめずりをする。
 はは、なんだ。これ。
 「食っちまいてぇなぁ。こんだけいるとよぉ」
 植え付けられる絶対的な死へのイメージ。
 それに伴う、痛覚への道程。
 覆いかぶさる恐怖。
 撥ね退けられない威圧感。
 それが本能かのごとく宙吊りの足ががくがくと大きく震えだす。
 「べつに一匹ぐらい。いいよなぁ? なぁ?」
 嫌だ。嫌だ。嫌だ。こんなのって、ねぇだろ。
 猪は見開いた眼をぎょろつかせ、俺を覗く。
 「なんて、な!」
 腹部に響く鈍い痛み。爆発しそうな激痛で、意識の火が一気に持ち去られ、掻き消されていく。
 「あぐっ・・・・・・あ」
 んだよ。俺がいったい何したってんだ・・・・・・。
 「調子いいぜ。いーもんが期待できそうだ!」
 猪の化け物は、満足そうに、俺を鷲掴みにしている左手へ力を入れる。

237 :名無し一般人 ◆CT1nwypRBY :2006/11/25(土) 02:54:05 ID:AmTY/1Q5O



 マッチの火みたいに意識がちらつく中で、俺は一つだけ気付いた。

 誰も動いていない。

 公園の家族、散歩に連れてこられた犬。多分、あのアキアカネも。

 動いているのは俺と、この化け物だけ。

 二度目の襲撃。恐らく命までも掠っていく。

 そんなことを思って。

 俺は堪らずブラックアウトした――――。

238 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/25(土) 02:59:00 ID:HePaIGAmO
わーい新作ktkr支援

239 :名無し一般人 ◆CT1nwypRBY :2006/11/25(土) 03:02:15 ID:AmTY/1Q5O
 その暗中の世界で。
 化け物の手はぐんぐん伸びてくる。逃げても逃げても、俺を追う。
 その先にある、下卑た快感を得るが如く。
 やめろ、来るな。誰か、助けてくれ。誰か!
 走っても走っても、腕はぴたりとついてくる。まるで俺の身体の一部と化したかのように。
 来るな、来るな!
 ついにその腕が、俺の頭を再び捕らえる。あの時と同じ威圧感が、簡単に俺の身動きを封じる。
 あっさりと恐怖の波に飲まれた俺は、もはや足掻くことさえ叶わない。
 醜悪な笑みを浮かべて、化け物はその強靭な筋肉へと力を込める。
 やめてくれ!
 食い込む爪が眼球を、噛み付く牙が頭蓋を。

 俺を、粉砕していく。
 「うわあぁぁっ!」
 跳ね飛ばされたように身体を起こす。伴って、腹部に痛みが走った。
 「あっ・・・・・・ツぅ」
 「あ、起きた」
 見知らぬ声。
 それに反応して俺は声の方向へ顔を向ける。
 そこにいたのは、漆黒のベールのごとき黒髪を纏った、見知らぬ少女だった。

240 :名無し一般人 ◆CT1nwypRBY :2006/11/25(土) 03:07:47 ID:AmTY/1Q5O
 「大丈夫? 随分と、うなされてたけど?」
 うなされて? ああ、そうか。そうだ。
 ん? 待て。俺は?
 俺は生きてるのか?
 汗ばんだ手の平を反射的にTシャツで拭う。
 手は、ちゃんとある。目も大丈夫だ。はっきりと見える。足は? 他と変わらず汗でびっしょりしてるけど、問題ない。
 夢だった? いや、今のが夢だっただけか。
 いまだズクズク刺すように腹が痛む。リアルなそれは疑う余地もない。
 しかし、とにかく。それ以外は五体満足だ。目立った外傷は無い。
 生きてる。生きてるんだ。
 徐々に自分が落ち着いていくのが分かる。頭にあった霧だの靄だのの不鮮明が晴れていく。
 同時に浮かび上がってくる数々の疑問達。

 化け物は? あれはいったいなんなんだ?
 此処は? いったい何処の部屋だ? さっきの公園の近くなのか?
 君は誰? 俺を助けてくれたのはあんたか? それとも他の誰か?

 ――て、このまま黙ってても仕方ないか――。

 「あの」
 「ちょっと待って。聞きたいことは山ほどあるんだろうけど」
 俺が話しかけようとした矢先、彼女は手を突き出してそれを制止した。

241 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/25(土) 03:14:07 ID:HePaIGAmO
wktk( ^ω^)

242 :名無し一般人 ◆CT1nwypRBY :2006/11/25(土) 03:15:40 ID:AmTY/1Q5O
 「まず、こっちから話すから。あなたはとりあえず黙って聞いてて」
 黒髪の少女は人差し指をぴんと立てる。
 「あ、あぁ・・・・・・」
 俺が面喰らって思わず頷くと、彼女も頷く。
 そして、微笑む。
 「私達がいるのは、私達の世界じゃない」
 なんだって?
 「あなたは、連れてこられたの。多分、ある程度選別されて」
 「ちょ、ちょっと待ってくれ。話の流れが」
 思わず口を挟む。なにを言ってる? 彼女は。
 黒髪の少女は、続けて手の平を上に返した。



 「つまり、ようこそ異世界へ――ってことよ」

243 :名無し一般人 ◆CT1nwypRBY :2006/11/25(土) 03:30:09 ID:AmTY/1Q5O
初めまして。それと、今回はここまでです。
支援ありがとうございました。

244 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/25(土) 05:43:37 ID:Rtgv94QN0
>>226,>>243
お疲れ様です

ここまでまとめました
http://ifstory.ifdef.jp/index.html

245 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/25(土) 09:22:49 ID:oXnpkvCe0
>>243
新作キター!どこの世界だろう…続き期待。
>>244
タカハシ氏乙です。

246 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/25(土) 18:08:32 ID:5vJND2XK0
もっと面白いのを書け。

247 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/25(土) 23:13:10 ID:b9gLTo+90
>>246
見本をよろしく

248 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 02:24:21 ID:WV+yG3so0
>>196
楽しんでもらえて嬉しいです
天井に頭ぶつけまくったら賢さ下がりそうな気がしますねw

>>名無し一般人さん
初めまして〜よろしくです
しかしいいところでww
続きwktk

ではでは>>182の続きだお
だらだら投下します

249 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 02:28:34 ID:WV+yG3so0
――――――――――――――――――2――――――――――――――――――――
  「……あ?」

覚醒。
どうやらいつの間にか寝てしまったようだった。
シーツに包まりもせず、ベッドに身を投げるままに眠ったのがいけなかった。
体温の低下が感じられて、少し寒い。
ベッドの淵に腰掛けるようにして起き上がり、ジュードはしばらくボーっとする。

  (フィリアは……?)

時間的にもうすぐ夕飯の時間のようだが、まだ帰って来てないようだ。
まぁモンスターに襲われて大ピンチって事は無いだろうとジュードは思う。
ここ最近のフィリアは攻撃呪文の威力が上がっているようだったし。
ただ探しに行くのがめんどくさいだけでは無い。
もちろん仲間としての信頼である。

  (まぁメシ食っても帰って来なかったら、探しに行くかな)

一応フィリアが帰って来た時の意思表示の為に、剣をベッドに立てかけてから宿屋を出る。
今はいないが必ず帰る、という意思表示だ。
これで食事中にフィリアが帰って来てすれ違いになっても、逆に探される事にはならないだろう。
外に出ると、昼間に増して寒さが身にしみた。
アリアハンは年中を通して比較的暖かい気候だからなぁ。
小走りして、村の中のメシ屋に入る。
こんな田舎でも飯時となれば、それなりに騒がしいものだ。
ワハハだガハハだと男達のテンションの高さがうかがえる。
ちょうど窓際に一つ席が空いているのを見つけ、店の奴に注文をしてから座る。
円卓ではなく、壁に備え付けられたテーブルなので喧騒を背後に浴びる事になるが、
それもうざったいので意識は窓の外の月に集中させる事にした。
円の形をほとんど残さないような、眉よりも細い二日月が望める。

250 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 02:35:48 ID:WV+yG3so0
  「はいよ、待たせたな」

ドン、と目の前に大皿と飲み物が置かれた。
結局昼も抜いてしまったので、何とも美味そうだ。
美味いと言えば、いつか真理奈が言っていたカップラーメンというものを食べてみたいなと思う。
お湯入れるだけで食事が出来るなんて、どんな料理なのかいまいち想像出来ないが、美味いらしい。

  (そう言えば、久し振りに1人で食べるな)

いつもなら真理奈が何だかんだとうるさいが、この状況に比べれば大分マシだなと改める。

  「……」

黙々と食事をするのはこんなにもつまらないものだったかとさえ思えてきた。
昔はそうな風に感じた事も無かったはずだが……
昼間も話したが、いつの間にかこの生活にも慣れてしまったなと実感する。
4人での生活に。
何の因果かは知らないが、この4人で旅をしてるのを不思議なものだと思う。
同じアリアハンにいたのに顔も知らなかった2人と、もう1人は違う世界の人だってんだから。

  (あ、もう1匹いたか。スライムが)

そんな事言うとブルーが怒るぞ?
けどスライムと旅するなんて貴重な体験かもな。
まぁ有意義かどうかは別にして。

  「ふぅ……」

一通り食べ終わって、飲み物を口にする。
言いもしないのに、運ばれてきたのは酒だった。

251 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 02:39:20 ID:WV+yG3so0
フルーツベースなので甘いのだが、暖かくしてあるので口当たりが良く感じる。
ふぅ、と吐く息が白くなった。
両手でコップを持ち、再び月を見上げる。
人が太陽に希望を見るなら、月には願望を見るのだ。
だが二日月と呼ばれる今宵の月は願望と言うにはあまりにもか細く、
とても望みを聞いてくれそうにない。

  (夢か……久し振りに嫌な夢だったなぁ……
   夢にまで喜怒哀楽なくてもいいんじゃないか?
   どうせ虚構なら楽しませろよ)

剣の鞘を撫でようとして、置いてきた事を思い出す。
触るのはいつものクセだ。

  (商人の町で思い出したからか……?)

思い出すきっかけとなった2人の人物。
プレナと兵士長。
2人共自分の信念に基づいて戦った者だ。
1人は最後まで国の為に、1人は最後まで人の為に。
その行き着くところはまったく正反対だったが、強さを持っていた。
そしてジュードはプレナ側に加担した。
兵士長はその強さの使い方を間違えていると感じたからだ。
そう考えれると、プレナも兄貴も同じだったな、と思う。
自分よりも他人を、1人から大勢までを守りたがったものだ。
しかも、プレナは敵味方の枠を超えて守ろうとした。
そんな姿勢は嫌いだったはずなんだけどな……

  「だった、か……」


252 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 02:42:35 ID:WV+yG3so0
それは無意識の自覚なのだろうか。
嫌いだった。
少なくともそう思っていたものに、実は影響されていたなんて。

  "ありがとう。本当に感謝してるわ。
   これからはあなたの守りたいものを守ってあげてね"

ふと、商人の町を出航間際にプレナと交わした会話を思い出す。

  (俺の守りたいもの、か)

戦士は一番前で戦う者であり、仲間を守る者でもある。
だから本来であれば戦士というだけで、何かを守っているはず。
でもプレナの言う意味は、それとは少し違うような気がする。
しいて言うなら、ジュードが本当に守りたいものを見つけて欲しい。
そんな感じだろうか。
どうしてこの旅に同行する事にしたのか。
どうして戦士を志したのか。
実は最近のジュードはその意味を確かには見出せなくなっていた。
最初はあったのだが、改めて考えるとちっぽけなものに思えてくる。
商人の町での戦闘の後からはそれが顕著に現れた。
たぶん信念を持つ事の真の強さを実感したからだろう。

  (真理奈の次は、俺がそれを見つける番かな)

その願いは、月まで届くのだろうか……
二日月は静かにその光を放ち続けていた。

253 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 02:46:35 ID:WV+yG3so0
あ…また投稿し忘れた…
すいません…
>>249のジュードが起きる前に↓の文が入ります…


〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
  「お前の守りたいものは何だ?」

兄貴のその口グセを思い出す度に、その剣の重さに沈んでしまいそうになる。
両足に力を入れ、膝を掴んで踏ん張り、めいいっぱい叫ぶ。

  「兄貴がそれを守って何になった!!」

それを聞いた兄貴は、男の俺が見とれてしまう程に、それはもう誇らしげに笑う。
そして手を頭の高さくらいに挙げ、俺にサヨナラの合図を送る。
背後の月の光に向かって歩いて行こうとする兄貴。
そこまで行かなくてはいけない衝動に駆られる。
が、剣が枷となり前に進む事が出来ない。
どんどんと重たくなるそれを捨ててしまおうと柄に手をかけ、
鞘から引き抜くと、キレイな刀身がキラキラと輝きを放っていた。
何と心が癒される光だろうか。
その光の奥に誰かがいる……
顔は分からないが、笑いかけられているようだ。
何…?
何を…
何を伝えたい……
やがて剣の輝きが月光と合わさり、全てを包み込んでこの世界は終わる。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

254 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 02:49:58 ID:WV+yG3so0
  「お、いつ帰って来たんだ? 今探しに行こうかと思ってたんだけど」
  「ちょっと前に」

食事を終えたジュードが部屋へ帰ると、ベッドに腰掛けたフィリアが一番最初に目に入った。

  「ふ〜ん…メシは?」

コクリとフィリア。

  「食ったのかよ。まだかと思って用意したんだけどな」

テーブルに皮の袋が置かれる。
さっきの食堂でお持ち帰りしたのかな。

  「……」

フィリアはそれを手にとってみる。
まだ暖かい。

  「んで、どこまで散歩行ってたんだ?」

袋からジュードへと目を移す。
着替えの為にその視線には気付かないが。

  「……エルフに会ってた」

服の擦れる音と重なり合ったので、聞き間違いかと思う。
でも確かにエルフ、と言った。
フィリアは冗談言わないしなぁ……

255 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 02:54:14 ID:WV+yG3so0
  「エルフなんてホントにいるのかよ」
  「うん」

即答されてしまった。
エルフなんてロト伝説の中でしか聞いた事ないような存在だ。
もしいたとしても、気軽に会えるようなものでもないだろう。
会えるものならジュードだって会ってみたい。
しかしこうもあっさりと言われるとなぁ……
正直、拍子抜けしてしまう。

  「そ、そうか。良かったな」
  「うん」
  (うんって…嘘言うようなヤツでもないし……)

対処に困ったという感じのジュード。
まぁそりゃそうかもな。
宇宙人に会ったって言うようなもんだからなぁ。

  (何でこういう時に真理奈はいねーんだよ)

確かに真理奈だったら喜んで話に飛びつきそうだけどねw

  「あ、でも俺も会ってみたいかもな」
  「うん…」
  「あ〜…明日はどうすんだ?」
  「うん……」
  「……? 何だ、眠いのか?」
  「……」

フィリアは一点を見つめ、そのまぶたは今にも閉じようとしている。

256 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 02:58:27 ID:WV+yG3so0
  「よし、じゃあ寝るぞ。ほら、横になれよ」

そう言ってジュードはフィリアの手から皮の袋を取り去り、枕へ誘導してやる。

  「…じゃあ灯り落とすからな」
  「うん……」

フィリアがベッドの定位置に収まったのを見て、ランプの火を吹き消すジュード。
外からの月明かりだけが頼りになる。

  「…おやすみなさい…」
  「お…お休み」

お休みの挨拶されるとは思っていなかったのでジュードはびっくりしてしまう。
いまだに分からないところがあるが、まだまだ子供だなとも思う。
フィリアにも何か守りたいものがあるのだろうか。
そんな事を考えつつ、ジュードも床に就いた。

……… …… …

翌日、フィリアはまたエルフに会いに行くと言って出かけた。
ジュードはいよいよ暇を持て余し、武器屋や道具屋を見て回るが特に目ぼしい物は無かった。
結局メシ屋で時間を潰す事になってしまう。
昨日と変わらずにうるさい空間。
一日の苦労を互いにねぎらう大人達。
だがそこで、ジュードはフィリアの言っていた事の一端を理解する事になるのだった。


257 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 03:05:26 ID:WV+yG3so0
  「よぉニイさん。1人で食事たぁ寂しいねぇ〜あっちのグループにまざらないのかい?
   盛り上がってるみたいだぜ」

飯を食べ終わろうかという時に男がいきなり隣に座ってきた。
チラリと声をかけてきた奴と、あっちのグループとやらを確認する。
あっちのグループは酒飲みのチャンプを決めるだとかでガヤガヤやっていた。

  「気分じゃないね」
  「へへ、ニイさんこんな辺ぴな村で何してんの? ここの人じゃないよな?」
  「……あんたこそ」

男は薄笑いを崩さない。
男に言い寄られるのは初めてだな。……まぁ女の方もないけど。

  「へへへ、実は儲け話があるんだが、乗らないか?」

まず見ず知らずのヤツにそんな話を持ちかける時点で怪しさ満点だ。

  「へへ、そうだよな。実はよ、確実って訳じゃねぇんだ……
   おーい、こっちにも飲みモン追加だ〜!」

ジュードの酒が無くなるのを見過ごさない。下っ端として経験を積んだのか、とか考えてみる。

  「ただ前金だけでも十分なくらい貰えるんだよ。大抵のヤツはそれだけもらってドロンだ。
   しかしな、それも逆に怪しいと思わないか?
   つまりそれだけの金をだすって事はだな、話の信憑性がグンと上がるって訳よ」

どうやらただのバカじゃないようだ。
けどジュードに話すメリットがいまいち分からない。
そこに2人分の酒が運ばれてくる。

  「おっ、すまねぇな。よし、ここはオレのオゴリだ。飲んでくれや」

258 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 03:08:54 ID:WV+yG3so0
ソイツはグラスを掴むと、一口で半分飲み干してしまう。

  「へへへ、そろそろ素直に話そうか。ニイさん昨日も1人で飲んでたろ?
   だからニイさんを選んだんだ。腕も悪くなさそうだしなぁ。
   正直オレ1人じゃ無事に事を運べるか心配なんだよ」

なるほど。一応人は選んでる訳だ。
それが正解とは限らないけど。

  「前金で五千Gだ。成功すれば十万G。
   どうだ? 悪くねぇだろ。
   失敗してもおとがめ無し。それでも十分お釣りがくるってもんだ」

……まだ判断するのは早い。
犯罪なら確かめてから捕まえればいいし、くだらないなら辞めればいい。

  「依頼人は?」
  「あぁそれがな、代理のヤツにしか会えねぇんだ。
   オレも顔を見ねぇと信頼できねぇって言ったんだがな……
   案外その代理ってヤツが本物かもしれねぇ。
   へへへ、まぁでももう金は貰ってんだ。
   成功報酬を2人で分けても五万Gだぜ? 悪くねぇだろ」

ソイツのオゴリだという酒に手をつける。
その行為は、もう手を貸すと言っているようなモンかもな。

  「……で、何を?」
  「お、いいねぇいいねぇ〜やる気になったか?」

ソイツは少し嬉しそうにグラスの中身を全て胃に流し込んで言った。

  「獲物はエルフさ」

259 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/11/26(日) 03:10:50 ID:WV+yG3so0
今日はここまで
またしても失敗してスミマセンでした…
いかんなぁ…
反省します

260 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/26(日) 13:42:53 ID:OvCxVojk0
あまり俺を怒らせない方がいい

261 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/26(日) 20:10:35 ID:YJWk0h4wO
>>259
お疲れでっす

262 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/28(火) 00:03:15 ID:CE1WMn8X0
干す?

263 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/28(火) 13:27:59 ID:T7EY9Gx30
まずは自分のステータスチェックするだろ。
覚えてる技と。

264 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/11/29(水) 03:42:19 ID:Px8GcEYA0
>>259
お疲れ様です。
教えていただいた箇所を頭へ追加して、保存しました。

ここまでまとめました。
http://ifstory.ifdef.jp/index.html

しばらく、更新が滞ります。
もしかすると年内かもしれないので、まとめサイトの方はのんびりとお待ちください。
ついでにタカハシの旅も、のんびりお待ちください。

265 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/30(木) 15:51:07 ID:N/GRhzg1O
たまに思うんだが、ここの住人たちはどんなネタとか設定を持ってるんだろう?って
>>362みたいにチラっとでも書いてみると面白そうな気がするが


266 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/30(木) 16:40:49 ID:JrrGgJWWO
>>362に期待

267 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/11/30(木) 18:29:59 ID:PUoJ95FZO
>>265 キラーパスktkr
>>264 タカハシ氏乙!

268 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/01(金) 16:34:32 ID:aZ4lL9J6O
保守

269 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/02(土) 12:03:07 ID:EWw6CSj3O
保守党

270 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/03(日) 11:42:33 ID:y0NSrlg2O
補修

271 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/03(日) 23:28:24 ID:/nmc4fD7O
皆さん忙しいのかな・・・。

   ヾ"""ツッ
  ミ・ω・ 彡
   ミ   ミ
   """"゙


272 : ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:45:31 ID:TDxwuxx50
>>227
了解です

>>228
区切りかたがなかなか難しいですね
まだまだ未熟なので、頑張ります
ありがとうございます

>>229
ありがとうございます
魔法の絡め方はすごく迷いました
(今も書きながら悩んでます)

>>タカハシさん
乙です

>>暇潰しさん
乙です
どんどん物語が動いていきますね
楽しみで仕方ないです

タカハシさんに並んで
多忙につき自分も滞りそうです
ともかく>>225続きです

273 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:46:41 ID:TDxwuxx50

右にそれる道を無視して、真っ直ぐ奥へ進む。
開けた空間の中ほど、大きく散らばった幾つかの岩の傍ら
地面に寝そべるいかつい老人の姿が見えた。親方だ。

物凄く長い道のりだった気がした。
傍によると、親方はぐふう、と息を吐いて寝返りを打つ。

つか本当に寝てんのかよ。緊張感ねーな。
呆れ返りながら俺は、親方の肩を揺さぶった。
うん?と口の中をもごもごさせながら親方が体を起こす。

『おや、ぼうや。こんなところで何をしているんだい』
本格的に緊張感のないのんびりした口調で、親方が言う。
俺はがっくりと肩を落としながら
「助けに来ました」と言った。
おやまあと目を細めて、親方が続ける。

『そうかい、ありがとうよ。
じゃあちょっとこの、岩を押してくれんか。
動きそうで動かんのだよ』

そういって目をやる岩の下に
親方の片足が痛々しく押し潰されていた。
濃い色のズボンを破って
肌から赤黒く乾きかけた血が滲んでいる。

274 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:48:04 ID:TDxwuxx50

『隙間に引っかかっているようでな。傷は大したことないんだよ』
不安そうな目の色を察してか、親方がゆっくりと言う。
『ただ押しても引いても抜けんもんでな。いや参った』

わかりましたと頷いて
俺は岩を押しやるのを手伝った。
しかし岩は大きく重く、
子供一人の力が加わったところで動きそうもない。
なんでやねん。また約束が違う。

『やれやれ。やっぱりだめか。
ぼうや、誰か大人を呼んできてくれると助かるんだがな』
子供のプライドを気遣ってか
出来る限り優しい口調で親方が言う。
俺は大人のプライドを持っていたので、逆に悔しかった。
辺りを見回す。

ふと思いつき、
散らばった中から適当な大きさの石を拾って
俺は親方の足の傍に置いた。
売り忘れて持っていたかつての武器を手にする。

岩の隙間に片端を差し込み
俺は石を支えに反対端に思い切り体重をかけた。
僅かでも浮けば。僅かでも。

275 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:49:40 ID:TDxwuxx50

考えを察したのか、親方が
空いた隙間に手を押し込み力を加え
更に自由な方の足を岩の隙間に捻じ込んだ。
木の棒が嫌な音を立ててしなる。
頼む、と俺はさっき祈りをささげた神に祈った。

不意にずるりと、親方の足が抜けた。
かかっていた重力が瞬間的に緩み
からりと乾いた音を立てて棒が転がる。
同時に、詰まらせていた二人分の呼吸と笑い声が空間にこだました。

『いや、ぼうや。助かったよ。賢いねえ』
肩で息をしながら親方が微笑む。
照れ笑いを隠して、俺は棒を拾い上げ腰布に差し込んだ。

親方の傷は本当に軽そうだった。
凝り固まった体を解しながら足首を回し、
『うん、大丈夫そうだな』と言うと
意外なほど身軽に立ち上がる。

『ぼうやありがとうな。みんな心配しているだろう。
早く村に戻らねばならんな。行こうかい』
手を引いて歩き出そうとする親方の申し出を断って
俺は洞窟に留まると伝えた。

「もう少し探検してすぐ帰るから」と言うと、親方は
『こんな洞窟でも、ぼうやには大冒険だろうな』
と笑い、こちらを気にしながら一人階段を上がっていった。

276 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:50:58 ID:TDxwuxx50

簡単に洞窟内の探索を進める。
最深部でも、出てくるモンスターの種類は殆ど変わらず
俺はスライムや昆虫や角の生えたウサギを叩きながら
分かれ道の先を覗いていった。

奥に朽ちた空き箱があり
その縁に布切れが引っかかっている。
手に取ると着衣のようだった。
今の俺の服よりは、少しだけ布が厚く縫製もしっかりしている。

その場で着替えるのはなんとなく気が引けて、
俺は軽く埃を落とすと服の上からそれを羽織り
ひとつだけボタンを留めた。

反対の奥にはスライムがいた。
咄嗟に武器を構えると、
『叩かないで!僕は悪いスライムじゃないよお!』と
慌てたようにその大きな口から人間語を発した。

話を聞いてやると、
三角だか四角だかよく解らないことを
まくし立てるように喋っている。
(こんなところはゲーム通りかよ)

それ以上の収穫はなく、俺は
久し振りの人間語を話したがるモンスターに
達者で暮らせよ、とだけ言い残し帰路についた。

277 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:53:27 ID:TDxwuxx50

洞窟を出ると、赤い鎧の男が笑顔で手を挙げた。
『さっき薬屋の親方が通ったよ。
ぼうや、親方を探しに行ってたんだってなあ』
頷くと、感心したように男は顎に手を当て、
『何も言わずにこんな洞窟の奥にな。恐れ入ったよ。
でも次はおじさんにも相談してくれよ。なんにせよ危険なんだから』
にこにこと勝手に頷きながら、男が俺の頭に手を置く。

言ってもどうせついてこないだろ。
っつか俺を探す前に親方を探せよお前。
思ったが恩があるので黙っておく。

簡単に挨拶を済ませ俺は親方の家へと向かった。
そろりと扉を開け顔を出すと、
店員の若い男が俺に気付いて明るく笑った。
表情の奥にも、もう不安の色は見えなかった。

『ぼうやは昨日の。今日も来てくれたのかい?
親方、さっきやっと戻ったんだよ』
言いながら丁寧な物腰で俺を奥に通す。

『親方、この子昨日も心配して来てくれたんですよ。知り合いなんですか?』
『うん?おお、おお、ぼうやは洞窟で会った』

薬の調合なのか、秤や
見たことのない器具とにらめっこしていた顔をこちらをに向け
忙しなく動かしていた手を止めて、親方が嬉しそうに笑みを零した。

278 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:55:05 ID:TDxwuxx50

え?と声を上げる若者に、親方は
『洞窟まで探しに来てくれたんだよ。
そうだ、お礼をしようと思っていたんだよ。
丁度良かった。ちょっと待ってくれんかな』
言いながら立ち上がり奥のタンスに向かう。

僅かに引きずった片足に
真新しい白い包帯が見え隠れしていた。
あの時は無理をしていたんだと、その時になって気付く。

『ぼうや本当に親方を探しに行ってくれたのかい?』
驚きを隠さずに若者が言った。
頷くと男は、声にならないと言う表情で俺の顔を見つめる。

「探しに行くっていったろ?」
俺が言うと、若者はあはあ、と笑って
『参ったな。ぼうや強いんだなあ。
俺、実はちょっとあの洞窟が怖くってさ』
頭を掻きながら極まり悪そうに言った。
正直な男なんだな、と思い俺もあわせて笑った。

279 :サンタローズ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:56:22 ID:TDxwuxx50

ほれ、と親方の手から差し出されたのは
網目の粗く薄いケープだった。
派手な色の糸を編み合わせてあって、
ちょっと俺には着れないなあと失礼なことを思った。

『わしの手編みだよ。出来は良くないがな、ここが入っとるんでな』と
胸に親指を当てながらにやり笑う親方にお礼を言い
丁寧にお礼を言われ、俺は親方の家を出た。

宿屋にも顔を出そうか迷ったが
疲れていたし面倒だったから俺はそのまま家に足を向けた。

パパスは戻っていなかった。
まだ陽は高かったが、
早めの夕食をとるとすぐにサンチョが俺を抱きかかえたので
睡魔に身を委ねて俺は目を閉じた。

280 : ◆u9VgpDS6fg :2006/12/04(月) 17:57:35 ID:TDxwuxx50
本日ここまでで
ありがとうございます

また間が空くかもしれませんが
宜しくお願いします

281 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/04(月) 19:35:39 ID:mzNOGZXU0
洞窟編乙。
お化け退治も期待してるよ。

282 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/05(火) 07:51:54 ID:NHZLIX/c0
村のみんながいい人でなんかほっとするなあ。その分が後で響くが。
ゲーム通りなスライムとかw 実際意味不明だよな、確かにw
乙でした。

283 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/05(火) 09:56:40 ID:lzhtrVZa0
>言ってもどうせついてこないだろ。
>っつか俺を探す前に親方を探せよお前。
>思ったが恩があるので黙っておく。

ゲームだと気にならないが、リアルに描写されると確かにこう思うなw
ゲームの隙間を補完してくれる感じでいいですね。乙です。

284 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/05(火) 14:58:19 ID:1kKdfpDz0
親方が素敵な大人だ
ゲームの登場人物としては全然印象に残ってなかったけど
>>280の活字で読むと彼のような脇役の良さがじわりとしみてくるなぁ

285 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/06(水) 10:22:50 ID:NQPIxtgm0
>>280
お疲れ様です

ここまでまとめました
http://ifstory.ifdef.jp/index.html

286 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/06(水) 12:02:04 ID:eSSHWPD3O
タカハシ氏乙です

287 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/07(木) 22:18:51 ID:etYGKOBgO
保守

288 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/08(金) 08:01:09 ID:jmQWhkKQO
後々のパパスに降りかかる悲劇を思うと鬱になる。
だけど、それ程すんなり感情移入できる素晴らしい文章に乾杯

289 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/09(土) 23:46:28 ID:qs5Rrdm6O
あげぽ

290 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/10(日) 00:17:17 ID:L9RmzSvAO
ここもどうせ、オルテガスレみたいになるんだろ?

291 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 00:38:36 ID:JjvvsK4d0
オルテガスレを知らない自分が小ネタを含め、投下行きますよー


……
………
  「酷い有様だ……」
  「再び人が住めるようになるのでしょうか」
  「砂漠から水が枯れる事はある?」
  「ご加護があります内には…」
  「そうだよね」
  「……」
  「なら僕はそのご加護を全うしようと思う」
  「フィリー…」

  「失礼します! 王子!! モンスターがっ!!」
  「そうか。今行くよ」

  「私も」
  「プエラ……」
  「ダメ、ですか?」
  「危険だ」
  「その為にホイミを覚えたんです」
  「……ありがとう」
  「はい」
  「行こう。未来の為に」
  「はい!」
………
……



では>>258の続きをどうぞ

292 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 00:48:43 ID:JjvvsK4d0
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
  「私は全てを照らす太陽になりたいの」

そう言ったお前の横顔は、優しさや慈悲といったものに溢れていた。
だからこそ、そこに儚さと脆さを感ぜずにはいられなかった。
そんな自分は彼女の側にいる資格は無いのだと客観視する一方で、
ますますお前に惹かれる自分にも気付かされる。

お前は愛だった。
愛そのものだった。
自分はもちろん、この世界の存在するもの全てがその愛に照らされて
生きていられるのだと本気で思った事もある。

だから…
だからその愛全てを自分のものにしてしまいたかった。

若かった自分を責める事はいくらでも出来る。
しかし過ぎ去った時間を取り戻す事は出来ない。
懺悔の為に天に手をかざすと、お前に貰った指輪の宝石が光を放ち、
空へと上っていった。

その後には、残ったものが自分の全てになった。
それは暗闇の中で必死に生きようとするマリアの形見の星の光だった。
その光に照らされて、この世界は終わる。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

293 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 00:53:51 ID:JjvvsK4d0
カザーブ。
その土地にまつわる伝説から、世の格闘家達の修行の拠点になりつつある村だ。
もちろんダーマの方が名が高いのだが、それは多様な知識と触れ合える場所だからだ。
こちらは自分と向き合う事を優先しているような者が集まっている。
とは言え、それでは商業的な発展は見込むべきもない事は確かだ。
まぁそれがまた、この村の落ち着ける理由にもなるんだけど。

  「久し振りじゃの」
  「ん」
  「そっちのは?」
  「あぁ、新しい仲間じゃ。孫は置いてきた」

カザーブの武器屋の店主との会話だ。
パトリスの言っていた通りなら、この老人が腕の良い職人なのだろう。。
それで? と言わんばかりに店主がパトリスに目を向ける。

  「実はな、この爪を直して欲しくれんかと思ってな」

パトリスの意向を察して、真理奈が鉄の爪を取り出す。
店主は切断された鉄の爪を一瞥し、少々目を開かせる。

  「何ぞ腕の良い剣士と決闘でもしたんか」
  「いや〜何か呪文でやられちゃったんだよね〜」

会話に加わった真理奈に、老人は驚いた表情を見せる。

  「……バギか」
  「凄い! よく分かったね!」
  「答えはそれしかないわい。
   しかしこんなにも綺麗サッパリと切るなんて芸能はそうそう出来るものではない。
   よくこんな相手と戦って生きておるな」
  「まぁね〜♪」

294 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 00:57:56 ID:JjvvsK4d0
  「褒めとりゃせんよ」
  「何でよ……」
  「……結論じゃ。新しいのを買った方がえぇ」
  「む〜それが嫌だからここに来たのに〜」
  「しかしな」
  「ワシからも頼む。まぁ無理なら無理と――」
  「無理ではない。が、手間はかかる」
  「お願いおじーちゃん!」
  「それなりの理由があるという事か。しかしワシにお願いされてもな」
  「え? どういう事?」
  「まずはアンタ次第じゃ」
  「??? 分かるように言って?」

店主はふ〜と一息つけ、パトリスをジロリとにらみつける。

  「……ちゃんと教育せんか」
  「武器はな、ちょいと専門外じゃ」
  「むしろ専門じゃて。魔法使いが聞いて呆れるわ」
  「ではこの不肖息子にご教授お願い致します」
  「授業料、請求するからな」

いかにも渋々といった感じで真理奈に向き直る店主。
そして、よいか? と前置きする。

  「この爪は切断されておる」
  「見れば分かるよ?」
  「そうではない。精神的にも、という意味じゃ」
  「せーしん?」
  「ちったぁ勉強せい……」
  「うっ……」

295 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:01:35 ID:JjvvsK4d0
この世界でも勉強しろと言われるとはねw
まぁ学だけが勉強ではないという事ですよ、真理奈さん。

  「いいか。武器とは物理的な側面と精神的な側面がある。
   その両側面が合わさっていないと真に武器とは言えんのじゃ。
   この爪はその両側面で切られている」
  「??????????????」
  「物を使い続けるという事は、人と物が一つになっていく事。
   物側から見れば、人の精神が物に宿るという事じゃ。
   そして今、この爪は精神的にも切られている。
   つまり爪の部分と本体の部分は物理的にも精神的にも離れている訳じゃ」
  「それは元には戻せないって事?」
  「お前の心は他人の心になれるか?」

その突然の質問に真理奈はうぅん、と首を横に振る。
そこで店主は初めて鉄の爪に手を伸ばし、何かを確かめるかのように触れる。

  「……これは元からお前さんの者ではないな?」
  「え? どうだろう…おじいちゃんがくれたよ?」
  「確かならば、これはかつての仲間の物じゃな」
  「いかにも。真理奈には言ってなかったか?」
  「へぇ〜初めて聞いたよ?」

店主は半ば呆れ顔で先を続ける。

  「他人が使い古した物を使うという事は、新品を使うのとは訳が違う。
   なぜなら他人の精神がそこに宿されているからだ」
  「ほうほう」

296 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:04:51 ID:JjvvsK4d0
  「……そして状況は更に複雑じゃ。
   お前が途中から使い出したが為に、この爪の精神は二つになっている。
   精神の重複によって爪はさらに脆くなった。
   もちろん物質的に使いこんだという事でもある」
  「も〜説明長いよ〜……結局どうしたらいいの?」
  「ただ物理的に直すだけでは意味がない。
   まずはこの精神を一つにする必要がある」
  「どうやって?」
  「他人になれるか、と聞いて否と答えたな?」
  「うん」
  「では他人になれ、という事じゃ。
   そうすれば説得も出来よう」
  「え〜無理じゃん」
  「それが無理なら、無理だという事じゃ。諦めて新しいのを買うんじゃな」
  「む〜」

話は終わったというように店主は席を立つ。

  「疲れたから今日はもう店じまいじゃ」
  「戸締りには気をつけるんじゃぞ」
  「うるさいヤツじゃ」

そんな会話の後、パトリスは真理奈を促して店から出た。
陽が傾きかけていた。

  「まぁ、まだ時間はある。ゆっくり考えて、決めるんじゃな」

真理奈はじっと両手に乗せた鉄の爪を見たまま、答えなかった。


297 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:11:26 ID:JjvvsK4d0
  「武器の精神か〜……ん〜」

珍しく難しい顔をしている真理奈さん。
宿屋に戻ってきたようですね。
ベッドにあぐらをかき、鉄の爪とにらめっこしてます。
真理奈なりに解決しようとしているようで……

  「お〜い、鉄の爪〜……って、鉄の爪じゃおかしいか。
   じゃあテッちゃんにしよっか?」

何がだよ。

  「テッちゃ〜ん! 真理奈だよ〜握手!」

そう言いながらテッちゃんの甲の部分にタッチする。
もちろん何の反応も無いが。
だいたいそのテツは鉄のテツか、「鉄」と「爪」の頭を取ってテツなのか
非常に突き止めたい訳だが……

  「名前付けてもダメか〜……ん〜難しい」

お困りのようです。
そりゃ物とコミュニケーション取るってのは難しいだろうさ。

  「オッス! オラ真理奈! よろしくなっ!!」

し〜ん……

  「おぉ〜よく見れば傷が結構あるなぁ」

それでもめげずに、ジロジロと観察し始める真理奈。
普段手入れとかはするけど、こんなにマジマジと見た事は無い。

298 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:16:50 ID:JjvvsK4d0
そういう意味では、真理奈は今までで最もテッちゃんと向き合ってる事になるかな。

  「そう言えばずっと一緒にいたのに、何にも知らないもんなぁ〜」

そんな人を好きになり始めの頃に吐くセリフを口にする真理奈。
まぁ知りたいって気持ちがあるのは良い事ですよ。

  「他人になれ、かー。……自を捨て、客となり、己を茄子」

成す、ね。ツッコミ辛いからやめて。

  「……」

正座し、目を閉じる。
自を捨てる事が他人になる第一歩という禅の心得ですか。
その先に再び形成される己は、先の自とは違う者である。
まぁ分かりやすく言えばロト紋のアレですよ。
姿勢を正し、呼吸を正し、心を正していく。

  (めんどくさいからイヤなんだけどなぁ〜
   これもテッちゃんの為、私の為、世界の為ってね)

とは言っても最初は色々考えちゃうんだよね。

  (あ〜懐かしいな、この感じ。昔はよくやらされたもんだ)

厳密に言えば鍛錬じゃないから今では自己流入ってますけどね、
昔はきちんと練習してたみたいですよ。
そうこうしている内に雑念を制し、意識を制する事に成功する。
無意識とも言えない無の状態になってこそ、自を捨てたと言えるだろう。
そこで初めて他になれるんです。
すっと手を伸ばし、鉄の爪に触れる。

299 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:21:03 ID:JjvvsK4d0
そして無の心が相手に触れる。
それは相手の心がこちらに触れてくる事でもある。
……
……
――!
  「真理奈〜おるか〜?」
  「ピィ〜?」
  「だぁ〜!!」

扉が開かれる音と共に、ベッドに倒れこむ真理奈。
入って来たパトリスとブルーは何事かとうろたえる。

  「も〜やめてよおじいちゃん!! もう少しだったのに〜!!!」

そのままベッドの上でバタバタと暴れる真理奈。
これは……失敗だ。

  「おぉ、すまんすまん……もう夕飯じゃぞ〜と言おうと思ってな……」
  「うぅ〜……」
  「ピィ〜……」

涙ぐんだ目で鉄の爪を見る真理奈。
う〜ん……ドンマイっ!!
ブルーが真理奈に擦り寄り、慰めようとする。

  「悪かったの……よし、お詫びと言っては何じゃが、ワシとデートしよう!」
  「イヤ」

即答。

  「まぁそう言わずに……美味しいモンが待っとるぞ〜」
  「犬じゃないもん」

300 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:26:57 ID:JjvvsK4d0
  「腹減ったじゃろう。そうじゃ、今日はお酒も付けるぞ」
  「……未成年だし」
  「さらにデザート!」
  「よし、行こっ!!」

パッと起き上がり、身支度をする真理奈。
そうか……
素早さは身代わりの早さでもあったんだよ!!(ナンダッテー!!

  「オッケー、じゃあおじいちゃん行こっか」

チッチッ、とパトリス。
もう古いっす。

  「せっかくのデートじゃ。パトリスと呼びなさい」
  「あはw では参りましょう? パトリスさん」
  「ピー!!」

腕を組ませる真理奈。
いいなぁ〜……
と、そんな感じで村中の食堂に向かった2人。
まぁデートと言っても、都会のおしゃれなお店って訳にはいかないよね。
その代わりに食事の内容をいつもよりも豪華にして、それらしく繕ってみる。

  「ん〜おいしっ!」
  「機嫌は直ったかな?」
  「ん〜ん、一生忘れない」
  「この食事でも駄目ですかな」
  「これはこれ。あれはあれ」
  「冷たいのぉ……」

会話の内容の割りには2人共楽しそうに食事を楽しんでいるみたいだ。

301 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:32:41 ID:JjvvsK4d0
ブルーも満腹になったようで、真理奈の太ももでスヤスヤと寝息を立てている。
それより真理奈さん。あなたお酒飲んでもいいんですか?
この世界では別に良いとかいう設定は残念ながら無いんですけど。
とか言ってる間にも、真理奈はグラスを空にしてしまった。

  「おじ…じゃなくて、パトリスはさっきの話分かった?」
  「そりゃあの」
  「じゃあ、もう少し分かりやすく話してくれたら許してあげる♪」

満面の笑みでお願いする真理奈。
そうじゃなぁ、と少し思案するパトリス。

  「このような食堂のグラスが割れやすいのは何故か知っておるか?」
  「ガラスだから?」
  「ふむ。それが物理的という意味じゃ。
   もう片方で多くの人の手に触れるから、という理由がある」
  「手?」
  「触れる事で無意識にその内の精神が物に宿るという話じゃった。
   じゃからワシの精神が今グラスに注ぎ込まれているんじゃ。
   酒を注ぐようにな」
  「おぉ〜」

パトリスが真理奈のグラスに酒を注ぐ。
少し納得顔の真理奈は、ありがとと言ってパトリスのグラスにも注ぎ返す。

  「得てして壊れやすいのは、ガラスである事とバラバラな意識がそこにあるからじゃ。
   故にバラバラになりやすい。
   しかし道具は人の手を渡る物だとも言える。
   そこに同一の目的意識があれば、まぁそのような事にはなりにくいがの」
  「ん〜なるほどね〜同じ目的かぁ。
   でもテッちゃんの中にいる人の目的なんて分かんないよぉ……
   あ、そうだ。ねぇ、おじいちゃん。おじいちゃんの昔の話聞かせて?」

302 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:37:41 ID:JjvvsK4d0
  「お、名前呼び間違えたの。これでは教えられんわい」
  「あ〜ん、お願いー」

ふふと笑い、パトリスは真理奈をからかう。

  「あれは元々レキウスの武器じゃった」
  「れき……?」

思い出せない真理奈を見て、パトリスは愉快だと笑う。

  「忘れたか。アリアハンの王様じゃ」
  「おぉ〜あの人かぁ」

パトリスはなおもくっくっと笑い続ける。
きっと、王様なのに存在感の無いヤツじゃと心の中で馬鹿にしているんだろう。

  「そっか〜だからパトリスあんなに親しげにしてたんだねー。
   ね、どんな人か教えて」
  「そうじゃのう。たまには昔話もいいかもしれんなぁ」

そう言って、お酒をぐっと飲み干した。

  「レキウスがまだ王子じゃった頃、突然旅に出たいと言い始めての。
   それで3人で一年限定の旅に出る事になったんじゃ。
   当時の王も良い勉強になれば、と楽観視しておったな」
  「ほ〜う。あと1人は?」
  「お城付きの女性じゃった。僧侶になりたてのな。
   レキウスは格闘に興味があったようで武道家を。
   ワシは言わずもがな魔法使い。
   3人ともレベルは低かったし、チームワークも知らない。
   外の歩き方さえ知らない、まったくの初心者じゃった。
   いつ振り返っても酷い旅じゃったのう。野宿は当たり前。

303 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:40:51 ID:JjvvsK4d0
   傷は絶えず、服もボロボロ。
   それでも死ななかったのはルビス様のご加護と僧侶のサポートがあったからじゃろう。
   彼女は物覚えが早く、旅に一番早く適応したのも彼女じゃった」

目を細め、楽しそうに話すパトリス。
その様子から当時の雰囲気がありありと伝わってくるかのようだった。

  「レキウスは武道家のくせに慎重じゃった。敵のスキを見てから攻撃するタイプ。
   反してワシは先制攻撃が大好きでな。
   新しい呪文を覚えた日には先頭切って歩いておった」
  「え〜信じられない! 今と全然違うじゃーん」
  「それだけ年を取ったという事じゃ。
   そしてロマリアからカザーブへとたどり着き、
   ヤツの誕生日プレゼントと称して鉄の爪を贈ったんじゃ」
  「へぇ〜素敵ね」

  「最もヤツは武器より防具を買うべきだと主張しておったがな。
   しかし嬉しそうじゃった。
   そしてその頃には、出発してから既に九ヶ月が過ぎておった。
   そこで最北の村ノアニールを最終目的地にして見事到着。
   旅はそこで終わりじゃ」

それからパトリスはレキウスについての馬鹿話を次々と真理奈に語った。
戦闘中は慎重なクセして、食事ではよく喉を詰まらせていた事。
賭け事を多少は嗜み、しかし弱かった事。
帰った後は、真面目に王としての役割を果たそうと考えていた事。
鉄の爪の元所持者の過去が、その頃を懐かしむかのように語られた、

  「なるほどね〜」
  「ま、そんなとこじゃな」
  「面白かった〜」


304 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:49:05 ID:JjvvsK4d0
2人の顔はとうに赤く染まっている。
ちょっと飲みすぎー。

  「でもそしたらノアニールに寄ってからでも良かったのに〜
   どうして行くのを嫌がったの?」

小船に乗らなかった事を言っているのだろう。
旅の最終地点だったノアニールに思い出もあるはず。

  「別に行きたくない訳じゃ……」
  「え〜でもあれは行きたくないって顔だったもん。
   船漕ぎたかったのにさぁー」
  「どうせルーラで来るんじゃからどっちも変わらんじゃろ。
   それにどうせフィリア達を迎えに行く時に行くしの。
   真理奈が気にする事ではない」
  「ふ〜ん……」

はわわ〜とあくびをして、腕を枕に真理奈はテーブルに突っ伏す。
パトリスも目は虚ろだ。

  「……でもホントは嫌じゃった。
   そういう場所って誰にでもあるじゃろ?」
  「うん……パトリス……」

むにゃむにゃと何かをつぶやく真理奈。
パトリスは自分の手をじっと見つめて動かない。

  「まぁ今さらどうしようも無い事じゃがな」

見つめているのは、指輪だ。

305 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 01:55:41 ID:JjvvsK4d0
  「……しかしお前が残した星は、今も輝いておるよ」
  (あら、私は輝いていないの?)
  「お前はワシの手の中に」
  (いつまでも……)

薬指の指輪が光る。
それは星の瞬きのように。

  「……帰ろうか。マリア」

結局2人は閉店まで目を覚まさなかった。


〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
  「レキウス。何ぼーっとしてんだ?」

振り返ると2人の男女。
魔法使いと僧侶だ。
格好で分かる。

  「もうすぐ着くはずだ。そいつでしっかり頼むぜ」

俺の右腕を指しながら言うので見てみると、鉄の爪を装備していた。
あぁ、これは私のだ。
でもこの2人は誰?
今度は僧侶の方が声をかけてくる。

  「頑張ってね」

瞬間、心が揺れた。
女性の微笑みで更に嬉しくなる。
嬉しい?

306 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 02:00:00 ID:JjvvsK4d0
あぁ、これは恋だ。
この人はあの人が好きなんだ。
その事を自覚すると、心は急反転し、落ちていった。
何? なに?

  「パトリスもね」
  「マリアもな」

2人が互いに笑みを交わす。
それを見るのが凄く嫌だ。
心が痛い。
その様子は好きな者同士の仕草だ。
そっか〜、2人は付き合ってるのかな?
え? パトリス?
たまらず私は駆け出した。
2人を追い抜いたところでモンスターが。
俺はいつものように2人からのプレゼントでそれを切り裂いた。
そして2人の仲も切り裂けないかと思案した。
けどそんな自分は嫌いだった。
俺は、どうしようもない人間だな。
私は涙を流す。
その涙を鉄の爪の甲で拭ったところで、世界は終わりを告げた。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜


  「そっか」

起床。
無意識に紡がれた言葉で目を覚ます。
ここのところ、寝坊しなくなった。
変な夢ばかり見る。
いつもはそれでももっと寝ていたいと思うが、今日は違う。

307 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 02:04:24 ID:JjvvsK4d0
行かなくては。
やらなくては。
今なら出来そうな気がした。
二日酔いの影響も無く、素早く着替えを済ませる。
そして部屋を飛び出し、真理奈は武器屋に向かった。

  「おじーちゃ〜ん」
  「何じゃうるさいのぉ」
  「おじーちゃんおじーちゃん! お願いしまっす!!」
  「……そうか」

店主は真理奈の顔を見て、準備が整えられた事を悟った。

  「ではやるか」
  「うん」

店主は炉を使用可能にする為、薪に火をくべていく。
折れた爪を溶接する為には、まず炉で鉄を熱しなければいけない。
数千度というレベルで鉄と鉄を「くっつける」のだ。

  「武器とは何ぞや」

よし、とつぶやいた店主は真理奈に問いかける。

  「ん〜前まではただの道具だと思ってた」
  「武器は道具じゃ」
  「でも心があるよ?」
  「その通り。武器の武とは、心の事じゃわ。そして武器の器はうつわ。
   武器とは心の器という名の道具」

ごうっ、と炎が溢れ始める。
爪と爪のかけらを炎の中で熱していく。

308 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 02:10:34 ID:JjvvsK4d0
  「その心が一つになれば、一心同体。
   ならばその一心、成すがよい」

押さえておれ、と真理奈に指示をする店主。
真理奈はそれに無言で応える。

  「やるぞ」

汗がしたたる。
鉄を叩く音が響く。
爪が鍛接されていく。
その作業をじっと見つめる真理奈。
店主の動きを見逃さないように気をつけつつ、
鉄の爪の心に触れる。

  (失恋したんだね。
   私も泣いちゃったよ?
   でも恋したのは無駄じゃないよ、きっと。
   だってその想いは私に受け継がれたんだもん。
   その想い自体を叶えてあげる事は出来ないけど……
   共有する事は出来たよ。
   だから……
   だから私に力を貸して?
   今度は願いが叶った時の喜びを一緒に体験しようよ。ね?)

真理奈の心に呼応するように、鉄の爪は光を放った。

309 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 02:18:51 ID:JjvvsK4d0
今日はここまで〜
やはり年末という事でスレが滞りそうですな
続きはなるべく早く書きますね
エルフ全然出てきてないですし……
ではでは

310 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/10(日) 02:22:16 ID:MScTOOO90
鉄の爪GJ!

311 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/10(日) 09:38:48 ID:jCczjBqdO
乙。しかし鉄の爪だけでいつまで闘えるのか・・・・・・。

312 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/10(日) 14:06:50 ID:K65KNZT/0
>310のIDが何気にかっこいい件。

武器には心が宿るんですか。
いいですね。
鉄の爪、名実共に真理奈さんのパートナーとなってますます活躍しそうですね。

313 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/10(日) 21:17:08 ID:pchuuWGBO
>>310-312
レスありがとうございます〜
新装備に移行しようか迷ったんですけど、こういう形になってしまいましたね
今では、この先ずっと鉄の爪でもいいんじゃね?とか思ったりw


そういえばこの前スーファミ版の説明書を眺めていたら
アリアハンがかつて世界を統治していた、とか
戦争が起こって小国になった、
とか書かれているのを見て愕然としましたね……
そんな設定があったなんて(´・ω・`)

314 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/11(月) 21:02:19 ID:MhZ3+LgHO
保守

315 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/11(月) 22:13:08 ID:KdhXa9ir0
かつて世界を統治していたが戦争のせいで小国になった、か。元ネタはなんだろう。
真っ先に思い出すのがイギリスだが、じゃあエジンベアって何よってことになるし。

316 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/11(月) 23:10:20 ID:EzZLDFGj0
あれま、どうなんでしょうね。
でも、本作の設定に完全にそわなくてもいいですし、戦争は魔王が人間同士にいさかいをおこさせたものだと思えば、魔王軍の思うつぼのならないためにも同盟は意義のあることですよね。

317 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/13(水) 01:14:56 ID:49II7dKl0
ほしゅーん

318 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/13(水) 20:43:00 ID:NwzI2qCK0
寒いのわかんないの?

319 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/13(水) 22:43:29 ID:k8HmJUp40
冬は寒いのはあたりまえだ

320 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/14(木) 01:19:02 ID:D7sYxrpH0
隙間風氏の再降臨に個人的に期待してる俺がage

321 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/15(金) 10:25:07 ID:4u7zQxZP0
レスだけですが、すいません

>>316さん
どうやら戦争が起こったのはバラモスが現れる前のようです…
んでバラモスが現れたのが、勇者が旅立つ10数年前という設定ですね。

しかしこれはFCの時からある初期設定なのかどうか怪しいと考えてました。
SFCで出すにあたって勝手に付け加えた設定なのでは……?

ドラクエ3が現実の歴史を参考にしているのは有名ですから、
>>315さんが言う通り元ネタが無いのが気になります。
だいたいそんな設定ゲーム中じゃ一つも出てこないですしねwww

とは言ってみたものの、
ウィキペディア見たらアリアハン大陸はムー大陸が元になっていると…
ホントかよw
しかしムー大陸はロト紋でも出てきたしなぁ
となると信憑性は高いのかなぁ〜

322 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/15(金) 12:14:33 ID:nXvzC8620
FC版の説明書も、かつてアリアハン国は世界中を治めて〜みたいので
始まったはず。

323 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2006/12/15(金) 12:33:26 ID:4u7zQxZP0
>>322即レス感謝です
そうですか〜って事は元ネタはムー大陸なんだな
世界を治めていたアリアハンか。
正直想像できませんがwどこかで活かせればなぁと思いつつ……

324 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/16(土) 03:54:18 ID:47kasxap0
>>194
ずいぶんと無沙汰してすみません。
からの続きです。


●始め有るものは必ず終わり有り

音が、耳を伝い聞こえてくる
小さくガサガサコソコソ…

久しぶりだ…
自分以外の音を聞くなんて、どれくらいぶりだろう

夢、じゃない
俺はどうやら、永く眠りすぎたようだ
意識はこれまで感じたことがない程、透き通っている
目を開けばまた、戦い明け暮れる日々
…けれど、俺の出来る精一杯を、するために目を開けよう─

ゆっくりと瞼を開く
明るさが無遠慮に目を刺してきた
初めて目を開いたように恐る恐るぱちぱちと、瞬きを繰り返し目を慣らす

ここは… どこかの部屋のようだ
扁平な天井に固い布が身体を覆う感触
俺は、ベッドに寝かされていた

魔王に頭を掴まれ、その後は思い出せないが…
俺はこんな所に連れてこられていたのか─

325 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/16(土) 03:56:20 ID:47kasxap0
「ん」

人の気配をすぐ隣に感じ、ふいと目をやる
そこには白い女性が目を瞑り、椅子に座っていた

この女が誰なのかは、わかっている
ルビスだ…

俺の動きに反応し、静かに目を開き、俺の顔を見つめるルビス
白く透き通るような肌に、絵に書いた姿
その瞳はどこか物憂げで、しかし魅力的でもある
俺の想像を遥かに超え、美しい

「メイを、俺に向けさせたのは、あんたか…」

ルビスの姿に少し、戸惑いのような嬉しさのような、複雑な気持ちを抱きつつ話しかけた

「別に、その事をどうこう言うつもりはない
 そしてこれからやらなくちゃならない事もわかってる…
 でも、何もわからないまま戦う事なんてできない
 …全部、話してもらえるよな?」

俺のわからないこと
この世界にきてからずっと、ルビスは肝心な事だけは黙ってきた
やるべき事がわかった以上、それらを聞いておかなければならない
何もわからないまま言われるまま、行動だけをするなんて嫌だからだ

「…まず何を話しましょうか」

夢の中で聞いた声そのまま
目の前にいるのは本当に、ルビスなんだな

326 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/16(土) 03:58:57 ID:47kasxap0
「まずは、あんたがどうしてこの世界にいるのかを聞きたい」

これはメイがルビスに聞けばわかるといっていた、最初の疑問
なぜ神が魔王の創った世界へいるのか…
だがはっきりいってこの事はどうでもよかった
言葉慣らしの意味での、質問だ

「私は、あなたがゾーマに囚われ異世界へ連れ去られていったのを見ていました
 あなたには重大な使命がある…
 ですから私は力を失うとわかっていながら人間の姿となり、わざと魔物につかまった─」

そうか
人間になる事もできるのか…
なぜ魔王にやられる瞬間、助けてくれなかった事は、もういまさらどうでもいい
神にも手出しできないほどに、それほどに魔王の力は恐ろしいのだろう

「わかった
 次は"いのちの源"について教えてくれないか?」

これもメイの言っていた言葉だ
今後の俺の行動は、どうやらその"いのちの源"の意思であるらしいから─

「"いのちの源"と今回の事は全て繋がり、そして起こりでもあります…
 事を終わらせる為、全てをお話しましょう」

外気はわずかな物音だけをサァサァ伝達し
部屋の肌色が強く目を圧迫する

白い女性ルビスは時折、ふと悲哀に満ちた表情を見せ
それは悲しいことだけれど同時に、なぜかこの世で一番の美しさに感じた


327 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/16(土) 04:00:58 ID:47kasxap0
●いのちの循環いのちの記憶

「"いのちの源"とは─
 …全てはそこから始まっているのですよ、タカハシ
 この話を聞けばあなたの疑問は全て解かれることになるでしょう」

"いのちの源"なんて言葉はメイに聞くまで知らなかった言葉だ
そしてルビスはそれが全てだと、言う…
そんな大事な事をなんで今まで話してくれなかったのか─

「…"いのちの源"とはその名の通り、全ての生命の源です
 植物、人間、虫、動物、魔物、ありとあらゆる"いのち"を持つものの根源…」
「魔物も、なのか?」
「そうです
 肉体を抜け出した人や動物、魔物全ては遠く上空を超え、更に果てしない場所で一緒になり混ざり合います
 混ざり合った生命は浄化され、新たな肉体へ宿るときを待っているのです」

じゃあ、死んでいった魔物や人間のいのち…
そしてメイの"いのち"も─

「分け隔てなく善悪も関係なく… タカハシ、命は皆おなじであり平等です」
「平等…だと?」

人を無意味に無差別に殺す魔物達も"平等"なのか
いつか、なんらかの生命の元になって平然と生きていくというのか
殺された側からするとたまったもんじゃないな…

「…"いのちの源"、それは"いのちの輪"です
 空へ昇った"いのち"は輪になり、そうして互いを輪の中で共有する
 未来永劫かぎりなく全ての"いのち"と関わりを持ち、"生きた記憶"を後世へ残してゆく」

328 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/16(土) 04:03:58 ID:47kasxap0
難しい、話だ…
童話でも聞いているみたいだが、こんな異世界が存在するほどだ
何を言われても不思議じゃないし、そんなものなんだろう
だけど─

「……それがどうして、俺の疑問が解ける事と関係するんだ?」

少し伸び、俺は身体を起こしベッドから降りる
身体は軽く、不調など全く感じない
それどころか体の奥底から力が沸いてくるようだ

軽く身体をひねり、俺がベッドへ座ったのを確認してから、ルビスは話し出した

「まずゾーマについてお話せなければなりませんね…」
「魔王だろう? 知っている」
「そうではありません
 なぜゾーマが私たち神や勇者を超えることができたのか、という話です」
「どういう事だ?」

少し乱暴に言葉を返したが、
ルビスは気に留めることなく続ける

「ゾーマは"いのちの輪"の繋がりを絶ち、自らの力にする術を知った
 それにより、三つ目の世界で思念となった自身を、若い肉体へと変化させることが出来た」
「三つ目の世界だって?」
「そうです この剣と魔法の世界はそれぞれが独立して八つあるのです
 ゾーマは八つあるうちの三つ目の世界で、やはり邪悪な存在でした
 私は囚われ石にされ、しかし私の導いた勇者にゾーマは打ち倒されました」

ずいぶんと、因縁の仲らしいな…
ついでに聞くが八つの世界は互いに関係するのか?

329 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/16(土) 04:06:46 ID:47kasxap0
「はい、同じ"いのちの源"を共有する世界ですから…
 独立していても全く別世界とは言えず、一つの世界の続きであったりもします」
「ふうん……
 まさか、もしかして、俺の世界とも繋がってるのか?
 この世界みたいに魔法はないけど…」

"生命の根源"である"いのちの源"は"いのちの輪"となり全て交じり合うと言ったし、
俺の世界の"いのち"もそれは例外じゃないだろう─

しかし、ルビスの答えは俺の予想とは違っていた

「いいえ、関係はありません」


330 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/16(土) 04:09:35 ID:47kasxap0
中途半端感漂いますが、今回はここまで。

>>323
お疲れ様です。
まとめサイトは >>308 までまとめました。
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

まとめたとき、スレへ報告書き込みしたつもりが出来てなかったです。
もしかしたらどこかに誤爆してしまったのかな… orz

331 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/16(土) 04:28:44 ID:munzKK4fO
タカハシ乙!!
かなり気になる〜!!!!!

332 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/16(土) 17:19:33 ID:5UKGsZCq0
現実を見ろ。
世の中甘いもんじゃないぞ。

333 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/16(土) 17:20:51 ID:5UKGsZCq0
お前達はあまりに情けなさすぎるぞ。
もっと立派になれ。
しっかり働け。

334 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/16(土) 20:29:33 ID:K/zIOl520
タカハシ氏乙でした。
八つのうちの三つ目の世界って…
来年出来そうな九つ目は?なんてね

335 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/17(日) 00:04:23 ID:47kasxap0
>>331,334
ありがとう

そういえば時間の流れで言うと、DQ3は三つ目じゃなかったですね。
ここは「繋がったそれぞれの世界は、必ず時間の流れにしたがうものではない」という理解でお願いします…
DQ9についてはノーコメントw

336 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/18(月) 08:19:06 ID:xCpzfoGHO
保守

337 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/18(月) 19:38:06 ID:9cJqbe+C0
ぷひゃ

338 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/18(月) 20:38:39 ID:snFetdnD0
保守

339 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/18(月) 22:19:01 ID:OzBEvtFYO
一日に3回も保守いるのか?w

340 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/19(火) 19:04:59 ID:klFuJYKJ0


341 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/20(水) 20:33:01 ID:VXvSkvCeO


342 : ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:18:50 ID:9GmpBdCv0
>>281
感謝です
頑張ります

>>282
ありがとうございます
あんまり暗くなりすぎないようにはしたいですね。
スライム悩んだんですよ、何言わせるか
結局ゲーム通りに・・・w

>>283
感謝です
なにげにゲーム中も気になってましたw
ゲームまんまで詰まらないんじゃないかと思ってましたが
そう言っていただけると嬉しいです

>>284
ゲーム中の親方は相当酷い大人でしたけどね・・・
まんまじゃあんまりなのでアレンジをw
脇役も人間、キャラクターとしてもっと活かしたいです
精進します

>>288
ありがとうございます
やっぱりそれだけ、心に残るシーンなんですよね
上手く描けるか今から少し不安です
ご期待に沿えるよう頑張ります

343 : ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:20:13 ID:9GmpBdCv0
ぎゃ
sage忘れましたごめんなさ・・・!

>>暇潰しさん
武器の扱いに感動しました
こういう作品を読むと尚更
自分のはアイテムをいかせてない気がしますね
勉強になります
そしてエルフの今後に期待大!

>>タカハシさん
まとめ乙です
続きが気になる終わり方でむずむずしてますw
待ってますよー!

>>279続きです

344 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:21:53 ID:9GmpBdCv0

目を覚ますとその日は昨日までと様子が違っていた。
階下では複数の人間の話し声が聞こえる。
ストーリーが動き出していることを感じて、俺は体を起こした。

『やっと目を覚ましたのね』
小さな笑い声がして目線を落とす。
くすくすとブロンドを揺らしながらベッドの傍らに肘をついて
ビアンカが俺の顔を覗き込んでいた。
『サンってば、結構お寝坊なのね』

おはよう、と咄嗟に口に出すと
けらけらと笑いながらビアンカも挨拶を返してくる。
『パパのお薬が出来上がったの。残念だけど今日でさよならだわ。
ママとご挨拶に来たのよ。あたしの家にも遊びに来てちょうだいね』
寂しさを誤魔化すためか早口に少女が言う。

大丈夫まだお別れじゃないよ、と
俺はビアンカに慰めを思った。
声には出さなかったけれど。

身支度を整えてビアンカと共に階下に下りると、パパスが顔を上げた。
『サン、やっと起きたのか。
おかみとビアンカは今日帰ってしまうそうだ』
声に対して、目一杯寂しそうな表情を作ってみせる。
おかみはその表情を微笑ましげに眺めている。

345 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:23:14 ID:9GmpBdCv0

にっ、と髭の奥の口角を上げて、パパスは言った。
『女二人では危険だからな。
父さんはアルカパまで二人を送っていこうと思うんだが、
どうだ?お前も来るか?』

俺が頷くよりも先に、ビアンカが
『本当に?』と嬉しそうな声をあげた。
俺も顔を上げて「いいの?」と子供らしく尋ねる。

満足げに目を細めるとパパスは
『そうと決まれば早速出かけることにしよう。
サン、すぐに準備をして来なさい』
言いながら自分の荷物袋を抱え上げる。
俺は自分の装備を簡単に確認すると「大丈夫」と頷いた。

アルカパまでの道程は驚くほど順調だった。
殆どモンスターと遭遇することもなく
日が天頂を通り過ぎる頃には
町の入り口で警備兵と挨拶を交わすことが出来た。
ごくろうさん、とパパスが声を掛けると兵士は
どうぞ、と道を開けパパスの横顔に敬礼した。

346 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:24:25 ID:9GmpBdCv0

アルカパの町は、サンタローズに比べて広々と賑やかだった。
入り口すぐには商店が並び、そこかしこから
買い物をする主婦の声や、
笑いあう子供達の声が聞こえてくる。

きょろきょろと辺りを見回していると
ビアンカが『賑やかでしょう?』と楽しそうに言った。

その町を一望する通りの真ん中
一際大きな建物を構えて佇んでいるのが
ビアンカの住む宿屋だった。

サンタローズにはない大きな建物にしばし見とれてみる。
大きな正面扉をくぐると
広々としたロビーには隅々まで手入れが行き届いており
趣向をあわせた品の良い装飾品が設えてあった。
天井には嫌味でない程度に豪華な
小ぶりのシャンデリアが柔らかな輝きを放っている。

フロントの右手には小さな扉があり
おかみは脇目も振らずに扉の奥へと消えていった。
後を追うビアンカに従ってパパスと俺もその扉をくぐる。

347 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:25:44 ID:9GmpBdCv0

同時に『おかみさん!』という若い声が耳に届いた。
『お帰りなさい、遅かったですね。薬は手に入ったんでしょう?』
きっちりとした制服を着込んだ従業員らしき若い男が
頷くおかみに向かって笑顔を見せた。

『これでこの人も良くなると思うよ。
まったく世話が焼けるったら。手伝ってくれる?』
『はい!だんなさん、お薬ですよ。早く元気になってくださいよ』

応えるように間仕切りの奥のベッドの上で、
青白い顔をした年配の大男がのそりと身を起こした。
弱々しく微笑んだその男がダンカンだろう。
パパスも近付いて『大丈夫か?』と声を掛ける。

医療の知識が皆無な俺にもその様子が
あまり穏やかでないことが見て取れた。

手持ち無沙汰に歩き回っていたビアンカに
おかみが気付き、俺の顔を見る。

『サンちゃん、良かったらビアンカと遊んでらっしゃいよ』
『久し振りだろうから、散歩でもして来たらいい。ただし外には出るなよ』
パパスも振り向いてそう言う。俺は素直に従うことにした。

348 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:27:13 ID:9GmpBdCv0

ビアンカと連れ立ってロビーへ出ると
正面扉へ向かおうとした俺をビアンカが引きとめた。
『おもしろいお話を聞かせてあげる』
と、悪戯っぽく笑みを含んだ瞳で俺の手を引く。

さっきの寝室の向かい側に、
こちらはそれより少しだけ豪華に彩られたもうひとつの扉があった。
その扉を開くと、手入れされた植物に囲まれた小さな中庭。
蔦の絡んだベンチのひとつに、艶やかなローブを身に纏った
女と見紛う程の美しい顔をした男がゆったりと腰掛けている。

『今日もやっぱりここに居たのね』
ビアンカが話しかけると
病的なまでに白い顔を上げて男が微笑んだ。
『ここが好きなんだ。落ち着くじゃない』
『ねえ、あのお話を聞かせてくれない?』
俺のほうをちらりと見ながら、ビアンカが言う。

男は、おもむろに俺の方に向き直るともう一度にこりと微笑む。
その真っ白な頬に僅かに赤みが差した。

『そうか、ぼうやにはまだ話したことがなかったかな』
ビアンカが笑いを堪えるように口元に手をやる。
男は、ひとつ咳払いをすると
大げさに身を乗り出して俺の目を見据えて、口を開いた。

349 :アルカパ ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:28:55 ID:9GmpBdCv0

『この町の少し北に、大きなお城があるのは知ってる?』
俺は知らない振りで首を横に振る。

『レヌール城と言うんだ。
昔、そのお城には逞しい王と、それは美しい王妃が住んでいた。
とても仲の良い夫婦だった。
だけど何故か二人には子供が出来ず、
いつしかその王家も途絶えてしまったんだ』

俺は小さく頷く。男の穏やかな顔が少しだけ真剣になる。
『ところが、ね。今となっては
誰も住んでいないはずのそのレヌール城から、
夜な夜なすすり泣くような、
物悲しい声が聞こえてくると言う・・・』

ぶる、と肩を震わせて、男は体を戻した。
『どうだい、恐ろしいだろう?』
くすくすと、堪えきれない笑いを漏らすビアンカの横で
俺は深刻な顔を作って頷いて見せた。男もそれに応えて頷くと、
『レヌール城には決して近付いてはいけないよ』
と言ってまたベンチに背中を預けた。

ロビーに戻り扉を閉めると
ビアンカがけらけらと笑い声を上げた。

『サンってば、真っ青になっちゃって。怖かったんでしょ』
否定も肯定もしないまま俺は正面扉へ向かった。
無言を肯定の意味に取ったらしく、
ビアンカは嬉しそうにまた笑って俺の横に立った。

350 : ◆u9VgpDS6fg :2006/12/21(木) 16:31:26 ID:9GmpBdCv0
本日ここまでです
ありがとうございます

多少は書き溜めてあるんですが
投下する時間がないのが問題ですね
それではまた

351 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/21(木) 18:21:30 ID:2836uusG0
>>350
お疲れ様です

ここまでまとめました
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

352 :タカハシ ◆2yD2HI9qc. :2006/12/21(木) 18:39:52 ID:2836uusG0
>>350
テキストの件ですが、避難所へ返事を書いておきました。

353 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2006/12/22(金) 07:36:50 ID:gpiH9PQX0
>>350
乙!ついにアルカパか。そういやサンタローズと比べりゃ随分都会だなw
しかし、真相のわかってる怪談とか笑っちゃうなw

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